10万円、10年落ち、10万km超の軽バン買いました

第6回 少し涼しくなってきたので、車中泊をやってみた

車中泊もできるような装備を整えた

 地球温暖化なのか以前に比べると夏は暑く感じたものの、今年は8月も後半になってくると若干暑さはやわらぎ、日が落ちれば屋外で過ごすことも難しくなくなってきた。うちの軽バンは白い塗色のおかげもあって、車内でなんとか過ごせる時間が増えてきた。であれば、エアコンなし車中泊も大丈夫なのでは?と考えた。

車内でそのまま寝られるのか問題

 すでに9月になってしまい、日が暮れればだいぶ涼しい季節になっている。今年の夏は6月中に梅雨明けになり、いきなり猛暑がやってきたと思ったら、その猛暑はずっと続くわけではなく、涼しい日と暑い日が交互にやってくる状態だった。8月もたしかに暑かったが、夜になれば過ごせるくらいまで気温が下がっていた。

 白をはじめ明るい色のクルマは、黒っぽいクルマに比べて明らかにボディの温まり方は異なっている。わが軽バンであるクリッパーバンも同様で、炎天下のボディを触っても火傷するほどの温度上昇はなく、風が吹いたり、しばらく走行すればボディは温かい程度まで冷えてくる。

夜の作業(?)中

 そんな状況の車内で過ごせるかどうかといえば、個人差が大きい。筆者はどちらかというと暑さには強いほうで、夏は汗を流しながら過ごしたり、昼寝をするのはよくやっていた。油断すれば熱中症になるので、他人にはすすめないが、気温が30度を少し上まわるくらいならば扇風機併用で過ごすことはできる。それはこれまで紹介したとおりだ。

 車内で過ごすことの延長としては車中泊がある。これも個人差が大きいのだが、厚いマットレスでもないと体が痛くて寝られない人もいれば、板の間でも寝ることができる人もいる。筆者の場合、こういう仕事の特性(?)からか、さまざまな条件のわるいところで眠ることに慣れている。オフィスの床に梱包材のプチプチを敷いて寝る、ということも以前はよくやっていた。また、そのまま寝落ちしてしまい床の上で寝ていた、ということも少なからずある。夏場であれば床で寝冷えすることもあまりなく、起き上がっても体が痛いということもあまりない。

 一般の人よりも雑魚寝耐性の高い筆者であるが、クリッパーの室内を見ると、室内床は鉄板むき出しではないものの、シートに薄い吸音フェルトが貼り付けてあるだけなので、そのまま寝るのはさすがにちょっと厳しい感じがする。

180cm程度の簡易寝具を持ち込むことが簡単

 クリッパーを含む軽バンの多くは、フラットな床の長さは180cm程度あるのが一般的。それならば、簡易的な寝具を持ち込んで展開すればいい。車内に常備するのなら、キャンプ用のローコットや、残業の友としても愛されるインフレーターマットが軽量かつ折りたたんだ状態が小さいのでよさそうだ。これに、季節に応じた掛け物やシェラフを組み合わせればよいだろう。

簡易的な寝具を持ち込めば、いつでも寝られる。というか、持ち込めることこそが荷室の長い軽バンの持ち味といえる

 筆者はキャンプをしない人間なのと、雑魚寝耐性が強いせいかインフレーターマットも持ち合わせていない。そこで、なにかないか物置を探したところ折りたたみの座椅子を発見、これを車内に持ち込んでみた。

 見つけた折りたたみ座椅子は伸ばすと約180cmあるが、リアシートを完全に畳んでいれば完全に伸ばしてベッドとして使え、クッション性も高い。車内でリラックスする際にも便利だろう。ただし、折りたたんでもかなりの場所をとってしまうことと重量があるので、新規に導入するのはおすすめしない。

 使わないときは邪魔なせいか、「折りたたみ座椅子」で検索すると、追加の検索ワードのサジェスチョンとして「捨て方」がついてきた。もしかしたら筆者のように周囲で行き場に困った折りたたみ座椅子があるかもしれない。

足を伸ばして寝ている、の図

 実際の寝心地だが、停車する場所の傾斜に応じて頭を前にするか後ろにするかを決める必要が出てくる。幸いにして、折りたたみ座椅子の場合、頭の部分に角度がついているので、多少の傾斜は気にしなくてもいい。しかし、もっとフラットな寝具なら、通常はリアが高くなっているため、荷物が少ない状態なら頭を後ろにしたほうがいいかもしれない。

虫が入らない換気扇を考える必要がある

 締め切っているとまだ暑い今の時期、車中泊をするためには虫が入らない換気の方法を考える必要がある。今はまだ夜になると虫が増え、蚊もいる。そして、夜間はセキュリティの問題もあるので、ドアが閉まったまま換気する方法を考えなければならない。

自作した外気導入装置

 そこで、軽バンでよくある換気扇を作ってみた。PCや電子機器の中に入っている電動ファンを数個ならべて換気に使うもので、リアドアの窓がスライドして開く軽バン向けに、窓を半開きにしてはめ込める構造にした。

電動ファンは3個。3個に意味はなく、なんとなく3個
網を支えるように、竹ひごを横方向に渡している
ガラスを挟むようにして下辺を支える
合板を併せる部分は剥がれないようにビス止めに

 筆者の場合、窓ガラスを挟み込むように、しっかりとハマる構造にした。以前、何かで見たことがあり、窓ガラスに挟み込む方法をまねさせてもらい、4mmベニア合板で自作した。構造は写真のとおり、下辺でガラスを挟み、窓を上にスライドさせて上にはめ込んでいく。

 電動ファンは12Vタイプを3つ。静音性など考えずに秋月電子に売っている12Vの電動ファンを選んでしまったが、爆音&爆風だった。これを手持ちのモーター回転コントローラーという名の電圧調整基板を介してサブバッテリ系統に接続した。

 肝心の風の向きだが、今回は外からの吸気という「外気導入装置」となっている。この手の装置は室内の空気を外に出す排気用に作る人がほとんどだと思うが、虫よけという観点から行くと、吸気のほうがいいと思ったからだ。

クルマに装着したところ。このくらいなら雨もかからないかもしれない
手で触るとかなり強く空気を吸い込んでいく

 その理由は、三菱自動車製の日産クリッパーの場合、空調の外気導入時にフィルターがない。それはつまり、排気ファンで室内を負圧にしてしまうと、フィルターなしで外気が入ってきてしまう。実際はヒーターコアや冷房のエバポレーターを通るので、大きな虫は阻まれると思うが、あまり気持ちのよいものではない。

 そこで、ファンが吸気ならば、エアコンの空気経路は排気になるため、虫がいても問題ない。また、ほかの窓を少し開けておく場合でも、爆風のファンで吸気させていれば、そのほかの窓からは空気が排出され、虫が入りそうにないからだ。

 吸気ファンの外側には網戸用の網を貼っているので、よほど細かい虫でなければ通過できない。網には竹ひごを横に渡し、負圧で網がファンに触れないようにしている。

 そして、もうひとつ。通常ファンには指などを切らないようにガードを付けるが、あぶないのは空気を吸う側で、排気する側は指を入れても弾き返されるようになるため、吸気側ほどあぶなくない。吸気側から手を入れると羽の尖った部分がまともに指にあたり、皮膚を大きく割って出血が大きくなることもある。なので、今回はファンガードの取り付けは省略した。

車室内から見た電動ファン。特にガードは付けていない
動作しているときは、モーター回転コントローラーのLEDが点灯する
天井側には電源コネクタを設けた。取り外すときは簡単に電源が抜ける。コードに余裕を持たせているので、つないだままドアの開閉も可能

 この環境で寝てみた。正直に言うと、まだ、朝までのしっかりとした車中泊はしていない。しかし、仮眠や昼寝レベルはすでに何度か経験、それほど暑くない日なら十分実用的。車内で作業していて、眠くなってきた場合、車内にいたまま足の先まで真っ直ぐに伸ばして寝られるのはとても気持ちがいい。

プチトラブルは、サブバッテリシステム

 今回サブバッテリシステムにて、プチトラブルが発生した。サブバッテリシステムはおおむね順調なのだが、車内にいて扇風機をかけてリラックスしている場合、170Wh程度のバッテリ容量では安心はできない。気づいたら限度まで放電してしまったことが2度ほどあり、使ったあとはしっかりサブバッテリを充電しておかないといけないと痛感した。

 そもそも、このクルマで何時間もドライブするようなことはほとんどなく、近所へのちょい乗りがほとんどだということを考えると、サブバッテリの走行中充電は期待できず、コンセントの充電を重視すべき。そこで、自作の充電回路では充電にまる1日以上かかるため、それに代えてバッテリ充電器をシステムに埋め込むことにした。

 買ったのはAmazonで2000円以下のという機種。最大6A充電なので、14.4Ahのバッテリなら数時間で満タンになる。システムに組み込むために、自作充電器の回路部分をこれに差し替える。

安価なバッテリ充電器をシステムに組み込んでみた
充電基板を撤去したケースの中には余裕がある
換気扇あらため外気導入装置の電源は、この箱のジャックにDCプラグを差し込む。取り外し自在だ

 一度、バッテリ直で充電を試して正常動作を確認し、あとはコンセントと出力のコードをバッサリ切り落とし、入れ替えていく。プラスチックケースの中の基板を1枚取り外し、そこに充電器からのコードを接続していけば完成。

 充電がすぐできるようになったので、同時に外部コンセント入力をまともなものにする。実は、錆びて穴があいていたところをうまく利用して電線を通していたが、使い勝手がよいものではなく、防水性能等もよい状態ではなかったので、穴をふさぎ直してコネクタを付けた。

 残念ながら筆者に溶接の心得や道具はないので、ポリカーボネート板をヒートガンであぶって整形、コーキング材を厚塗りで錆びた部分をふさぎ、あらためて穴をあけて、プラケースにコネクタを固定した。

外部からの電源取り入れ口として、リアタイヤハウスの中にコネクタを設けた

 コネクタは、ホンダのN-VANと互換性のあるように七星科学研究所のコネクタで作ろうと思ったが、コネクタの型番が分かっても極性まで分からなかったため互換性は断念。通販で中国製の安価な防水コネクタセットを取り寄せて対応した。N-VANと同じくアースもいれて3芯コードを使ったが、差し込み先のことを考えてプラグは2Pタイプを付けた。実際に使うにはこのコードだけで足りるとは思ってないので、10mの屋外用延長コードも同時に持ち歩くようにしている。

キャップ付きの防水コネクタ
3Pコネクタで、一応アース付き
コードの先は、接続先を考えて2Pのコンセントに別途アースを出した
錆で大穴のあいていたリアタイヤの後ろ。ここからACコードを出してみたときもあるが、今回、ちゃんとふさいでコネクターを付けた

いい季節になれば、車内で過ごす時間が増えそう

 7月と8月は暑さで控えていたが、これから気温が下がっていくため、軽バン車内で過ごす時間は増えそうだ。そして、装備も充実してきたので、余計に過ごしやすくなっている。

 しかし、移動オフィスとして充実する一方で、当初の目的でもあった自転車運搬のための準備が進んでいない。車内で自転車を横倒して積めば1台そのまま載ってしまうので、すでにその方法で運んでいるが、できれば倒さず、しかも2台まとめて運んでみたい。前輪を支える何かを作るのか、別の方法があるのか、固定する方法はどうするのかなど、今後の検討課題だ。

 そして、音響システムも充実させたい。オンライン会議などでもっと明瞭に聞き取れるスピーカーが欲しい。できれば、BGMも快適に聞いていたい。カーオーディオを後部にも付けてしまえばいいのだが、Bluetooth接続の2チャンネルアンプと小型スピーカーだけでいいので、何か適当な基板とスピーカーを探そうと思っている。

正田拓也