自動車研究家“山本シンヤ”が聞いた「MORIZOがニュル24時間へ挑む理由」

第14回:なぜ「レクサスIS250」は2008年のニュル24時間に参戦しなかったのか?

2008年のニュル4時間耐久レース(VLN4)に参戦したレクサスIS250(イギリス向け6速MT仕様)写真提供:モリゾウ氏

 2007年のニュル24時間では、中古車のアルテッツァがベースの2台のレーシングカーは満身創痍ながらも完走。当時のメンバーは「完走は奇跡」と振り返っている。

 その1年後、モリゾウは再びニュルの地にいた。GAZOO.com「モリゾウのドライバー挑戦記」で、そのことについてこう語っている。

「再びこのニュルブルクリンクの地に帰ってきました。昨年、トヨタは70周年をむかえると同時に、トヨタモータースポーツ50周年という記念すべき年でした。その華々しい節目の年に、GAZOO Racingの活動が産声をあげました。

 昨年はこのニュルブルクリンク24時間レースに出場し、最大の目標である“完走”という偉業を、未経験者のメンバーによる手作りのチームで成し遂げたことはとてもすばらしい事と言えると同時に、そこに関わる全員が感動を共有できたと感じております。

 そして、今年も我々チームとしても、私自身モリゾウとしても、再びこの地に立ち、 この活動を継続出来たことには大きな意味があると思います」。

 初年度は自らの手でレースに参戦することが主な目的だったが、2年目は新しい挑戦が行なわれた。それは「クルマの味探しの旅」だ。量産車をベースに味の変化を体感しながらカスタマイズを行ない、最終的に理想の味付けを見出そうというものだった。

「今回のチャレンジは、新たな50年のステップを踏み出したと言える。キャップ(成瀬弘氏)とモリゾウのチャレンジテーマは“味探しの旅”。GAZOOはトヨタで自分が作った場所であり、そして自分の“居場所”。そのGAZOOが今やレーサーモリゾウを支えてくれている」

2008年にニュル4時間耐久レース(VLN4)に参戦したレクサスIS250(イギリス向け6速MT仕様)写真提供:モリゾウ氏

 マシンは中古のアルテッツァからレクサスIS250(イギリス向けの6速MT仕様)に変更。まずはロールケージやバケットシートなど、ルールで定められた安全装備やレース用スリックタイヤ以外は、サスペンション変更(車高ダウンとダンパー&スプリングのリセッティング)のみというライトチューニング仕様で5月10日に行なわれたニュル4時間耐久レース(VLN4)に参戦。ちなみにこのレースはニュル24時間の2週間前に行なわれることから、最終実戦テストとして参戦するチームも多い。

 予選はクラス5位(総合182位)、モリゾウもタイムアタックを行ない、昨年のアルテッツァのほぼ同じタイムを記録。決勝は4時間をシッカリ走り切り、クラス2位(総合95位)を獲得した。

 ちなみにこのIS250は、レースカーながらエアコンはもちろんオーディオも装着されていた。モリゾウは「ノーマルのクルマでも十分レースで走れるものだと改めて感心しました。初の試みであった『耐久レースにCD(音楽)』は気分が乗ってGoodです。エアコンは……かけてもあまり意味がありませんでした」と振り返っている。今では笑い話になってしまいそうだが、これも経験である。

 当時のレポートには「大きなチャレンジではあるが、通過点に過ぎない」と書かれていたし、モリゾウも「次回の『味付け』をどうしようか考えています」と語っていた。その次=ニュル24時間だと思っていたが、IS250の参戦はこの1回のみだった。なぜ?

2008年のニュル4時間耐久レース(VLN4)参戦メンバー/写真提供:モリゾウ氏

 この真相を教えてくれたのは、モータージャーナリストの先輩でありレーシングドライバーの佐藤久実氏だ。このプロジェクトのチーム紹介に「2007年に結成された『Team GAZOO』から選ばれた5人のドライバーに“助っ人クミさん”を迎えて挑戦」とあるが、このクミさんが佐藤氏であった。

「もちろんニュル24時間に参戦するつもりでしたが、何とマシンのレギュレーションに適合していない事が判明……。今では『えーっ、ありえない!!』ですが、レギュレーションをしっかり理解できる人がいなかったのでしょう。昨年参戦したとは言っても、レースに関してはまだまだ初心者集団でしたね」

 個人的にはIS250がどのように進化していくかを見てみたかったが、モリゾウの「しばらくそのレシピ(=セットアップ)はナイショにします」は、その後の量産車にどのように活かされたのか? 気になる所である。

 その代わり……ではないが、2008年のニュル24時間に表れたのは「Team LF-A」と呼ばれる謎の集団と艶消し黒のボディカラーのマシンであった。実はこのマシンでの参戦を決めたのは豊田氏だった。

2008年にニュル4時間耐久レース(VLN4)に参戦したモリゾウ氏/写真提供:モリゾウ氏
山本シンヤ

東京工科自動車大学校・自動車研究科卒業。自動車メーカーの商品企画、チューニングパーツメーカーの開発を経て、いくつかの自動車雑誌を手掛けた後、2013年にフリーランスへと転身。元エンジニア、元編集者の経験を活かし、造り手と使い手の両方の気持ちを分かりやすく上手に伝えることをモットーにしつつ、クルマの評論だけでなく経済からモータースポーツまで語れる「自動車研究家」として活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・アワード選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員。YouTubeチャンネル「自動車研究家 山本シンヤの現地現物」も運営中。