【特別企画】彩速ナビで知るクルマとオーディオの関係(前編)
iPhone/Android連携が音楽の楽しみ方を変える


現代カーナビの主力は「AVナビ」
 現代のクルマにとって必須の装備であるカーナビ。しかしカーナビにも様々なタイプがある。その中でも主流となっているのが「AVナビ」と呼ばれるタイプだ。

ナビはもちろん、CDやDVD、フルセグ地デジチューナー、FM/AMラジオなど、およそ考えられるあらゆるソースに対応し、パワーアンプも内蔵しているのが「AVナビ」だ

 AVナビというのは、カーナビの基本であるナビ機能に加え、音楽CDやMP3などのオーディオソースの再生機能、DVDや地デジなどのビジュアルソースの再生機能に対応し、車載のスピーカーを鳴らすためのアンプも搭載している。最近はスマートフォンにナビの代用をさせたり、PNDを使ったりする人も多いが、カーナビ各社が発表する統計資料によると、AVナビは依然販売数量の60%以上を占める主力商品で、競争の激しいカテゴリーでもある。

 AVナビは、以前はHDDを搭載して価格もたいへん高価であったが、ここ数年はフラッシュメモリーを記録媒体としたタイプが急速にシェアを伸ばしている。低価格化が進むことで、PNDを置き換える形で販売台数は毎年確実に増加しているそうだ。

 今回は中でもオーディオ好きに人気の高いAVナビ、ケンウッドの彩速ナビ「MDV-737DT」を通じて、クルマの中で音楽メディアを楽しむ方法を整理してみよう。低価格化の流れの中でAV機能を簡略化しているAVナビもなくはないが、ケンウッドの彩速ナビは、手頃な価格ながら、よい音が手軽に楽しめる仕掛けが満載されているのだ。なお、彩速ナビ「MDV-737DT」のナビ機能のレビューについては関連記事を参照していただきたい。

CD録音機能のメリット・デメリット
 iPodやスマートフォンの普及で音楽の聴き方は大きく変化したが、それでも音楽を楽しむソースとして音楽CDは外せないだろう。少し前まではドライブの前日にお気に入りのCDをピックアップしてキャリングケースにセットすることが楽しみであったが、最近のカーナビには音楽録音機能が備わっていているのでわざわざCDを外に持ち出す必要もなくなりつつある。

 CD録音機能はメーカーにより名称は異なるが、HDDナビの登場以降カーナビの重要な機能として広く知られるようになった。大抵の場合、初めて聞くCDをカーナビにセットすると自動的に録音が開始され、次回からはそのCDを挿入しなくても楽しめるようになる。なんといっても運転中に音楽を聴きながらそのまま録音できるのでとても便利。お気に入りの音楽コレクションがどんどん増えていく楽しみもある。

 さて、このとても便利なCD録音機能であるが、当然のことながら記録容量には限界があり どんどんCDをコレクションしていくとやがて容量が足りなくなる。高音質録音を選択するとそのペースは一層早まる。カーナビの録音機能には記録された音楽データを外部に取り出す方法はなく、また記録容量を追加で増やすのは困難。容量が足りなくなったら涙をのんで以前の曲を削除するしか方法がない。これがカーナビの音楽録音機能の弱点だ。

 また、カーナビのCD録音機能には例外なく厳しい著作権保護対策が施されている。録音した音楽はそのカーナビだけで再生が可能で、データを取り出してバックアップしたり、カーナビを買い換えたときにコピーしたりすることはできない。HDDナビでカーナビの調子がわるく本体を交換した場合も、以前の音楽データをコピーすることはできない。誰でもワンタッチで録音ができてしまう完結したシステムなのでこのような厳格な配慮が必要なのだろう。カーナビのHDDは特殊なフォーマットが施されているので腕に覚えのあるユーザーであってもPC用のツール等でコピーをすることは不可能なのが普通だ。

 ケンウッド彩速ナビは音楽の記録メディアにSD(microSD)メモリーカードを使用できるユニークな機能を持っている。SDHC対応で最大32GBまで利用可能。実際にリッピングした際のファイル容量から計算すると、標準音質であればCD500枚分以上、高音質でも250枚分は入りそうだ。これだけ容量があれば不足することは少ないと思うが、仮にいっぱいになってもSDカードを交換すれば事実上容量の制限はなくなる。ジャンルや目的に応じてSDカードを使い分けることもできるし、HDDに比べて物理的なトラブルが起きにくい点も心強い。ただし記録されるファイルは著作権保護のために暗号化されているので、持ち出してPCで聞いたり他のカーナビやオーディオプレーヤーで聞いたりすることができないので注意が必要だ。

彩速ナビはCDを4倍速で録音できる。iPheneにKenwood Music Info(無料)をインストールするとインターネット経由で最新のディスクタイトルも取得できる。操作も簡単でたいへん快適彩速ナビの録音設定画面。標準(128kbps相当)と高音質(256kbps相当)が選べる。最上位モデルの737DTでは録音先に内蔵メモリを選ぶことも可能

USB & SDメモリーで聞く
 新しく買ったCDをその都度カーナビに取り込むのは手間でもないが、すでに持っている膨大なCDをクルマの中に持ち込んで、新たに録音するのは大変な作業だ。しかしiPodやiPhoneを使っている人ならば、これまでに買った多くの音楽CDのデータが、MP3やAACなどの音楽ファイルとしてすでにPCにとり込まれているだろう。最新のAVナビはSDカードやUSBメモリーの再生に対応しているので、PCの中のファイルをそのままコピーすれば再生ができる。これだと複数のカーナビで同じライブラリを共有したり、将来カーナビを買い換えたりした時にも問題なく対応できるメリットがある。

 iTunesのファイルはWindows PCの場合は「マイドキュメント」→「マイミュージック」→「iTunes」→「iTunesMedia」→「Music」の中に格納されている。iTunesストアで購入した楽曲は従来はDRM(著作権保護)がかけられていたためにカーナビでの直接再生は不可能であったが、今年2月より販売楽曲のDRMが取り除かれカーオーディオ機器でも再生できるようになった。以前に購入したDRM楽曲も有料でアップグレードすることが可能だ。

彩速ナビの737DTはフラップ内にSDスロットX1と2つのUSBソケットを装備。メモリーが認識されると「USB」「SD」のソースボタンが点灯する

 ケンウッドの彩速ナビの場合、SD(microSD)カードスロットを本体に持つほか、737DTにはUSB端子が2系統用意さている(737DT以外は1系統)。各端子にUSBハブを接続することで最大で8個までのデバイスを接続することができる。USBメモリーを複数接続した場合には、再生画面上に「デバイス切替」ボタンが現れるので、それを押すことで簡単に切り替えが可能となる。

ファイル再生の盲点を彩速ナビが克服
 このようにとても便利なUSB & SD再生機能ではあるが、実際に使ってみると意外な問題点に気付く。iPodやiPhoneではアーティスト名、ジャンル、あるいはプレイリストといったさまざまな切り口から素早く聞きたい目的のアルバムや曲を選び出すことができるが、カーナビのメモリー再生はそれができず実に不便なのだ。アルバム数枚分をその都度コピーしている程度だと気にならないが、様々なジャンルのアーティストのアルバムが20~30枚になってくると、聴きたい曲を選ぶのが困難になる。

 その理由は、画面に表示されるアルバムや楽曲の順番が、フォルダやファイル名のアルファベット順、あるいはタイムスタンプ(コピーされた日付)順に並べ替えられてしまうためだ。アルバムをフォルダ単位で几帳面に管理して階層を保ってコピーすれば検索性は向上するが、何も考えずにランダムにファイルをコピーするとあとで選び出すのがとても困難になってしまう。

 本来iTunesなどで作成したAACやMP3ファイルには、管理を容易にする「タグ情報」が付加されているのだが、現在のカーナビではそれらの情報を利用して楽曲をコントロールできるモデルはなく、再生する順番を指定するプレイリストも作ることができない。せっかくの音楽ファイル再生機能も、膨大なファイルの山を前に活用するには問題が多いのだ。

カーナビのSD/USB再生はファイルに埋め込まれている「タグ情報」を読み込まないため「ファイル名」だけが曲を選ぶ手がかりとなる

 こうした音楽ファイル再生の不便さを解消する方法として、PCでファイル管理を行う方法が各社で試みられている。ケンウッドでも同様だが、彩速ナビに採用されている方法は中でも非常にユニークなものだ。

Kenwood Music Editorの驚異的な能力

 彩速ナビには、Windows PC用音楽管理ソフトとして「Kenwood Music Editor VXII」が用意されている。このソフトを使ってPC内の音楽ライブラリーをSD/USBメモリーにコピーすると、音楽ファイルとは別に小さな管理用のデータベースファイルがコピーされる。このファイルを参照することで楽曲管理が格段に容易になるのだ。

 なんと言ってもこのソフトウェアの提供方法がユニークだ。彩速ナビ本体にあらかじめこのソフトウェアが仕込んであって、メニュー操作でSDメモリーにそのプログラムを書き出すようになっている。ファイルサイズは約10MBとコンパクト。動作対象はWindows XP以降のWindows PCだ。一般的にはこのようなユーティリティプログラムはメーカーのWebページからダウンロードするケースが多いが、大抵はURLを手で打ち込んで、ユーザー登録やパスワードの入力などの手続きが必要だ。本体から直接SDカードに書き出すこの方式は非常にシンプルで間違いもおきにくくたいへん優れていると思う。

SDメモリーをセットして「楽曲データ管理」メニューを開くと「楽曲管理ソフト書き出し」が選択できるようになる「書き出し」を押すとSDカードに書き込みが開始される

 インストールされたプログラムはiTunesとよく似た構成になっていて、取り扱いは容易だろう。軽量なプログラムで起動もすばやくマシンスペックも必要としない。システムに常駐することもないクリーンなプログラムだ。iTunesを使用していればそのライブラリフォルダを指定することで楽曲を取り込むことができ「フォルダ監視」機能をオンにすることで起動時にiTunes側の変化を検知して自動的にライブラリーを更新してくれる。

 具体的な操作として、まず彩速ナビとの同期に使うSD/USBメモリーを「ターゲット登録」する。この仕組みは実によくできていて、本当に「分かった」人が設計したのだと思う。ターゲット登録をするとそのメモリーをPCから取り出してもプログラム上にエイリアス(別体)が残り、メモリーをクルマの中に置いたままでもPC上で事前に曲の登録やプレイリストを作成しておくことができる。クルマからメモリーを持ってきて「同期」ボタンを押すと一気にコピーが行われる。大量の楽曲をコピーしてもスピードはとても速く、非常にスムースな流れで作業ができる。

 さらに特筆すべき機能として、Roviの楽曲認識技術が組み込まれていることがある(MDV-737DTのみ)。通常PCに取り込んだファイルに曲名やアーティスト名といった楽曲情報を付加するためには音楽CDのインデックス情報(TOC)をインターネット経由で照合するためにオリジナルのディスクが必要だった。自分でベスト版などを編集をして曲順が変わってしまったり、曲単位で孤立しているファイルの楽曲情報は自動的には収集できなかった。

 ところがRoviの楽曲認識技術は個々の音楽ファイルの「フィンガープリント」(指紋)を照合して楽曲情報を割り出す仕組みを持っている。実際にやってみるとこれはまさに驚くべき機能で、何曲かテストを試みた範囲ではPCでリッピングした曲のみならず、ストリーミングを記録したファイルやなんとアナログレコードをキャプチャしたファイルまでもちゃんと認識ができる。もちろんデータベースに登録されていない特殊な楽曲の場合は無理だが、少なくとも広く市販されていた音楽であれば大抵は認識できそうである。

 条件を指定して自動的にプレイリストを作成するダイナミックプレイリスト機能(iTunesのスマートプレイリストと同等の機能)も備わっていて、「最近購入したアルバム」など条件を組み合わせて自動でプレイリストを作成することもできる。最近の楽曲管理ソフトには必須の機能である「曲調解析」も備え、楽曲管理ソフトに求められる機能は過不足なく搭載されている。

Kenwood Mudic Editor-VXIIはシンプルな画面で使い勝手がひじょうによい。数十GBを超える巨大なライブラリーも軽快に扱うことができる優れたソフトだRoviの楽曲認識技術だと、アナログ音源からのファイルであっても「フィンガープリント」を手がかりに正しい候補を表示できるのは驚き!

 このように Kenwood Music Editor VXIIはたいへん優れたソフトで、このソフトの存在だけで彩速ナビを選ぶ価値があるといっても過言ではない。さらに彩速ナビは、カーナビとしては唯一FLACファイルの再生が可能。FLACについては関連記事をご参照いただければ幸いだが、ハイエンドホームオーディオの世界でも注目されているロスレス圧縮のファイル形式だ。

 さらにUSB端子からは1A出力の強力なバスパワーが供給されるので、大容量のポータブルHDDを直接接続することも可能だ。彩速ナビは、FLACによる高音質で膨大なミュージック・ライブラリをそっくりそのまま家庭とクルマで共有するという新しいオーディオライフの道を切り開いたと言えるのだ。

iPod/iPhoneとカーナビの関係
 iPod/iPhoneとカーナビの接続で、音質的にも操作性の面でもベストなのがUSB接続だ。最新型のAVナビは、ほとんどUSB端子が装備されていてiPod/iPhone対応となっている。USBケーブル1本で直接iPodが接続できれば、音声はデジタルで伝送されもっともよい結果が得られる。彩速ナビの持つUSB端子の1つはiPhone 4Sの充電に必要な1Aの電流容量をもっているので、iPhoneを充電しながら、iPhoneの音楽を楽しむことができる。

 また、iPod/iPhoneには優れたビデオ再生機能がある。AVナビには大型の液晶が搭載されているので、オーディオの次にはビデオの再生にも期待したくなるところ。YoutubeやiTunesストアのミュージックビデオをカーナビの画面で再生したいというニーズは多いことだろう。しかしPCと接続する時はUSBケーブル1本ですべてのデータがやりとりできたが、カーナビなどのAV機器に映像を映し出す場合は特別なケーブルが必要となる。これはiPod/iPhoneの制約だ。

 iPod/iPhoneから映像信号を取り出すには「AVコンポジットケーブル」を使用する必要がある。これはドックコネクタに接続をしてUSBケーブルとアナログ映像出力を取り出すケーブルで、アップル純正品もあるがiPod/iPhoneビデオ再生が可能なカーナビには各メーカーから専用ケーブルが発売されている。

専用のインターフェースケーブルKCA-iP212(希望小売価格2625円)はアナログの映像出力端子を備える

 彩速ナビでは、別売のiPodインターフェースケーブル「KCA-iP212」を接続することで2006年以降のすべての動画対応のiPod/iPhoneの再生が可能で、最新のiPhone 4Sまでいち早く対応を行っている。出力される映像はiPod/iPhoneの制約により「youtube」「ビデオ」など特定のアプリケーションからの出力に限定されるが、内蔵カメラやiTunesで転送した映像ファイルも実に美しく再生される。まさに現代の「マルチメディア」の楽しさを実感することができる。

iPhoneアプリの「StreamS HiFi Radio」では局名や楽曲情報、アルバムアートワークまで彩速ナビに表示される

 iPhoneやiPodを接続することで、音楽や映像を自在に、高品位で楽しむことが可能であることは分かったが、アイデア次第で新しい楽しみ方も考えられる。たとえばAppストアでiPhone用に提供されている「ネットラジオ」のアプリを使えば、インターネットラジオをそのままカーナビで楽しむことができる。放送局から離れるとすぐに受信できなくなるFM放送と違い、iPhoneが圏外にならない限り国内外のさまざまなラジオを聞くことができる。たとえば国内の民放ラジオ用のアプリで「radiko.jp」(無料)では曲送りボタンによる快適な選局が可能だ。また、「StreamS HiFi Radio」(350円)では、放送局にもよるが選局中の局名、オンエア中の楽曲情報のみならずアルバムアートワークまでが表示される。

 さらにソニーミュージックの定額音楽配信サービス「Music Unlimited」のiOS用アプリ(無料)も試してみたところ、彩速ナビの画面に楽曲情報、アルバムアートワークが表示されるだけでなく、曲送りボタンで曲を送ることまでできた。最新ヒットを含む1000万曲が自在に操れる感覚で、まさに音楽好きの夢の実現と言えるだろう。

iPod/iPhoneをよい音で聞くには
 ところでカーナビで聞くiPod/iPhoneが思ったほどよい音がしない、と悩んでいる人は案外多いように思う。同じ曲を音楽CDとiPodで聞き比べると違いを感じた、という人もいるかもしれない。

上から2つめの「音量の自動調整」と「イコライザ」がオフになっていることを確認

 実際に音質差が生じている場合さまざまな要因が考えられるが、USBによるデジタル接続であるにもかかわらず「CDの音と全然違う」「どう聞いても絶対にiPodの音がわるい」と感じる時は、まずiPod/iPhoneで「イコライザ」と「音量の自動設定」がオンになっていないかをチェックしよう。オーディオ的なセンスからいうとデジタルの場合はソースの音を無色透明のまま出力するイメージだが、iPod/iPhoneの場合は音質調整をした結果がデジタル出力に反映される仕様になっている。現行モデルのiPhone / iPad / iPod touch、及びiPod nano(6G)の場合は「設定」メニューの「ミュージック」の項目にある「音量の自動調整」と「イコライザ」がオフになっているかを確認する。

 「音量の自動調整」は小型のイヤフォンの場合は効果的だが、カーオーディオで聞く場合はダイナミックレンジを大きく損なう。「イコライザ」も調整が必要な場合はカーナビ側でするのが基本なのでオフが大原則。

 カーナビのAUX端子にアナログで入力をしている場合は、機種によってはCDと音の印象が異なる場合もある。これはモデルごとの固有の性質なので解決できない場合が多い。前述のようにiPod/iPhoneの音質設定をオフにするのと同時にナビによってはソースごとに個別のイコライジングを記憶するモデルもあるので、ナビ側の音質調整をすべてリセットしてみることも必要だ。

 iTunesの取り込み設定で音質が変わるのでは、と考える人もいるかもしれないがファイルフォーマットや圧縮率の変化で音の情報量、鮮度といったニュアンスは変化するが、音の印象が大きく変わるほどの差異は普通はないはずだ。接続や設定にどこか見落としがないかをよくみることが先決だ。

Android・スマートフォンの音楽を快適に楽しむには
 iPhoneに対するカーナビの対応はとても進んでいるのに対して、Android端末に対してはまだ充分な対応が進んでいない。Android端末のマルチメディアプレーヤーとしての能力は決してiPhoneに劣ることはないが、モデルによる仕様の違いも大きく、カーナビなど外部機器との接続に関してはまだ手法が固まっていないのが現状だ。

 Android端末への音楽の転送はPCに接続して「Mucis」フォルダに音楽をコピーすることで行われるが、Android端末をUSBケーブルでカーナビに接続するとUSBメモリーが接続されたように見えるのでUSBソースとして再生することはできる。しかし端末がMSC(マスストレージクラス)に対応していることが条件で、モデルによっては接続に際して、その都度マスストレージをオンにする操作が必要な場合があるなど、機種によって対応方法が異なる。USBデバイスとしてうまく認識できない場合はヘッドフォン出力からアナログで接続するか、Bluetoothで接続することになる。いずれにしてもiPhoneのようにデジタル接続でカーナビから楽曲を自在にコントロールする選択肢は今のところほとんどない。

Kenwood Music ControlはAndroid用のミュージックプレーヤーとしても完成度が高くオススメ

 このような状況の中で、彩速ナビのAndroid対応は非常に先進的だ。まずGoogle Playで提供されている「Kenwood Music Control」(無料)をAndroid端末にインストールする。このプレーヤーは非常に優れたミュージックプレーヤーでデザインも素晴らしく動作も軽快だ。ミュージックプレーヤーとしての完成度が高いので、彩速ナビユーザーでなくても標準プレーヤーの代わりに使うことをおすすめできる。ジャンル、アーティスで楽曲を自在に選べるのはもちろん、手元でカンタンにプレイリストを作成したり曲調分析もできる。曲数が多くても動作はスムースだ。

 しかしなんといってもKenwood Music Controlが最大限の威力を発揮するのは彩速ナビと接続したときだ。Kenwood Music Controlは「Music」フォルダ内にある音楽ファイルのタグ情報を読み取って、彩速ナビで読み取ることのできる独自のデーターベースを作る。彩速ナビと接続すると、このデータを読み取り、iPod/iPhoneの時と同じように快適に選曲が可能となる。もちろんプレイリストもきちんと再生される。

 Androidユーザーにとっては、カーナビも含めて音楽を快適に実用的に楽しみたいなら、現状ではKenwood music controlと彩速ナビの組み合わせがベストだと筆者は思う。

Kenwood Music Controlは彩速ナビ用の楽曲データを生成するためiPod/iPhoneと同じような選曲ができるKenwood Music ControlがないとAndroid端末内の音楽の選曲はファイル名頼りになってしまう

手軽に音楽を楽しめるBluetooth
 ケーブルを使わずに、カンタンにiPhoneやAndroid端末の音楽を楽しめるのがBluetoothだ。クルマの中では携帯電話のハンズフリー通話用として利用されてきたが、携帯とカーナビの双方がAVRCPプロファイルに対応していれば、カーナビ側でコントロールが可能な快適な音楽再生が実現する。

 最新カーナビに加え、最新のiOS機器、Android端末、ウォークマンの上位モデルはAVRCPに対応しているので、手軽に音楽を楽しむ方法の1つとして活用してみる価値はある。自動接続機能をオンにしておくと、iPhoneなどの端末をカバンやポケットに入れたまま一切触れずに音楽再生が始まり、実に先進的な気分を味わうことができる。

彩速ナビは「BT AUDIO」として専用ソース対応曲名、アーティスト名、アルバム名をきちんと表示、曲送りも可能だが曲のリスト表示はされないのでランダムプレイなどでカジュアルに楽しむのがおすすめだ

多才なマルチメディアマシン、彩速ナビ
 筆者はさまざまなメーカーのカーナビに触れる機会が多いが、彩速ナビは実に優れたメディア対応力を持っていることが分かる。iPhoneユーザーだけでなくAndroidユーザーにも使いやすい利便性に加え、ネットワークオーディオや音楽配信サービスなどの最新メディアまでをも存分に味わえる懐の深さを持っていると言えるだろう。

 前編だけでもかなりの原稿量になったが、後編ではさらに彩速ナビを使いこなし、快適なリスニング空間を実現するテクニックを紹介したい。



三宅 健
オーディオ専門メーカーに27年間勤務。カーナビや車載CDデッキの登場当初から、カーエレクトロニクス一筋に関わり続け、ハイエンドオーディオ販売の責任者として、販売店への技術講習や数々のイベントを主催。2009年に退職後は、フリーのオーディオアドバイザーとしてメーカーへのコンサルタント業務や販売店スタッフへの技術教育、執筆活動などを行っている。クルマと音楽とオーディオを愛する、カーエレクトロニクス業界の生き字引的な人物。