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【インタビュー】ドラレコでの過酷な使用環境に向いたサンディスクの「高耐久microSDカード」について聞いてみた
- 提供:
- サンディスク株式会社
2018年9月27日 00:00
2017年にあおり運転を契機とする死亡事故が発生して以来、ドライブレコーダー(ドラレコ)の販売数が飛躍的に増加している。ユーザーの安全意識が高まるのはよいことだが、利用数の増加に伴って、「録画のデータが壊れていて映像を再生できない」「ドラレコでSDカードが認識されない」などのトラブルがドラレコなどのメーカーに寄せられるようになっているという。
そこで、SDメモリーカードやUSBメモリー、SSDなどを販売しているサンディスクを訪ね、多くのドラレコで採用されているmicroSDカードを車載機器であるドラレコで使用するにあたってのポイントなどをうかがってきた。
少し余談にはなるが、サンディスクといえばデジカメとは切っても切れない間柄。カメラマンという商業柄、コンパクトフラッシュが4MB(GBの誤植じゃないよ)で大容量をうたっていた時代からお世話になっているメーカーだ。これまでにSDメモリーカードやCFast 2.0カードなど多くのカードを使ってきたけれど、撮影中にトラブルを起こしたことは1度もない。そんなこともあって、PCのSSDでもサンディスク製を使っているほどだ。
と、サンディスクのメディアは個人的な使用状況では抜群の耐久性を誇っているけれども、さらに耐久性にフォーカスしたドラレコ向けの「高耐久microSDカード」をリリースしていると聞けば、その違いが気になるというモノ。若干、ドラレコから話がそれてしまう部分もあるが、ぜひ最後までお読みいただきたい。
――サンディスクはデジタルカメラやPCの世界ではとても有名なのですが、改めてクルマのユーザー向けに簡単に教えてください。
清水氏:サンディスクはもともとフラッシュメモリー製品の専業メーカーでしたが、現在はウエスタンデジタル傘下の1ブランドになっています。会社としてはウエスタンデジタルとしてフラッシュメモリー製品からHDDベースの製品まで幅広いストレージソリューションを一般ユーザーから企業、データセンター、クラウドサービスへ長年に渡って提供しています。自動車との関わりでは、振動に強く高温の車内でも耐えられる車載用HDDを16年以上提供しており、メーカー純正カーナビゲーションからカー用品店などで販売される市販品で採用されてきました。HDDベースのカーナビの誕生によってより詳細な地図情報に加えて、車内で大量の音楽が楽しめるようになるなど、インフォテイメントの機能が豊富になり、カーライフの変革に寄与してきました。
現在では自動運転や、よりインテリジェントな機能がクルマに組み込まれる流れで、車載用ストレージもHDDからメモリーベースに移行していく段階ですが、ウエスタンデジタルは車載用フラッシュデバイスのビジネスを2012年からはじめて、すでに6年以上続けています。車載用に提供している「Automotive SDカード」やeMMC(基板上に実装するストレージ)といったフラッシュデバイスは、小型薄型な特性に加えて、衝撃に強く、寒冷地やエンジンルーム内の高温下といったタイトな環境化で稼働する、さまざまな車載デバイスに組み込まれていきます。
一方、同じように過酷な環境で使われる製品としては、高炉のある製鉄工場のような高温環境から寒冷地、埃や湿気などのある環境にも強い産業用の「Industrial SDカード/microSDカード」も提供させていただいており、監視カメラを含めた多くの組み込み機器へのOEM採用の実績もあります。最新の製品は第3世代に至っています。
また、2018年から私たちはSUPER GTに協賛させていただいており、レーシングカーに搭載されている全ての車載カメラに私たちの製品が使われています。一般のクルマと比べてレーシングマシンは振動も大きく、遮熱板なども取り払われているので温度が高くなるなど過酷な環境ですが、この1年間、ずっと動作し続け、視聴者に迫力ある車載映像をお届けできています。こうしたことも実績となるでしょうか。
こうした場で得たノウハウを、一般のユーザーの方にご提供するため「高耐久microSDカード」という製品を開発して、ドライブレコーダー向け、または防犯カメラ向けに販売しております。
――今、製品が第3世代になっているというお話がありましたが、世代による違いはどんなところがあるでしょうか。
清水氏:まずはメモリーのプロセスの部分です。大きな流れとして、現在NANDメモリーは2Dから3Dに移行していますが、2D NANDメモリーでは集積率を高めるために線幅をどんどん縮めて、同じ面積でより多くの情報が収められるよう微細化が進み、その後、積層することでさらに多くの情報を集められる新しい世代のフラッシュメモリーが製品化されてきました。さらにチューニングなども施され、製品の信頼性が引き上げられています。
今回紹介する製品に関しては、一般的にSDメモリーカードでは「TLC」(Triple Level Cell)と呼ばれる記録方式を採用することが多い傾向にありますが、こういった高耐久製品では「MLC」(Multi Level Cell)を使っています。
――一般的にデジタルカメラやスマートフォンなどで使われる製品と、ドラレコ向けの高耐久品ではどのような違いがあるのでしょうか。
清水氏:デジタルカメラではデータの書き込みは撮影したときに終了します。ビデオカメラでもメモリーに書き込みが行なわれるのは録画している間だけで、データの書き込みは撮影したとき、録画したときだけです。スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーでは、書き込んだデータを読み出して写真を見たり音楽を聴いたりするシーンがメインになります。
フラッシュメモリーの原理として、データの書き込みや消去を行うことがメモリーセルの消耗を進め、結果として寿命が短くなってしまいます。ドライブレコーダーや防犯カメラといった用途では、録画するデータを長時間連続して書き込み続けることが多く、ここが決定的にフラッシュメモリーに対する負荷が異なるところになります。
デジタルカメラなどで使われる場合はデータを書き込むスピード、スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーでは容量がスペックの主眼になりますが、ドライブレコーダーなどでは高いビットレート(動画のデータ量)よりもむしろ、安定して長時間書き込みができる高い耐久性を求められています。
弊社で想定している通常のSDカードの用途では、ビデオカメラでも1時間、2時間といった撮影時間ですが、タクシーの運転手さんやトラックドライバーさんなどが使うドラレコでは毎日6時間以上というケースも珍しくありませんし、防犯カメラになれば常に録画し続ける状態になります。
――具体的に、どのような部分が異なるのでしょうか。技術的にほかと違う部分や工夫しているところなどはありますか?
清水氏:社外秘の部分ですので、詳しくご説明はできませんが、できる限り寿命を延ばせるようなアクセスをNANDメモリーに対して行なっています。また、社内でのテストで、フルHDの動画を5000時間連続で録画するといった繰り返しテストを行なって、信頼性に問題がないことを確認しております。耐熱性に関しては「SD アソシエーション」が定める規格で決まっておりまして、-25℃~85℃という動作温度に準拠しております。とくにドライブレコーダー用として規定があるわけではなく、クルマの車内での使用となれば、この-25℃~85℃という基準で耐えうる耐久性になっていると考えています。その点では、高耐久品だけでなく、ほかのSDメモリーカード製品も同じ基準です。
――使われている素材なども同じものですか?
清水氏:同じもので違いはとくにありません。
――製品の色が白になっていることは何か理由がありますか?
清水氏:カメラやスマホなどで使われるほかの製品と差別化することに加えて、ウエスタンデジタルではこの白いカラーリングを産業用の製品に使用していたので、そのイメージを引き継ぐといった面もあります。(日差しを吸収して発熱しないといった理由は)とくにないです。少し余談ですが、サンディスクで白い高耐久のSDメモリーカード製品を出した後に、他社さんも同じように白い製品を追従して出してきたこともあります。
――製品の本体やパッケージなどに、「Class10」以外のスピードクラス表示がないようですが、この理由はどんなものですか?
清水氏:一般的なSDメモリーカードは書き込みスピードが要求されますので、高速なスピードクラスに対応している製品を多数販売しておりますが、高耐久品は書き込み可能な時間が長い、長寿命な点にフォーカスしています。ただし、今後のドライブレコーダーにも高速なスピードクラスが必要となれば、高耐久を維持しつつ速いスピードクラスに対応した製品の開発も考えていきたいと思います。
――いじわるな質問になってしまいますが、逆に一般的なSDメモリーカードは耐久性がないのですか?
清水氏:耐久性がないということはありません。カメラやスマホで一般的に使う範囲では十分に耐久性があります。その証拠として、それぞれの製品には「10年保証」や「無期限保証」を用意しています。それだけ使っていただける自信のある耐久性を持っています。ただ、ドライブレコーダーのように常時書き込むといった特殊な用途は、NANDメモリーに対する書き込みと消去回数が増え、早く上限に達してしまいます。よって、長寿命に設計された高耐久品が必要になります。
また、監視カメラやドラレコの場合、犯罪が起きた瞬間、事故が起きた瞬間にコマ落ちが発生して映像が消えてしまってはいけません。しっかりと証拠を残すことが求められるのです。これはドライブレコーダーでも同じで、どちらも長時間にわたって電源が入り、録画が続きます。多くの場合はリングバッファで上書き保存されていくと思いますが、これはメモリー素子にとって一番過酷な、いじめられているような状態です。その状況でも、一定期間、例えば保証期間である2年間はコマ落ちなどを起こすことなく書き込み続けられなければいけません。弊社では監視カメラなどの長時間録画での経験を継承して一般向けの高耐久品を作っていて、ドラレコ向けの製品でもそのクオリティを実現しています。
――製品は「2年間限定保証」ということですが、これは2年使ったら新しい製品に買い換えた方がいいということですか?
清水氏:2年に1回というより、弊社でいえば、32GBの製品では「フルHD動画5000時間」、64GBの製品では「フルHD動画1万時間」という耐久性を明記しております。これを、それぞれのお客さま使い方で、「1日に3時間クルマに乗っているから~」といった感じで使用時間を計算していただけるかと思いますので、使い始めてからの目安にしていただけると思います。サンディスク製品だけでなく、他社の高耐久品にも「何サイクル」「何時間」といった目安が書かれているかと思います。24時間録画し続ける防犯カメラなのか、1日数時間ドライブするクルマのドライブレコーダーなのか、などの使用状況とメーカー推奨時間を考慮して、交換していただくのがベストかと思います。
――その使用を続けている5000時間や1万時間といった間に、定期的にフォーマットを行なったほうがいいのでしょうか?
清水氏:高耐久品に限らず、SDメモリーカードは定期的にフォーマットを行なうとより安定して使えると言われています。フォーマットするときはSD アソシエーションが配布している「SDメモリカードフォーマッター」を使ってフルフォーマットを行ない、さらにホスト機でフォーマットをすると安定してお使いいただけると思います。もちろん、ドライブレコーダーなどそれぞれで独自のフォーマットもあるかと思いますので、必ず実際に使用するホスト機でフォーマットしていただくことをお薦めします。
――カードの容量で32GBと64GBの2種類を用意していることにはどのような意味があるのでしょうか。
清水氏:ドライブレコーダーでは、最近は4Kなどの製品も出始めていますが、まだフルHDが主流です。フルHDでも事故の瞬間などを十分に確認できる画質ですし、例えばドライブ中に録画した景色を楽しむといった用途にもお使いいただけると思います。なので、それほど大きな容量は必要ないかもしれませんが、一方であまり小さすぎると上書きのサイクルが早くなって製品の寿命が短くなってしまいます。そこで一番ちょうどいい容量として32GBと64GBのラインアップで進めております。
――同じように使った場合、64GBの方が長持ちするといった理解でいいですか?
清水氏:はい。そういった発想で右上の耐久時間も2倍になっています。ただ、ドラレコユーザーの中には、クルマに装着して動かしていても、実際には1回も録画内容を再生したことがないという方もいらっしゃいます。そこで、何かあったときに初めて再生しようとして、実はデータが残っていないことに気がついて驚くといったこともあるそうです。トラブルになるのはそんなシチュエーションが一番多いと思いますので、ドライブレコーダーの本体に録画エラーを知らせる機能があればよいのですが、ユーザーの皆さんも定期的に録画できているかを確認することも大切だと思います。
――製品の耐久性以外の面で、何かバックアップ的な対策は用意していますか?
清水氏:弊社のSDカードやコンパクトフラッシュの各製品には、データ復旧ソフトウェアの「レスキュープロ デラックス」を1年間無料でお使いいただける特典が付属しているものがあります。このソフトでは、誤ってカードをフォーマットしてしまったり、カード内データの削除作業をして消してしまった画像や動画などのファイルを100%ではありませんが、復元することが可能です。
――メモリーカード側からの視点で、ドライブレコーダーが備えていてほしい機能などはありますか?
清水氏:クルマでは電源が瞬断する可能性があり、電圧が瞬間的に大きくドロップすることもあります。そんな時にメモリーのシステムエリアの書き込みが行なわれていると不具合が起きる可能性があるので、そのようなトラブルを防げる機能がドライブレコーダーに備わっていれば、メモリーカード側からすれば守られていると感じます。また、最近では、メモリーカードのエラーなどをお知らせする機能付きのドライブレコーダーもあり、トラブルを防ぐ工夫がなされていていいですね。
――最近ではドライブレコーダーでも4KやHDR機能などが装備されるようになってきて、転送速度も求められるようになりつつあるかと思いますが、今後についてはいかがでしょうか。
清水氏:そういったホスト機(ドライブレコーダー)が増えてくれば、弊社でもそれに追従して新しい製品を展開していくこともあるかと思います。この製品は2016年に発売したもので、まだドライブレコーダー自体が注目されていない時期でした。これからの流れに応じて製品もどんどん改良していきます。
また、先にもお伝えしましたように、フラッシュメモリーを製作するプロセス自体が常に進化を遂げています。2D NANDメモリーでは容量を上げるために線幅をどんどん縮めて集積度を向上させてきましたが、信頼性と耐久性を保つのが難しくなってきました。それが3Dでは積層で稼げるようになるので、パフォーマンスと耐久性が上がるものと期待できます。
――高耐久microSDHCカードは2Dになりますか?
清水氏:こちらは2Dです。一般的な転送速度の速い製品については3Dになっています。これは順次移行を進めていて、ほかのラインアップ製品の今後は64層以上の3D NANDメモリーにシフトしていく計画です。
――中身のフラッシュメモリーの製造は日本国内ですか?
清水氏:(三重県の)四日市工場です。四日市で半導体ウェハーを製造して、そこから世界の製造拠点に運びます。例えば、この高耐久カードは中国で製品のアッセンブリーを行なっているので、製品としては「Made in China」となっています。ウエスタンデジタルのフラッシュメモリー製品が用いる内部のメモリーは、一部の法人向けSSDを除いて四日市での製造になります。
――逆に、高耐久品をデジタルカメラなどで使うメリットはありますか?
清水氏:高耐久品では読み込み、書き込みの両方で20MB/sで抑えていますので、デジタルカメラの連写で求められるスピードは発揮できません。また、ドローンなどで4Kのムービーなど高ビットレートの動画を録画する場合には、コマ落ちが起きたり撮影が止まってしまうこともあるかと思いますので、速いスピードの製品を使っていただきたいと思いますし、スマホなどでは容量がたくさん欲しくなるかと思います。高耐久品を使うことはもちろんできますが、そのメリットは特にないと思いますね。
――最後にアピールしておきたい点などがありましたら。
清水氏:一般的に、まだ高耐久のフラッシュメモリーカードはなじみが薄いので、ドライブレコーダーに付属しているmicroSDカードを使い続けているというケースが多いかと思います。そもそも「カードが消耗品である」「カードに寿命がある」ということを私たちとしても啓蒙していく必要があります。それを理解していただいて、機能性を備えた製品には違いがあることを知っていただき、いざという時のためにきちんとした製品を使っていただきたいということをアピールしたいと思っています。
ドライブレコーダーは購入時に付属のmicroSDカードがあって、それを差し込んでも普通に問題なく使い始めることが可能なのですが、それが使い続けるうちに消耗していくことを理解していただいて、できれば最初から大事なデータを保存するために信頼性の高い高耐久の製品を選んで、万が一の時の証拠保全が万全になるようにしていただきたいですね。