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GT300の34号車に加えてGT500の64号車も“Moduloチーム”で参戦! 2019年 SUPER GT Moduloチーム体制発表会

2019年1月11日 開催

2019年のSUPER GTに参戦するModuloチーム。GT300クラスの34号車は継続参戦。そしてGT500クラスの64号車が加わった

 毎年、クルマ業界の事始めとなっている東京オートサロン。2019年も1月11日~13日に開催され、約33万人の来場者が訪れた。そんな華やかな場所で開催されたのが本田技研工業、そしてホンダアクセスによる2019年のモータースポーツ活動発表会だった。この記事ではホンダ、ホンダアクセス両方の発表会の内容をお伝えしよう。

ホンダブースで行なわれたホンダモータースポーツ発表会で2019年のSUPER GT GT500クラスの布陣が発表された

 まずはホンダブースで行なわれたSUPER GTの体制発表会から。冒頭の挨拶に立ったのはホンダのモータースポーツ活動を統括する森山克英執行役員だ。

 森山氏は「昨年は2輪、4輪ともに数多くのコンペティションで連覇、最多勝更新など結果を残すことができたのはファンの皆さまのサポート、ご声援のたまものです。ホンダ創業以来、私たちの技術を世界で試し、磨き、証明するためモータースポーツ活動を通じて数多くのチャレンジをしてまいりました。モータースポーツは非常に多くの人で構成されるスポーツです。研ぎ澄まされたレーシングマシンを武器に戦うライダー、ドライバーはもちろんのこと、数万点の部品から構成されるレーシングマシンのことを誰よりも把握し、常にコンマ1秒でも速く走れることを目指す開発エンジニア、限られたスケジュールの中、寸分の狂いも許さない精度でクルマを組み上げるメカニックのほか、レーシングチームのスタッフからホンダの従業員まで、チームホンダの1人ひとりが勝ちを夢見て、勝ちにこだわり、全力で取り組む。これこそがホンダの成長の原動力です」と挨拶した。

まずは本田技研工業株式会社 森山克英執行役員が挨拶に立った
モータースポーツ部長の山本雅史氏から、2019年のレースを戦うライダー、ドライバーの紹介があった

 続いて登壇したのはモータースポーツ部長の山本雅史氏。山本氏はMotoGP、F1と世界的なビッグレースにおける体制を紹介。そして「チームホンダのミッションは、シーズンを通して1つでも多くの勝利を収め、多くのチャンピオンシップを獲得すること。そのためのチャレンジを通じてファンの皆さまと感動と興奮を共有することです」と語った後、2019年の日本国内でホンダの2輪、4輪のレースを戦うライダー、ドライバーを順番にステージへ呼んだ。

 さて、気になるSUPER GTの体制であるが、ここは大きな変化があった。2018年まで「Epson Nakajima Racing」として64号車のNSX-GTを走らせていたNAKAJIMA RACINGが、今年から「Modulo Nakajima Racing」として参戦すると発表されたのだ。そしてドライバーも一新され、スーパーフォーミュラからナレイン・カーティケヤン選手と、FIA F2から牧野任祐(ただすけ)選手が起用されることになった。

 ステージ上での紹介ではMCがチーム名、ドライバー名の順で読み上げた後にドライバーが登場するという流れだったが、GT500クラスの紹介の一番最後に「カーナンバー64、Modulo Nakajima Racing 」と読み上げられた瞬間、ステージ前では驚きの声が上がった。そしてドライバーが呼ばれたときはひと際大きな拍手が湧いた。

順番にチームとドライバーが発表され、一番最後に「Modulo Nakajima Racing」の名前が呼ばれた。この瞬間、ステージ前に集まった人々から歓声が上がった
すべてのライダーとドライバーが紹介された後はガッツポーズで締め。改めて思うが、2輪から4輪までホンダはモータースポーツ活動に熱心に取り組むメーカーだ

 そんな大きな変化があった2019年のSUPER GTだが、「Modulo Nakajima Racing」以外の布陣は以下のとおりである。5台体制をキープして臨む2019年シーズン、NSX勢の活躍に期待したい。

ホンダの2019年SUPER GT参戦体制
ナンバーチーム名ドライバー
1TEAM KUNIMITSU山本尚貴/ジェンソン・バトン
8AUTO BACKS RACING TEAM AGURI野尻智紀/伊沢拓也
16TEAM MUGEN武藤英紀/中嶋大祐
17KEIHIN REAL RACING塚越広大/ベルトラン・バゲット
64Modulo Nakajima Racingナレイン・カーティケヤン/牧野任佑
ステージ上には2018年のSUPER GTシリーズチャンピオンマシン「RAYBRIG NSX-GT 100号車」が置かれていた
Red Bull Toro Rosso Honda「STR13」
Modulo CIVIC TCR
ホンダモータースポーツ発表会2019

64号車のチームワークは“カレーの辛さ”がポイント!?

別室では2019年SUPER GT Moduloチーム体制に関するメディア取材会も開催。64号車、34号車のチーム関係者が出席した。写真は、GT500クラス 64号車「Modulo Nakajima Racing」の取材の様子

 ホンダブースでの発表会の後、GT300クラスだけでなく、GT500クラスへもタイトルスポンサーとしてサポートすることになったホンダアクセスによる「2019年SUPER GT Moduloチーム体制に関するメディア取材会」が別室で開催された。

 この取材会にはGT500クラス 64号車「Modulo Nakajima Racing」から中嶋悟総監督、ナレイン・カーティケヤン選手、牧野任佑選手。そしてGT300クラス 34号車「Modulo Drago CORSE」から道上龍選手、大津弘樹選手が出席した。

Moduloチームの2019年参戦体制
クラスナンバー&車両チーム名ドライバー
GT50064/NSX-GTModulo Nakajima Racingナレイン・カーティケヤン/牧野任佑
GT30034/NSX GT3Modulo Drago CORSE道上龍/大津弘樹
64号車「Modulo Nakajima Racing」のナレイン・カーティケヤン選手。41歳、出身はインド。2018年まではスーパーフォーミュラに参戦

 まずは64号車の会見から開始。改めてチームメンバーが紹介されたあと一人ずつ、今シーズンに対するコメントが語られた。最初に発言したのはナレイン選手(インド)で「今年はNAKAJIMA RACINGからSUPER GTに参戦します。私自身、SUPER GTにはとても興味を持っていましたが、そのチャンスがまわってきたことを大変うれしく思っています。マシンはセパンのテストで乗っています。タイヤはダンロップです。テストではとても調子がよかったのでシーズンは期待できると思っています。NAKAJIMA RACINGからもらったチャンスをしっかり生かして結果を残していきたいと思います」と語った。

64号車「Modulo Nakajima Racing」の牧野任佑選手。21歳、出身は大阪府。2018年はヨーロッパのFIA-F2に参戦

 次は牧野選手のコメントを紹介しよう。「僕は2年間、ヨーロッパでレースをしていたのですが、SUPER GTには2016年にGT300クラス、GT500クラスにスポットで参戦しています。そして今年からNAKAJIMA RACINGでフル参戦となります。マシンにはセパンのテストで乗りましたが、ポジティブな部分を多く感じられたので開幕戦がすごく楽しみです」と語った。

64号車「Modulo Nakajima Racing」の中嶋悟総監督

 続いては中嶋総監督。笑顔でドライバーの方を見たあと「ご覧のようにドライバーは去年とは変わりました。心機一転頑張っていきたいなという思いです。ドライバー2人が言っていたように、昨年12月にセパンでテストをしました。そこではウチの2人に加えて34号車の大津くんにも乗ってもらったのですが、みんな非常に調子がよくて各セッションで上位に入ってくれました。そんなことから今シーズンに向けていい感触が得られたと思っています。開幕までにセパンではもう1度テストを行ないますが、ナレイン、牧野くん共にクルマになじむのも早いので、彼らにはとても期待しています」と語った。

 会見の後半は質疑応答。まず、ナレイン選手にSUPER GTというレースをどのように考えているかという質問が出た。これに対してナレイン選手は「非常にエキサイティングなレースという印象を持っていました。そして実際に自分でマシンに乗ることになったのですが、マシンはとても乗りやすく、とくにハイスピードコーナーはとてもエキサイティングです。今まで乗ってきたスーパーフォーミュラマシンに似たところもありますけど、車重の重さは感じました。SUPER GTにはGT300クラスとの混走という難しさもあるのですが、そのあたりも自分としては楽しみの1つです。まあ、SUPER GTについてはそのすべてがとても楽しみなので、開幕を待ち遠しく思っています」とコメントした。

 そして、初めて組む2人がチームワークを高めるために何か交流しているか?という質問に対して、牧野選手は「とくにこれといったことはしていないのですが、セパンのテストではずっと一緒でした。僕は英語ができるので彼とのコミュニケーション的には何も問題はないです。あとは僕がどれだけナレインのカレーの辛さに対応していけるかです(笑)」と答えた。そして「ヨーロッパにいたときより走れる機会が増えるので、それはとても楽しみです」というひと言もあった。

 ナレイン選手は「牧野さんとはセパンで一緒でした。彼はヨーロッパで活躍していたドライバーなので言葉については問題ないです。クルマのセットアップやタイヤのことなど重要な部分を相談し合うときでも素早い解決ができるでしょう。彼は若いですがとても素晴らしいドライバーであるだけに、私たちは問題なくやっていけると信じています」と語ってくれた。

 さて、多くの人が気になっているチーム名については中嶋総監督がこうコメント。「チーム名もカラーリングも今シーズンは変わります。チーム名からEpsonがなくなりますが、エプソンさんと離れるということではありません。メインになってくれるのがホンダアクセスさんに変わったということです。マシンのカラーリングについてはまだデザインができていないのですが、従来の白青ではないと思います」ということだった。

2月のセパンテストで「NSX GT3」をシェイクダウン

Car Watchの読者にはおなじみの2人。GT300クラスに参戦する34号車「Modulo Drago CORSE」の道上龍選手(左)と大津弘樹選手(右)

 次に登場したのが2018年から引き続いてGT300クラスに参戦する34号車「Modulo Drago CORSE」の道上龍選手、大津弘樹選手だ。

34号車「Modulo Drago CORSE」の道上龍選手。奈良県出身、46歳

 会見ではまず道上選手がコメントした。「去年、NSX GT3でGT300クラスを戦いました。僕自身もGT300クラスを走るのが初めでしたが、GT300クラスのレベルの高さを感じました。NSX GT3は新しいクルマだったので、最初のころは上手くいかないこともありましたが、後半は上り調子になってくれたと感じています。そして今シーズンはNSX GT3がエボリューションモデルになります。僕自身もこの進化にはとても期待しています。去年以上に上位争いに加われることと思っています。だから今年は今まで以上に勝ちにこだわるレースをしていきます」と語った。

34号車「Modulo Drago CORSE」の大津弘樹選手。埼玉県出身、25歳

 大津選手は「昨年に続いてGT300クラスに参戦します。僕はこのチームで去年1年でいろいろな経験をさせてもらいましたので、それを生かして上位争いに加わっていきたいと思います。また、昨年にはModulo Nakajima Racingのセパンのテストに参加させてもらい、GT500マシンをドライブするチャンスをもらいました。そこではトップタイムも記録し、自分の速さをGT500クラスの舞台でも証明することができました。それだけに、今年のレースは内容の濃い戦いをしていけるよう頑張ります。チーム自体もかなり強化していくということなので、優勝、そしてチャンピオン目指してやっていきたいと思っています」と力強く語った。

 2019年はNSX GT3の参戦台数が4台になるという話だが、やはり34号車は最も注目度が高いチームである。それだけに質疑応答でもマシンについての質問が出た。

 多くの人が気になるのは、2019年のマシンが新車なのか、昨シーズンのマシンのアップデート版なのかということだが、道上選手によると2018年のマシンにアップデートパーツを組み込む方向だという。

 このパーツを組み込んだ状態でテストは行なうが、この時期の日本は気温が低いため、気温が高い時期のレースにあったテストができないということから、2月に行なわれるマレーシアのセパンテストに参加する予定。ここがエボリューションモデルのシェイクダウンになる。実際に2018年の34号車では、気温が高い時期に燃料のパーコレーションが起きたりしていたので、シーズンが始まる前にそういった点をあらかじめ洗い出せることはとても有意義である。

 チーム体制についても、監督の件の他にマシンのエンジニアを増員。タイヤは引き続き横浜ゴムを使うが、こちらもいっそう関係性を深くしてタイヤ開発の速度を高めていくとのこと。今シーズンはARTAのマシンもNSX GT3になるので、NSX GT3内で横浜ゴムvsブリヂストンの戦いも始まるのだ。

 そして大津選手についてだが、2018年の序盤はルーキーということで起用法もそれなりのものだった。しかし、終盤になると大きな見せ場を何度も作るほど成長していただけに、2019年は彼をどう使っていくのか? ここも多いに気になるところである。

 この点について道上選手は「中嶋総監督のところでGT500クラスに乗せていただいたことは彼にとって大きなことだと思います。速いクルマに乗ることもそうだし、タイヤの評価もしなければいけなかったでしょう。僕のチームでもタイヤテストなどやらせていきたい部分はあったのですが、1年目ということでタイヤの評価をさせるのは難しいだろうということでしたが、このあとに行なうマレーシアのテストではいっぱい走ってもらおうと考えてます。まあ、GT500クラスを乗ってきたのでいろいろ分かっているとは思いますが、1発のアタックやロングランなどたくさんやってほしいなと思っています」と言う。

 このコメントを受けて大津選手からは「去年のレースウィークの走り始めは道上さんが担当してくれてました。自分はその評価を聞いている立場でしたが、道上さんの評価が的確だったので、とくに後半はいい成績が出せたと思います。だからそういった部分も見習いつつ、自分でもやっていけるようにしていきたいです。GT500クラスのテストではさまざまな種類のタイヤをテストさせてもらいましたが、タイヤによってこれほど変わるのかということをしっかり体験させてもらえたことは貴重なことです。次のマレーシアのテストでは、GT300クラスではどうなのかということを再確認して、今年のシーズンに生かしていきたいと思います」というコメントが出た。

SUPER GT Moduloチーム体制発表会 2019

 このように、GT500クラスもGT300クラスも非常に魅力的で成績も期待できる布陣で挑む2019年のSUPER GT Moduloチーム。4月13日~14日の岡山国際サーキットからシーズンが始まり、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、タイ、富士スピードウェイ、オートポリス、スポーツランドSUGO、そして最終戦のツインリンクもてぎの全8戦で戦っていく。Car Watchの読者の方には全戦において、64号車、そして34号車の2台の走りに注目していただきたい。