トピック

ダイハツ車オーナー向けドラテクレッスン「D-SPORT GYM」を見てきた

初心者はもちろん、上級者でも“目からうろこ”のドラテク教室

2019年6月22日 第1回開催

2019年10月14日 第2回開催

 ダイハツ車向けパーツをリリースするチューニングブランド「D-SPORT」では、これまで「D-SPORT CUP」というダイハツ車ユーザーを中心とした走行会を開催していたが、2019年より新しい取り組みとして、「D-SPORT GYM(ディースポーツ ジム)」というドライビングレッスンを開始した。

 このD-SPORT GYMは、サーキット未経験者や女性ドライバーなども含めてより広くのダイハツ車ユーザーに「クルマを走らせること」の楽しさを伝えことを目的としたもの。会場はサーキットコースではなく、ジムカーナなどで使われる広い敷地を使うので、コースアウトしてクルマをぶつける心配もなく、さらに混走ではなく1台ずつ走らせるので、コース上でほかのクルマと接触する心配もない。それぞれの参加者がそれぞれのペースで走れるものとなっている。

 また、チューニングブランド主催のドライビングレッスンというとハードルが高そうにも思えるかもしれないが、D-SPORT GYMで学ぶのはスラローム走行やフルブレーキ体験、コーナリング練習など基礎的なものが中心なので難易度はかなり低く、D-SPORTでは「クルマの遊び場」と表現する。

 また、D-SPORT GYMを走ることで身につく技術や知識は日常の運転で役に立つものだけに、スポーツ走行の趣味はない人や免許取り立ての初心者でも参加する価値があるイベントと言えるだろう。

 なお、レッスン時は安全のためにヘルメットやグローブ、長袖&長ズボンなどの着用は必要になるが、走行スピードは比較的低めなので安全性は高いと言える。「スポーツ走行には不安がある」という人でも問題なく走れるだろう。

 それにパイロンコースを使うD-SPORT GYMは連続走行時間も短く、クルマへの負担は少ない。だから「クルマが傷むのでは……」という心配も無用だ。ただ、ふだんの走行よりは激しい走りをすることにはなるので、エンジンオイルの交換やタイヤの空気圧チェックなどの基本整備は走行前にやっておいたほうがいいだろう。

ダイハツ コペン エクスプレイをベースにしたD-SPORTのデモカー。エクステリア、インテリア、エンジン補器まわり、サスペンション、ブレーキなどに手が入ったスポーツ走行仕様
ダイハツ車ユーザーに向けて「クルマを走らせること」の楽しさを伝えることを目的としたドライビングレッスンがD-SPORT GYM
パイロンで作ったコースでトレーニング。1台ずつ走るので自分のペースで走ることができる
スラロームは低速でも挙動変化が大きくクルマの動かし方を学ぶのに最適。クルマへの負担は少なく、街中を走るのにも役に立つ
午前に運転のコツを覚え、午後はそれらを生かすジムカーナ練習を行なう。初心者はもちろん、上級者にもタメになる内容だ
プロドライバーなどが講師として参加。希望者には自身のクルマを講師が運転して走らせ方を指南する同乗走行も行なっている

 そんなD-SPORT GYMだが、2019年は2回の開催が予定されている。今回取材したのは滋賀県で行なわれた第1回で、第2回は10月14日に静岡県にある富士スピードウェイで開催される。こちらは現在まさに参加者募集中。ダイハツ車ユーザーなら誰でも参加できるので、ちょっとでも運転が上手くなりたいと思うなら参加してみてはいかがだろうか。D-SPORT GYMの詳細と参加申し込みについてはD-SPORTのWebサイトから確認してほしい。

次回のD-SPORT GYMは10月14日に富士スピードウェイにて開催。詳細の確認や参加の申し込みはD-SPORTのWEBサイトを参照

みるみるうちに上達していく!? 第1回 D-SPORT GYMの模様を紹介

 さて、初心者でも参加しやすい練習会として企画されたD-SPORT GYMだが、今年から始まった企画なので具体的にどういったものなのか? 6月22日に行なわれたD-SPORT GYMの第1回、奥伊吹モーターパークでの開催を取材してきたのでその模様を紹介しよう。

 会場は滋賀県にある奥伊吹モーターパーク。冬期は奥伊吹スキー場の第4駐車場として使われているが、スキーシーズンが終わるとジムカーナやドリフトなど、広場で開催できるジャンルの走行イベントが開催されていて、コース自体はJAFの公認を受けている。ちなみに広さは奥伊吹モーターパークの資料によると1万2000m 2 となっている。

 名神高速道路の関ヶ原IC(インターチェンジ)を降り、約30分の距離で現地に到着。取材班が到着した頃にはすでに多くの参加者が集まっていて、愛車から不要な荷物を降ろしたりとさっそく走行に向けての準備を行なっていた。

広々とした奥伊吹モーターパーク。コースアウトしても危険がないようコースレイアウトされ思い切り走ることができる
走行に向けて荷物を降ろす参加者。助手席は外してあったが2シーターのコペンにこんなに積めるのに驚き

 定刻になると、まずはイベント全体の注意事項などが説明されるドライバーズミーティングが行なわれる。D-SPORTの松尾光洋氏はあいさつとして、「D-SPORT GYMは基礎的な練習をしていただく場です。ここで上手くなればいつも走る道を今まで以上にスムーズに走れたり、サーキットを走っている人なら今までより上手に走れるようになるでしょう。とはいえ、こうした場では気合いが入りすぎてしまう人もいるかもしれませんが、肩の力を抜いて、自分のレベルをどう上げていくかということを意識しながら1日楽しんで下さい」と今回の取り組みの意図を説明した。

 続いて講師陣からも当日のメニューや注意点について説明があったが、今回の講師は2人。1人はスーパー耐久などにも参戦するレーシングドライバーの加藤彰彬選手で、全体の監修も兼任。もう1人は、元鈴鹿サーキット交通教育センター指導員の経験もある交通安全教育インストラクターの内匠雄彦(たくみ たけひこ)氏。講師の1人が交通安全教育のインストラクターというのも、D-SPORT GYMの特徴を表わしていると言えるだろう。さらに特別ゲストとして、コペンの開発者の1人で、ジムカーナにも参戦しているダイハツ工業の殿村裕一氏と、コペンで全日本ラリー参戦中の相原泰祐選手も参加していた。

D-SPORTの松尾光洋氏は、基礎練習をする場なので目を三角にしてがんばるのではなく、肩の力を抜いて1日を有意義に楽しんで欲しいと語った
講師兼全体の監修も行なうレーシングドライバーの加藤彰彬選手。加藤選手は町田市で「TCR JAPAN」というチューニング&メンテナンスガレージを経営する
講師2人目は元鈴鹿サーキット交通教育センター指導員で岡山県の安全安心教育講師団にも所属するインストラクター界の著名人 内匠雄彦(たくみ たけひこ)氏
ゲストとして参加していたのは、コペンの開発者でもあるダイハツ工業の殿村裕一氏。コペンでジムカーナ競技に参戦し、2018年はATクラスでシリーズ2位。2019年もすでに2度の優勝をしている
もう1人のゲストはコペンで全日本ラリーに参戦する相原泰祐選手。「普段は体験できないクルマの挙動も味わえると思うので、楽しんで走って下さい」と挨拶

基礎練習の繰り返しは確実に技術を向上させる

 ドライバーズミーティングが終わるとレッスン開始。午前中は「スラローム&急制動」と「コーナリング練習」の2つのメニューが用意され、グループに分かれて練習を行なった。どちらのコースも少数なので待ち時間が短く、前の走行の感覚が残っているうちにまた走れるという恵まれた環境。参加者からは「走れる回数が多く、教わったことを1つずつ試していけて覚えやすい」といった声も聞かれた。実際、走りを見ているとレッスン開始当初と比べてリズミカルな動きで走れているクルマが多かった印象だ。

グループに分かれてレッスン開始! 速さではなく操作に集中し、ステアリングも持ち替えなしで行くようにと言われていた
まずはゆっくり走って操作のコツを覚えるはずが、気合いが入りすぎて開始早々ハイペースになる人も
そこで内匠講師はハンドリングに集中するよう説明。“鬼教官”と紹介されていたが、怖いというより真剣に指導してくれる印象だ
指導の通り丁寧な走りを心がける参加者。走りを繰り返すたびにテンポよく走れるようになっているのが外から見ていても分かる
ATやCVTの参加者も多くいた。上手く操れるようになってくると「もっと走りたくなる」という参加者も
スラロームの後はフル加速&フルブレーキでABSの作動を体験。これも公道ではなかなかできない練習だ
コーナリング練習コースは、ある程度スピードが出た状態からブレーキングしつつコーナリングするとクルマはどんな挙動になるかを体験するのが目的。スピンしてもいいので「普段試せないクルマの動きを体験すること」と講師は言う

 昼食後は午前の2つの練習の特徴を取り入れたコースで、ジムカーナ形式の走行。タイム計測も行なわれた。

 午前より複雑なコースレイアウトに加えてタイム計測も行なうということで、スタート前には緊張した表情の参加者が多かったが、そこは午前にたっぷり走り込んだコースの要素が入ったレイアウト。いざスタートすると皆さんの走りはテンポがいい。スラロームもコーナリングもパイロンから離れることなく回っていて、スピンやミスコースもほぼないという内容で、午前の走り始めの頃からと比べて上達具合はちょっと驚くレベルだった。でも、それだけ午前の練習が役に立つものだったということだろう。

走行前にはコースを足で歩く「完熟歩行」を行なう。歩きながら運転中に見える様子を確認しておくことでしっかりとコースを覚える
午後のコース図。午前にやったスラロームと中速コーナリングのメニューを合わせたレイアウトになっていた
コース図を車内に貼ってスタート直前まで確認する
コースを走る参加者。駐車場にパイロンを置いただけのコースなので、コースアウトしてクルマを壊す心配もなく、思い切って走れる

息抜きのつもりが大盛り上がりの「Dアスレチック」

 さて、午後には自由参加のメニューとして「Dアスレチック」が開催された。これは車両感覚のよさを競うもので、パイロンで囲ったエリアに進入し、パイロンに触れずに方向転換して脱出するまでのタイムを計測するというもの。簡単そうに見えるがクルマに乗っているとパイロンの位置が見えにくいので「カン」で操作しないとタイムは出ない。車両感覚とステアリング操作の素早さが必要となる。

 考案したのはD-SPORTの松尾氏で「レッスンの息抜きになれば」的な意味合いだったが、これが予想以上の人気。何度もチャレンジする参加者もいてかなり盛り上がった。10月の富士スピードウェイP2での開催時も行なわれると思うので、D-SPORT GYMに参加する方はこちらの「Dアスレチック」にもチャレンジしてみてはいかがだろう。

せまいエリア内で方向転換のタイムを競う「Dアスレチック」。スペースを取らず事故の危険性も低いのでオフ会などでもできそうだ
簡単そうに見えるがやるとなかなか難しい。一度やると「ハマる」参加者は多かった
リアフードを半開きで止めて低い位置の後方視界を確保! 遊びと言えども気合いが入る

たっぷり走ってみんな上達。D-SPORT GYMは運転上手への近道!?

 朝8時から始まったD-SPORT GYMは大きな事故やクラッシュもなく、17時までたっぷり走って終了。閉会式では参加者から「とてもタメになった」「次回もまた出たい」という評価が聞けたので、今回からはじまったD-SPORT GYMは成功と言っていいだろう。

 10月14日には富士スピードウェイで第2回が開催されるので、この記事を読んで興味を持った人はぜひ応募してみてはいかがだろうか。参加すれば運転は上達するので、愛車を走らせることが今まで以上に楽しくなるはずだ。

 なお、講師からは「参加するにあたってなにか覚えてくるのではなく、先入観などないまま来て欲しい」とのこと。ありのままの自分で行って、帰る頃の運転の違いを肌で体感してみると面白いだろう。

閉会式ではタイムアタック上位者に記念品が渡された
参加者全員に認定書が配られた。認定書の文字は筆文字工房という書家さんによる手書
「次回の富士スピードウェイでは今回やらなかったことも盛りこんで、サイドブレーキを使った走行なんかも考えています」と松尾氏
参加者のコメント
4年ほど前に購入したCVTのコペンローブで参加の渡辺さん。スポーツ走行は初とのことだったが、参加した印象は「難しいけど面白かったです。ふだんの街乗りでも役に立ちそうなことが多いという印象でした。とはいえ教えてもらったことをまだまだ覚え切れていないのでまた機会があれば参加してみたいですね」とのこと
現行コペンのデザインを担当したダイハツ工業の和田広文氏もプライベートで参加。「コペン開発時は色んな楽しみ方を想定していましたので、こうした走りの楽しみを体験出来たことは有意義でしたし、とても面白しろかったです。走る姿もたっぷり見させてもらいましたが、クルマと地面との関係ということも大事だと感じました」とデザイナーならではのコメントも
L880KコペンのMT車で参加の小林さん。学生の頃から走行会に参加しているという上級者だが「自分ではできていると思っていた基礎の部分でしたが、講師の方に見てもらったらまだまだということが分かってとても参考になりました。とくにスラロームではステアリングを切りすぎていたようで、もっとクルマと会話しながら走らないといけないな、と感じました」とのこと
大学生の辻岡さん。自動車部に所属していて去年から競技にも出ているとのこと。部でもスラロームの練習をしているが、このD-SPORT GYMではアクセルワークで緩急を付けてクルマの曲げることを覚えたという。また、ステアリングの操作について講師からは「荷重が乗りきる前に逆に切ってしまっている」と指摘され講師に同乗してもらって修正したという
L880Kコペンに乗る小池さん。走行会や練習会への参加経験もあったが「長いスラローム練習ができることはなかなかないです。講師の方には全体的にアクセルとステアリング操作のタイミングがあってないことを指摘されました。そこで言われたことを参考に練習していったら最後のほうにアクセルワークでスムーズに曲がれるようになりました」とのこと