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チューニングパーツの効果は体感できるのか? 走行会で検証してみた

D-SPORT CUPで補強パーツとパワーアップパーツを比較試乗

 D-SPORTは、ダイハツ車にターゲットを絞り高機能部品を開発するブランドだ。クオリティの高さも特徴で、ディーラーでも「D-SPORTのパーツなら」と扱う販売会社が多い。信頼の厚いブランドなのである。そんなD-SPORTは、年4回サーキットイベント「D-SPORT CUP」を開催。5月19日に、筑波サーキット コース1000を舞台に2018年の第1戦目が開催されたのだが、その場でD-SPORTの“最新”かつ“要注目”のパーツを体感することができたのでレポートする。

剛性アップと制震効果の「MCB」を比較検証

 1つ目は、4月に販売開始された「MCB(モーションコントロールビーム)」。簡単に言うとタワーバーの位置にセットする補強パーツの1つで、取材時点での対象車種は新旧コペン(L880K/LA400K)。「車種ごとにちょうどいい特性になるようにテストを繰り返し、車両を徹底的に乗り込むことで完成した」と語るのは商品開発リーダーの松尾光洋さん。

D-SPORTの「MCB(モーションコントロールビーム)」。価格はフロント用が税別4万3000円(L880K向けに、ヒューズボックス移設キット付き税別4万7000円の設定もある)、リア用が税別3万7000円(※「MCB」はアイシン精機株式会社の登録商標です)
左右を剛結するリジッド式のタワーバーとは違い、“動きしろ”があるのが特徴。もっとも、人の力で動くほどではなく、剛性パーツとして機能する。走行中に発生する微振動やひずみを吸収し、ステアリングレスポンスアップ、高速走行時の操縦安定性アップ、快適性向上などの効能がある。「コペンの場合、やはり推奨したいのは前後セットでの装着です」と商品開発リーダーの松尾光洋さん

 タワーバーと取り付け位置が一緒で、同様にボディ補強パーツに括られるが、ではタワーバーとはいったい何が違うか? 松尾さんは「役割が違う」と言う。リジッドにボディを固めるタワーバーに対し、MCBには動く“しろ”があるのだ。MCBは1本の棒ではなく、入力・振動を減衰する内部構造を採用していて、力を“いなす”ことができる。タワーバーがある状態(=ガッチリ固める状態)とない状態の中間的なパーツ、とも言えるか。その中でD-SPORTは、走り込むことで“美味しい”セッティングを探った。前だけ装着したり、後ろだけ装着したり、装着する位置を変えたり、さらに減衰特性を見直したり……、約1年に渡る期間を経て開発した。ちなみに、MCBは完成したが性格が違うため、今後も変わらずタワーバーも販売されるという。

 では、実際着けたらどうなのか? どう走りが変わるのか? その道のプロに試乗してもらい、感想を聞いた。1人目はロードスター乗りとして有名なドライバー 加藤彰彬選手。加藤選手には、装着前・後を、間髪をいれずにドライブしてもらった。

ロードスター、アバルトのチューニングショップ・TCRを主宰する加藤彰彬さん。ワンメイクレースのシリーズチャンピオンの実績を持つ。今回は先代コペン(L880K)にMCBのあり・なしで比較してもらった
先代コペン(L880K)のMCB装着状態。MCBあり・なしで比較してもらった。フロントはタワーバー同等位置に、リアはトランク内後端にセットする

「全然違いますね。MCBがない時にはうねっていた箇所でも、MCBありではうねらない。段差を乗り越えても、コチラは一発で収束してくれた。アクセルを開けながら縁石に乗るところでも、きちんと越えられる」と高評価。

 さらに「一番大きく違うのが、ギャップを越えた時の収束の仕方。MCBなしの時は、バンと落ちて、もう一度バーンと跳ねていましたが、MCBありだと一発で収まる。そしてFF車では、縁石に乗って跳ねた時に駆動輪が空転するんですが、それがなくなる。そのまま前に押し出してくれる。もっと曲げていってくれる。試乗車がLSD着きの車両だったこともありますが、タイムアップにも繋がるでしょう」

 一本モノのタワーバーとの違いはどう感じたかを伺うと「リジッドのタワーバーは、しなった後に反発し、ブルブルと震える感触があった。コチラの場合はしなやかに収束する。減衰してくれるのか、反発する感覚がない」と言う。

サーキット経験皆無の筆者も、加藤選手の助手席同乗というカタチだが、MCBを味わった。なしの時は、負荷のかかった時に「グニャ」となる感覚があったのだが、MCB装着後はそれが減少。縁石に乗っても安定感がアップし、路面のうねりに出くわしても揺すられる感覚が明らかに減少した。剛性を高めつつ、適度に“いなす”MCBの効果が体感できたのだろうか!?

 2人目の試乗者は殿村裕一さん。実はこの方、コペンファンには有名な方で、ダイハツ社員でコペン開発陣の1人。この日も大阪から自走してきた愛車でMCBを試してもらった。松尾さん曰く「D-SPORTの開発顧問的存在」でもある。

殿村さんの愛車である現行型コペン(LA400K)を使って体感してもらった
現行型コペンは、フロントは同じくタワーバー同等位置に付くが、リアはバンパーを外したフレームエンド部に付く(純正バーと並列に搭載)

「初心者の人にいいんじゃないかな。リジッドのタワーバーよりも吸収してくれて、縁石を踏んでもマイルド。サーキットを走り始めたばかりの人には、懐が深いコチラの方がいいかも」と話す。

「逆に言うと、クイックな乗り味が好きな人には物足りない面もあるかな。頭がギュンギュンと入っていくわけではないから。でもちゃんと荷重を掛けて、コーナリングの体勢にタイヤを持っていけば、サスペンションのダンピングとMCBのダンピングが重なって、とにかく気持ちがいい」と続ける。殿村さんは自身の愛車にMCBを装着して試したのだが、2ペダル車だったこともあり「安心だから、暇だなぁ(笑)、と。もっとパワーが欲しくなる」とも話していた。

 3人目は、殿村さんと同じくダイハツの社員ながら全日本ラリーに参戦するドライバーの相原泰祐さん。今後、参戦マシンをコペンにシフトする予定で、将来的にはラリージャパンへの参戦も目指しているという。

「毎周、走り方を変えて試しました。ラリーで使ったらどうなんだろうと想像しながら。MCBが付いている場合、Gが溜まっていった時の動きがよかった。タワーバーのように最初からつんのめるのではなく、溜まっていった時にグーッと動く。リジッドのタワーバーは、舵を入れて初期からバシッと効くけど、MCBだと初期はソフト。ミニサーキットだと特によくて、Gが乗り切った時、荷重が乗り切った時に効いてくれる。4輪の接地性もよいですね」と評価。「フロントはタワーバーで、リアはコレ、といったように使い分けるのも面白そう」とも。

コペンの開発に携わった殿村さん(左)と、社員ながらラリーに参戦する相原さん(右)。コペンの乗り味を知り尽くすおふたりも、MCBには好感触。2人揃って「初心者にもオススメ」と話していたのは特に印象的だった

 試乗した皆さん、揃って高評価だった。気になる価格は、複雑な機構を採用するだけに、一本棒のタワーバーと比べて高価になる。けれども、体感できる効果や、タワーバーだけでなく新たな選択肢が増えたと捉えると、注目すべきパーツであることは間違いない。実際、取材時は発売後1カ月経った時期だったが、「大反響です」(松尾さん)と言うのだから。

ミニサーキットでサブコンの効果はいかに?

 もう1つの注目パーツは、D-SPORTがピボットと共同開発したサブコンピューターの「PIVOT パワードライブ PDX-D1」。2月に発売開始されたばかりの新製品だ。対象はKF-VETエンジン搭載車。装着は簡単で、エアフロのカプラー部に割り込ませ、あとは電源を確保するだけ。手慣れたメカニックの手に掛かると、着脱はそれこそあっという間。これならDIYでの装着も可能かもしれない。

 パワードライブ PDX-D1は、安全マージンの大きいノーマルに対し、エア流入量センサーの信号を補正して燃料の量を最適化。理論空燃比に近づけることでパワーアップを図るという。パワー計測では、最高出力が10PSほどアップしたというデータもある。10段階の調整ダイヤルがあるので、走るステージに合わせて選択したり、また好みのフィールを求める・探ることも可能だ。ちなみにメーカー推奨はエンジンまわりがノーマルの場合で「7」。あくまで、ノーマルタービンのポテンシャルを活かす方向性のチューニングパーツで、もちろん最大値の「9」でもマージン内に収まる設定だというから安心だ。

「パワードライブ PDX-D1」は、KF-VETエンジンを搭載するコペンのほか、「キャスト」「ムーヴ」「タント」に適合する。D-SPORTのコペンを使ったテストでは、パワーで12PS向上、0-100km/h加速で2.2秒パフォーマンスアップしたという。価格は税別3万8000円
全10段階の調整式を採用。筐体右上の丸いカバーを外し、その中のダイヤルを付属のドライバーで回して調整する
付属の配線を使って吸気量センサーの配線に割り込ませる。カプラーオンなので作業は簡単だ。あとは、プラス線、アース線を繋げばOK
装着状態。基本的にはエンジンルームに設置される

 こちらは走行会に参加していたオーナーの愛車に装着して、“違い”を体感してもらった。パワードライブは着脱が簡単なので、このようなモニター体験が可能なのだ。

 1人目は2週間前に愛車で筑波のコース1000を走ったというハンドルネーム:班長さん。果たして感想は?

「立ち上がりがいいですね。2週前に走った時より1秒近くタイムがよく、自己ベストを更新できました。特に、フルブレーキングからの立ち上がりが違う。クルマは通勤をメインに使っていますが、付けてみたいパーツの1つですね」と好感触。さらに「取り付けが簡単だし、D-SPORT製というのも、安心感があっていいですね」とも話していた。

班長さんの愛車にはダイレクト式のエアクリーナーが装着されていたが、このような車両にも対応。「ノーマルのエアクリーナーを想定していますが、さまざまなエアクリーナーを試しているので問題ないと思いますよ」と松尾さんは話していた

 2人目は吸排気はノーマルだが、希望のタイヤを求めてあえてインチダウンするほど走りにこだわる高橋さん。実際に試してみると「全体的にスムーズに加速する感じでした。CVTなので、もっさりしたところがあるんですが、全体的に解消されている気がしました。タイムもあるなしで1秒くらい違っている。慣れもあると思うけど(最初“なし”、それから“あり”を試した)、踏んだ分だけ加速する感覚でした」と、コチラも好印象。興味深かったのは最高速の違い。「メーター読みで、“なし”が103km/h、“あり”が110km/h」というのだ。なるほど、効果は高そう!

これまで専用のサブコンがなかったので、興味があったという高橋さん。「実際に付けている知人もいましたが、サーキットではどうなんだろう、と思っていた。今日は試せるいい機会でした」試してみたら好感触だった!?

 今回の体感テストは、時間の都合もあって、メーカーがノーマルエンジンで推奨している「7」で行なわれた。しかし、吸排気系チューンをしている班長さんのクルマなら他の数値が最適だったかもしれないし、コースの特性にあったベストセッティングは他にあったかもしれない。そんな調整幅があるのもこの製品の面白いところだろう。これで10PS以上のパワーアップが手に入るのだから、コストパフォーマンスは高いのではないだろうか。

 MCB、パワードライブ PDX-D1ともに、比較的簡単に装着できるのも魅力。さらに、効果も体感でき、コストパフォーマンスも高い訳だ。スポーツ派コペンオーナーにとって、気になるパーツが追加されたのは間違いない。

ダイハツ車向け「D-SPORT CUP」はあと3回開催

 今回おじゃました「D-SPORT CUP」は、ダイハツ車向けの走行会として年4回開催されているもの。タイムアタックのシリーズ戦も行ない、覇を競ってもいる。といっても、基本は初めての人でもサーキットを楽しめるアットホームなイベントだ。D-SPORTのデモカーや最新パーツをいち早く見ることのできる貴重な機会でもある。今回の筑波サーキット以降にも2018年内にあと3回予定されているので、ダイハツ車オーナーは参加してみては?

年間開催予定

Rd.2 7月1日(日) 美浜サーキット(愛知県)
Rd.3 9月15日(土) 日本海間瀬サーキット(新潟県)
Rd.4 10月13日(土) 茂原ツインサーキット(千葉県)

D-SPORT CUPにはタイムアタック仕様のデモカーなども参加