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高速道路120km/h時代始まる!! アウディ A6アバントで6車線化された新東名を走る

6車線化され、最高速度が120km/hに引き上げられた新東名 御殿場JCT~浜松いなさJCT間を走るアウディ A6アバント

新東名 御殿場JCT~浜松いなさJCT間が6車線化、最高速度120km/hの本格運用始まる

 年も押し詰まった12月22日、新東名高速道路の御殿場JCT~浜松いなさJCT間の約145kmで全線6車線化が実現し、乗用車などの最高速度規制が同区間で120km/hに引き上げられた。東名、名神は東西の物流を担う重要な高速道路網だが、新東名、新名神の6車線化が実現すると物流の流れはさらにスムーズになる。ちなみに全国に張り巡らされた高規格幹線道路(自動車専用高速道路)の中で東名、名神は半数の貨物輸送を担っているという。

 もともと新東名は140km/hの高速走行も見据えて作られている部分が多く、トンネルも6車線規格で設計されていたが、高速道路の見直し論などで暫定4車線として開通した経緯がある。効率的な高速道路として作られたため、きついカーブや起伏を減らし、広い視界と直線区間を多くすることで安全な高速道路を目指している。

E1A 新東名 御殿場JCT~浜松いなさJCT間の6車線化工事が2020年12月22日に全線完成(NEXCO中日本)

https://www.c-nexco.co.jp/corporate/pressroom/news_release/4941.html

新東名高速道路における最高速度規制120キロの本格運用について(静岡県警)

https://www.pref.shizuoka.jp/police/anzen/jiko/kiseka/sokudo110.html

約145kmの区間が全線6車線化され、最高速度が120km/hに引き上げられた。今後、このような区間は増えていく予定となっている

 すでに6車線で開通していた区間では、それぞれのレーンで速度の異なるトラックやバス、そして乗用車が分散して走れるためにレーンチェンジも少なく事故も減少した。実際に新東名でも4車線区間と6車線区間では、片側3車線の6車線区間の死傷事故率は3割減少しているという。また、渋滞も減っており、渋滞が事故のきっかけになることが多いことから安全上も大きな貢献ができる。

 私は新東名建設時に何度か取材させてもらったことがあり、道路建設の一端を見ることができた。トンネルは片側2車線だったが、将来は片側3車線規格に対応できるよう広げて作られていること、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)は高台に作られ、入るときは上り坂になり減速を、本線に合流するときは下り坂になり加速するように設計されていること、そして何よりも地権者に理解してもらうための努力などを知ることができた。

アウディ A6アバントで新東名の120km/h区間を走り、日本の高速道路の最新事情を体感してみました

 その新東名が御殿場JCT~浜松いなさJCT間で6車線化にされることに伴い、速度制限が120km/hに上げられたのは当時の建設の苦労を考えると感慨深い。この速度制限引き上げのために先行した区間でも事故は変わらなかったとされる。今後新東名は、2023年度には御殿場から厚木までの運用が開始予定で、さらに新名神も6車線化と速度制限のアップが予定されている。

アウディ A6 アバントで120km/hの新東名を西へ

Audi A6 Avant

https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/a6/a6_avant.html

 早速、6車線化され速度規制の上限が120km/hに引き上げられた新東名を走ってみた。相棒はAudi A6 Avant 55 TFSI quattro Luxury(アウディ A6 アバント 55 TFSI クワトロ ラグジュアリー)である。エンジンは3.0リッターV型6気筒ターボで340PS/500Nmと圧倒的なパフォーマンスを備える。ボディサイズは4940×1885×1465mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースもそれに伴い2925mmとかなり長い。

高速巡航性能の高いquattro(クワトロ)四輪駆動システムを持つアウディ A6 アバント。120km/h巡航においても大きな余力が感じられた

 A6は全モデルとも48Vのマイルドハイブリットシステムが組み込まれており、なかでもV6ターボには容量の大きなリチウムイオンバッテリと組み合わされて燃費改善が図られる。

4940×1885×1465mm(全長×全幅×全高)という伸びやかなスタイル。室内空間も広い
最高出力340PS、最大トルク500Nmという圧倒的なパフォーマンスを持つエンジン。48Vのマイルドハイブリッドシステムも装備する
合理的に設計されたコクピット。シンプルながら先進のアウディらしさがある。FPD(フラットパネルディスプレイ)が多用され、グラスコクピットのお手本のような仕上がり
右から、前席、後席、ラゲッジルーム。内装も随所に便利機能がありながら落ち着いた仕上げになる

 今回は東京方面から向かい、東名高速 御殿場JCTから高い橋を渡るようにして新東名に入る。長い連絡路は東京方面へと延伸する将来の6車線化への準備区間だ。新東名の6車線区間に入ってもしばらくは工事車両の関係で50km/h制限が続いていたが、6車線区間に入るとそれも解除されて速度表示は80と120の表示になる。大型トラックは80km/h、乗用車は120km/hである。

 新東名は車線が広くカーブも緩やか、しかも起伏もなだらかに設計されているので速度を上げても緊張はなく穏やかな景色が流れる。区間にもよるが東名の100km/hと新東名の120km/hでは東名の方が速く感じる。新東名が安全マージンを多くとり、景色も同じようなリズムで広がっているの対して、東名は次々を変化に富んだコースが現われるからだろう。

御殿場JCTから西を目指す。ここが120km/h区間の始まりだった。路面の色が若干濃く見えるのは、規制ポールを取り外し、片側2車線から3車線に拡幅された区間となるため
ACCを使って120km/h区間を走る。120km/hでのレーンキープ、ステアリングアシストももちろん可能で運転疲れは圧倒的に小さい

 そういえばサーキットでも鈴鹿のようなオールドコースと富士のような新しいコースで東名と新東名で感じた差と同じような感覚だったなと思った。鈴鹿はバラエティなコーナーが面白く、富士は広さからくる安心感のあるコースになっているからだ。高速道路とレーシングコースを一緒にすることはできないが、時代とクルマの進化への考え方がそうさせているかもしれない。

A6の持つ余裕ある性能が生む安心感

片側3車線が続く余裕はうれしい。3車線あると心の余裕もでき安全にもつながるのが実感できる。実際、データでも裏付けられているとのことだ

 さて、新東名をクルージングするA6は平和そのものだ。何しろエンジンの振動が少ない。その回転フィールはアウディ特有で、クランク軸がぶれることなく硬質に回るようで心地よい。静粛性と安心感は格別だ。

 アウディの生国、ドイツのアウトバーンでは速度無制限であることが知られているが、そのドイツでも制限速度が課せられている区間が多くなっている。それでもドイツは無制限区間をやめないだろう。高い工業技術を担保する誇りでもあるからだ。

 そんな国で鍛えられたアウディは超高速の連続走行でも余裕を待って走れる心臓を育てており、80km/hから120km/hまでとりわけ意識することなく、アクセルペダルに軽く足を乗せているだけでスイと加速できる。アウトバーンならそれ以上の世界まで簡単に連れて行ってくれるだろう。新東名ではその余力は余裕となってドライバーにゆとりを与えてくれる。いつでも十分に加速できるというのは落ちつくものだ。

 そしてクルージング時のエンジン回転は低く抑えることができる。さらに今回の試乗モデルに搭載されていた48Vマイルドハイブリットシステムに加えてコースティング機能も補完しており高出力と高燃費を両立している。

 A6は7速DCTでVWグループで多く使われるトランスミッションを装備。一般的なトルコンと違ってクラッチを巧く使いマニュアルのような変速を行なう。速度が乗ってくるとダイレクトな感覚がスポーツドライビング好きならずとも好まれ、また高速走行では高効率で燃費ロスが少ないので連続高速走行の多い欧州で好まれている。

 居住性でいえば高速での乗り心地はすこぶるいい。静粛性の高い室内とパワートレーン振動をよく遮断する車体、それにオプションで装備されるダンピングコントロールサスペンションのおかげで、キャビンは常に一定の姿勢に保たれている。身体によくフィットするシートも疲れ知らずで、120km/hで走るA6の車内は快適そのものだ。

 見通しがよく、急な起伏のない新東名は新しく拡幅された走行車線の路面の色が違う程度で、路面のつなぎ目も滑らかに処理されている。東名に比べると路面の補修跡や凹凸もほとんどないので滑らかだ。新東名の120km/hという制限速度はスイスを始め世界的にも多く採用されている領域だが、その中でも新東名は設計年度の新しさから高い安全性を誇る高速道路だ。

 A6にはアダプティブクルーズコントロール(ACC)が備わっているので、ステアリングコラム左下段のレバーを操作して車速を維持する。車線逸脱を防止するアクティブレーンアシスト機能も入り、前走車についていくとドライバーのストレスはかなり解放される。昨今では軽自動車にもついている機能だが、A6は出力に余裕があるので前車の速度変化にもラクに追従していく。ドライバーにとって楽でストレスを感じない。

こちらは先行して6車線化開通し、最高速120km/hが設定されていた区間。ここで事故率などがとくに変わらないことが裏付けられている。6車線化・120km/h引き上げは日本の物流を変えていくのだろうが、クルマ選びにも影響してくるだろう

アウディの走りを支えるquattro(クワトロ)四輪駆動システムと高速巡航走行

クワトロ四輪駆動システムを持つアウディでクルージングしていると、かつてラリーで見せつけられた圧倒的な性能差を思い出す

 さて試乗日のような晴れ渡ったドライの日は2輪駆動でもステアリングホイールに手を添えているだけで気楽に走れるが、天候の悪化、横風の強い日など、クワトロの4WDシステムは大いに威力を発揮し、安全に貢献する。走行速度が上がるほど4つのタイヤに駆動力が伝えられることの接地力は全然違ったものになるのだ。

 ラリーの世界では1980年代初めにアウディが4WDをラリーに持ち込んだ。最初は雪のモンテカルロラリーだった。5気筒ターボと4WDのクワトロの威力の前に2輪駆動勢は成す術もなく敗退し、その時を契機にライバルは4WDでなければラリーに勝利することは難しくなると悟った。

 その後もアウディ クワトロ(Audi quattro)の快進撃は続き、雪やグラベルでなくともターマックでもクワトロのポテンシャルの高いことを証明した。

 個人的なことだが1982年から89年まで11月のR英国RACラリーにコ・ドライバーとして最初はFRのランサー、スタリオンで最後はAWDのギャランで参加した。そこで見たラリーの世界を一変させたアウディの存在感の大きさを肌で感じた。

 ドライバーの大庭誠介先生(歯医者さんなので先生と呼んでいた)の腕は冴えわたり日々成績が上がるとスタート順も上がり、やがて周囲はワークス勢ばかりになる。ドライバーもハンヌ・ミッコラ、ワルター・ロール、ビヨン・ワルデガルド、そしてミシェル・ムートンなどなどいずれもアウディのステアリングホイールを握った超一級のドライバーたちばかりに囲まれて夢のような時間だったのが昨日のことのように思き出される。

 少し脱線してしまった。WRC(世界ラリー選手権)で活躍したアウディ クワトロの血統を今も受け継ぐ現代のクワトロは、新東名の120km/hという巡航速度において安定性と強力なトラクションだけでなく優れたハンドリングも手に入れていた。誰もが全天候でクワトロの恩恵を受けられるようになっている。技術の進化も素晴らしく、また歴史を辿るのも懐かしい。

 雄大な冬の富士山を見ながらの新東名でのショートトリップはアッと言う間に終わり、帰途は穏やかな駿河湾を見ながら東名で御殿場まで戻った。2つのルートは物流やビジネス、観光を活性化させることはもちろんだ。それに加えて、2つの高速道路でそれぞれ味のある風景と旅が楽しめた。たまにはこんなクルマとの旅もいいなと思った次第である。