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レイズのモータースポーツブランド「gramLIGHTS(グラムライツ)」、SUV向けホイールを積極展開する理由とは【前編】

モータースポーツシーンで活躍するgramLIGHTS(グラムライツ)ブランドのSUV向けラインアップが現在増加中。その理由とは?

 モータースポーツでも活躍し、非常に高い品質のアルミホイールを送り出しているレイズ。数多くのホイールブランドがあり、鍛造ホイールであまりに有名な「VOLK RACING(ボルクレーシング)」はレイズの看板でもある。ほかにもドリフト競技では「gramLIGHTS(グラムライツ)」が多くの人に知られ、そして今、鋳造で多彩なデザインや高い耐久性を誇るグラムライツではSUV向けのラインアップを充実させている。

 グラムライツは、どちらかというと「モータースポーツをイメージさせるスポーツブランド」という印象を持っている人が多いと思う。その中でSUV向けのラインアップを充実させていることにイメージが合わないと考える人もいるかもしれない。なぜSUV向けにもグラムライツを展開しているのだろうか。

グラムライツはレイズの厳しい基準で作られた高性能鋳造ホイール

 最初にグラムライツの説明をしておくと、「鋳造製法の限界を攻め、極限のパフォーマンスを獲得したスポーツブランド」と掲げるとおり、モータースポーツ向けのホイールとなっている。鋳造という製法により高いデザイン性を実現しながら軽量化を進め、レイズならではの高い品質、デザインのトレンドを作っている。

グラムライツや各ホイールの特徴は、株式会社レイズ 執行役員 第一商品企画部部長 加藤照幸氏が語ってくれた

 一般的に鋳造ホイールは鍛造ホイールに対してリーズナブルな価格を実現するもので、強度が鍛造に及ばず、結果的に鍛造のような軽量化がしにくいと認識されている。また、鋳造はさまざまな造形が作りやすい半面、無理な軽量化やデザイン処理を施せば強度の面でホイールの安全性を脅かすという事態になっていく。

 それに対し、レイズでは独自の社内基準である「JWL+R」を徹底している。これは国土交通省の安全基準である「JWL」を上まわるもので、ブランドや指向性によって「JWL+R spec-1」と「JWL+R spec-2」の2つのspecを使い分ける。軽量化やデザインを追求しながら、強度や安全という面で妥協のないものを作り上げている。

 ホイールはクルマの足下にあり、クルマの全重量を支える重要なパーツだけに安全性能には可能な限りの力を注いでいる。そして、高い品質を維持するためにレイズは「設計から製造まですべてを日本の自社内で行なっている」ということを守っていて、当然ながら自社製造はグラムライツにも適用される。

グラムライツの最新ホイールである「57XR-X」は、ドリフトシーンで活躍中の「57XR」をSUV用にアレンジしたもの。スリムなスポークながら、ラージP.C.D.タイプでは商用車向けの厳しいJWL-T規格に適合。ピックアップトラックなど商用車登録のSUVでも安心して装着できる

 ちなみにレイズの試験では、半径方向負荷耐久試験はJWLが50万回転に対して倍の100万回転、実走行を想定した回転曲げ疲労試験はJWLの10万回転に対して倍の20万回転、13度衝撃試験は落下高さがJWLの230mmに対してレイズは305mmから試験を行なっている(spec-2)。

 さらにオリジナルのテスト項目として衝撃試験、インナーリム変形後の半径方向負荷耐久試験、剛性試験などのほか、塗膜性能試験を追加し、アルミホイールならではのデザインという価値を維持するための基準を設けている。例えば、グラムライツなどデザインも重視したホイールの場合、表面を美しく保つことも性能の1つと言え、ここにもレイズのこだわりが感じられる。

SUV向けグラムライツは昔から手掛けていた

ジムニーを筆頭としたクロカンSUVなどラージP.C.D.車両に向けた「57DR-X」は、レイズ伝統の6本スポークを採用。写真はジムニーサイズ限定としてカラーにアームズグレーを用いた「57DR-X 2122 LIMITED EDITION」

 話は戻り、グラムライツにSUV向けのラインアップがあるのは実は以前からのこと。例えばジムニーにはオフロード競技用をかねてから用意しており、グラムライツではオンロードかオフロードかの違いはあっても、モータースポーツに取り組む中でSUV向けもラインアップしていたのだ。また、ランドクルーザー プラドなどに向けたラージP.C.D.の6穴モデルのラインアップも以前から用意している。

 そして、現行のH200系のハイエースが登場した際、どこよりも早くH200系ハイエース対応モデルを登場させたのがグラムライツだったことはご存知だろうか。ハイエースの場合、基本的に直接競技へ参加するクルマではないが、ドリフトや走行会などモータースポーツを楽しむユーザーが、そのトランスポーターとして活用しているケースが多い。そこで、“サーキットエクスプレス”としてハイエースにグラムライツを装着し、レース車両とともにトータルコーディネートを楽しみたいという要望に以前から応えているのだ。

グラムライツのホイールを装着したハイエース(2006年後期 RAYS カタログに掲載)

ユーザーが乗るクルマのタイプにも変化がある

 ホイールを選ぶ動機として、モータースポーツに使うホイールがあり、そのホイールを装着したクルマが活躍すれば、同じホイールを装着してパフォーマンスアップしたくなるのは当然の欲求。全く同じものではなくても、同じイメージを自分のクルマにも反映したいと考えることはよくあることと言えるだろう。

 その一方で、ユーザーが乗るクルマのトレンドには変化がある。かつてはセダンやクーペという時期もあったが、ひと昔前にはミニバンが大流行し、最近ではSUVが多くなってきている。最近の売れ筋のクルマを見ても、SUVが売れているというニュースを目にする機会が増えている。

 ただし、SUVとはいえボディの上半分を見ると、クーペライクなデザインになっている車両も多く、グラムライツではSUVもスポーツ仕立てになっていると判断。スポーツ系として分類していくことがベターであると考えた。

 セダンやクーペ、コンパクト、ミニバン、そして一部のSUVではモータースポーツ用のホイールがそのまま使えることが多かった。特に乗用車で一般的なP.C.D.が114.3mmの5穴という規格を採用するクルマは多く、ドリフト競技に参加するクーペタイプのクルマと全く同じホイールを自分のミニバンなどに装着できることもあり、メーカーとしても必ずしも新たなサイズ展開をする必要がなかった。

 ところが、ジムニーやランドクルーザー プラドといったクロカンSUVや重量級のSUV、荷物の最大積載量の大きいハイエースはP.C.D.が大きい139mm、ホイールナットも6穴という規格になり、従来のラインアップでは対応できない。この点が、現在グラムライツがSUV向けラインアップを強化している理由となる。

 この傾向は日本だけでなく海外でも同様。北米ではピックアップやSUVが人気車種、アジアでもSUVが人気車種となっており、いずれも大きなP.C.D.のホイールに需要が集まっているという。

ドリフトシーンで活躍する57XRはSUV向けとして57XR-Xに進化。トヨタ ハイラックスのようなピックアップトラックとブロックタイヤにもマッチする

 北米では日本車に日本メーカーのパーツを使ってカスタムを施す「JDM(Japan Domestic Market)」という流行が昔からあり、レイズのラインアップでは特にグラムライツとボルクレーシングは輸出比率が高く、海外ユーザーも満足するようなラインアップを取り揃えているということからも、SUV向けのラインアップ拡充が進んでいるのだ。

新シリーズのグラムライツ・アズールを登場させるなど、サイズ変更だけではないSUV向け展開

 なお、続々登場しているグラムライツのSUV向けホイールだが、単なるサイズ変更だけではない点にも注目だ。

 グラムライツでは現在、「AZURE(アズール)」という新シリーズを展開している。「スポーツシーンをスマートに楽しむツールとしてのカスタムを彩るアイテム」という位置付けで、車両形状に合わせたデザインのホイールとなる。

 また、クロカンSUV用ではブロックタイヤを装着することもあり、ブロックタイヤに合わせてリムに「SPEED BRICK RIM」というデザインを施したものを用意した。もともとオンロード向けのシンプルなデザインのホイールだったものを、オフロードタイヤへのつながりの部分であるリム部分でうまくバランスさせ、シンプルですっきりしたデザインと、ゴツゴツしたデザインのタイヤの境目を巧みにつなげ、速さと力強さの両方を違和感なく表現している。

アズールシリーズの「57BNX」は、「57FXZ」のデザインをベースにY字型のスポークを7本配置してメッシュ風のデザインとしたもの。プラドやハイラックスといったSUVをメインターゲットとしたラージ P.C.D.モデルと、デリカ D:5やRAV4などミドルサイズSUVをターゲットとした5穴モデルをラインアップ

 SUV向けはP.C.D.が大きくなるだけでなくボルト穴数も増える。そのまま穴数だけ変えてもスポークとのバランスがわるくなるため、中には5穴と6穴ではスポーク数を変えてデザインをやり直したものもある。そして、ホイールのカラーの選択や表面処理などもSUV向けにデザインし直している。

 後編では、直近で新たに登場したグラムライツのラインアップを紹介していく。

Photo:安田 剛