Car Watchから電話。最近、スマホがブルッとしただけで、その「ブルッ」で表示を見なくてもCar Watchからの電話だけは判別できるようになった。
「……はい」
「敏也さん、新しいサイ……」
「おお! 新しいサイバーナビの取材ですか!! ディスプレイがHDのIPSパネルになって表示が美しく、市販カーナビでは初となる「docomo in Car Connect」に対応してどこでも快適なネット環境が使えて、以前から定評のある精度の高いルート検索はそのままに、マルチメディア機能が驚異的に進化した、あの最新サイバーナビの件ですか!?」
「え、えぇ……」
ここだけの話、私はサイバーナビマニア(できればエンスージアストと表現して欲しい)なのだ。思い返せばサイバーナビがHUD(ヘッドアップディスプレイ)を採用したことに衝撃を受けてさっそく導入、さらに精度が高く現実的なルート検索結果に惚れ込んだ。以来クルマを乗り換える時はあえてナビレスにして、サイバーナビを搭載し続けている。なのでもちろん、最新のサイバーナビは興味津々の代物、触らせてもらえるなら是非とも触りたい。
そんな訳でパイオニアさんから最新のサイバーナビ、9V型大画面モデルが搭載されたトヨタのヴェルファイアを借り出すことができた。「ヴェルファイア大きい!」とか「20インチホイールがマジカッコイイ!!」とか、そういったことはこの際いいだろう。まずはとにかく最新のサイバーナビを触りまくるのだ(実際触りまくった)。
新サイバーナビは次世代へと進化
その方が安心できるので、まず最初に結論を書いておこう。最新のサイバーナビは「次世代のカーナビ」となった。なにをもって「次世代」と言うのか? そう、サイバーナビはネットに常時接続できるカーナビゲーションシステムであり、だからこそ「次世代」のカーナビと呼べるのだ。よし、これでもう後はなにを書いても大丈夫だな。
もちろん従来モデルに関してもデータ通信機能を持っていた。だが、それはあくまでサイバーナビが持つ機能、スーパールート探索であったりMapFanコネクトなどをサポートするためのもの。大ざっぱに言うと従来モデルの通信機能はサイバーナビの中で完結していたのである。だが、最新のサイバーナビは違うのだ。簡単に言ってしまうと「カーナビの中にスマホが入っている」、もしくは「カーナビとスマホが合体した」ようなものなのだ。
スマホを活用している人なら「テザリング」という機能を知っているはずだ。このテザリング機能では、そのスマホをWi-Fiスポットのように活用することができる。スマホのテザリング機能をオンにしてノートPCを接続すれば、そのノートPCでインターネット接続が可能になる。それと同じことが新サイバーナビでも可能になったのである。
これを実現したのが市販のカーナビで初めて採用された「docomo in Car Connect」、ドコモが提供する車内向けインターネット接続サービスだ。もちろん通信規格はLTE、さらにdocomo in Car Connectはクルマという移動する拠点でも安定した高速データ通信が可能になっている。その名前からも分かる通り、クルマなどに特化したサービスなのである。このdocomo in Car Connectに対応することで、新サイバーナビは次世代のカーナビへと進化したのである。
docomo in Car Connectでサイバーナビは快適にインターネットへ常時接続できる。インターネットに接続してしまえば、あとはもうこっちのものだ。ユーザーは新サイバーナビを通して、ネット上のサービスをいつでも自由に活用することができる。これによって新サイバーナビはカーナビであるのと同時に、インターネット端末ともなるのだが、もちろんそれだけでは終わらない。In Car Wi-Fiにより、最大5台までのデバイスをネットに接続できるのである。
例えばクルマにドライバーが1人、同乗者が5人いたとしよう。その同乗者たちがスマホ、タブレット、ノートPC、はたまた携帯ゲーム機を使いたいとする。なんと新サイバーナビが車内のWi-Fiアクセスポイントとなり、同乗者のデバイスにインターネット接続サービスを提供するのである。ちなみに新サイバーナビ自体もネットに接続するので、車内で接続されているデバイスは最大6台ということになるのだが。ちなみにここだけの話だが、新サイバーナビのWi-Fi、結構遠くまで届く。取材に同行したパイオニアの人が、クルマから少し離れた所でスマホを見ながら「あ、ここまで届く」とかつぶやいていたぐらいだもの。
docomo in Car Connectは定額で使い放題のサービス、しかもLTEでスピードも速い。インターネット接続も快適だし、例えば動画などをネット経由で見てもデータ通信の上限を気にする必要はない。クルマからなら新サイバーナビでIn Car Wi-Fiを使う方が、スマホのデータ通信やテザリング機能を使うよりはるかにお得で便利という訳だ。
新サイバーナビがネット接続に使用するのは、サイバーナビユーザーならお馴染みのネットワークスティック。これが標準付属となっているモデルを購入すれば、docomo in Car Connectの1年間無料使用権がゲットできる。1年間、じっくりdocomo in Car Connectを活用し、それ以降は自分に合ったプランで使えばいい。docomo in Car Connectでは1日プラン(500円)、1か月プラン(1500円)、1年プラン(1万2000円)と3種類のプランが用意されているのだ。
デバイス接続の利便性にどうしても目がいってしまう訳だが、もちろん新サイバーナビ自体もこのdocomo in Car Connectを活用する。スーパールート探索やフリーワード検索でサーバーとデータのやり取りをするのはもちろんだが、なんと地図更新もこのdocomo in Car Connectで行なうのである。新サイバーナビでは基本的に最大3年分、年2回の全データ更新と、最大で年6回配信の差分更新を無料で利用できる(発売から2021年4月30日までのプレゼント期間に「MapFanスマートメンバーズ」に新規入会するとさらに1年バージョンアップを延長できる)。このバージョンアップをdocomo in Car Connect経由で自動地図更新(差分更新)することができる。
私の使っている従来型のサイバーナビの場合は、インターネットに接続しているPCで、巨大な全データをダウンロードして、それをSDカードにコピーしてサイバーナビに読み込ませていた。まあ、ぶっちゃけた話、手間はかかる。それが新サイバーナビ+docomo in Car Connectなら、「よろしいですか?」で「はい」にタッチすればいいだけで、後はバックグラウンドで自動にダウンロード、アップデートしてくれるのだ。もちろん途中でエンジンを切ってしまっても、次回起動時に自動で続きからインストールしてくれる。ああ便利、超便利、もう後には戻れないぐらい便利。
ちなみに「Wi-Fiルーター持ってる」とか「クルマでネットはあまり使わない」とかいう場合は、ネットワークスティックが付属しないモデルを選ぶことも可能だ。そしてその場合でも、Wi-Fi経由で新サイバーナビをネットに接続すれば自動地図更新機能やその他のネット機能が利用できる(もちろん従来方式の地図更新も可能)。駐車スペースが自宅に近ければ自宅のWi-Fiを使ってもいいし、それこそWi-Fiルーターやスマホのテザリングを使ってもいい。ただしその際のデータ通信量(通信料でもある)は別途ユーザー負担となるので念のため。
個人的な感想を言わせてもらうと、新サイバーナビを選ぶならdocomo in Car Connect(ネットワークスティック)を外すべきではない。何もせずに1年間、クルマの中でネット接続ができて、さらに自動で地図更新が行なえるのだ。先ほども書いたが1年間、docomo in Car Connectを使い倒してみて、そこからは自分に合ったプランにすればいいと思うのだ。
そう、新サイバーナビ+docomo in Car Connectでネットを使い倒す@車内。これがもうカーナビ機能以外のところで、大変な状況を産み出すのである(いい意味で)。
充実のマルチメディアでクルマに住みたくなる
基本、私はネットに繋がっている。あ、もちろんインターネットのことね。私の仕事は主に物書き、そしてインターネットのライブ配信などである。どちらもパソコンを使う訳だが、そのパソコンは常にインターネットへ接続されているのだ。いわゆる常時接続というヤツなのだが、正直この常時接続がないと仕事にならない。さらに言えば仕事の合間に見るのはネットの動画配信、あるいはネットのニュースサイトなど。ネット通販もよく利用するし、連絡等はメールがほとんど、打ち合わせやコミュニケーションでSkypeなどを活用している。
そして上記のことが新サイバーナビ+docomo in Car Connectの環境で「全て」できてしまうのだ。そう、クルマにノートPCを持ち込んで、後は新サイバーナビのIn Car Wi-Fiに接続するだけでいい。In Car Wi-Fiがあれば、助手席でよくスマホゲームをしている私の奥さんもデータ通信量を気にせずに済むし、後部座席にいる親戚の子供も携帯ゲーム機のオンライン対戦を楽しめる。
いやいや、車内はもっと大変な状況となるのだ、いい意味で。インターネットに常時接続で使い放題、ということは例えばYouTubeの動画を見放題ということ! 後述するが新サイバーナビの液晶パネルはHD解像度で高画質、ネットの動画を充分に楽しめるクオリティだ。そして新サイバーナビには市販カーナビで初となるWEBブラウザ機能による、YouTube動画の直接再生機能「ストリーミングビデオ」が搭載されている。もうね、車内で存分にYouTubeを楽しんでください、ということですよ。
本当は別の動画を表示させたかったが、著作権の都合上、おっさんの動画を表示している
いやいやいや、YouTubeだけじゃない。なんとビックリ、新サイバーナビは自宅のレコーダーにネット経由で接続して動画を楽しめるスマホアプリ「DiXiM Play for carrozzeria」に対応しているのだ! 自宅のレコーダーに接続できるということは、そこに録画したテレビ番組などを新サイバーナビで再生できるということ。ドラマの続き、録画してあったニュースやアニメ、なんでも自由に見ることができる。仕組みとしてはスマホアプリをレコーダー、そして新サイバーナビとペアリングして接続、再生される動画はネット経由で配信されるというもの。なのでレコーダーのチューナーを使ってテレビ番組を見ることだってできる。
いやいやいやいや、レコーダーのリモート再生だけじゃない。もうね、大変ですよ大変。新サイバーナビにはオプションでHDMI接続ケーブルが用意されているのだが、そのHDMI接続ケーブルにAmazonのFire TV Stickを接続、後はUSBポートで電源を確保すればFire TV Stickをクルマの中で利用できるの! もちろんFire TV Stickはネット環境が必要になる訳だが、新サイバーナビ+docomo in Car Connectがあればまったく問題ない。Amazon Primeビデオを車内で見放題(Prime会員等の条件はあるにしても)、まさにヘブン状態である。
そしてFire TV Stickが使えるということはですね、Fire TV StickのWEBブラウザソフト、silkも使えるということを意味する。あるいはFire TV Stickに対応したアプリ、ゲーム等々なんでも使い放題。例えばsilkブラウザからYouTube以外のネット動画を見ることだってできる。大げさに言うと新サイバーナビはFire TV Stickを通して、Amazonと接続できるということなのだ。
新サイバーナビがあれば車内でマルチメディア使い倒し、いや使い放題。YouTubeや自宅レコーダーの動画が再生できて、Fire TV Stickも利用できる。そもそもインターネット使い放題、Wi-Fiのアクセスポイントにもなるので、スマホなどのデバイスもネット接続できる。新サイバーナビがあれば、もうね、クルマに住んでもいいんじゃないかと思うもの。真面目な話、車中泊やキャンプ、キャンピングカーなどで大活躍してくれそうだ。ちなみにdocomo in Car Connectでなくても、Wi-Fiのネット接続環境があればこれらの機能を使えるが……やっぱりdocomo in Car Connectがあった方が絶対便利、安心だ。
あまりのスゴさにパーソナルなマルチメディア機能ばかり紹介してしまったが、新サイバーナビ+docomo in Car Connectは「仕事」でも活用できる! 営業車に搭載して出先で仕事、あるいはデータ確認、メールの送受信。在庫データの更新、契約書の送受信、ビデオ会議への参加。ドライブに行った先で編集者から締め切りを指摘されたライターがノートPCで原稿を書きつつ、クラウドストレージにある写真データを確認する……。仕事、ビジネスでも大活躍してくれること間違いなし、それが新サイバーナビなのだ。
広い視野角、美しいHD表示、洗練されたインターフェースデザイン
あらゆる点で新サイバーナビは「見た目」も格段に進化した。まずその外観。カーナビの命、液晶パネルの表面は完全にフルフラット化され、操作ボタンの類いは姿を消した。基本的なカラーはブラックなので、このフルフラット化と相まって美しさは高級車の内装にピッタリだろうし、シンプルさはスポーティなクルマの内装にもフィットする。
操作系のボタンはパネル下部にフラットキーとして配置されており、5色のイルミネーションカラーから好みの色で光らせることが可能だ。またレインボーモードに設定して、自動で5色をローテーションさせることも可能。もちろん明るさを自動調整するディマー機能、イルミネーションの自動消灯機能も装備している。
さてその液晶パネルだが、新サイバーナビでは1280×720ドットの「IPSパネル」である。いわゆる高精細なHD画質であり、パイオニアではこれを「サイバーナビ史上最高画質」としている。そしてIPSパネル、IPSというのはパネルの駆動方式(液晶を動かす仕組み)にIPS(In-Plane-Switching)方式を採用している。簡単に言ってしまうと見る角度によって色や輝度が変化しにくいという特長を持っていて、いわゆる「視野角の広い」液晶パネルなのだ。
このIPSパネル、以前は動画表示が苦手と言われていたのだが、最近ではゲーム用ディスプレイなどにも使われている。美しい画像や動画を広い視野角で表示できるIPSパネルは、どうしても角度をつけてパネルを見なければならない車内において抜群の効果を発揮する。このメリットは映像コンテンツだけでなく、マップ表示を視認する際にも実感できる。PC業界においても主流となりつつあるIPSパネルだが、他方式の液晶ディスプレイより少しだけ値段が高い。まあ、それだけいいものということ。
そんな美しい液晶パネルに表示されるメニューに関しても、新サイバーナビではデザインが一新された。一言で表現するなら「シンプルで美しいユーザーインタフェース」。いわゆるメニューアイコンは線、すなわちラインがメインのタイプになった。分かりやすいというだけでなく、洗練された見た目はユーザーに大きな満足感を与えてくれるだろう。また、例えば音楽再生を行なっている時にホーム画面を表示すると、そのアルバムのジャケットに合った色が表示されたりする。
余談だが私が新サイバーナビを取材したのは、ちょうど世間様がハロウィンで盛り上がっている時。するとメニュー画面の背景にハロウィンカボチャだの幽霊屋敷だの、はたまた箒に乗った空飛ぶ魔女などが表示されていたのである。そうか、ハロウィンではこう来たか……こりゃクリスマスシーズンが楽しみだなあと考えた次第。
見た目の美しさは重要だが、カーナビに求められるのは使いやすさと使った時の快適さ。機能切り替えやメニュー画面切り替えのスピードであったり、多くのユーザーに馴染む操作性である。だが、表示スピードや利便性を確保した上で美しい外観、そして画面というならもはやなにも言うことはない。実際に3世代ほどサイバーナビを私的に購入して使ってきた私の体感で言うと、新サイバーナビは速くなったし、美しくなったし、より使いやすくなった。
定評ある機能はそのままに、生まれた変わった新サイバーナビ
次世代のカーナビへと進化した新サイバーナビ。そのキーポイントとなったインターネット接続で実現した機能ばかり紹介してしまったが、新サイバーナビの魅力はもちろんそれだけではない。カーナビのアンプとは思えない高音質、ハイレゾ音源に対応するだけでなく、ノーマルな音源もハイレゾ相当で再生する特許出願中の機能「MSR(マスターサウンドリバイブ)」と音に関してはさすがのパイオニア。
最初にも書いたが、クラウドを使うことでその時の最適なルートを選び出すスーパールート探索は、個人的に最高だと思っている。過去10年間に渡ってスマートループにより蓄積されたデータとリアルタイムの情報をミックスし、時間帯まで考慮したルート探索は「効率」という視点でドライバーに最適解を提供してくれる。提案される6つのルートから任意のものを選ぶ方式も素晴らしい。
6ルート、どれも実用的
これなら分かりにくい高速道路の入り口や分岐などでも安心
また最近なにかと話題のドライブレコーダー、サイバーナビでは前後カメラを含めオプションとして充実したラインアップが用意されている。実はサイバーナビ、オプションのマルチドライブアシストユニットを追加すればドライブレコーダーとしても機能するのだが(別途SDメモリカードが必要)、私はさらに後方カメラも搭載している。そのほかにもマルチドライブアシストユニットがあれば、前方カメラで捕らえた画像を解析してさまざまな安全機能を提供してくれるし、カーセキュリティ機能まで利用できるようになる。
ネットワークに対応して情報を検索できるフリーワード音声検索の精度は相変わらず高いし、スマホと連携してドライブプランなどを立てられる便利なMapFanコネクト、音楽を限りなく楽しめるMUSIC CRUISE CHANNELといった機能も健在だ。操作に便利なサイバーナビ用のリモコン、スマートコマンダーも付属しているし、リアモニターとの連動も使い勝手がいい。
カーナビとしての基本機能はしっかり確保し、そこに最先端の技術を取り込んで進化し続けるサイバーナビ。今回の新サイバーナビはインターネットとの接続が大きなポイントとなった。新サイバーナビを搭載することで、クルマは広大なネットの世界に入ることができ、そこからあらゆる情報、コンテンツを入手できる。文字通り、新サイバーナビで世界が広がるのである。カーライフをより充実させたい、ビジネスでクルマをもっと活用したい。そういったニーズへ的確に応えるカーナビ、それが新サイバーナビなのである。