冬の怪物!! ヨコハマスタッドレスタイヤ史上最強のアイスガード 6を試す!!

降雪地帯では雪の便りがちらほら聞こえてきて、スタッドレスタイヤへの交換の時期を見計らっているドライバーも少なくないと思う。もちろん新しいスタッドレスタイヤの交換を検討している人もいることだろう。これから数シーズンを共に過ごすスタッドレスタイヤ選びとなれば、その性能が気になるのは当然だ。

そこで今回は、ヨコハマ史上最高の氷上性能を持つというスタッドレスタイヤ、「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」を取り上げる。スタッドレスタイヤはモデル毎に進化しており、最新と初期のスタッドレスタイヤを比較することができれば、歴然とした性能の違いに驚くだろう。

ヨコハマ史上最高の氷上性能を持つというスタッドレスタイヤ、「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」

氷上制動性能が15%もアップしたアイスガード 6

アイスガード 6の特徴のひとつに高い氷上性能がある。スタッドレスタイヤに期待される性能は、刻刻と変化するさまざまな路面に対応できることだと思う。特に突然現れるアイスバーンでの性能に期待するところは大きいだろう。氷上でもしっかりグリップできれば安全性は大きく向上する。

アイスガード 6では、前モデル「iceGUARD 5 PLUS(アイスガード ファイブ プラス)」でも定評のあった氷上性能がさらにレベルアップしていて、横浜ゴムのテストではなんと15%も制動距離は短くなったという。

実際に氷温をマイナス4度ほどに保った氷盤試験路を使って比較試乗をしてみたところ、初速度などの条件で微妙に変わってくるものの、明らかに短くなっているのがわかった。実際に制動距離の僅かの差でコッツン事故になっていることも少ないことを考えると、この差はドライバーにとって大きな味方になる。

横浜ゴムのテストコースにある氷盤試験路で氷上性能を比較した

従来モデルのアイスガード 5 プラスと比べ、氷上ブレーキ性能が15%も向上した

コーナリングはアイスバーンのテストコースで新旧のアイスガードを一定舵角で旋回して比べた。アイスガード 6は同じ円でも旋回速度が上がり、特にハンドルの効きがよい。同じ速度ならハンドル舵角が少なくなるので、安心感は高くなる。

アイスガード 6の氷上性能の高さは自ら『冬の怪物』というだけあって、氷だけでなく雪上性能も評価が高い。ではアイスガード 6に使われた技術を簡単に解説しながら、具体的な場面での性能の違いを見てみよう。

氷上性能はブレーキだけでなく、コーナリング性能も向上

アイスガード 6のサイトで新旧比較を動画で見ることができる(※画像をクリックすると横浜ゴムのサイトに飛びます)

コンパウンドの進化とトレッドパターンの刷新で手に入れた安心感

スタッドレスには様々な技術で性能を出していることはよく知られているが、特にコンパウンドの役割は大きい。ヨコハマでは、路面とタイヤの間に介在する水膜を吸い取って、吐き出す吸水ゴムを開発していて、モデル毎に進化させている。

アイスガード 6に使われているコンパウンドは「プレミアム吸水ゴム」とネーミングして開発された自信作だ。進化した吸水ゴムは、ヨコハマ独自のユニークな殻を持ったマイクロ吸水バルーンを改良して、吸水性の効率を上げた。この吸水バルーンは殻を持っているので、路面に接地する部分では殻が氷を引っ掻くようにグリップする効果も持つ。さらに吸水バルーンの間を埋めるように、「エボ吸水ホワイトゲル」を多数配置させることで、吸水性はさらにアップした。

このコンビネーションによってこれまでのアイスガード 5 プラスよりも吸水力が6%アップしているという。6%という数字だけ聞くとそれほどでもないように感じられるかもしれないが、停止寸前の制動力がグッと高くなるのは「プレミアム吸水ゴム」の効果は大きい。

50倍に拡大した新マイクロ吸水バルーン

【イメージ図】青い球体が新マイクロ吸水バルーン、白い球体がエボ吸水ホワイトゲル。氷の上に発生する水膜を除去する

新マイクロ吸水バルーンの殻の部分が氷をひっかき、エッジ効果を生む

もちろんコンパウンドだけで氷上能力が上がっているわけではなく、ゴムが路面に密着してグリップする力もある。そのために低温でもゴムに柔軟性を持たせなければならないが、アイスガード 6ではシリカを大量に使っている。シリカは低温でもゴムを柔らかく保つキーポイントの素材だが、実はカーボンとの相性が悪くてなかなか混ざりにくい。ここには新開発したシリカがよく混ざる分散剤「シリカ高反応ホワイトポリマー」をコンパウンドに使っている。これにより氷の小さな凹凸にも柔軟に対応して氷に対してゴムの粘着力を高めている。

ゴムが硬くなりやすい低温時にも柔軟性を確保し、氷の細かな凹凸に密着することでグリップを確保

このように吸水バルーンを中心としたコンパウンド技術の向上で、カーブやブレーキでのグリップ力が高まり、運転に余裕ができた。氷の上は絶対グリップが小さいので過信してはいけないが、目に見えないミクロの世界の技術の向上は頼もしく力になる。

左右非対称のパターンもアイスガード 6の特徴の一つだ。IN側パターンは接地面積を増して、コンパウンドが氷上でのグリップ力を向上できるように働き、OUT側は溝面積を増やすと同時にブロックを大きくとり、排雪性と雪を挟み込んでグリップする力を両立させている。

向かって左側がIN側で赤い部分がパワーコンタクトリブ。幅広のリブとすることで接地性を向上し凍結路面やウェット路面に効く。青い部分、ライトニンググルーブは排水性を確保するとともに、OUT側のミゾと合わせて雪柱せん断力で雪上性能を確保している

圧雪路の直進安定性はこれまでのアイスガード 5 プラスでも安心感が高かったが、アイスガード 6ではズッシリとハンドルへの手応え感が高くなった。特にコーナーではハンドル追従性が高く、スーと曲がっていく所はちょっとびっくりだった。試乗したのがクローズドのテストコースだったので、ちょっとスピードを上げてみたが、前後のグリップバランスが優れて、ハンドルがよく効くのと同時にリアが流れ出すタイミングもユックリして、ドライバーが対処できる余裕があることを確認した。

コーナリングでのハンドル追従性は驚くほど。限界を超えても一気に破綻することがなく、いざというときにも余裕を持って対応ができそうだ

オレンジオイルが実現した、4年目でも安心の長持ち性能

安心と言えばタイヤは素材の性質上、時間を経ると性能が落ちる経年変化を起こすのはやむをえないところだ。ただ、コンパウンドが氷上性能に直接影響するスタッドレスタイヤではゴムの劣化は極力避けたいところだ。

スタッドレスタイヤの場合、夏シーズンの保管状況で性能はかなり変わるが、個人的には冬シーズンだけ履く使い方で、3シーズン目ぐらいから少しずつ性能が落ちていくのが通常だった。ところが、アイスガード 6ではゴムの柔軟性が長期間保持できる「オレンジオイルS」を新たに採用した。オレンジオイルは夏タイヤで以前から使われ、ウェットで効果アップに使われていたが、今回の「オレンジオイルS」は低温での柔軟性とそれに伴う経年変化に強いゴムを作ることに成功している。ヨコハマのデータによれば、4年後も初期性能の低下は僅かだというから、目立たないがユーザーにとって嬉しい性能だ。

オレンジオイルSの採用で経年変化にも強くなったアイスガード 6。4シーズン目でも性能劣化がわずかというのは、あまり距離を走らない人にもうれしい

アイスガード 6はグリップに加えて雪道に楽しさが加わった。技術の進歩は素晴らしく、スタッドレスの性能向上には驚くばかりだ。

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