冬の怪物!! アイスガード 6が非降雪地域でも安心できる理由

ヨコハマの最新のスタッドレスタイヤ、「iceGUARD 6(アイスガード シックス)」。15%も向上した氷上ブレーキ性能と、アイスバーンでのハンドルの効きや積雪などでのウインター路面でのパフォーマンス、4年後も経年変化が少ないと言われる長持ち性能については前編に記してあるので、そちらに譲るが、一言でいうと氷上の性能の高さと積雪での安心のハンドリングを体験して、最新のスタッドレスタイヤの進化を改めて知ることになった。

ヨコハマ史上最高の氷上性能を持つアイスガード 6

サイズリストはコチラ。タイヤサイズが更に充実して選びやすくなった

しかしスタッドレスタイヤの氷上/雪上性能についてはよく語られるが、その他の性能についての記述は少ない。そこで今回はウェットやその他の性能について実力をチェックしていく。

ウェット路面にも強いアイスガード 6

まずウェットのブレーキ性能にフォーカスすると、スタッドレスタイヤはウェット路面になると思いのほか制動距離が伸びてしまうことが知られている。それは氷上性能を出すために設計された柔らかいゴムと、エッジを効かせるため細かく溝の入ったパターンが、逆に影響してしまってブロックが倒れ込みやすくなり、その結果、タイヤと路面の接触面積が減ることで摩擦力が低下したり、水膜を除去する力が減ったりして、ウェット路面で制動距離を伸ばしてしまうのだ。さらにタイヤと路面との間の密着が減少し、水膜を完全に除去することが難しくなる。水膜に乗ってしまうためだ。

そのウィークポイントを改善したのがアイスガード 6だ。接地形状とブロック構造、そしてコンパウンドの相乗効果でウェットに強いスタッドレスタイヤを作り上げた。

トヨタ クラウンにアイスガード 6を装着し、雨の高速道路や一般道で試乗した

まずプロファイルで接地圧分布を均一化し、その上で強い制動力が働いてもブロック間がお互いに複雑に噛み合い倒れにくくなって、接地面を確保している。そのうえで氷上性能でもその原動力となっているプレミアム吸水ゴムと呼ばれるゴム(柔軟効果が大きいシリカを多く配分することで低温でも柔軟性を保てる)で、路面との密着効果を上げている。つまり、排水路を確保したうえで、タイヤが路面に密着させることでウェットグリップを上げていることになる。

先代モデル(右)と比べ接地圧をより均一化することでウェットグリップ性能を確保

立体形状のサイプがお互い支え合う「クワトロピラミッドサイプ」が、ブロック剛性を向上させ、接地性を確保

従来モデルのアイスガード 5 プラスと比べ、ウェットブレーキ性能が5%向上

パターンについて見れば、アイスガード 6は排雪性に優れた方向性、左右非対称パターンを持つ。フットプリントのイン側は接地面積を大きくアイスバーンや舗装路面で効果が強く、アウト側は溝面積を大きくとっているので、ウェットの水膜が厚いところでは、このアウト側の溝が効果的に排水する。

左右非対称でインアウト指定のアイスガード 6

特にアウト側に設けられた太い溝が排水性に大きく貢献している

ウインターシーズンでも積雪地に入る前に、ウェット路面や雨の場面も少なくない。こんな時にアイスガード 6は強い味方になるのは間違いない。

もちろん気温の高いシーズンに入ると夏タイヤのほうが有利なので、アイスガード 6をオールシーズンタイヤ的に使うのは勧めないが、ウインターシーズンには高い安心感がある。

轍に水たまりができたようなシチュエーションも走ってみた

片輪だけ水たまりにはまるような状況でもハンドルを取られにくい

前後方向だけでなく、横方向にも大きく排水できているのがわかる

横浜ゴムのデータでは100km/hからの制動で(水深1mmの場合)、従来のアイスガード 5 プラスよりも5%ほど短く停止できるという。実際に使ってみたところ、ウェットの横断歩道のペイントのような、これまでのスタッドレスタイヤが苦手としていた状況においてもブレーキでの滑り感が小さく、止まれる確実性が高まったと感じた。

冬場の雨でも安心して走れるアイスガード 6

氷上、雪上、ウェット性能を向上させながら静かになったアイスガード 6

スタッドレスタイヤはひと昔前に比べるとかなり静かになったものの、複雑なパターンが災いして、ヒューンという高い耳障りな音は相変わらず発している。アイスガード 6は複雑なパターンで氷上性能、雪上性能、ウェット性能をレベルアップさせながらも、パタ―ンの配列を緻密に計算して配慮して、パターンノイズを低減している。

非降雪地域の人にとってはスタッドレスタイヤといってもドライ路面の性能は無視できないだろう

パターンノイズ比較では、従来モデルのアイスガード 5 プラスと比べて騒音エネルギーで実に33%も低減した

市街地で低速で走っている印象では夏タイヤと変わらないし、徐々にスピードを上げるにつれて、気を付けているとパターンノイズが徐々に大きくなっていくのがわかるが、それでも意識しなければ気になるレベルではない。高速になると夏タイヤとは違った音が耳に届くが、アイスガード 5 プラスに比べるとピーク音が明らかに小さくなっている。横浜ゴムのデータではパターンノイズでは従来比で33%減、タイヤと路面の接地で起こるロードノイズでは25%減になっているという。騒音エネルギーなので実感ではそれほどの違いはないが、確かに静粛性は随分向上しており、今回試乗で使ったクラウンのような、遮音性の高い最近のクルマではとても静かに感じられる。

ゆっくり走る市街地はもちろん、高速道路でもパターンノイズが抑えられている

運転席はもちろん、後席でもノイズを確認した。特にクラウンのようなクルマではその静粛性の意味するところは大きいだろう

低発熱ベースゴムで燃費を改善したアイスガード 6

もう一つ、アイスガード 6の進化は燃費にも効果がある。いつもドライ路面で、アイスガードと夏タイヤとの燃費がほとんど変わらないことに気づいていたが、アイスガード 6ではそれに磨きがかかった。

アイスガードの基本コンセプトはこれまでも「氷に効く」「永く効く」「燃費に効く」の3本柱を掲げている(これに「ウェットに効く」、「音に効く」が加わり5本柱となった)。アイスガード 6では当然、「燃費に効く」も追及しており、前述のようにウェット性能を大きく向上させながら転がり抵抗の低減も両立させた結果、燃費も改善されている。タイヤが回転するときのタイヤサイドのたわみを適正化することによってエネルギーロスを抑える低燃費技術を応用。さらにトレッドゴムの下に入った新開発の低発熱ベースゴムを使って、転がり抵抗を最大で2%小さくした。なんと転がり抵抗はグレーディングでAを取っているヨコハマのスタンダードタイヤ「ECOS」に匹敵すると言う。

同社の低燃費タイヤ「ECOS」ところがり抵抗が同レベルだというアイスガード 6

ベースレイヤーに低発熱ゴムを採用することでころがり抵抗を2%低減

ヨコハマの低燃費タイヤの証 BluEarthのロゴが入る

アイスガード 6は“冬の怪物”とネーミングされているようにヨコハマ歴代のスタッドレスタイヤの中で最高の性能とバランスを実現した自信作だ。

個人的には都内在住なので12月に入ってスタッドレスタイヤに履き替え、4月の声を聞いてから夏タイヤに履き替えるルーティンを続けているが、アイスガード 6のウェット性能の強化と経年変化の少ないタイヤ性能はさらにとっても心強い。冬の機動力を損なわない強力なツールを手にすることで冬のドライブもますます楽しくなりそうだ。

前編はコチラ