長期レビュー
正田拓也の中古「サンバー」生活
第3回:やっと走行インプレッション(笑)と黒い水
(2016/5/2 00:00)
連載がはじまって読者のみなさまをはじめ、友人知人からもたくさんのご意見や激励のお言葉いただきありがとうございます。1つだけ答えておくと、WRブルーには塗りません!!! ということで、よろしくです!
さて、やっと走れるようになったボロサンバー。近所の買い物はもちろんのこと、ボロいけれどショッピングセンターをはじめ、都心のオフィスビルの駐車場でもどこでも普通に乗り付けている。特に職人系ホームセンターの駐車場は似合いすぎる。
走りはとにかく軽快で楽しく、そして快適
走り始めていちばん感じるのは「楽しい」ということ。いわゆるスポーツカー的なクルマのMT車ももちろん楽しいが、サンバーは小さく軽くて何もかもダイレクト、しかもちょっとボロいところがまたダイレクト感を強調し、とにかく走らせて運転して楽しい。ベクトルの違った楽しさなのだ。
まわりの仲間にも軽トラを見せたり少し運転してもらったりする機会があるのだが、見た人、ちょっと運転する人、すべてが笑顔。こんなに自分もまわりも楽しいクルマというのはほかにない。
もちろん、コーナーを素早く駆け抜けていくのには向かないし、そういうキャラクターでもない。しかし、他にないダイレクト感と、かわいらしいエンジンが一生懸命回転して独自のエキゾーストノートを奏でる様子は、直線を走らせているだけで楽しくなってくるのだ。
ハンドリングは、フロントタイヤの位置が自分の真下という運転間隔からか、セダンやクーペとは違った感覚。しかも中央の遊びが大きい味付けで、ハンドルを回すとスっと頭が入っていく……という感覚はない。とはいえ、少し慣れてくればコーナーも違和感なく走り抜けられる。おそらくトラックのボディは同じサンバーでもバンより重心が低いためか、ロールが大きくなったりボディが大きく左右に揺れるという感覚もない。
小型トラックやもう少し大きなトラックよりも足が固いため、ワンテンポ遅れるというほどでもないが、意のままにというレベルでもない。おそらくタイヤでだいぶ変化させることも可能と思うが、あいにく荷物車は履くタイヤが大幅に制限されるため、メーカーが対応製品を作ってくれない限り、車検が通るハイグリップやワイドな高性能タイヤを履くということができない。
また、加速は人によって感覚が違うが、適切なギアを選んでやれば交通に迷惑をかけることは全くなく走れ、ブン回せばけっこう速い。上り坂から本線に合流するような自動車道では遅さを感じることもあるが、それ以外は問題なし。自走の立体駐車場の坂道は3速でもぐいぐい登っていく。本格的に荷物を積んだらどうなるかはわからないが、今のところはパワーで不足を感じたことはない。
乗っていて不安な点を言うと、横風が強いときには簡単に流されること。特に高速道路での流れ方がひどく、風のある日は要注意だ。しかし、風がなければ直進性にも全く不安はない。制限速度いっぱいの100km/hの走行でもハンドルは軽く手を添えておけば問題ないのだが、風が強くなったときだけ一変する。
乗り心地については、思ったよりもガタガタという感じはなく、道路の凸凹は角が取れて感じるという印象。気になるとすればタイヤの径が小さいことによる、大きめの段差や道路陥没による突き上げや振動が大きいくらい。高速道路は工事箇所を除けば道路は比較的フラットなので、意外に快適だ。
騒音という面では、5速に入れた状態でも100km/h走行では毎分5000回転で回るエンジンはそれなりに大きい音を発生する。しかし、運転席からいちばん離れた場所にエンジンがあるため思ったより静か。100km/h走行時でも助手席の人とふつうの声での会話が余裕でできる。
あらためて装備などを紹介
ここであらためてボロサンバーのスペックを紹介する。グレードは「TB」で4WD、トランスミッションは4WDモデルなのでEL(エクストラ・ロー)が付くマニュアルトランスミッション。ELは1~5速とは別にあり、一部ではELを数えて6速MTと書いてあることもあるが、ELポジションに入れた場合は強制的に4WDになるので、通常の変速では使えない。そして、あまりにローギアーすぎるので、これを段数に入れてしまうのはちょっと違う。
2003年ごろのモデルのスタイルは、フロントマスクが3代目レガシィに似ていること。ホワイトのボディーカラーも3代目レガシィのホワイトと同じ色を採用し、レガシィを強く意識したスタイルとなっている。
フロントマスクの特徴のひとつ、ヘッドライトがマルチリフレクタータイプとなっている。比較的はっきりとした照射範囲を持つ。また、この次のマイナーチェンジ後のグリルが横長になったサンバーではヘッドライトにリモート式の光軸調整機構が付いているが、この時期はない。
この時期のモデルは、シートの表皮が布張りという点も見逃せない。なぜかこの時期だけ手触りのよい布張りなのだ。古い軽トラだと長年の酷使でシートが破れていることも多いのだが、うちにやってきたサンバーはなぜかシートの破れナシというよい状態だった。16万キロ走行とは思えないほどウレタンの弾力も残っていたので、途中で交換している可能性もある。
そのほか「TB」には豪華と思われる装備は一切なし。ラジオは1DINにスピーカーまで内蔵しているタイプのため、通常のオーディオを入れる場合はスピーカーや配線まで用意する必要がある。窓は手回し、集中ロックなし、間欠ワイパーなし、エアコンは付いてるが助手席側に吹き出し口なし。ついでに言えばトリップメーターすらない。
シートを洗うと出てくる出てくる黒い水
前回、室内の泥をきれいにしてシート下のカーペット洗浄とゴミ掃除をした。それでも気になるのはシート。なんとなく薄汚れていることとタバコ臭がある。シートが簡単に外せることがわかったので、シートを洗ってしまおうと思ったのだ。
しかし、丸洗いとなると乾燥の問題もあったり、一応付いているリクライニングやシートの前後スライド機構にも影響が出るかもしれない。そこで、シート表皮を剥がして洗ってやろうと思いついた。
シートを裏から見ると、鉄のリングでシート表皮とウレタンが結合されている。これを外せば表皮が外れて洗濯ができると思い、リングを外しはじめた。しかし、このリングは思いのほか数が多く、表皮をすべて剥がすには手間と時間がかかる。
洗濯は洗濯カゴにゴミ袋をかぶせたものをバケツとし、漬け置き洗いをすることにした。あまりにひどい汚れが想定されたので、洗濯機に入れてしまうは気が引けてしまったからだ。
やはりというか想像どおり、お湯と洗剤を入れてかき混ぜると出てくる出てくる黒い水。1時間ほど浸け置いたあと、5回すすいでもまだ水の黒さがおさまらない。10回目くらいで黒から薄い茶色に変化し、15回くらいすすいだところでだいぶ水の汚れがおさまってきたので、そこで終了とした。13年、16万キロの汚れは半端じゃなかったのだ。
よく乾燥させたあと、ナイロン製の結束バンドでシートを止めていく。はめ込んだシートからはだいぶ臭いも和らいだ。車内に臭いが残っているとすれば、天井の布素材に染みこんだヤニだろうか。これもいずれクリーニングしたい。
気持ちよく走行可能に!
シートは見た目にも汚れはなくなり、何よりもあの黒い水の分だけ中に染みこんだ汚れが取れたということでもあり、乗ってて気持ちよくなった。これでだいぶ実用的になってきたので、次はもう少し装備をよくしていきながら、トラックとしての活用法も探ってみたい。