日産、新型「フェアレディZ」発表会
「新型Zは風邪をひいていても乗りたくなる」

12月1日開催



 日産自動車は12月1日、東京 銀座の日産本社ギャラリーで新型フェアレディZ(形式名:Z34)の発表会を開催した。ギャラリー前には、午後1時の発表会開始前から新型Zが数台展示されており、道行く人の注目を集めていた。

日産本社ギャラリー前に展示されたZ34発表会に展示されていたZ34



日産自動車株式会社最高執行責任者(COO)の志賀俊之氏。スポーツカーをZ、スカイランクーペ、GT-Rと3つもラインナップしているのは「日産が車の走りに対する情熱を持ち続けていることの表れ」

 発表会での挨拶で志賀氏はフェアレディZを「2009年に40周年を迎え、累計170万台を販売。日産というより、日本を代表するグローバルスポーツカー」と紹介。先代のZ33は2002年の発売以来、世界で累計24万5000台を販売、日本ではセグメントシェア20%強、6年間で3万7000台を販売したという。

 新型のZ34は、発売前に世界各国で累計20万kmの品質確認走行を行ったと明かし、「Zをこよなく愛し続けていただいている世界中のお客様のご期待に十分にお答えできる車に仕上がった」とした。日本では月販500台を予定している。



商品企画本部 商品企画室 チーフ・プロダクト・スペシャリストの湯川 氏

  チーフ・プロダクト・スペシャリストの湯川伸次郎氏は製品全体の概要をプレゼンテーション。Z34のキーワードを「Z NESS(Zらしさ)」と「NEW NESS(新しさ)」にまとめた。

 Zらしさは、「決してお客様を裏切らない高性能とデザイン」とし、「最新の車として満たすべき安全性や装備を実現すると100kg以上の重量増が見込まれるが、メンバーの通し方などを効率化し、エンジンフードやドア、バックドアをアルミ化したことで、100kg以上軽量化した」「さらにホイールベースを100mm短縮した」と、運動性能を重視して軽量化とサイズ変更を行ったことをアピール。

 またバルブタイミングとバルブリフト量の可変機構を持つVQ37VHRエンジンの採用と、「熟練ドライバーより速いシフトダウンが可能な、ヒールアンドトウを自動化した世界初のシンクロレブコントロール付き6速MTと、パドルシフト付き7速AT」で「世界トップの走る・曲がるを実現した」と述べた。

Z34のコンセプトは「JUMP」。「運動性能もデザインも、Z33を大幅に超えることを要求した」(湯川氏)ホイールベースを100mm短縮。100mmは直進安定性を下げずに運動性能を上げる最良のポイントとして選択されたエンジンフード、ドア、バックドアをアルミ化
「アルミでバックドアを作るためには、この形状にする必要があった」と語る湯川氏。Z34には「モードチューニング」を施したという。「たとえばサスペンションの取り付け部分はハンドリングのためには絶対に動いてはいけないところだが、ほかは多少動いても運動性能に影響を与えない。短距離を走るのに、長距離を走る筋肉は要らない、という考え方」(湯川氏)テストドライバーは技術開発本部 車両実験部 ダイナミックパフォーマンス実験グループ テクニカルマイスターの加藤博義氏。氏は、厚生労働省が卓越した技術者として表彰する「現代の名工」の1人。Z34のテレビCMに出演する。「Z33をお使いいただいているお客様がZ34に乗ると、すぐに軽快さやスタビリティの良さが分かると思います」(加藤氏)加藤氏(左)と志賀氏。発売に先立つ昨日、新型Zを借りて走った志賀氏は「風邪気味だったので自宅の周りをぐるっと走っておしまいにするつもりだったが、ついロングドライブしてしまった」と、新型Zを「風邪の人でも楽しくさせる車」と表現
エンジンはVQ37VHR。インフィニティG37と同じエンジンで、コンピューターなどのチューンも同一だが、排気系のみ異なる可変バルブリフト(VVEL)のメリットシンクロレブコントロール(オートブリッパー)が付いた6MTとマニュアルモード付き7AT
6MTのシフトレバー7ATのシフトレバーラゲッジルーム。銀色のバーは、ラゲッジルームの荷物が前に飛び出さないようにするためのもので、メンバーではない。Z33にあった太いタワーバーはなくなった。「ボディの下側の構造材だけで、このままオープンカーを作れるくらいの剛性を確保しています」

 デザインを担当したデザイン本部プロダクトデザイン部 アソシエートプロダクトチーフデザイナーの谷中譲治氏は、Z34のデザインを「機械だけどアスリートの体のような機能美を持った、“センシャルメカニズム”」と説明。ヘッドランプからリアまで弧を描くウエストラインと、後退したキャビンにより「リヤの駆動輪にパワーが集中しているかのような明快なFRプロポーション」を作り、「広がった全幅は前後フェンダーの張り出しに使った」ことで筋肉質のボディーを表現。さらに前後のランプは「ボディーの大きな流れの中にあって、書道の止め、跳ねのように置かれることで、ボディの塊を引き締めている」。

 一方インテリアは、「各部分の機能ごとに明快に表現を作り分けコントラストを作った」とした。

 谷中氏によれば、ホイールベース短縮や全幅拡大は、スタイリングチームの要請ではなく、エンジニアが必要と判断したことなのだという。「スポーツカーは、最初にデザインありきではよくないと思う。Z34では走りをよくすることを優先したかった。デザインはその結果」

全幅が広がった分はフェンダーの張り出しに使われた「ブーメランモーション」と呼ばれるランプ形状。LEDポジションランプが組み込まれる
ボディーサイドのエンブレムはターンシグナルランプを兼ねるVersion STのコックピットVersion Tのコックピット
Version STとTにはヒーター付きのパワーシートを装備
メーターは、エンジンをかけると一回振り切れてから0に戻るスイープ動作をする
屋根を切り取るのが難しそうなウエストラインですね、と谷中氏に聞いてみると「ロードスターもうまくまとまってますよ。クーペとロードスター、どっち買おうかと悩むくらいいいものになってます」。米国ではクーペとロードスターが2対1で売れているので、ロードスターも最初からロードマップに入っているのだデザインコンセプトは「センシュアルメカニズム」統一感による高品質
シートなどは専用素材を採用ドライバーとの一体感を演出カラーバリエーション
インテリアのバリエーショングレード構成テレビCMは運動性能を強調
テレビCMの1コマ。加藤氏はFR系プラットフォームをメインに担当。「フロントタイヤが動いてからリヤタイヤにGがかかるまでにはどうしてもディレイがありますが、日産車は全部このタイムラグが同じになるようにしています。FRもFFも」(加藤氏)。日産車らしさの味付けはこんなところにもある発表会にはZの父、Mr.Kこと片山豊氏の姿も。Z34の感想は「屋根のラインが自然で素敵だ」Z34のミニカーもすでに用意されている

URL
日産自動車株式会社
http://www.nissan.co.jp/
製品情報
http://www.nissan.co.jp/Z/
ニュースリリース
http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2008/_STORY/081201-01-j.html
デビューイベント
http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2008/_STORY/081201-02-j.html

【2008年12月1日】日産、「フェアレディZ」をフルモデルチェンジ
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081201_38201.html
【2008年11月20日】【2008LAオートショー】日産、新型Z「370Z」を発表
http://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/2008la/20081120_38143.html
【2008年10月29日】日産、新型「フェアレディZ」の特設Webサイトを開設し写真を公開
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081029_38013.html

 

(編集部:田中真一郎)
2008年12月2日