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スーパーフォーミュラ、第4戦は横浜ゴムの新ソフトタイヤ投入で新展開に

8月20日~21日に「ツインリンクもてぎ2&4レース」開催

2016年8月20日~21日 開催

開幕戦で優勝した山本尚貴選手(TEAM 無限)

 日本のレースとしては最高格式となる全日本スーパーフォーミュラ選手権は、8月20日~21日に栃木県茂木町のツインリンクもてぎ・ロードコースにおいて「ツインリンクもてぎ2&4レース」として第4戦が開催される。ここまで3戦を戦ってきたスーパーフォーミュラは、3戦ともに異なるウイナーになるなど混戦が続いており、チャンピオン争いは混沌としている状況だ。

 そうした混戦を演出している最大の要因は、今シーズンからワンメイクタイヤが横浜ゴムが供給するADVANレーシングタイヤへと変わったことで、どのチームも十分なデータを持っていないため、どこかのチームが独走という展開にならず、サーキットによって速い車両が変わるという状況を生んでいる。しかも、今回のツインリンクもてぎのレースでは、実験的な取り組みとして、ソフトタイヤという、より柔らかいコンパウンドのタイヤが供給される。

 かつ、決勝レースではこのソフトタイヤの利用も義務づけられているため、チームの作戦の幅が大きく広がることになる。追い越しが難しいとされているツインリンクもてぎのレースも大きく様変わりし、大きな順位変動が多く見られるレースとなる可能性が高い。

3戦終了時点でポイントリーダーが13点しか獲得できていない激戦

 例年スーパーフォーミュラでは、激戦・激闘が繰り広げられているが、今シーズンに関してはそれがさらに加速してより激しい戦いになっている。

第3戦終了時点でのポイントスタンディング
順位カーナンバードライバー第1戦第2戦第3戦合計
116山本 尚貴112-13
219ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ--1010
32国本 雄資81.5-9.5
41石浦 宏明-639
510塚越 広大4419
637中嶋 一貴--88
736アンドレ・ロッテラー20.557.5
841ストフェル・バンドーン6-17
93ジェームス・ロシター3-47
1020関口 雄飛--66
1134小暮 卓史5--5
1211伊沢 拓也-3-3
1340野尻 智紀-2.5-2.5
147ナレイン・カーティケヤン--22
1564中嶋 大祐-1-1
1665ベルトラン・バゲット1--1
-18中山 雄一---0
-8小林 可夢偉---0
-4ウィリアム・ブラー---0

 第3戦 富士戦終了時点でのポイントスタンディングによると、ランキングトップは開幕戦を制した2013年のシリーズチャンピオン 山本尚貴選手だが、3戦を終えてのポイントはわずかに13点でしかない。

 現在のスーパーフォーミュラのポイントシステムでは、1ラウンド1レース制の場合には優勝が10点、かつポールポジションで1点を得ることができるので、0点の選手でも1レースあれば2点差までに追いつけるポイントしか、ポイントリーダーが持っていないという状況だ。実際、現在2位のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手は開幕戦、第2戦とノーポイントが続いていたが、第3戦で優勝したことで10点を稼ぎ、一挙に2位に来ているのがその何よりの証明と言える。

 こうした混沌としたポイントスタンディングになっている1つの理由は、第2戦 岡山戦が降雨により赤旗中断、そのままレース終了となってしまったことで、ポイントが半分となっているからだ。2つめの要因としては、各チームの戦力が拮抗しており、レースによって強い車両が入れ替わっていることだ。例えば開幕戦であれば優勝した山本選手の無限チーム、第2戦であればセルモ・インギング、第3戦はインパルと強いチームが入れ替わっており、どこかのチームだけで飛び抜けて速いというここ数年の状況とは大きく様変わりしているのだ。

 また、今シーズンはルーキーの活躍も目立っている。今シーズンは2人の大型ルーキーがデビューしている。最も注目を集めているのは、昨年のGP2チャンピオンで、今年のF1 バーレーンGPで負傷したフェルナンド・アロンソ選手の代替としてマクラーレン・ホンダのレースドライバーとして急遽デビューしたのに見事10位に入ったストフェル・バンドーン選手。スーパーフォーミュラで開幕戦で予選4位、決勝3位と初レースで初表彰台を獲得したほか、第3戦ではコンディションが刻々と変わっていく予選で見事ポールポジションを獲得するなど大活躍を見せている。

ストフェル・バンドーン選手
関口雄飛選手

 もう1人の注目のルーキーは、インパルチームの2台目のドライバーに抜擢された関口雄飛選手。SUPER GTでは押しも押されぬGT500のドライバーだが、これまでスーパーフォーミュラにはチャンスがなかった関口選手は今シーズンインパルからデビューのチャンスを得て、デビューレースで予選3位を獲得し高い順応性を見せたほか、第3戦では3位で初表彰台を獲得と上り調子だ。

レースを面白く演出する赤いマーキングのソフトタイヤ

 こうしたルーキー大活躍、各チームの戦力均衡という新しい状況を生み出している最大の要因だと考えられているのが、今年からワンメイクタイヤのサプライヤーが横浜ゴムに変更されたことだ。

 非常にシンプルに言ってしまえば、各チームとも横浜ゴムが供給しているADVANレーシングタイヤに関しては、十分なデータの蓄積ができていない。もちろんテストはしているが、レースに関してはぶっつけ本番的な要素も少なくないし、そのために持ち込みのセッティングを外すと、その週末全体にわたって下位に沈んでしまうということが起きているからだ。相対的にそれがうまくやれたチームが上位に来る結果となり、どこか1つのチームだけで独走するという展開がなくなっているのだ。

 ツインリンクもてぎ2&4レースとして開催される今回の第4戦では、それに加えてソフトタイヤと呼ばれるより柔らかいコンパウンドを採用したタイヤが新たに投入され、レースで利用できるタイヤはそのソフトタイヤと、従来利用されてきたタイヤ(ミディアムタイヤと呼称される)との2つのタイヤを使用する必要が出てくるのだ。

 この新しいソフトタイヤの投入は、スーパーフォーミュラを主催する日本レースプロモーション(JRP)と横浜ゴムが協力して行なっているレースを面白くする試験的な取り組みで、今シーズンに関してはこのツインリンクもてぎの第4戦だけで行なわれるものだ。観客に分かりやすいように、ミディアムタイヤは従来と同じように白いマーキング、ソフトタイヤは赤いマーキングが施され、ひと目で見て分かりやすいようになっている。

 現在のスーパーフォーミュラでは、チームが持ち込めるドライタイヤは新品タイヤ4セット+中古タイヤ(当該レース以前に使われたタイヤからチームが指定したタイヤ)2セットと規定されているが、今回のツインリンクもてぎの第4戦では、新品ソフト2セット+新品ミディアム2セット+中古タイヤ2セットの合計6セットを持ち込むというルールになる。

 また、決勝レースではそれに加えて、「装着された1セットから別の1セットへのタイヤ交換の義務付け」「タイヤ1セットとは、フロント/リア合計4本のこと、かつ4本全てがミディアムもしくはソフトの同一コンパウンドにすること」「決勝レース中においては、必ずミディアム/ソフトの2種別のタイヤを使用のこと」というルールが義務づけられることになる。

 JRPと横浜ゴムは今回のソフトタイヤを来年に向けた"お試し"と位置づけており、今回の取り組みがうまくいけば、このソフトタイヤが来年、他のレースでも導入される可能性がある。

 余談だが、JRPは従来のコントロールタイヤをミディアムタイヤ、今回導入する柔らかいコンパウンドのタイヤをソフトタイヤと呼称すると決めたというのは以前の記事でお伝えしたとおりだが、従来のタイヤがミディアムということは、将来的には“ハードタイヤ”がどこかで導入される可能性があるということなのだろうか……。そのあたりも含めて、スーパーフォーミュラのタイヤ、まだまだ楽しいことがいろいろ隠されていそうだ。

ソフトタイヤの投入により、予選も決勝も選択の幅が広がる

開幕戦のスタートシーン

 このソフトタイヤに関しては、第3戦 富士戦の直後に富士スピードウェイで行なわれたテストで既に各チームが試しており、富士スピードウェイで1秒近いゲインがあるとされている。つまり、ミディアムからソフトに変えるだけでそれだけの違いを得ることができるということだ。1周1分24秒の富士スピードウェイで1秒ということは、1周で1分32秒程度のもてぎでは1秒を上回るゲインが期待できるかもしれないと考えられ、もっと多くのメリットがあるかもしれない。

 それがどんなことを意味するかと言えば、ソフトは2セットしか供給されないので、そのソフトをどのタイミングで使うかが課題となる。スーパーフォーミュラのセッションは土曜日 午前のフリー走行、土曜日 午後の予選はQ1、Q2、Q3とノックアウト方式で3回行なわれる。まず頭を悩ませるのは、フリー走行でソフトタイヤを使うかどうかだろう。ここで使うと、新品2セットのうち1セットを使うことになる。フリー走行では、持ち込みの中古を使い、予選に向けてのタイムアタックで1セットを使うというのが定番だが、今回は新品4セットは、ソフト2セット、ミディアム2セットとなっているので、フリー走行でソフトを使うと、予選で使える新品のソフトが1セットになってしまうのだ。

 ソフトをフリー走行で使わないで2セットとも予選に向けて温存したとしても、Q3まで進むチームは、Q1、Q2でソフトの新品を使うと、新品はミディアムしか残っていないことになる。このため、もし仮にQ1を新品ミディアムでQ2に進むのに十分なタイムを出すことができれば、Q3に向けて新品ソフトを残すことが可能になり、圧倒的に有利になる。しかし、既に述べたように、富士スピードウェイで1周で1秒近いゲインがあったためツインリンクもてぎではそれ以上のゲインがあると予想されている。であれば、マシンはワンメイクになっているスーパーフォーミュラではQ1から新品ソフトを使わないとQ2へ進むのは難しいと考えられる。上位チームにとっては、非常に難しい判断になりそうだ。

 もう1つのポイントは、決勝レースでは必ずソフト、ミディアムを1度は履かないといけないことだ。2回ピットストップをすれば勝負権を失う現状を考えると、スタート時にソフト>ピットストップでミディアムに交換ないしは、スタート時にミディアム>ピットストップでソフトに交換という2つの作戦が考えられる。どちらの作戦をとるかは、ソフトタイヤの持ちをどう考えるか次第だろう。仮にソフトタイヤがいわゆる“タレないタイヤ”であるなら、ミディアムでスタートし、燃料が十分持つタイミングになったらピットに入ってソフトに交換して最後まで走るという作戦が常道だが、問題はこれまで誰もソフトタイヤでレース距離を走ったことがないことだ。仮に全然持たなければ、もう1度ピットインを強いられるという可能性もある。それを考えれば、むしろソフトタイヤで走る距離を短くし、ミディアムでのロングランを行なった方が結果的に速かったという可能性もある。

 いずれにせよ、今分かっていることは、このソフトタイヤがミディアムに比べて1秒以上のゲインがあること、そしてソフトタイヤが最後まで持つかは誰にも分からないということだ。これだけ不確定要素が多くてレースが面白くならないことなどあり得るのだろうか……。

ツインリンクもてぎ2&4レースは4輪と2輪のトップカテゴリーを1度で楽しめるお得なレース

 ツインリンクもてぎ2&4レースは、8月20日~21日の2日間にわたり、ツインリンクもてぎで開催される。このツインリンクもてぎ2&4レースは、スーパーフォーミュラの第4戦としてして開催されるだけでなく、2輪レースのMJF全日本ロード選手権シリーズ第6戦としても開催される。つまり、4輪、2輪それぞれのトップレースを1枚のチケットで見ることができるお得なイベントなのだ。また、サポートレースとして全日本F3選手権の第11戦/第12戦、N-ONE OWNER'S CUPなども併催されるため、朝から晩までレースの予定が詰まっている。そのほかにも各種のステージやピットウォーク、キッズウォークなどのイベントも多数予定されているほか、8月20日には車中泊やテント泊などによる場内宿泊も可能になっている。

 観戦チケットは前売り観戦券(自由席)が大人5000円、中学生までの子供は無料となっている。また学割として高校生以上の学生は2500円と安価に設定されている。この他各種のスペシャルチケットも用意されているので、詳しくはツインリンクもてぎのWebサイトでチェックしてほしい。