ニュース
GT-Rの販売・アフターサービスを担う「日産ハイパフォーマンスセンター」を見学してきた
日本一GT-Rを販売するカーライフアドバイザーにもインタビュー
2016年11月21日 00:00
日産自動車のハイパフォーマンスモデル「GT-R」は、V型6気筒DOHC 3.8リッターツインターボ「VR38DETT」エンジン、クラッチやトランスミッションなどを車両後方に移動してリアファイナルドライブと一体化した「独立型トランスアクスル4WD」などを搭載し、「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる」というコンセプトを具現化したモデルとして2007年12月に発売。
発売当初の2007年モデルは最高出力353kW(480PS)/6400rpm、最大トルク588Nm(60.0kgm)/3200-5200rpmというスペックだったが、年々改良が進められて2016年7月27日に発売された2017年モデルでは最高出力419kW(570PS)/6800rpm、最大トルク637Nm(65.0kgm)/3300-5800rpmにまで進化。
この2017年モデルでは、エンジン出力の向上に加えて静粛性と車体剛性の向上、内外装のデザイン変更に合わせて空力性能の改善を実施しており、2007年の発売以来最大規模で改良が行なわれている。2014年モデルから開発責任者を務める田村宏志氏は、2017年モデルを「いつまでも走り続けたいと思える、しなやかで大人な乗り味とピュアに楽しめるワクワクするようなパフォーマンスを高次元で両立させたプレミアム・スーパースポーツ」と紹介。こうした性能進化は市場からも評価され、2017年モデル(GT-R NISMO含む)は7月27日~8月25日までの約1カ月間で、2016年度の販売計画である800台を超える858台を受注している。
そんなGT-Rだが、販売とアフターサービスは「日産ハイパフォーマンスセンター(NHPC)」と呼ばれるGT-Rの特別教育を受けたスタッフが常駐する店舗が受け持っている。GT-Rという高性能モデルを販売するには専門知識が必要だし、その性能を維持するためのメンテナンスにも特別な設備が必要となる。そこで、日産ディーラーでは専門の教育を受けた“GT-Rマイスター”と呼ばれる認定カーライフアドバイザーと、GT-Rの技術や特別メンテナンスに関する教育を受けた“認定テクニカルスタッフ”が常駐するショールームと特別サービス工場を備えたNHPCを、2007年モデルの発売と同時に立ち上げた。
今回、そのNHPCの1つである日産プリンス東京販売 亀戸店(東京都江東区亀戸)を見学する機会を得たのでその模様をレポートしたい。
日産プリンス東京販売 亀戸店
住所:東京都江東区亀戸9-8-9
Tel:03-3684-2323(代表)
FAX:03-3684-4334
営業日:9時30分~19時(販売/サービス)
定休日(販売/サービス):火曜日
全国にある約2200店舗のディーラーのうち、NHPCは103店舗のみ
見学に先駆け、日産自動車 日本マーケティング本部 チーフマーケティングオフィス マーケティングマネージャーの清水愛氏がNHPCの概要について紹介。
清水氏によれば、NHPCを運営する条件として「スーパースポーツにふさわしい店舗設備が整っていること」「強い情熱と高度な専門性を持つGT-Rマイスターがいること」「GT-Rのパフォーマンスを最大限発揮する認定テクニカルスタッフがいること」の3点が必要とのこと。
日産の正規ディーラーは全国に約2200店舗あり、上記3点の条件を満たすNHPCは103店舗だけ。この103店舗だけがGT-Rを販売することができる。また、販売スタッフ(日産ではカーライフアドバイザーと呼んでいる)は全国に約1万7000人いるが、GT-Rマイスターは166人しかいない。
日産では、2012年にNHPCに求めることをGT-Rオーナーをはじめ、競合するインポートカーに乗るユーザーにアンケート調査を実施。その結果、もっとも重要視されたのが「最新モデルの常設、パフォーマンスを体感できる試乗機会の提供」「要望に沿った柔軟な対応をしてもらえること」「熱くGT-Rを語れるマイスター、ホームドクターとしての認定テクニカルスタッフが存在すること」だったそうで、「GT-Rをお求めになるお客様は非常にクルマに詳しい方が多いので、専門知識を持たないスタッフが対応してしまうとお客様ががっかりしてしまう。そのためNHPCでは知識をしっかり持ったGT-Rマイスターだけが接客できるよう定めた」と紹介。
また、NHPCを運用するにあたり、高精度アライメントテスター(John Bean V3D3 ARGO ULTRA)やVSDR(車両状態記録装置)の読み出し用ツール、電気・電子部品の診断などを行なう専用診断ツール、イモビライザー用専用セキュリティカード、窒素ガス充てん装置といったGT-Rのパフォーマンスを最大限発揮するためのサービス機器を有することが必要であることが説明された。
このGT-Rマイスターになるためには研修を受けた後に試験を受ける必要があり、研修では開発責任者や技術開発チームによる講習などに加え、パフォーマンス体感試乗や実車を使っての機能説明、「Premium edition」に設定されるオプション「ファッショナブルインテリア」で使用される皮革に実際に触れられる体験会などが行なわれるという。
なお、GT-Rマイスターの中のトップセールスマンは年間で平均15台を販売するとのこと。そのうち2014年度、2015年度の2年連続で全国1位に君臨するトップセールスマンが存在する。それが今回の取材で対応いただいた、日産プリンス東京販売 亀戸店の平山知之氏だ。平山氏とともに、亀戸店でGT-Rマイスターとして活躍する坂本孝博氏にインタビューできた。
カタログには出ていない開発秘話や想いを伝える
――GT-Rマイスターになったのはいつですか?
平山氏:2009年に「GT-R Spec V」(1575万円。現在はカタログ落ち)が追加された際、亀戸店に「スペックV課」を作るという話があり、富裕層のお客様を対応するということで会社から販売課長クラスのカーライフアドバイザーに声がかかり、私も2009年1月から亀戸店に来ました。
GT-Rマイスターになったのはこのタイミングで(当時はGT-Rマイスターの名称を使用していなかった)、初めて販売したのはGT-R Spec Vでした。
――GT-Rマイスターになるための研修はどのような内容でしたか?
平山氏:当時のGT-R開発責任者である水野和敏氏による講習も受けさせていただきました。商品知識も当然必要ですが、接遇も重要ということでANA(全日本空輸)のCAさんの教育係の方から挨拶の仕方などの基本を学ばせていただきました。
また、1500万円以上のクルマを販売するため、店舗づくりも重要ということで他のお客様の視線を浴びないようGT-Rのお客様専用の接客室や商談室を作りました。おそらくほかの販社さんではない取り組みで、亀戸店の1つの魅力だと思っています。
――2009年モデルから2017年モデルまで、売りやすかったモデルはありますか?
平山氏:やはり大幅にデザインが変わるなど、特徴に変更があった場合ですよね。一番は2014年モデルではないでしょうか。GT-R NISMOも加わりましたし。お客様の反応が一番あったモデルでした。2014年度、2015年度に全国1位にならせていただいたのも、このタイミングです。
また、2017年モデルもビッグマイナーチェンジなので、おかげさまで受注も好調です。2017年モデルは内外装も変わりましたし、ボディ剛性も強化されました。(既存のGT-Rオーナーが)サービス入庫されたとき、2017年モデルに試乗していただくと「こんなに静かになったんだ」とか「トランスミッションの音など気になるノイズが減ったね」といったお声をいただきます。一般道での試乗ではありますが、その違いをご体感いただけるようです。そこからご成約いただくことがけっこうありまして、同じR35からお乗り換えされるお客様もけっこういらっしゃいます。
ちなみに2017年モデルは現在までに23台の受注をいただいていまして、納車済みの車両はまだ5台。そのうち1台がGT-R NISMO。GT-R NISMOはあと8人のお客様が納車待ちの状態です。
――人気色はいかがですか?
平山氏:歴代モデルを含め、やはり白ですね。亀戸店ではおよそ60%の方が白を選ばれています。2017年モデルから設定されたアルティメイトシャイニーオレンジもいい色ですよね。こないだのご契約いただいたお客様はオレンジを選ばれていたのですが、ご家族から反対にあってやむなく白にされた方もいらっしゃいました(笑)。
――2年連続でGT-Rを一番販売した。その秘訣は?
平山氏:まずは他の店舗にはないハード面があるということ。あとは試乗車を積極的に活用していることでしょうか。基本、試乗をお断りすることはいたしませんし、まず体感いただいていることが販売につながっているのではないでしょうか。あとは開発責任者である水野さんや田村さんからうかがった、カタログには出ていないような開発秘話や想いをなるべくお伝えするようにしています。特に特別なことはしていないですね(笑)。