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ボルボ、“自動運転レベル2”を全車標準装備の新型「S90」「V90」「V90 クロスカントリー」発表会

世界初の「道路逸脱回避支援」「大型動物検知機能」も全車で採用

2017年2月22日 発売

S90:644万円~842万円

V90:664万円~899万円

V90 クロスカントリー:694万円~819万円

 ボルボ・カー・ジャパンは2月22日、同社ラインアップで最上級モデルとなるフラグシップセダン「S90」、プレミアムエステート「V90」、プレミアム・クロスオーバー「V90 クロスカントリー」を発売した。価格はS90が644万円~842万円、V90が664万円~899万円、V90 クロスカントリーが694万円~819万円。

S90
モデルエンジン変速機駆動方式価格
S90 T5 Momentum直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ8速 AT2WD(FF)6,440,000円
S90 T6 AWD R-Design直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ+スーパーチャージャー4WD7,490,000円
S90 T6 AWD Inscription8,420,000円
V90
モデルエンジン変速機駆動方式価格
V90 T5 Momentum直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ8速 AT2WD(FF)6,640,000円
V90 T6 AWD R-Design直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ+スーパーチャージャー4WD7,690,000円
V90 T6 AWD Inscription7,990,000円
V90 T8 Twin Engine AWD Inscription ※直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ+スーパーチャージャー+電気モーター8,990,000円

※:デリバリー開始は9月ごろを予定

V90 クロスカントリー
モデルエンジン変速機駆動方式価格
V90 Cross Country T5 AWD Momentum直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ8速 AT4WD6,940,000円
V90 Cross Country T5 AWD Summum7,540,000円
V90 Cross Country T6 AWD Momentum ※直列4気筒 2.0リッター直噴ターボ+スーパーチャージャー7,590,000円
V90 Cross Country T6 AWD Summum ※8,190,000円

※:デリバリー開始は9月ごろを予定

S90 T6 AWD Inscription
S90 T6 AWD Inscription
V90 T6 AWD Inscription
V90 T6 AWD R-Design
V90のラゲッジスペース容量は560L。パワーテールゲートにはハンズフリー機構も備える
リアシートはラゲッジスペース側面のスイッチで電動可倒。フルラゲッジ状態では容量が1526Lまで拡大する
広いラゲッジスペースを分割して前後で使い分ける「グロサリーバッグ・ホルダー」は、備え付けのゴムバンドを左右各4カ所ずつのフックで固定して使い方を工夫できる
V90 Cross Country T5 AWD Summum
タイヤサイズは235/50 R19。車高が70mm引き上げられ、最低地上高は210mmとなる

クリーンディーゼルモデルは2018年導入予定

ボルボ・カー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 木村隆之氏

 同日都内で開催された記者発表会では、最初にボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長の木村隆之氏が登壇。木村氏は冒頭で、ボルボが「新しいボルボ車に搭乗中の交通事故による、死亡者や重傷者を2020年までにゼロにする」という安全キャンペーン「セーフティビジョン2020」について紹介。2008年に発表して以来、目標達成に向けて着実に進んでいるとアピールし、同日発売した新しい「90シリーズ」で「そのビジョンにまた1歩近づくことになります」とコメント。ここで発表された90シリーズは、2020年まで置き換えられることなく販売が続けられるモデルであり、「言わば“未来を先取りしたクルマ”なのです」と紹介した。

ボルボでは20世紀の中ごろから販売するクルマの安全性強化に取り組んでおり、重症率などは右肩下がりで減少し続けている
公的な衝突テストを行なっている欧州で唯一の第三者機関であるユーロNCAPでは、新型S90とV90が1月発表の安全性テスト結果で最高評価となる5つ星を獲得。さらに新設されたばかりの歩行者用緊急ブレーキテストでは初の6点満点と評価された。この結果について木村氏は「当然の結果だと思います。ボルボは自動ブレーキのパイオニアですから」とコメント。絶対の自信を覗かせた

 また、木村氏はボルボの事故調査隊が収集したデータにおける、重傷者が発生した事故の要因別に分類した円グラフを紹介。このなかで「道路逸脱事故」が34%と最も多くなっており、さらに「大型動物との接触事故」も5%存在することを挙げ、この2つの事故要因についてはこれまであまり有効な対策が存在していなかったと指摘する。そんな事故要因に対して、新型90シリーズでは「ランオフロードミティゲーション」「大型動物検知機能」という2つの世界初の機能で対応すると語る。

 ランオフロードミティゲーションは道路逸脱事故の回避を支援するシステムで、2016年1月に日本で発売された「XC90」に採用された「ランオフロード・プロテクション」が自己発生後に事故のダメージを軽減する機能であることに対し、ランオフロードミティゲーションでは事故の発生自体を防ぐことを目的としている。道路から逸脱することをクルマが予想した場合、車線内に戻るようステアリング操作を実施。操舵だけでは回避できない場合にはブレーキを働かせて減速する装備となっている。

 もう1つの大型動物検知機能は、対向車や歩行者、自転車などを検知して自動的にブレーキを作動させる「シティ・セーフティ」の追加機能で、ボルボ本国のスウェーデンに生息する「エルク」、北米などに棲む「ムース」といった大型の動物を対象に自動ブレーキを働かせる機能となる。また、木村氏は「みなさんは北海道にいるエゾシカをご存じでしょうか。北海道ではこのエゾシカとの接触事故が大きな問題になっています。だいたい、年間で2000件の事故が起きています。この大型動物検知機能がエゾシカに対応するか、本国からの正式な調査回答はまだ来ていませんので、必ずエゾシカに反応すると保証はできませんが、我々ボルボ・カー・ジャパンでは、エゾシカの剥製を使って独自に検証を行ないました」と語り、クローズコースでエゾシカの剥製に対してブレーキを作動させて停止するシーン、スピードが高いときでも警告音の作動と自動ブレーキの減速のアシストにより、ドライバーが回避操作に成功するシーンなどを動画で紹介した。

 木村氏は「この機能がさらに進化することによってエゾシカとの衝突が回避できれば、北海道に住む人々の不安も大いに取り除かれるんじゃないかと我々も非常に期待しております」

スウェーデンでの重傷事故発生要因。この分析から世界初となる2つの機能が生み出されることになった
「XC90」で採用した「ランオフロード・プロテクション」をさらに進化させ、道路逸脱の事故が起きないようサポートする「ランオフロードミティゲーション」を新採用
日本でも北海道などでは大型動物であるエゾシカとの接触事故が年間で2000件ほど起きているという

 このほかに木村氏は、2015年に創業後初めて世界販売台数が50万台を突破したことを紹介し、2016年もさらに記録を更新して53万4332台に達したことを解説。営業利益も対前年比で66%増となり、今年もさらに数字を高めていく計画であると語った。欧州ではこの日から日本発売となった90シリーズがひと足早くデビューしており、「新しいボルボを形作る90シリーズはヨーロッパの各市場で好意的に受け入れられ、好調な販売につながっています」とアピールした。

 また、「このS90やV90は大きく見えるかもしれませんが、全幅は先代となる『S80』『V70』、現行モデルである『XC60』と同じ1890mmです。また、全長も5.0mを下まわっています。XC60やV70にお乗りいただいているお客さまにも十分お使いいただけると思っています。大型車としての風格やプレミアム性を備えながら、使い勝手も損なわない日本市場に適したモデルであると確信、自負しております」と木村氏は説明。さらに今後の予定として、V90のプラグインハイブリッドモデルを半年後に発売し、クリーンディーゼルモデルについては2018年に導入予定だと明らかにした。

ボルボの世界販売台数は3年連続で過去最高を更新中
全長は5.0m未満、全幅は先代モデルとなる「S80」や「V70」と同じレベルとなっており、既存モデルのユーザーにとって乗り替えやすいサイズであることをアピール
ひと足先にデビューした欧州市場での販売も好調だと語る木村氏
ボルボ・カー・グループ デザイン部門 バイスプレジデント ジョナサン・ディズリー氏

 木村氏のプレゼンテーションに続き、ボルボ・カー・グループ デザイン部門 バイスプレジデントのジョナサン・ディズリー氏が新しい90シリーズのデザインについて解説を行なった。

 ディズリー氏は開発にあたり、まずはスカンジナビアデザインという哲学からはじめ、「スカンジナビアのオーソリティ(威信)」「スカンジナビアのクリエイティビティ」「スカンジナビアのアクティビティ」という3つの要素を作り出したという。

 また、新型90シリーズで採用している「スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー(SPA)」の恩恵で、車幅や車高、どこにどんなパーツを付けるかといった要素をエンジニアと一緒になって細かく設計に組み込んでデザインでき、かつ変更も可能であると紹介した。また、2013年に公開したコンセプトカー「コンセプトクーペ」と各モデルの共通点を紹介し、とくにサイドビューでフロントタイヤをAピラーから遠ざけ、先代モデル比で350mmほど離したと解説。これにより、この長さによってプレミアム感を演出している

フロントマスクが持つ最大の特徴として、ヘッドライト内に設定した「トールハンマー」を紹介。スカンジナビア半島に伝わる光の神であるトールを象徴し、横長の光で車体が幅広く見せ、誇り高い印象を出すほか、遠くから見てもボルボ車であることが分かると説明した
サイドビューについてディズリー氏は、インスピレーションを高級でシンプルなヨットに求めたと語る。こうした船はシンプルであるほど高額になり、90シリーズのボディでもそのイメージを追求したという。シンプルでエレガントなデザインであり、これだけが特別であると見せているとアピール
インテリアでは夜間走行のシーンを想定して、暗いスカンジナビアの夜でもゴージャスな明かりが車内に灯っていることで、歓迎されている雰囲気や安全な空間であることが印象づけられ、自宅を離れていても自宅にいるようなくつろぎを演出している
ボルボ・カー・ジャパン株式会社 マーケティング部 プロダクト・マネージャー 青山健氏

 各車の製品概要は、ボルボ・カー・ジャパン マーケティング部 プロダクト・マネージャーの青山健氏が解説。

 青山氏は、ディズリー氏のデザイン解説でも登場したSPAを取り上げ、これがボルボが自社開発した新た恣意プラットフォームであり、フロントホイールの中心からAピラー付け根部分にあるダッシュボードまでのデザインと設計を固定しながら、前後左右、高さなどのデザイン要素をフレキシブルに変更できることが特徴であると紹介。このSPAの開発には、約1兆2400億円が投資されており、デザインだけでなく、PHEVなどの電動化技術にも対応可能。パッシブセーフティ面の性能向上なども同時に図れるものであると解説した。

フロントホイールの中心からAピラー付け根部分にあるダッシュボードまでのデザインと設計を固定し、そのほかの要素を自在にレイアウト変更できるのがSPAの大きなメリット
新プラットフォームの会は地には110億ドル(約1兆2400億円)が投資されたという

 また青山氏は、新型90シリーズの全車で日本政府が「レベル2」に分類する自動運転技術「パイロット・アシストII」を標準装備していることを紹介。これまでの第1世代技術では「前方に車両がいて」「車線が認識されている」という状況でのみ作動し、速度も50km/hを上限としていたが、第2世代技術と規定するパイロット・アシストIIでは、速度上限は140km/hに高められ、自車の前方にほかの車両がいなくても車線さえ認識できれば、車線内を維持するためのステアリング操作が行なわれるよう進化したと語る。

将来的な完全自動運転に向けて開発が進められている技術を活用した「パイロット・アシストII」では、車線さえ認識できれば140km/hまで車線内にとどまるようステアリング操作を行なう。新型90シリーズの全車に標準装備
世界初のランオフロードミティゲーションや大型動物検知機能などを追加した「IntelliSafe(インテリセーフ)」も全車で標準装備
ボロンスチールと呼ばれる超高張力鋼(赤く表示された部分)の使用を20%アップ。ボディ前後の衝撃を効果的に吸収するエリアとの使い分けでパッシブセーフティの性能を向上させている

 また、足まわりではフロントサスペンションにダブルウィッシュボーン式を採用し、マルチリンク式を採用するリアサスペンションではコイルスプリングに代え、左右を接続するように配置したグラスファイバー製のリーフスプリングを導入。快適性や走行性能を向上させることに加え、ラゲッジスペースの拡大なども手に入れるユニークな構造となっていると説明した。また、リアサスペンションには一部のグレードを除いてエアサスペンションのオプション装着も可能となっている。

フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式、リアサスペンションはマルチリンク式を採用。リアのスプリングはリーフ式からグラスファイバー製のリーフスプリング(グリーンの部分)に変更した
R-Designなど一部のグレードを除いてリアサスペンションをエアサスに変更することも可能