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攻殻機動隊 REALIZE PROJECTの「the AWARD 2016」でスバル&日本IBMがグランプリ獲得

「タチコマ」を介してユーザーを守る「WARPDRIVE」も発表

2017年3月25日 発表

3月25日に「Anime Japan 2017」の会場で実施された「the AWARD 2016」表彰式

 攻殻機動隊 REALIZE PROJECT事務局は3月25日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「Anime Japan 2017」の会場で「the AWARD 2016」の表彰式を開催。部門別のグランプリをスバル(富士重工業)と日本アイ・ビー・エムが受賞した。

「電脳(人工知能)」「義体(ロボット)」の2部門でグランプリが決定された

 the AWARD 2016は、2016年4月~2017年2月までに攻殻機動隊 REALIZE PROJECT公式WebサイトやSNSで紹介した125の国内先端テクノロジーニュースのなかから、「読者のリーチ」「インプレッション」「アクション数」を事務局で集計。“最も攻殻機動隊らしいテクノロジー”を選出。

 読者、編集者(事務局)の評価に、プロジェクト顧問である“Dr.攻殻”と呼ばれる専門家、攻殻機動隊製作委員会ならびに“Mr.攻殻”と呼ばれる製作陣の評価を加算して、それぞれの視点により「電脳(人工知能)」「義体(ロボット)」の2部門で「これぞ攻殻!」という研究・活動に対して賞が贈られた。

電脳(人工知能)部門グランプリを受賞した富士重工業株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社。富士重工業株式会社 スバル第一技術本部 車両研究実験第四部 部長 樋渡穣氏(中央左)と、日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 IoTソリューション アプリケーション・アーキテクト 宮坂浩司氏(中央右)

 電脳(人工知能)部門のグランプリは、スバルと日本IBMが2016年4月25日に発表した「高度運転支援システム分野における実験映像データの解析システムの構築、クラウドと人工知能技術に関する協業検討について合意した発表」で受賞。

 受賞の概要は「富士重工業と日本IBMは2016年4月25日、高度運転支援システム分野における実験映像データの解析システムの構築と、クラウド及び人工知能技術に関する協業検討について合意したと発表。今後は、IBMのクラウドを基盤とした自動車業界向けのIoTソリューションの活用も検討していく。富士重工業は『自動車事故をゼロにすること』を目指し、アイサイトで実証された安全性能と信頼性をさらに進化、スバルらしい自動運転の実現に向けた技術開発を進めている。2017年に『高速道路渋滞時自動運転』、2020年に『高速道路自動運転』を追加する方針。今回の日本IBMとの協業は、これらの新機能開発を加速させるためのもの」となっている。

運転支援システム「アイサイト」にIoTソリューション「Watson」を活用する協業で電脳(人工知能)グランプリを受賞した
富士重工業株式会社 スバル第一技術本部 車両研究実験第四部 部長 樋渡穣氏

 表彰式のなかで富士重工業株式会社 スバル第一技術本部 車両研究実験第四部 部長 樋渡穣氏は「“アイサイト”という運転支援システムを使って“ぶつからないクルマ?”を28年ぐらい前から基礎研究を始めて、事故を6割ぐらい減らすことができ、世界出荷数でも100万台を越えるということで、非常に力を入れている運転支援システムです」。

「今回の受賞のポイントは走行データ、クルマで走った画像データは物凄いデータであり、もはやハードディスクでは管理できないので、日本アイ・ビー・エムさんのサーバー技術とそれを使った解析技術を協業しようということで昨年の4月に共同開発しようということになりました。これから世界中に走るステレオ画像のデータを日本アイ・ビー・エムさんのサーバーでビッグデータとして扱って、それを人工知能として扱って勉強させてお客様のスバル車に返すというような、将来に向けた研究開発を進めていきたいと思っています」とコメントした。

 また、義体(ロボット)部門グランプリは、東京工業大学 鈴森・遠藤研究室が受賞。受賞の概要は「2011年より、鈴森康一教授(岡山大学[当時]、2014年度より東京工業大学)、脇元修一准教授(岡山大学)、ならびに池田製紐所が協力してマツキベン型人工筋肉の研究開発を開始、細くしなやかな人工筋肉の開発に成功。昨年、東京工業大学と岡山大学の両大学発ベンチャー企業s-muscle(エスマスル)を設立、空気圧で動作する細径人工筋肉の販売を開始。本人工筋肉を筋繊維として編み込むことで、軽く、柔らかく着心地の良い介護福祉サポートスーツやコルセット、人間と同じようななめらかな動きを行う人型ロボットや超軽量ロボット等、新しいロボット、福祉機器のブレイクスルーとなり得ると期待」となっている。

義体(ロボット)部門グランプリを受賞したのは東京工業大学 鈴森・遠藤研究室。登壇者の中央3人が受賞者で、左から東京工業大学 工学院 森田隆介氏、東京工業大学 工学院 教授 鈴森康一氏、東京工業大学 工学院 車谷駿一氏
グランプリを獲得した技術は、人間と同じように滑らかに動く人型ロボットなどのブレイクスルーになり得ると期待されているという

 電脳(人工知能)部門ではグランプリ以外に審査員特別賞が選定され、東京大学 医科学研究所臨床シークエンス研究チームが受賞。受賞の概要は「IBMの人工知能『Watson』が、特殊な白血病患者の病名を10分ほどで見抜き、その生命を救った。東京医科学研究所のWatsonは、2000万件以上の癌に関する論文を学習、正しい診断が難しい白血病患者の診断に役立てる研究に使用。今回の発表はそのWatsonが診断を下し医師に正しい治療を教え、患者の命を救った初の事例。宮野悟教授は『医師がすべての医療情報を把握するには限界がある。人工知能の活用は医療の世界を変える可能性を持っている』とコメント。すでに時代はAIによる診断と治療方法のアドバイスのほうが遥かに正確になっていると言える」となっている。

電脳(人工知能)部門 審査員特別賞を受賞したのは、東京大学 医科学研究所臨床シークエンス研究チーム。表彰式に参加した東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター教授 宮野悟氏(中央左)と日本アイ・ビー・エム株式会社 ワトソン事業部 ヘルスケア事業開発部 部長 溝上敏文氏(中央右)
「Watsonが診断を下し医師に正しい治療を教え、患者の命を救った初の事例」で審査員特別賞を受賞
「WARPDRIVE」について発表した国立研究開発法人 情報通信研究機構 ネットワークセキュリティ研究所 サイバーセキュリティ研究室 室長 井上大介氏(中央左)と、株式会社KDDI総合研究所 山田明氏(中央右)

 当日はアワード表彰式のほかに、攻殻機動隊 REALIZE PROJECTの活動報告も行なわれ、「攻殻ハッカソン2015」優勝チーム(筑波大shift)のほか、筑波大エンパワーメント情報学プログラムとの共同研究によるラボ(研究所)の開設を発表。また、KDDI総合研究所のほか、ウイルス検知~警告などを行なうNICT委託研究開発事業が協力したプロジェクト「WARPDRIVE(Web-based Attack Response with Practical and Deployable Research InitiatiVE)」も発表された。

 WARPDRIVEは、電脳空間に近づいていっているインターネットでのサイバー攻撃やサイバー犯罪が深刻な問題であると考え、劇中で公安9課のメンバーをサポートする「タチコマ」のようなソフトとして、一般ユーザーに対してフレンドリーに対応できるセキュリティソフトができないかという発想から立ち上げられたもの。全世界1万人規模のPCにインストールされた「タチコマ」が、ユーザーのWebアクセスを大規模観測。並列化(情報集約、横断分析、新機能展開等)により「タチコマ」が成長し、攻撃検知時には「タチコマ」が防壁展開して悪性Webサイトへのアクセスをブロック。さらに「タチコマ」をインターフェイスにしてユーザーに警告やアドバイスをうながすという。スマホやIoT機器にもセキュリティ対策を順次展開し、2020年に向けてサービス化を目指している。

電脳空間における「タチコマ REALIZE PROJECT」である「WARPDRIVE(Web-based Attack Response with Practical and Deployable Reseach InitiatiVE)」
「攻殻ラボ(研究所)」開設を発表した攻殻機動隊 REALIZE PROJECT 事務局 株式会社コモンズ 武藤博昭氏(左)と筑波大学 システム情報系教授 岩田洋夫氏(右)

 このほかに会場では、3月23日に予約受付を開始した「攻殻機動隊S.A.C」のキャラクターを再現した「うごく、しゃべる、並列化する。1/8タチコマ」を製品展示。コンクテッド・ハードウェアの企業・開発を手がけるCerevoが手がけるこの製品は、直販ストア「Cerevo official store」で販売が行なわれ、価格は15万7400円(税別)。デリバリー開始は6月の予定となっている。

「うごく、しゃべる、並列化する。1/8タチコマ」
複数の1/8タチコマがクラウド接続を行ない、原作における「並列化」も再現している

 1/8タチコマは、攻殻機動隊関連製品としては初めて各関節・ポッド・マニピュレータ・車輪の電動可動を実現し、自然言語でタチコマと会話できる音声認識機能、原作における「並列化」といった世界観を再現したほか、スマートフォン操作による走行機能も備えている。計21個のモーターを搭載し、会話に合わせてタチコマが自律動作。スマートフォンの対応アプリでタチコマを操作する機能も搭載している。

 脚部の各関節やポッドを動かして多彩な姿勢を再現可能で、音声を声優の玉川砂記子さんの録り下ろしで、作中同様会話ができるよう600パターン以上を収録。話しかけた言葉をタチコマが認識し、内容に適した返答を行なう。

 また、話しかけるだけで天気予報やGoogleカレンダーと連携したスケジュールをタチコマが音声で教えてくれるネット連携機能を搭載。また、知らない単語を尋ねると、インターネットでタチコマが調べて回答してくれる機能(この機能の回答は音声ではなく、スマートフォン上の対応アプリに届く)も備えている。

 この1/8タチコマの発売を記念して、本体のバンパー部や砲身カバー部にアルミ削り出し部品を採用したメタリックボディの「SPESCIAL EDITION」も数量限定で発売。価格は17万7400円(税別)で、通常販売と同じの3月23日から予約受付を行なっている。

1/2スケールのタチコマは「経済産業省ロボット実証実験」と「karakuri productsの1/2研究開発モデル」の2つのプロジェクトからスタートした。1/8タチコマや1/2スケール タチコマの研究開発といった活動が評価され、攻殻機動隊 REALIZE PROJECTは「第1回クールジャパン・マッチングアワード」で審査員特別賞を受賞している