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スバル、高速道路レーンキープ走行を実現した「次世代EyeSight(アイサイト)」説明会
認識能力が向上しプリクラッシュ性能なども大幅強化
(2013/10/3 00:00)
スバル(富士重工業)は10月2日、先進運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」の新バージョン「次世代アイサイト」に操舵制御機能を追加し、高速道路走行時のレーンキープ走行などの新機能を追加すると発表した。2014年に発売予定の新型車から実装される予定。同日、この次世代アイサイトに関する説明会を都内で開催した。
説明会ではまず、富士重工業 取締役兼専務執行役員 スバル技術本部長の武藤直人氏が挨拶した。武藤氏は「アイサイト(Ver.2)」搭載車を利用する人が2013年9月末時点で約15万人に達したと述べ、現在は同社が販売する車両の約8割にアイサイトが搭載されているという。
また、第三者機関による評価として、米国道路安全保険協会(IIHS)がミドルサイズセダン、ミドルサイズSUV全74種類を対象とした衝突回避ブレーキテストにおいて、1位をレガシィ、2位をアウトバックが獲得したという。最高評価である「Superior」は計7台が受賞したが、その中で最高評価点数となる6ポイントを獲得したのはレガシィ、アウトバックの2台だけだった。
武藤氏は「これだけの評価を受けた車両でも、運わるく衝突することはある。乗員を確実に守るため、剛性をただ上げるだけではなく、軽量化と安全性の両立を目指し、楽しさを高めながら安全性を追求してきた。その結果として世界の主要マーケットでは高い評価を受けている。今後もより一層これを発展させていきたい」などとコメントした。
引き続き、スバル技術部 プロダクトマネージャーである岩瀬勉氏が次世代アイサイトの解説を行った。
次世代アイサイトは、スバルの目指す「自動車事故をゼロにする」という目標を実現するための重要な要素で、スバルの安全思想である「オールアラウンドセーフティ」を構成する3本柱の1つ。
次世代アイサイトが目指すポイントは2つ。1つは高速道路における同一車線内での自動運転支援。もう1つが圧倒的なプリクラッシュ性能の2点だ。これらを実現するため、次世代アイサイトでは従来機に比べて認識技術を大幅に向上、新たに操舵制御を組み込んで実現。これにより「アクセル、ブレーキ、ステアリング」のクルマの基本性能すべてが制御可能になった。また今後のロードマップの中では、2020年代に高速道路の自動運転や全方位での衝突回避支援機能の実現を目指すことを明らかにした。
認識技術としては、従来のアイサイトに比べてカメラの認識エリアを拡大。認識距離・幅ともに約40%向上した。これによってより早く障害物を発見し、対処可能になったほか、カーブで前方車両を見失う可能性も少なくなった。また、環境変化への対策も強化。従来のアイサイトでは太陽光などが直接カメラに差し込むと画像認識ができなくなり、一旦機能が停止するなどしていたが、次世代アイサイトではこうした一般的な逆光時でも通常通り画像認識ができるよう開発を行っているという。
また、カメラがカラー画像に対応したことで、人間や車両の区別だけでなく信号機や先行車のブレーキランプの認識も可能になった。特にブレーキランプを認識するようになったことで、よりスムーズなブレーキングが実現できるようになった。
次世代アイサイトの機能は大きく分けて下記の5つとなる。
・レーンキープアシスト
・プリクラッシュブレーキの高性能化
・全車速追従機能付きクルーズコントロールの高性能化
・AT誤後進抑制制御
・危険回避アシスト
「レーンキープアシスト」は、アイサイトによる操舵制御が可能になったことで実現した運転支援機能。65km/h以上で走行している際にスイッチを入れることで動作を開始できる。このレーンキープアシストは「車線中央維持」と「車線逸脱抑制」の2つの機能で構成される。
車線中央維持機能は、高速道路で全車速追従機能付きクルーズコントロール(ACC)中に使用できる機能。自分が走っているレーンの白線をカメラが認識し、同一車線の中央を維持しながらカーブなどに進入しても自動的にステアリング操作をするというもの。ドライバーがハンドルを握っていることが前提で、あくまでドライバー責任下での自動運転を可能にするものだ。ドライバーがまったくステアリングを操作しない状態が一定時間経過すると、自動的に機能はキャンセルされる。ほんの僅かでもステアリング操作を続けていれば機能が維持されるという仕組みだ。
車線逸脱抑制機能は、自動車専用道路などの走行中にACCを使用していなくても機能するもので、走行中のレーンの白線を逸脱しそうになると、警報に加えて逸脱を防止する方向にハンドルにトルクを加えることで逸脱を防止するしくみ。
「プリクラッシュブレーキの強化」は、従来に比べてカメラの認識距離と幅が40%向上したことから、より早い段階から対象物への対処ができるようになったもの。これにより衝突回避性能が向上し、目標との速度差が約50km/h以下なら自動ブレーキによる衝突回避・衝突被害の軽減が可能になった(従来は約30km/h以下が限界だった)。特に認識可能な幅が広がったことで、歩行者の飛び出しなどにもより迅速な対応が可能になっている。
「全車速追従機能付きクルーズコントロール」(ACC)は、カメラのカラー化によってさらに高機能化した。先行車両のブレーキランプを認識することで、相対距離、車間距離を従来より早いタイミングで制御できるため、より人間のドライバーに近い制御が可能になった。また、認識視野が広がったことから、割り込み車両への対応能力が向上したほか、従来のアイサイトではコーナー時に先行車両を見失っていたようなケースでも追従走行を維持できるようになった。信号機も認識可能だがACCは高速道路上で使う機能でもあり、現状では信号機を認識して何らかの制御をするような仕組みは組み込んでいない。今後研究を続けながらそういった仕組みを入れていきたいという。
「AT誤後進抑制制御」は、後退時のペダル踏み間違いによる事故を軽減するための新機能。急なアクセルの踏み込みなどを駆動力制御やブレーキなどにより被害軽減を図るほか、後退速度リミッター機能も搭載。あらかじめドライバーが後退時の走行速度の上限をセットしておくことが可能で、これによって間違えてアクセルを踏み込んでしまっても設定速度以上での後退はしないようにできる。
「危険回避アシスト」は、先行車両などの前方にある障害物との衝突の可能性が高い場合、ドライバーの回避操作をアシストするもの。左右への回避時にVDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール)特性を変更することで内輪側のブレーキを制御(VDCベクタリング制御)し、回頭量を約15%向上させるという。
会見後の質疑応答では、他社で研究が進められている全方位の車両認識の可能性について質問がされた。これに対して岩瀬氏は、「全方位の車両認識に関して必要性は認識しているが、だからといってステレオカメラが4台になる、という話にはしない。他のセンシング技術なども取り入れながら、コストパフォーマンスも含めて最適な製品を最適な価格で提供できるようにしたい」とコメントした。
また次世代アイサイトの価格に関しては具体的な明言はされなかったものの、「現行製品と同等レベルをキープしたい」ということだった。