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マツダ、先進安全技術と“高齢者の不自由さ”を体験できる試乗会開催
運転の楽しさと安全を両立する自動運転コンセプト「Co-Pilot Concept」も公開
2017年4月11日 15:00
- 2017年4月9日 開催
マツダは4月9日、同社のクルマと将来の安全技術に関する説明会を開き、合わせて高齢者が普段から感じている不自由さをシミュレートした乗車体験や、同社の最新車種が持つ先進安全技術を確認できる試乗会を開催した。また、自動運転時代を見据えた「Co-Pilot Concept」の構想についても明らかにした。
高齢者を“健康にする”マツダの設計思想
すでに本誌でもお伝えしているように、マツダは2017年度中に「デミオ」「アクセラ」「アテンザ」「CX-3」「CX-5」について、先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」の4機能を全車標準装備とする方針(関連記事「マツダ、2017年度中に衝突被害軽減ブレーキなど『i-ACTIVSENSE』の4機能を標準化」)を示している。
今回の説明会でも、その4機能である「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(衝突被害軽減ブレーキ)」「AT誤発進抑制制御」「ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)」「リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)」の内容を改めて解説。また、これらの先進安全技術に加えて、自然な姿勢で運転できるようにしたペダルレイアウト、運転時に必要な情報を適切に得られるコクピットデザイン、運転のスムーズさや快適性を増す「G-ベクタリングコントロール」といった設計思想や技術を取り入れていることも紹介し、それらが安全運転につながる「正しい認知、正しい判断、正しい操作」を促す要素であると訴えた。
こうした先進安全技術の行きつく先は自動運転ということになるが、マツダでは自動運転に至るまでに“2つのルートがある”とする。1つは「機械中心に考えた、快適性の追求」、もう1つは「ヒト中心に考えた、ヒトの成長の追求」で、マツダが今後の商品開発において選ぶルートは後者の「ヒト中心」の自動運転になるという。
「ヒト中心」の自動運転の考え方を、マツダでは「Co-Pilot Concept」と呼んでいる。通常はドライバー自らの操作で運転するが、それと同時にクルマ側では常にドライバーの状態検知をしつつ、人の「認知・判断・操作」を把握しながら「仮想運転」を行なう。ドライバーの状態になんらかのネガティブな変化があったり、ヒトの認知・判断・操作に異常が見られた際には、クルマが人に成り代わり、停車を促すか、自動運転で「最適な場所」まで移動して外部に連絡するという仕組みだ。
平常時はドライバーがクルマを自在に操って運転の楽しさを味わうことができ、一方でドライバーが運転困難となった万が一のケースでは自動運転で安全を確保できる。こうした思想によってマツダが目指しているのは、より幅広い層のユーザー、とくに高齢者に受け入れられられるクルマ作りだ。
高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違えを筆頭とした交通事故が昨今取りざたされているが、高齢者のなかにも運転が困難になった人がいる一方で、長く健康を維持して認知・判断・操作に支障のない人もいる。こうした老いの速度が遅くなる「Well-Aging」に、クルマの運転が貢献する余地があるとマツダは考えているようだ。前出のペダルレイアウトやコクピットデザインといった設計思想、その他機能や先進安全技術などがWell-Agingに果たす役割は大きいとマツダは見ている。
例えば、警察庁が明らかにしている交通死亡事故の人的要因では、75歳以上の高齢者が原因となる事故のうちおよそ3割が、ハンドル、ブレーキ、アクセル操作のミスや認知ミスによるもの。しかも死亡事故の約46%が30km/h以下という低速度域で発生し、事故時のシチュエーションについても道路ではなく駐車場であったり、後退時や発進時というかなり特徴的な状況下にあることも分かっている。
このような高齢者特有と言える事故の防止に、2017年度中に標準装備する前出の「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」「AT誤発進抑制制御」「ブラインド・スポット・モニタリング」「リア・クロス・トラフィック・アラート」などが有効に働くとマツダは判断している。
その根拠として、2007年~2011年に販売された“旧世代”の車種当時と比べ、2012年~2015年の先進安全技術の搭載車を発売してからは、「ペダル踏み間違い」による死傷事故件数が86%減少していることを挙げた。
説明会では、国土交通省や経済産業省などが検討を進めてきた、高齢運転者の事故防止に有効とされる技術を搭載する「安全運転サポート車(愛称:サポカーS)」の推進に、同社のクルマがいち早く追随していることもアピール。高齢化社会と自動運転時代に対する同社のクルマ作りの方向性をさらに明確化した。
高齢者でも安全に運転できるクルマの重要性を再認識した体験試乗会
説明会とともに行なわれた試乗会は、大きく分けて2種類の体験ができるよう趣向を凝らしたものになっていた。1つは、高齢者にも配慮した2012年以降の新世代車の設計を実感するもの。高齢者の身体の衰えを体感できる、視界を制限するメガネや重りの入ったジャケット、膝から下の自由度を制限するサポーターなどの各種装具をセットにした「高齢者疑似体験セット」を装着したうえで、停車状態の旧世代車と新世代車を使って乗車・操作感覚を比べる形となっていた。
新世代車では共通して採用するオルガン式のアクセルペダルが特徴的だが、単にオルガン式にするだけでなく、隣り合うブレーキとの距離感、奥行き位置を最適に調整している。これにより、旧世代車の吊り式ペダルと比べて、足首の左右方向への回転角度が減少しがちな高齢者が、踏み替え時にペダル側面に足を引っかけるようなことが少なくなっている。
実際に高齢者シミュレート用の装具を身に付けて旧世代車に乗車したところ、そもそも乗り込む段階で内装に足を引っかけてしまった。さらに、後退時を想定した左右後方を確認しながらのペダル踏み替え操作で、普段と同じ感覚で操作しているつもりでも、足をペダル側面に引っかけてしまい、とっさのブレーキがワンテンポ遅れるような状態になった。十分に注意しているつもりでも、身体の衰えによって事故を起こす可能性が高まることを認識することができた。
もう1つは、最新のデミオやCX-5を使ってマツダの先進安全技術を体感するもの。広い駐車場内に作られた簡易的なコースを走行しながら、「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」「AT誤発進抑制制御」「ブラインド・スポット・モニタリング」「リア・クロス・トラフィック・アラート」に加え、「交通標識認識システム」といった最新装備の実際の挙動が確認できた。