ニュース

佐藤琢磨選手のインディ500優勝凱旋イベント「INDY500ヴィクトリーファンミーティング」レポート

440名のファンが東京 青山でインディ500優勝を祝う

2017年6月14日 開催

今年のインディ500で歴史的勝利を挙げた佐藤琢磨選手

 6月14日、18時30分よりホンダ本社ビル1FにあるHondaウエルカムプラザ青山(東京都港区)にて、佐藤琢磨選手のインディ500制覇を祝した凱旋イベント「INDY500ヴィクトリーファンミーティング」が行なわれた。当日に無料配布された指定席券240枚、立ち見券200枚はわずか30分で配布終了。琢磨選手自身も「こんなに青山って人が入るんだ!」と驚く440名が集まり、トークショーやプレゼント抽選会を楽しんだ。

ホンダ本社ビルを取り囲むように集まったファン
歴代のレーシングスーツなどさまざまな展示物が用意された

 ステージに登場すると、まず会場に設けられたレッドカーペットを歩きながらファンと語り、握手し、サインに応えた後に登壇した琢磨選手は、帰国の印象を聞かれ「信じられない。オリンピック選手とかワールドカップとかが終わって凱旋帰国する選手たちが成田で迎えられるような、まさにあの光景をまさか自分が受けるとは思っていなかったので、本当に嬉しかったし未だに信じられないような思いです」と語り、イベントはスタートした。

佐藤琢磨選手が日本のファンの前に登場
丁寧にファン1人ひとりのリクエストに応え続ける琢磨選手

 トークショーでは、GAORAインディカー・シリーズ中継の実況アナウンサーを務める村田晴郎氏と、インディ500のレースの映像を見ながら勝利のプロセスを振り返った。レース後半では勝算があり、残り5周でのアタックはエリオ・カストロネベス選手の逆襲やイエローフラッグの可能性までを考慮した上で計算され尽くしたものであったものの、ラスト1周を示すホワイトフラッグがまるで闘牛のように激しく振られているのを見た時には、琢磨選手自身体が震えたそうだ。ファイナルラップの最後のターンを抜けた後のチェッカーフラッグがあんなに「近くて遠かった瞬間」はなく、ゴールまではただアクセルを全開することしかできなかった。チェッカーを受けた瞬間は「やったー」という感情が爆発し、本当はクルーに向けてありがとうを言いたかったのだが、言葉が出ずただただ叫んでしまったという。

 琢磨選手は無線でスポッターを務めるロジャー安川氏からの「おめでとう!」のひと言で我に帰り、チームクルーの名前を呼びながらありがとうの気持ちを伝えたそうだ。なお、自身もかつてインディ500の参戦経験を持つ日系アメリカ人のロジャー安川氏が、レース中に無線で琢磨選手に日本語のメッセージを伝えたのは初めてとのことだそうだ。そんな歴史的瞬間にコクピットの中で感じた思いを語る琢磨選手のトークを、来場者は時に真剣に、時に爆笑しながら楽しんだ。

 なお、チェッカー後にアクセルを緩め、フル回転のエンジン音も風切り音も少なくなり、ロジャー安川氏の声に混じってものすごい歓声が聞こえてきた時、喜びがこみ上げたのと同時に2002年の鈴鹿(F1日本グランプリ)でのゴールシーンとかぶったとのことだ。また、その歓声の大きさは、かつて2012年にこのインディアナポリスでファイナルラップに優勝を目指し、果敢にアタックするもクラッシュしてしまった“あの佐藤琢磨”が同じ地で今度は勝利した、というファンの歓声にも感じたという。それほど現地では長年このレースを見続けている人が多く、アメリカに根付いたレースだという。

 長年インディカー・シリーズの実況を務めてきた村田晴郎氏は、「速くても、強くても、上手くても、それだけでは勝てないのがインディ500。あまりにも凄すぎて日本人は勝てないとすら思っていた。その限りなく夢に近いその瞬間が来てしまって、どうすればいいか分からなかった。その特別さ、凄さは、その本当の価値をちょっと伝えようがないのがもどかしい」と語ると、琢磨選手は「分からないでしょうね。35万人のスタジアムがないですもん。もう現地に来てもらうしかないですね」と笑顔で答えた。アメリカのモータースポーツの頂点に立ち、歴史に刻まれたという実感は実はまだないとのことで、「来年35万枚発行される自分の顔が印刷されたチケットを見た時、どれだけ凄いことをしたのか思うのでしょうね」と笑った。

トークショーの模様
インディカー・シリーズを伝え続ける実況アナウンサーの村田晴郎氏と、インディ500のレースを映像を見ながら語り合う佐藤琢磨選手

 トークショーの後半では、この勝利が日本のモータースポーツの普及にひと役買うだけでなく、もっと大きなスケールで2011年の震災における被災地に元気を届けて、つらい思いをしてきた子供たちが、夢を見て楽しく元気に挑戦し続ける人生を送れるような何かに寄与できれば、と東日本大震災の復興に対する思いを語り、「震災時にはこんな時にレースなんてしている場合でないんじゃないかと思いました。でも、自分がレースをやめたからといって誰も助からないし、今まで自分のシートを獲得するためにどれだけ多くの人がサポートしてくれたのかを考え、レースを続けると同時に震災を受けた日本を元気づけたいと思って復興支援を始めたのですけど(琢磨選手自ら発起人となり立ち上げた“With you Japan”プロジェクトのこと)、今までなかなか夢を持つことの大切さとか挑戦することの楽しさは口では言えても伝わりにくかった。僕自身が自分の夢を叶えられなかったら何をどうやって伝えていけばいいのか分からなかった。でも、今回勝ったことで夢を信じ続け、挑戦し続けることが大きな力になって、夢って叶うんです(ということが実証できた)」とコメント。

 最後に「僕自身1つの大きな夢は達成しましたけど、まだまだ夢はたくさん残っているのでそれに向けてこれまでと同じスタイルで……いや、もう少し完走を目指しますけど(会場爆笑)、頑張っていきたいと思いますので応援よろしくお願いします」と、ファンに想いを伝えトークショーを締めくくった。

 トークショーの後はパネルやキャップ、レアなチームシャツにサインを入れ、そのグッズの抽選会が行なわれた。その後、会場に集まった全員で記念写真を撮影。ファンのメッセージが書き込まれた応援フラッグが会場全員の「ありがとう!」の声とともに手渡された。

プレゼント抽選会
プレゼント抽選会の模様
集まったファン全員で記念写真を撮影
ファンのメッセージが書き込まれた応援フラッグが会場全員の「ありがとう!」の声とともに手渡された