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トヨタ、新グレード「Crossover」を加え、燃費を38.0km/Lに高めた「アクア」マイチェン説明会
燃費向上の背景には「プリウス」からの技術継承が
2017年6月24日 06:00
- 2017年6月23日 開催
トヨタ自動車は6月23日、マイナーチェンジを行なって6月19日に発売したハイブリッドハッチバック車「アクア」の変更内容を解説し、実車を展示する記者説明会を実施した。
2011年12月に発売され、今回で2回目となるアクアのマイチェンでは、JC08モード燃費の最高値が37.0km/Lから38.0km/Lに高められ、フロントマスクをはじめとして内外装のデザインを変更。また、これまでクロスオーバースタイルのグレードとして用意していた「X-URBAN」を「Crossover」と名称変更し、大径16インチタイヤを標準装備して他グレードから+30mmとなる170mmの最低地上高を与えた。
このほかのマイチェン詳細やグレード展開などは、関連記事の「トヨタ、『アクア』をマイナーチェンジ。JC08モード燃費が38.0km/Lに向上」を参照していただきたい。
4代目「プリウス」の技術を継承してJC08モードを1.0km/L向上
説明会では、トヨタ自動車 Compact Car Company 製品企画 チーフエンジニアの粥川宏氏から、今回実施されたマイチェンの狙いや変更内容の解説などが行なわれた。
このなかで粥川氏は、アクアが2013年~2015年の3年連続で国内車名別販売台数のトップになり、2016年2月にはトヨタ車として最速となる販売台数100万台を達成し、この6月現在で累計約120万台を販売していることを紹介。
こうした多くのユーザーから寄せられた感想では、優れた燃費やハイブリッドモデル専用車である“クラスレス感”などが好評であるとしつつ、人気モデルだけに自分以外にも多数のアクアが存在して独自性が低いという点を不満に思う声もあると説明。このようなヒアリングの結果を受け、今回のマイチェンでは「今までとちょっと違うアクア」を目指し、新規ユーザーの獲得の加え、アクアがデビューしてからすでに5年以上が経過していることから、既存モデルからの買い替え需要をターゲットにしているという。
パワートレーンの改良では、従来から採用している直列4気筒 1.5リッター自然吸気エンジン「1NZ-FXE」に、TNGA(Toyota New Global Architecture)の採用で大きく進化した4代目「プリウス」で採用された高タンブルシリンダーヘッドを導入。ポート形状を変更したことでエンジンの燃焼室内に流入する吸気のタンブル(縦渦)を制御して熱効率を向上。
このほかにもエンジンバルブのリフト量アップとバルブタイミングの最適化、クランクシャフトベアリングの樹脂コーティング付与、冷却性能を高めるウォータージャケットスペーサーの採用などによって燃焼改善、低フリクション化など、地道な改良を積み重ねているという。
また、ハイブリッドシステムの制御面も、4代目プリウスでブラッシュアップした内容を継承。モーター内にあるステーターもプリウスで改善された固定技術を使い、発生する電流の損失を低減するなど大幅な見直しが実施されており、この結果として最高出力や最大トルクの数値を維持しつつ、LグレードのJC08モード燃費を37.0km/Lから38.0km/Lに高めることが可能になったと語られた。
シャシー性能としてはボディのリアセクションに設定しているロアバックパネルを改良。両サイドの末端部分を折り返す形状としてパネル自体の剛性を高めたほか、側面からの力がロアバックパネルにきれいに流れるよう結合を強化し、ボディ全体としてのねじり剛性を引き上げている。これによってステアリング操作をしたときなどに発生する荷重変化をボディがしっかりと受け止め、安定感が向上しているという。
また、ショックアブソーバーには「Bプラットフォーム」向けに新開発された「独立ポート+環状シート」を使う新型バルブを導入。タイヤが上下動したときに発生するダンパーオイルの流れが、従来は1つのポートを通過していたところが、低速時に1つ、中~高速時に2つのポートを通過するようになり、状況に応じて減衰力が変化。路面からの入力を吸収する乗り心地のよさとコーナーリング時などの安定性を両立しているという。
従来モデルではタイヤサイズとして14インチ、15インチ、16インチの3種類を用意していたが、今回からは走行性能の基本特性を高めるため14インチを廃止。15インチを基本に、Crossoverのみ16インチを標準装備するラインアップとしている。また、Crossoverのタイヤには、標準装備の185/60 R16のほか、15インチの185/60 R15をオプション設定している。
Crossoverの前身であるX-URBANで16インチの大径タイヤが採用されたのは、北海道のユーザーから降雪路での走破性を確保する1つの案として提案されたことがきっかけになったとのことで、大きなコスト増を必要とせずにCrossoverでは170mmという最低地上高を実現している。その一方で、大径タイヤの装着で最小回転半径はほかのグレードの4.8mから5.4mに拡大し、タイヤ交換などでユーザーが負担するコスト増えてしまう。さらにユーザーがすでに持っている15インチのスタッドレスタイヤを装着できなくなるといったケースも発生するということから、タイヤを15インチ化する選択肢が用意されている。なお、Crossoverのタイヤを185/60 R16から185/60 R15に変更すると、全高が1490mm、最低地上高が160mmとそれぞれ10mm低くなり、最小回転半径は4.8mになる。