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“世界No.1のドリフト選手”を決める「FIA Intercontinental Drifting Cup」概要発表会
9月30日~10月1日にお台場で世界初開催。15カ国の計26選手が参戦し、日本からは川畑真人選手など4人が出場
2017年8月22日 00:00
- 2017年8月21日 開催
9月30日~10月1日に、東京 お台場で世界初開催されるドリフト世界大会「FIA Intercontinental Drifting Cup(FIA IDC)」の概要発表会が東京都文京区の大本山 護国寺で開催された。
発表会ではまず、FIA(国際自動車連盟)から大会のプロモーターを任されたサンプロスの代表取締役である齋田功氏が登壇。
冒頭の挨拶に続いて齋田氏は、FIAが制作したというビデオ映像を紹介。このビデオ映像について齋田氏は「このVTRは、FIAが世界各国にある213の自動車連盟に配布したもので、これによってFIAは『ドリフトをみなさんの国でも始めませんか』と伝えているのです」と解説。これに続いて世界で初めて開催されるFIA IDCの内容についての解説をスタートした。
齋田氏は日本でスタートした「ドリフト」の歴史を紹介。クルマ好きの「遊びの一環」として始まったドリフトが1980年代に入って雑誌などのメディアで紹介されるようになり、当時すでにレースデビューを飾っていた土屋圭市氏が“ドリキン”と呼ばれて注目を集め、土屋氏に憧れた若者たちが雑誌などが主宰するイベントに参加するようになってドリフトが競技化されていったという流れを語った。
また、2002年からはドリフト競技のシリーズ戦「D1グランプリ」がスタート。2003年からは海外からも注目されるようになり、日本以外でも40以上の大小さまざまなドリフトイベントが世界各国で開催されるようになっているという。
こうしたムーブメントのなか、FIAでも2012年に開催されたカンファレンスで「ドリフトとはいったいどんな競技なのか」という議題が出され、2015年からはフランス パリにあるFIA本部に世界統一ルールの策定に向けたワーキンググループ「Drift Working Group」が設立。年間4回以上という会合によってルール策定の競技を続け、2016年にドリフトが正式にFIAの認定する競技とする発表が行なわれた。これにより、FIA IDCはF1やWRC、WEC、WTCCなどと同じ世界大会として位置付けられているという。
こうした流れを解説したあと、齋田氏は「FIAの会長であるジャン・トッドさん。元フェラーリF1チームの監督をしていた人ですが、実はドリフト競技についてジャン・トッドさんが一番推している人物なんです。世界中でもっともっとモータースポーツ人口を増やしていきたいというのが彼の考えで、ドリフトのよさは狭いスペースで、車両もレーシングカーではない普通のクルマ、乗用車を使って競技が行なえるということで、非常に普及しやすいだろうと。彼があまたあるモータースポーツのなかでも、いち押しという言い方は少し不適切なのかもしれませんが、頑張ってドリフトを普及させようと推してくれています」とコメント。FIAのジャン・トッド会長がドリフト競技に注目している理由を紹介した。
続いて齋田氏は初めて開催されるFIA IDCの開催概要を説明。このなかで齋田氏は暫定版の開催スケジュールに触れ、イベント自体が開幕前日となる9月29日からスタートし、9月29日には各チームのマシン搬入や練習走行などを実施。初日の9月30日と2日目の10月1日のそれぞれに競技を実施して各日のチャンピオンを決定。さらに2日間の得点を合計して初めて誕生する「世界No.1のドリフト選手」が決定されるという競技システムを紹介した。
FIA IDC開催概要
名称:FIA Intercontinental Drifting Cup(FIAインターコンチネンタルドリフティングカップ)
開催日時:9月30日~10月1日
開催場所:東京都・台場特設コース
実施内容:FIA(国際自動車連盟)が新たに承認したモータースポーツ「ドリフト競技」の初めての世界大会
公認:FIA、JAF
主催:株式会社サンプロス、FISCO Club
このほかに齋田氏は、世界初のドリフト世界大会に出場を予定する選手と大会のパートナー企業について発表を行なった。
日本からは2007年、2013年、2015年のD1GPチャンピオンである「TOYO TIRES GLION TRUST RACING」の川畑真人選手、今シーズンのD1GPで首位となっている「WISTERIA TOYO TIRES」の藤野秀之選手、2008年、2016年のD1GPチャンピオンである「WANLI FAT FIVE RACING」の齋藤太吾選手、今シーズンのD1GPで2位となっている「D-MAX」の横井昌志選手の4人が出場。このほかにもタイやマレーシアなど15カ国で計26選手が参戦する。
パートナー企業にはタイヤメーカーの東洋ゴム工業とワンリータイヤ、潤滑油などの油脂類を取り扱う日本サン石油、スパークプラグなどを製造する日本特殊陶業、不動産商品などを取り扱うヒカリホーム、エナジードリンクメーカーのモンスターエナジージャパンの6社が名を連ねている。
最後に齋田氏は今後の展開について説明。齋田氏はFIA IDCを「F1のモナコGP」「WECのル・マン24時間レース」「インディカー・シリーズのインディ500」のようなレース界の定番とも言える位置付けに高めていきたいと語り、「年に1回、世界中からトップドライバーが集まる“お祭り”と言えるような、真の世界一のドライバーが決まる場として続けていきたい」と意気込みを語った。
短期的な事業計画としては、まず間近に開催となるFIA IDCを成功させ、世界統一レギュレーションを整備し、FIA IDCのレギュレーションに合わせたクルマが日本で競技に参戦し、それを自国に持ち帰って浸透させることで車両や競技ルールを同じものにしていきたいとコメント。また、現時点ではFIA IDCに参戦していない国の自動車連盟にも存在を知ってもらい、ドリフト競技を始めてもらいたいと語った。
また、将来的には競技のシリーズ化も視野に入れているほか、競技の頂点となる「D1」のすそ野に広がる「D2」「D3」「D4」といったカテゴリーの設立、EV(電気自動車)による「Drift E」のシリーズ展開なども想定していると述べた。
齋田氏は最終的なビジョンとして「現在はバーチャルでクルマを楽しんでいる若者も多いですが、我々は“リアルモータースポーツ”として、自分たちでクルマのオーナーになり、自分たちでクルマを操ってスポーツとして楽しんでほしい。クルマを操る楽しさをもっともっと啓蒙するため、このドリフトを活用していきたいと思っています」と語っている。
「ドリフトはFIAにとってさまざまな理由で重要な分野」とジャン・トッド氏
齋田氏の解説に続き、FIA Drift Working Group 代表のプラサアト・アピプンヤ氏からも挨拶が行なわれた。
アピプンヤ氏は「このDrift Working Groupでは、3年間をかけてインターコンチネンタルカップの開催にこぎ着けました。世界各国の関係者を集めた多数の会議をつうじて今日の成功を得たわけです。今後ともこの活動は続けていく予定で、来週もパリでまた会議が行なわれます。このFIA IDCが成功することを見届け、さらに次につなげていきたいと考えています」とコメント。また、アピプンヤ氏はFIAの会長であるジャン・トッド氏のメッセージビデオも紹介した。
将来的には世界選手権のシリーズ戦に
発表会の後半には、“ドリキン”こと土屋圭市氏のほか、FIA IDCにも日本代表選手の1人として参戦する川畑真人選手、日産自動車 商品企画本部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志氏の3人と、FIA IDCのイメージガールを務める太田麻美さん、鈴菜さんの2人が参加するスペシャルトークが実施された。
このスペシャルトークで土屋氏は、「齋田社長からも冒頭で説明がありましたが、30年前は『ローリング族』とか『暴走族』とか言われて夕方のニュースなどで取り上げられていましたが、そこから2000年にサンプロスと一緒に『彼らを日の当たる場所に出そう』『モータースポーツとして認めてもらおう』と、JAFに働きかけ、そこから17年かかってFIAにも認めてもらって、これ以上の幸せはありません」と語った。
また、後半に行なわれた質疑応答で将来的な“理想のドリフト競技像”について問われた土屋氏は、「世界をまとめるには4~5年かかるだろうと齋田社長と話しています。日本もアメリカも、アジアもヨーロッパも各国で独自のクルマを作っていて、今回を契機に『世界選手権に出るにはこんなクルマじゃなきゃダメだよ』と浸透していって、その4~5年後には統一された車両での世界一決定戦が行なえるようになると信じています」と回答している。
また、日本代表選手の1人として実際にFIA IDCに参戦する川畑選手は「自分は幼いころに土屋さんをTVで見ていて、レースやドリフト走行に衝撃を受け、免許を取るのと同時にドリフトの世界にどっぷりとはまったドライバーの1人です。それから20年近く経ちますが、今でもこうして現役で走り続けられていることを誇りに思うと同時に、今後のさらなる競技の発展にわくわくしている状態です」とコメントした。
自動車メーカーの立場から参加した田村氏は「基本的に自動車というのは、お客さまに買って、乗っていただいてトランスポーテーションとして活用していただくもの、なんですけど、こうやってクルマを使って遊んでいただく、こうした文化を世界的にも広げていこうじゃないかと。つまり、自動車を使って遊ぶ、そんな楽しいことをやっている団体を、手前どもとしてもサポートしていきたいなと思っております。正直、日産自動車は、過去この業界ではものすごくシェアの高いジャンルのクルマを提供しているので、そういった意味でもぜひ頑張っていただきたいと思っております」と述べている。
スペシャルトークの終了後は集まった取材陣との質疑応答が行なわれ、このなかで今後の展開について、将来的にはサッカーのインターコンチネンタルカップのように地区予選を経た形式になるのかという質問に対し、齋田氏が「今回の開催では地区予選は行なっておりません。今回はFIAのDrift Working Groupのメンバーからの推薦を最優先として、国籍や運転技術の実績で選考しました。質問で言われたように、今後は国によって地区予選が行なわれることもあるかと思います。実際に先週、韓国でこの競技に出るための予選会が開催されました。今後、2年、3年と経てば参加希望者は増えていくと思いますし、あらゆる団体から推薦したいとなっていけば、当然、その国のなかで選抜して代表者を決めることになるかと思います」と回答。また、2020年以降のプランとして、3つ以上の大陸を転戦することでFIAの規定を満たし、F1のように世界選手権としてのシリーズ戦に発展させていくことも目指していくことも明らかにした。