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東海大学、新型ソーラーカー「'17 Tokai Challenger」のテスト走行実施

ブリヂストン 栃木プルービンググラウンドの高速周回路でマシンのセッティングを確認

2017年9月2日 実施

東海大学 チャレンジセンター・ライトパワープロジェクトのソーラーカーチームがテスト走行を実施した新型ソーラーカー「'17 Tokai Challenger」

 東海大学 チャレンジセンター・ライトパワープロジェクトのソーラーカーチームは9月2日、新型ソーラーカー「'17 Tokai Challenger」の走行テストを栃木県那須塩原市にある「ブリヂストン 栃木プルービンググラウンド」の高速周回路において実施した。

 テスト走行は、同チームが参戦する10月8日~15日開催の「2017 ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(WSC)」に向けて行なわれたもので、高速走行時の安定性やブレーキバランスなど、マシンのセッティングを確認する作業が行なわれた。

 2017 ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジは、ダーウィン~アデレードの約3000kmをソーラーカーでひた走るレースで、世界22カ国43チームが参戦する。トップチームの争いになると巡航速度は100km/h前後になるといい、太陽光で発電した電気を効率的に使用するとともに空力性能のよさも求められる。

 実際のレースではソーラーカーを監督車が追走。太陽光パネルからの発電量や車両に搭載しているバッテリーの充電量などの情報を基に、各チームが作戦を立てて巡航速度などを決定していく頭脳戦となる。

 新型車両「'17 Tokai Challenger」のボディサイズは4980×1200×1000mm(全長×全幅×全高)。2015年の参戦車両は双胴型を採用していたが、新型車両は単胴型を採用した。また、レギュレーションにより太陽電池の面積が従来より3分の2に減らされたため、より空気抵抗を減らすためボディ形状を見直して従来モデルより空力性能を30%以上向上させたという。

 太陽電池には出力962Wのパナソニックの太陽電池モジュール「HIT」を採用。車載バッテリーにはパナソニックの高容量円筒型リチウムイオン電池をボディフロント部に搭載した。モーターはミツバのブラシレスDCダイレクトドライブモーターを左後輪に搭載して左後輪を駆動する。タイヤはブリヂストン「ECOPIA with ologic」の95/80 R16を装着している。

ソーラーパネルを搭載するアッパーボディ
ロアボディの形状は船のようなカタチになっている
空気抵抗を減らすため、タイヤの切れ角に合わせてボディがカットされている
フロントサスペンション
リアサスペンション
タイヤはブリヂストン「ECOPIA with ologic」
カーボン製ホイールを採用
タイヤ交換作業は手組みで実施
走行抵抗を減らすため、タイヤについているバリもカット
インホイールモーターを左後輪に搭載
バッテリーはフロント部分に搭載
ソーラーカーにはアクセルペダルはなく、ステアリングに用意されたダイヤルやスイッチ等で速度調節を行なう
機械式ブレーキのほかに、ステアリングに用意されたダイヤルで回生ブレーキをコントロールする
アッパーボディを合体
実際にドライバーが乗車すると、ヘルメットとキャノピーの隙間はギリギリ

 走行性能では、太陽光のみの巡航速度が90km/h、最高速は120km/h(レース設定)、150km/h(理論値)のスペックを有するとしている。

 テスト日は、午前中は曇り模様だったが、午後からは風が強いものの太陽も出てきて、高速で走行する姿を披露。'17 Tokai Challengerは低速域でのハンドリングを確認したのち、100km/h前後の高速域でテスト走行を繰り返した。テストを担当したドライバーによると、高速域での車体の微振動が気になるとのことで、サスペンションセッティングの見直しをすることなどが話し合われていた。

サスペンションのセッティングを硬くする方向で見直すことなどが話し合われた

 今回のテスト走行について、総監督を務める東海大学 工学部 電気電子工学科 教授の木村英樹氏は「テスト走行は、高速で走行できるのかの確認と、ドライバーがクルマの運転に慣れることを目的に実施しました。ドライバーは経験があるので問題はなく、マシンについてはサスペンションをもう少し硬くした方がいいことが分りましたので、これから大学に戻って調整したいと思います」とコメント。

 同チームは2009年と2011年に開催された大会で優勝。2013年大会では準優勝、前回大会の2015年では総合3位と、今大会では世界一奪還を目指すという。

 レースの勝敗を分けるポイントについて、木村氏は「今回のレースでは異種格闘技と言いますか、形状で言えばモノハル(単胴型)かカタマラン(双胴型)か、電池で言うと多接合化合物かシリコンか、どの組み合わせを使うのかがポイントで、そこら辺をうまくまとめたチームが有利になってくると思います。また、太陽電池の面積が3分の2になっていますので、空気抵抗をどれだけ減らせるか、発電量をいかに稼ぐかというバランスで勝敗が決まってくると思います」とコメントした。

テスト走行を繰り返す'17 Tokai Challenger

 今後、テスト走行を終えた「'17 Tokai Challenger」は、レースが開催されるオーストラリアへと輸送される。

【お詫びと訂正】記事初出時、「多接合化合物」の表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。