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トヨタ、「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」用の3種類の高齢者向け介護タイプ説明会
CV Companyの中川茂主査が開発経緯などを解説
2017年9月29日 23:15
- 2017年9月27日 開催
1996年から展開しているトヨタ自動車の福祉車両「ウェルキャブ」シリーズ。介護タイプと自操タイプのラインアップで構成される同シリーズだが、東京 お台場のメガウェブで9月27日に開催された説明会で「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」に新設定された3種類の高齢者向け介護タイプが紹介された。
紹介されたモデルは、「サイドリフトアップチルトシート車」「車いす仕様車(電動ウェルチェア+ワンタッチ固定仕様)」「ウェルジョイン」の3種類。
雨の日でも濡れずに乗り降り可能なサイドリフトアップチルトシート車
10月発売予定の「サイドリフトアップチルトシート車」は、4基のモーターでシートが稼働し、足腰が弱った高齢者や障碍者の乗降をサポートする機能。
これまでの仕様はシートが完全に車外に出るため、車両の横に110cmほどのスペースが必要だったのに対し、こちらの新型はシートの半分が車内に残るスタイルでの乗降が可能で、乗降時に必要なスペースはわずか50cmほど。これにより、隣にクルマが停まっていても乗降が可能になる。
雨の日にクルマに乗り降りする場合、従来型は介助者が使用者に傘を差し伸べた場合に車外に出たシートが雨で濡れてしまうことがあったのだが、新型はシートバックが車内に位置しているので濡れる心配がなく、傘を差し伸べる部分が少なくて済むという。
また、従来品は座面がフラットだったのに対して、新型はシート後部を15cmほど高く設定。座面を前下がりにチルトさせることで、座っている人がシートからより楽に立ち上がれるといったメリットがあるという。さらにフットレストを大型にすることで、着座時の膝への負担も少なくなっているとのこと。
昇降時の車いす固定を簡単にする電動ウェルチェア+ワンタッチ固定仕様車
12月発売予定の「電動ウェルチェア+ワンタッチ固定仕様車」は、電動車いすの乗降時にかかる手間を大幅に省けるシステム。これまでのウェルキャブでは電動車いすをクルマに載せるには、車いす用の固定ベルトを張るなど11行程も必要で、介助者にとってはひと苦労だった。
しかし、電動ウェルチェア+ワンタッチ固定仕様車では、それが電動車いすを専用固定ラッチに押し付けるのみという、わずか1行程に簡素化。また、ロックを解除するときも固定解除ペダルを踏むだけで済む。
この秘密は専用設計された電動車いすにあり、専用電動車いすのシート下に固定用のバーを設置することで、車載時の強固で簡単な固定を実現しているそうだ。
また、車載に特化した電動車いすを新たにデザインしたことで、これまでの車いすではスポークのあいだを通過させる必要があったシートベルトも、シートベルトのラインを確保するデザインを採用したことで、普通の搭乗者同様に簡単に装着できるようになったとのこと。
ただ、残念ながら現状では専用の電動車いすにしか対応しておらず、ほかの電動車いすや自走式車いすには非対応だ。
介助者の負担を大幅に軽減するウェルジョイン
すでに発売されている「ウェルジョイン」は多人数の送迎を快適にするもので、従来は3名乗車の2列目シートを、シート幅を拡大した2人掛けに変更して右側に寄せることで、3列目シートへの快適なアクセスを実現。高齢者など足腰が弱い人でも1人で乗り降りできるように手すりも装着されている。
トヨタ自動車 CV Company 製品企画 主査の中川茂氏によれば、このような送迎に特化したクルマを開発した背景には、赤字によるバス路線の廃止があるとのこと。
「路線バスは毎年約1万kmのペースで廃線が進んでおり、これにより、一番痛手を受けるのが通院や買い出しに路線バスを使っていた後期高齢者です。その現状を打破するために、兵庫県豊岡市では高齢者のボランティアドライバーがミニバンなどの送迎車を運転することでその穴を埋めているのですが、これまでの3列タイプのミニバンだと、利用者の乗り降り時にドライバーが下りて2列目のシートを倒したりしなければならず、ドライバーへの負担が非常に大きかったんです。そこで、豊岡市からの依頼もあり、そういった現状を打破するきっかけになればと願って、このウェルジョインを開発致しました」と中川氏は語った。
現在、すでに国民の28%が高齢者という世界一の超高齢社会となってしまった日本。こういったトヨタによるウェルキャブシリーズの取り組みなど、各メーカーで高齢化社会に沿った積極的なクルマ造りが必要な時代になってきたようだ。