東京モーターショー2017
【東京モーターショー2017】アカザーのチェアウォーカー視点で見た東京モーターショー
FCバスのコンセプトモデル「SORA」に感動!!
2017年11月1日 09:55
- 2017年10月25日 開幕
- 2017年10月27日 プレビューデー
- 2017年10月28日~11月5日 一般公開日
どうもアカザーっす! AI(人工知能)による自動運転やEV(電気自動車)などの新技術が連日報道されまくりで、盛り上がりまくりの「東京モーターショー2017」ですが、車椅子ユーザーになって今年で17年目のベテランチェアウォーカーのオレが、車椅子ユーザー視点で見てきたトヨタブースのアレコレが、尋常じゃないぐらい“オレ得、チェアウォーカー得”だったので、いっちょレポートしてみます!
車椅子ユーザーにとってバスが実用的な交通手段になる日
今回の東京モーターショーで、車椅子ユーザーのオレがいちばん感動したのはFC(燃料電池)バスのコンセプトモデル「SORA」! 「え?そんなのあったっけ?」という反応はごもっとも。ひとことでいえば“水素で走る燃料電池バス”という、東京モーターショー的にはちょっと地味なものですからね(笑)。
でも、車椅子ユーザーのオレが感動したのは、この燃料電池バスの運用方法も含めたトータルコンセプト。
まずはバスが停車している写真を見てください。バス停なんですが、道路より一段上がっていて、緩いスロープがついているんですヨ。そしてそのスロープにピッタリ寄せるかたちで横付けされた燃料電池バス。
バスとの段差はほぼゼロで、隙間は十数cm! これはつまり車椅子での乗り降りが、ヘルパーさんなどの手を借りることなく、自分1人の手でできるってコトなんですヨ! しかも、健常者とほぼかわらない時間で! コレけっこう凄いコトなんです。
現在、ノンステップバスなどを車椅子で利用するときは、まず運転手さんが降りてきて>乗車口の下にあるスロープを引き出し>路面とバスをスロープで繋ぎ>車椅子のお客さんを押して車内へ>座席を折り畳んでスペースを作り>できたスペースに車椅子をフックで固定。
と、手慣れた運転手さんでも5分弱の時間を必要とします。ちなみに17年前にオレが初めて車椅子で“バス利用デビュー”したときは、運転手さんも初めてのコトだったらしく「講習会ではやったコトあるんだけどサ、オレも実際にやるのはこれが初めてなんだヨ~」と、サビが浮いて出しづらくなったスロープを、力任せに引きずり出しながら、運転手さんの苦労話を聞きつつ、結局バスに乗るのに15分近くもかかっちゃいました! むろん、15分近く待たされたほかの乗客からの熱視線により、オレのHPがゼロになったのは言うまでもありません。
そのときに、オレが思ったのは「車椅子のオレがバスに乗ることで、いろいろな人の時間を奪って迷惑をかけるなぁ。交通手段としてバスの利用はちょっとないな」でした。で、それ以降この17年間での車椅子でのバス利用は、片手で足りるほど。
しかし、現在は車椅子ユーザーの社会進出の増加も手伝ってか、通院利用者の多い路線などでは、手慣れた運転手さんも増えています。でも、やはり上記の手順はそのままなんですよね。なので、朝夕のラッシュ時の通院などでは、バスは利用せずに病院まで約2kmの道のりを、車椅子を漕いで行くという知人も居ます。そんな感じで、現在でも車椅子では気兼ねなくバスを使えないのが現状なのです。
でも、この「SORA」の運行システムなら、その辺の問題をすべて解決できるような気がするんですヨ!「でも、この展示のように路肩とのスキマが数cmというは実際の運用では無理なのでは? 実際にはバスと乗り場との隙間が広くて、車椅子の前輪が落ちるのでは?」などとお考えの車椅子ユーザーのあなた! ご安心下さい! ブースの担当者の方に伺ったところ、なんとバス停への横付けは自動運転により、隙間数cmまで横付けされるとのこと! 超ありがてぇ! ビバ自動運転!
あ、気になる車内レイアウトを紹介するのを忘れてました! まず、搭乗口から後ろのスペースには、後輪の後ろにモーターなどを積んでいる関係上、1段高い位置に固定式座席を設置。後方の乗降口から前の床はフルフラット化されており、左に固定式座席が4席、右には映画館の座席のような折り畳みシートが3席と、その後ろに車椅子も余裕で乗れるフリースペースが! 燃料電池化して広くなった車内スペースを、これ以上ないくらい効率的なバリアフリーレイアウトにしています。
現状では安全のために、車椅子の固定にはやはりフックの使用を考えているようですが、この点が車椅子ユーザー自身で解決できるようなシステムになれば、運転手さんは運転席を離れる必要がない訳で、よりスムーズなバスの運行が可能になる気がします。
ちなみにオレの乗っているOXエンジニアリング製の自走式車椅子だと、前方の乗降口も使えました!
この燃料電池バス「SORA」をベースにした市販モデルは2020年の東京オリンピックに向けて、まずは首都圏や都市部などで導入が開始されていくとのこと。なんですが、実は燃料電池バスはすでに今年の3月から東京駅丸の内口~ビッグサイトの路線で、運用が開始(東京都交通局の報道発表)されているんですヨ!
でも、現在運航中の燃料電池バス(2台ほど)は、車内のシートレイアウトなどに違いがあり(右側の車椅子スペースがないなど)、自動運転による乗降エリアへのピッタリ横付けなどもなく、乗り降りエリアもこれまでと同じものを使用しています。でも、車椅子ユーザーにとってバスが実用的な公共交通手段になる日は、もうすぐそこまで来ている気がします!
クルマとの愛情を感じるコンセプトカー
たぶん今回の東京モーターショーで、いちばん注目を集めているであろうAI搭載の自動運転技術を搭載した「Concept-愛i」。東京モーターショーでは新たに、より小型の電動ビークル「Concept-愛i RIDE」と、3輪電動スクーター「Concept-愛i WALK」が展示されました。なかでもオレ的にグッとキたのが「Concept-愛i RIDE」。ていうか、このデモムービーでオレちょっと泣きそうになりました。
車椅子の女性が今まで行けなかった場所に1人で行く、というストーリーなんですが、ムービーを見ていたら昔の自分とタブって……そうなんですよね。オレも初めて手動運転装置を付けた愛車で、1人でドライブしたときは本当に嬉しかったなぁ。「コレでオレは車椅子でもどこへでも行ける!」みたいな。免許を初めてとった時に似た感動があったのを思い出しました。
デモムービーのなかで、車椅子ユーザーの女性は「Concept-愛i RIDE」を左右のアームレストの先に付いたジョイステックのようなもので運転しているのですが、オレがいちばん感動したのが、車椅子での乗り降りのコンセプトまでちゃんとデモで描かれていたコト。
失礼を承知で言うと、これまでのこの手のものって“障碍者も運転できるよ!”みたいなコンセプトの提示はあっても、車椅子ユーザーからしたら「でもコレ、実際にやったら運転席への乗り降りとか1人でできないじゃん!」みたいな、車椅子での運用をちゃんと考えていないモノが多かったんですよね。でも、コレはちゃんとその点まで描かれていて、これからのクルマの未来が車椅子ユーザーにとって嬉しいと思える方向に、ちゃんと向かっているなぁ、と。
その後、「Concept-愛i」のAIアシストシミュレータも体験したんですが、コレも車椅子ユーザーとって非常にうれしい技術だと感じました。ドライバーが車椅子であることを理解したパートナーAIが、車椅子でも楽しめるバリアフリーのレストランや、車椅子用トイレのある施設など案内してくれたりする未来が容易に想像できました。でも個人的には、愛車が“喋る相棒”になるってトコが、いちばんの萌えポイントだったりするんですけどね!(笑)
ユーザーのニーズにあわせてカスタムできるクルマたち
トヨタブースのお隣、トヨタ車体のブースに展示された「LCV ATHLETIC TOURER CONCEPT」は、車椅子アスリート向けにカスタムしたLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを意識したものですな。
荷室には車椅子レーサーが搭載され、助手席には車椅子が。コンセプトが非常に分かりやすい展示レイアウトなんですが、オレが感動したのは実はそこではなく、車高をフェンダーが地面につくギリギリまで落とせるという点。
車椅子陸上競技でオリンピックにも出た知人が居るんですが、彼はハイエースのリアシートをフラットにして、そこにレーサー車椅子を積み練習や競技に参加していました。で、オレも1度そのハイエースに乗らせてもらったんですが、乗るのが超たいへん! ハイエース、シート高過ぎだろ!って、叫んだほどめっちゃたいへんで、1度フロアに腰掛け、そこからさらにシートによじ登った記憶があります。
そんな話を説明員の方にしたところ、まさにそういった車椅子アスリートたちから、ハイエースなどのワゴン車の乗り降りの難しさの指摘を受け、車椅子でも乗り降りしやすいように開発したとのこと。ちなみにここまで車高が落とせるなら、リアハッチにスロープは必要ないのでは? との意見があり、リアスロープなどはあえて、ナシにしたらしいです。
ブースの説明員さん達にいろいろと話を聞いてきて感じたのは、多くの車椅子ユーザーや障碍者の意見をちゃんと聞いて、開発に役立てているんだなというコト。バリアフリーなクルマ造りって、実は障碍者それぞれで使いやすいものが違ったりするので、全員に満足してもらうモノづくりは本当に難しいんですよね。でも、それを諦めず多くの意見を聞くことで、いちばんニーズの多い根幹となりえる技術を洗い出し、開発する。
このLCVを例にすると、3タイプを提示することでそれぞれのニーズに合わせる対応をしつつも、“乗り降り時の低車高化”という、車椅子ユーザー以外の全てのユーザーにとっても有り難いと思えるような技術を、しっかりと入れ込んでいる。実はシャコタンで喜ぶのは、ヤンキーの兄ちゃんだけじゃないってコトですヨ!(笑)
車椅子ユーザーもワクワクするクルマの未来
もちろんトヨタ以外の、そのほかのメーカーブースに展示されていたコンセプトカーや次期モデルにも、同様の思想が感じられるものが多くありました。AI技術を元にしたドライバーアシストなどは言うまでもなく、車椅子ユーザーじゃなくてもありがたいですもんね。でも、車椅子ユーザーとしてのごく個人的な主観ですが、たぶんドライブアシストなどに代表されるアシスト機能の多くは、俺たち車椅子ユーザーにとっては健常者が便利に感じるよりも、さらに2~3割増しで便利でうれしい技術な気がします。
あ、そうそう。今回の東京モーターショーでは、多くのブースで“キッズ・障碍者のための観覧スペース”が用意されていたのもよかったです!
なので、「車椅子でモーターショー行くと、人垣でまったくステージが見えなくてつまらなかったわ~」なんて苦い過去を持つオレみたいな人も、いろいろな意味で真のバリアフリーになりつつある東京モーターショーに、再チャレンジしてほしいです! 今週末あたり如何っすか~? “車椅子ユーザーもワクワクするクルマの未来”をぜひその目で確かめてみてください! 最後に、皆さんがその気になるように、今回のモーターショーでオレがいちばんグッときたデモムービーを貼っておきます(笑)。
あ、もう1つだけ、東京モーターショー豆知識を。今年はもう終わっちゃいましたが、プレスデー2日目は“障がい者手帳をお持ちの方の特別見学日”として解放されていました。一般日より格段に空いてて見やすい上に、入場料も無料なのです!(要事前申請) 次回の東京モーターショーは特別見学日が狙い目ですよ~!