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アカザーの車いすレーサー・青木拓磨選手主催、「HDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)」体験レポート
車いすになって手動運転装置での初サーキット走行
2020年9月25日 07:00
- 2020年9月2日 開催
どうもアカザーっす! 怪我で脊髄を損傷し、車いすユーザーになって20年になるオレですが、怪我をする前からクルマは大好きでした。車いすになってからも手動運転装置をつけた愛車で、仕事に遊びに飛び回っています。オレたち車いすユーザーにとって、クルマはハンディキャップを消してくれる大きな車いすだったりもするんですよ~。
と、そんな車いすユーザーでカーマニアのオレですが、先日夢のような1日を過ごしてきたので、ちょっと自慢させてもらっていいですか? え、ダメ? まぁダメでも自慢しちゃうんですけどね(笑)。
いやね、先日ね! オレ、レーシングカーに乗ってサーキットを走っちゃいました! 正確には現役のプロドライバーの助手席の同乗走行です! そして、同乗させてもらったレーシングドライバーは、あの青木拓磨選手!
青木琢磨選手は1997年に、現在の「MotoGP」の前身となった2輪ロードレース世界選手権(WGP)にフル参戦。いきなりシーズン5位という好成績を収めるも、翌年1998年にテスト中の事故で車いすに。しかし、不屈の精神で見事に4輪のレーシングドライバーとして復活! 現在では「アジアXCラリー」や「ジャガー I-PACE eトロフィー」で、世界を股に掛けて活躍している、車いすユーザーとしてもレーシングドライバーとしても尊敬できるデカイ男なんすよ!
とりあえずは、青木選手の助手席でテンション爆上がりなオレの意味不明の解説で、袖ヶ浦レーシングフォレスト同乗走行動画をどうぞ!
コレ、5速MTのレーシングマーチを手動運転装置を使って、手だけでドライブしているんですよ! ちょっと信じられなくないですか? と同時に、人間の可能性までも感じないですか? 足が不自由な車いすユーザーでも、極めるとここまでやれるんです! もちろんクルマの速さやドライビングの上手さにも感動を覚えましたが、オレがいちばん感動したのは、青木選手の不屈のチャレンジ精神。ここまでのコトをやり遂げてきた、という青木選手の実績です!
と、ちょっと熱くなり過ぎました。まずはなぜオレがこんな夢のような体験ができたか順を追って説明します。
車いすユーザーを対象としたドライビングスクールに入校!
ある日、クルマ好きで車いすユーザーの知人O氏から、こんなメールが届きました。
「元バイクレーサーで現役レーシングドライバーの青木拓磨さんが主催する、手動運転装置ユーザーが対象のドライビングスクールが開催されるんですが、よかったらアカザーさん体験取材に来ませんか?」
WGPに参戦中も車いすになってからも、青木選手の活躍に胸を熱くしていたオレはもちろんふたつ返事でオーケー!
また、そのドライビングスクールでは愛車でサーキットも走れるとのことで、手動運転装置の付いた愛車「レガシィ2.0R specB」をドライブして、ウキウキ気分で開催地の袖ヶ浦フォレストレースウェイへ!
今回、オレが参加させてもらったドライビングスクールの名は「HDRS(ハンド・ドライブ・レーシング・スクール)」。車いすユーザーにも運転の楽しみを知ってほしい! 思い出してほしい! と青木さんと有志が2011年から、ほぼボランティアのような参加費で行なっている活動とのこと。
ちなみに今回の参加費は、まる1日サーキットを走れて3000円という破格の安さ! サーキットを走ったコトがある人は分かると思うんですが、走行会などでサーキットを1日走ればだいたい2~3万円はしちゃいますからね。まぁこの3000円という値段は“コロナ禍に負けるな!”という応援を込めての特別価格みたいです。
この日のスケジュールは10時の開校式からスタート。まずはHDRS校長でもある青木拓磨選手と、もう1人の教官である山田遼選手による座学から。受講者にはサーキット初体験の参加者も多く、ここではサーキット走行時のコースインの仕方から、コース上でマーシャルが使用するレース旗の意味などを学びます。
シートベルトの締め方1つでドライビングが快適に!
座学後はコース裏にあるパドック駐車場広場に移動し、それぞれの愛車に乗り込んで実技を開始! 参加者は安全のために、長袖と長ズボン、ヘルメットにグローブを着用しクルマに乗り込みます。オレはヘルメットを持っていなかったのでレンタル(事前申請で無料)し、グローブは自転車用のものを用意しました。
この実技の基本レクチャーでは、参加者は3つのセクションを走行します。最初のセクションは、縦に並んだ4本の赤パイロンを左右に縫っていくスラローム。次に大きく右に180度ターンする中速コーナーで加速。最後はそのままストレートで速度をのせ、ゴールにある4本の青パイロンで囲まれたエリア内で止まれるようフルブレーキ! というもの。教官からの細かい指示は、事前に車内に取り付けたトランシーバーで伝達される仕組みです。
このへんは走行会やドライビングスクールに参加された経験がある方には定番と言えるものですが、ドライビング時に足を踏ん張り横Gに耐えるコトができないわれわれ車いすドライバーにとって、健常者ドライバーのそれよりもドライビングの難易度は高くなります。
オレ自身、怪我で車いすになる前は「RX-7」(FC3S)でツインリンクもてぎを走ったりするほどのクルマ好きだったのですが、車いすになり手動運転装置でクルマを運転するようになったこの20年は、強い横Gがかかるようなスポーツドライビングはまったくやっていません。
その理由はGがかかると体が振られて、正確なハンドルやアクセル・ブレーキの操作ができないからなんです。なので、車いすになって運転に復帰し20年近くが経ちますが、こういったスポーツドライビングは初体験。無線機から教官の指示が聞こえるたびに、ドキドキしっぱなしです。
そんなドキドキの超緊張状態なので、最初のコースインでは普段のドライビング以上にすべての操作をゆっくりと、Gが掛からないように心がけていました。それは他の参加者さんも同じようで、最初は皆さんもおっかなびっくりで慎重なドライブ。
しかし、これではドライビングスクールの意味があまりないので、2本目は少しスピードを上げてスラロームへアプローチ。1本目のパイロンはいい感じでクリアするも、2本目のパイロンで体が少しアウト側に振られ、ステアリング操作が遅れた3本目。完全にラインを外し、ステアリングを巻き込むようなオーバーステアが発生! もちろんクルマはギクシャクし、さらに体が振られます。コエ~!
ドキドキが収まらぬまま最後まで走りきり、待機位置にクルマを進めて前を見ると、青木選手がスタートラインについたドライバーに何やらアドバイスしている様子。ドキドキしならが自分の番を待っていると、オレにも青木選手からアドバイスが!
「まずシートを下げて、シートベルトをガッと引き出しスルスル動かないように固定して下さい。そして、その固定したシートベルトで右肩をシートに押し付けるようにシートを前に出します。そこでステアリングがちゃんと左右に切れて、アクセル・ブレーキレバーの操作も問題ないドライビングポジションならオーケーです。次はそれで運転してみて下さい」。
おおっ、なんか右肩と左右の腰骨がシートベルトで押さえられ、シートとの一体感が高まった気がする! と感じつつ、スラロームへアプローチ。さっきと全然違う! 横Gがかかった状態でも正確なステアリング操作ができる! これは4点式シートベルトで体をシートに固定したあの感じに近いかも!? 3点式シートベルトで4点式シートベルトのような感じに体を固定できる方法があるんですね! 知らなかった~。
いや~、これには目から鱗がこぼれました。むろん左肩が固定されてないぶん4点式シートベルトには劣りますが、それでもさきほどまでのいつものユルユルな3点式シートベルトの使い方とは体の保持に雲泥の差を感じます。
ていうかコレはもしや街乗りでも使えるテクニックなのでは!? オレの障害部位はTh11~12(背中と腰の間の脊髄を損傷)なんですが、これは脊髄損傷者のなかでもある程度は腹筋が効くレベル。なので、脊髄損傷者のなかでは体の保持はよいほうだと思います。でも、そのオレですら絶大な効果を感じられたというコトは、もっと状態がわるく体の保持力が低い、たとえば頸椎損傷などのドライバーなら、さらにこの効果は絶大な気がします!
これを読んで気になったドライバーは、まずは安全な場所でトライしてみて下さい。コツはいきなりきつく締めないで、苦しくない程度で徐々に締めて保持力を増し、ちょうどいいポジションを探していく感じです。運転時の腰痛軽減にもいいかもですヨ。
と、青木さんの目から鱗なアドバイスでテンション爆上がりのなか、実技の基本レクチャーは終了。それぞれのピットで待機して15分後にはいよいよサーキット走行です!
サーキットの“先導車アリの完熟走行”ではフロントローが狙い目!
袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースデビューは、ラインを覚えるための“コース先導つき完熟走行”から。青木選手がドライブする、レース仕様の本田技研工業「N-ONE」の後に続いて走り、安全な速度でコースを体験する感じです。
コースオープンの無線が入り、隣のピットから知り合いのO氏が乗る「スイフトスポーツ」がピットレーンへ! オレもそれに続きます。と、青木さんの先導車がバッチリ見える3番手に位置。ちょ、初参加でこんな前とか超緊張するんすけど! 走行前は3番目というポジションにかなりビビっていたんですが、この完熟走行はあくまでコースのラインやブレーキングポイントを学ぶというコトが目的らしく、スピードは出さない感じでした。
しかも、これは走行後にO氏から聞いたのですが、参加者が多ければ多いほど、先導者から距離が空けば空くほど、伝言ゲームのように正しいラインやブレーキングポイントがズレていくので、こういう完熟走行では初心者ほどなるべく前の先導車が見える位置で、正確なラインやブレーキングポイントを見たほうがいいとのこと。まじすか! 確かにそんな気がする! 皆さんも今後こういったドライビングスクールで“コース先導つき完熟走行”などを受ける機会があった場合は、なるべく前のほうがオススメです! よく考えたら、プロのレーシングドライバーのラインやブレーキングポイントが真後ろで見られる機会なんてそうはないですからね~。
めっちゃドキドキしてドライブしていると、あっという間に無線からピットインの指示が。これにて完熟走行は終了! そして午前中のスケジュールも終了です。果たして午後からのフリー走行で、今見た青木さんのラインとブレーキングポイントをどれだけトレースすることができるのか? それが問題です。
1本目のフリー走行はまさかのレインコンディション!?
ちなみに午後のメニューは本コースのフリー走行が3本。それぞれ各20分のフリー走行なんですが、フリー走行というだけあって自分の意志で自由にコースを走れる時間です(もちろんサーキットルールは厳守のうえで)。
車いすになって手動運転装置での初めてのサーキット、しかもついにフリー走行! 考えただけでもドキドキです。ドキドキしながらO氏と一緒にサーキット内のレストランで昼メシを食っていると、外が暗くなってきたな~と思いきや、いきなり大荒れの天候に! ちょ、台風のような豪雨でコース上が水びたしなんすけど。え~、もしかしてコレ午後のフリー走行は中止!? ドキドキしまくりだけど、中止は嫌だなぁと「雨雲レーダー」で天気をチェック。O氏曰く「ここ袖ヶ浦フォレストレースウェイは山の上なんでこういうコトはよくあるんですよ。なので、たぶん大丈夫です」とのこと。
1時間後、O氏の言ったとおり雨は止み空は快晴に! タイムスケジュールの30分押しでドライビングスクール再開です。
雨が止む間、ピットでの待機中にO氏の愛車スイフトスポーツを見せてもらったのですが、これがほぼノーマルの通勤快速仕様とはいえツボを抑えた仕上がり。サーキットでのスポーツ走行が趣味というだけあって、フルバケットに4点式シートベルトを装備し安全面に抜かりナシ。さらに手動運転装置はスポーツ走行に特化したグイドシンプレックス製です。
O氏との話の中でオレが気になったのが、走行中のGで足が動かないよう固定する工夫をしているということ。なんでも同じくサーキット走行が趣味の後輩が、走行中のGで足が動きブレーキの下に入ってしまい、ブレーキがストロークせずそのままコース脇のスポンジバリアに突っ込んだコトがあったらしい。
確かに! オレも過去にいちどだけ一般道を運転中、予期せずアクセルペダルに足が乗ってしまい驚いたコトを思いだしました。Gで足が動いてそんなアクシデントがあるのか~! これは午後のフリー走行で気を付けねば!
そんなこんなで、いよいよフリー走行開始! 経験者のO氏に先導してもらいつつコースインするも、さっきまでの雨でコース上は超ウェットコンディションに様変わり。しかも、ところどころ川や大きな水たまりまでできており、午前中の完熟走行で走ったラインやブレーキングポイントをそのまま使うコトはできない感じ。
そんなおっかなびっくりのオレに愛想をつかしたのか、2周目にはO氏のスイフトはコーナーのはるか彼方へ! 徐々にスピードを上げて引っ張ってくれるって約束したのに! もうちょっとゆっくり先導してくれてもいいじゃん! と思いつつ、滑りやすいであろうコーナーではなるべくGはかけず、でもラインは外さないように、そしてブレーキも長めに、の3点に集中し20分間完走。いや~、初のフリー走行はスゲー緊張したけど、スゲー楽しい~!
同乗走行で見た青木選手の神業ドライブ!
そしてフリー走行2本目の枠では、冒頭に動画でも紹介したオレがこの日いちばん楽しみにしていた青木選手との同乗走行!
コレは参加時にあらかじめ希望しておけば、フリー走行のどこかの時間に同乗体験ができるというもの。現役レーシングドライバーの横に乗ってサーキットを走れるとかもう最高かよ! しかも参加費3000円ですよ!
使用するマシンは日産マーチのワンメイクレースで使用している「マーチ12SR カップカー」。鉄板剥き出しのフロアにロールバーが張り巡らされたガチなレーシングカーです! 手動運転装置には、やはりグイドシンプレックス製が採用されています。ていうかよく見たらこのクルマ、MTじゃないすか!
なんでもシフトレバーを握るコトでクラッチが自動で切れ、その間にシフトチェンジを行ない、シフトレバーから手を離すコトでクラッチが繋がるシステムが搭載されているとのこと。ヤベー、まったく運転できる気がしねぇ! と、オレが運転するワケでもないのにドキドキしていると「では行きます」と青木選手。
イグニッションを捻りエンジンがかかると、市販車のそれとは違うエギゾーストノートをあげてコースイン。1コーナーの右ターンの挙動が明らかに違う! ストロークの短い固められた足で軽量ボディが旋回する感じはまるでカートのよう! キモチイー! いきなり1つ目のコーナーでレーシングマーチの虜になりそう!
「雨が降って超滑りやすいんで慎重に行きます」という青木選手だが、その言葉とは裏腹に3コーナー進入の減速Gでオレの体は前方にもっていかれ、4点式シートベルトに押し付けられる~っ! と思えば次はコーナリング中の横Gが襲ってキター! そして仕上げはコーナー脱出時の加速G! バケットシートに押し付けられるー!
オレにとっては車いすになって初めて体験する凄いG! そんななか、隣では余裕しゃくしゃくで手動運転装置の操作をする青木選手。コーナー進入には左手でブレーキレバーを押し込み、ステアリングをあてつつシフトダウン。そしてハンドルの中央に付いたアクセルリングを押し込み加速。その一連の操作に余裕がありまくりなんで、初体験のGなのに安心感が凄い! まるで遊園地のジェットコースターのようで、つい子供のように大声を出してはしゃいでしまいました!
しかし、はしゃいでばかりではもったいない! こんな機会はもうないかも知れない現役レーシングドライバーの同乗走行。2周目からは気合い入れて、しっかり1コーナーの飛び込みから色々とチェックしまくりまっせ~。って、ちょ速っ! 当然ですがオープニングラップとは進入スピードも横Gも全然違う! と思っていると、青木選手が「雨なんでタイヤ滑るんで~(かなり抑さえています)」とのコメント。
いや~、これでも十分未体験のGなんですけど……これがドライコンディションだったら一体どうなるの!? とか考えていると、またしてもライン取りやブレーキングポイントのチェックを忘れました……。
ただ、9コーナーのヘアピンへのアプローチがかなりアウトから入っていたので、そこだけは覚えています。素人のオレだとはやめにインに切り込みがちだけど、そのあとの直線~最終コーナー~ストレートセクションでスピードを乗せるためにこういう長くアクセルを踏めるラインを取るんですね~。勉強になるわ~。
ラストの3周目は青木選手のコメントつきでコース走行。いや~、夢のなかにいるような3ラップ5分間でした! クルマを降りてからしばらくアドレナリンの上昇がヤバかったので、このセッションでのフリー走行は見送り、他の方の走行を見て過ごすほどでした。
調子に乗ったフリー走行は危険がいっぱい!
ていうかオレもう今日はコレで帰ってもいいや! 3本目走らなくても大満足だわ~。と思っていたのが顔に出ていたのか、同行した編集者からの「せっかくだから3本目も走りましょう!」との声。その声に背中を押されて最後の3本目も走るコトに決定!
走ると決めたら、さっき同乗させてもらった青木選手のスピードレンジやG体験にはひっぱられ過ぎず、自分のスピードでラインとブレーキングポイントのトレースにだけ集中して走ろう! いちばんの目標はクルマを壊さず楽しむコト! と、心のなかでつぶやきながら、ヘルメット(レンタル)とグローブ(自転車用)を着用し準備オーケー。無線からコースオープンの指示を受けていざコースイン!
まず1周目はタイヤを暖めつつ流しながら路面チェック。路面は先ほどより乾いており、ところどころあった水たまりもかなり小さくなっている感じ。そんなコトを考えながら2周3周と少しずつコーナリングスピードを上げていく。うん、タイヤはよく路面を捉えている印象。イイ感じで走れるかも。
と、前方に他の参加者さんがドライブルする銀色のレーシングマーチ(レンタカー)が見える。ちょっと着いてっていってみよっかな~と好奇心が頭をもたげる。おっ、オレより少し速いくらいのペースかも? もしやペースメーカーとして最適なのでは? と、前のクルマをお手本にしてコーナリングやブレーキングを少しずつ詰めてみる。
なるほど~。やっぱりATだとタイトな4コーナーでの立ち上がり加速が鈍いな~。じゃあなるべくコーナリングスピードを落とさないラインに調整して、あとは立ち上がりでパドルシフトを使って2速にシフトダウンしてみよう! なんて考え出したらもうワクワクが止まりません! しかも、そのどれもが功を奏してか、前のマーチとの距離が詰まってきた! ヤベー、サーキット楽すぃ~!
そんな調子に乗ったオレのドライブに危険なオーラを感じてか、マーチのドライバーさんが走行ラインを開けてくれたので前に出る! サーキットで抜くとか、ワイレーサーやん! この調子でどんどんいくぜ~! と、最初の安全運転の気持ちはどこへやら。調子に乗ったオレは、いちばん楽しい567の複合コーナーは、6コーナー出口あたりで2速にシフトダウンするとイイ感じでノーズが出口を向いて早くアクセル踏めるやん! と、もう暴走モードは止まらない! まぁそんな冷静さを欠いた浮かれドライブだと行き着くところは……。ええ、皆さんのご想像どおりの結果になりました。
いちばん苦手だな~と感じていた、下りつつ左に曲がるにつれRがきつくなる8コーナーでやらかしました! タイヤが垂れて進入でリアが出たのに気付きつつも、このくらいのリア滑りは4WDだし、軽いカウンターあてて踏んでいけばイケるやろ?ていうかこのままシフトダウンしてノーズをインに入れたらさらに速く回れるかも! なんてリスク度外視のドライブをしちゃいました。完全にミスです。
シフトダウンでさらにフロント加重になったリアは右に大きくブレイク、あわててカウンターを切るも時すでに遅し。おつりをもらいタコ踊りを2回ほど踊って、なんとかスローダウンが間に合いコース内ギリギリで凌ぐことが出来ました。しかし、これは一歩間違えばコースアウトするドライブ。
心のどこかで健常者のころにRX-7でサーキットを走っていた20数年前の自分が頭をもたげてきて、現在の自分の走りを過信していたんだと思います。とはいえ“4WDでも下りでリアが抜けるとオレのテクニックではかなりヤバイコトになるので要注意!”という教訓を得ることができました。
このアクシデントで完全に集中力が切れたオレは、その後軽く1周流してピットイン。オレのフリー走行はこれにて終了!
タコ踊りのあとのクールダウン走行時に気付いたんですが、ウインドウがかなり曇っていました。大汗をかくほど興奮していたんでしょうね。やはり運転にいちばん大切なのは冷静さですな! クールダウン時に、後ろからきた青木選手の駆るジャガーのEV(電気自動車)「I-PACE」が見事なラインで先ほどの8コーナーに進入していきました。カッケー!
フリー走行後の終了式では、参加者の皆さんで記念撮影。実はこの日は仮面女子の猪狩ともかさんが愛車で参加するというサプライズもありました! 青木さんとは映画「リスタート:ランウェイ~エピソード・ゼロ」で共演した仲とのこと。
HDRSの活動目的について青木拓磨さんに聞いた
この終了式のあと、青木拓磨さんに少しお話しを伺いました。
──HDRSの活動はいつごろから始められたのですか?
青木氏:2011年に東日本大震災で被災した福島へ募金するために開始しました。
──HDRSの活動目的は何ですか?
青木氏:HDRSは車いすになった人でも、運転する楽しみや、運転技術の向上を目的としたドライビングスクールです。われわれ車いすユーザーにとって、クルマは第2の足です。そして、手動装置を使っているがゆえに運転操作がスムーズなんです。それをうまくつかえばハンディキャップが逆にアドバンテージになるのでは? と考えています。今後、電気自動車になるとさらに操作も単純化されてくるので、われわれ車いすユーザーのドライビング特性のいいところを出せる機会も増えてくると思います。自分もEVのジャガー I-PACEに乗って、Eトロフィーというワンメイクレースに出ていますが、そこでも電気自動車の可能性を感じます。
──参加者の皆さんに今後期待するコトはありますか?
青木氏:個人的には、このHDRSに参加してくれた皆さんが、クルマの運転がさらに上手になって、オレよりぜんぜん上手いじゃん! そんな操作の仕方もあるんだ! なんて気付きを逆にもらえると嬉しいです。また、HDRSを通じて、参加者の皆さんが「オレ、クルマの運転、健常者より上手じゃん!」と思ってもらえて、車いすになって無くしてしまった自信を取り戻すきっかけになれば最高です!
ハンド・ドライブ・レーシング・スクール体験後記
オレが個人的にこのHDRSに参加して抱いた感想は、クルマを運転する楽しさを思い出せることはもちろんですが、いちばんの魅力は青木拓磨さんご本人にある気がしました。不屈の車いすヒーロー青木拓磨さんと話していると、何かパワーをもらえてオレも頑張ろう! 挑戦しよう! という気持ちになって来るんですよ。
この記事をここまで読んでくれた貴方や貴方の友人に、もし車いすになって少し人生を立ち止まってしまっている、そんなクルマ好きの方がいたならば、HDRSのコトを教えてあげて下さい。そこには貴方も貴方の友人も笑顔になれる体験がまっていると思います! オレと一緒に青木パワーをチャージしに行きましょう(笑)。
次回のHDRSは11月24日開催予定とのこと! もちろん私も青木パワーをチャージにしに行きますよ~! いや~、HDRSマジで楽しかった~!