ニュース
アカザーの車いす乗降装置を改良した新型「ジャパンタクシー」をチェックしてみた
トヨタが利用者の声に応えてリニューアル
2019年2月20日 00:00
- 2019年2月4日 開催
どうもアカザーっす! 今年で車いす歴19年になるオレです。車いすユーザーを19年もやってると、ほぼすべての交通機関も利用したりしているワケですが、2017年末あたりからタクシーが車いすユーザーにとっても、けっこうイイ感じに変わってきているのをご存知でしょうか?
旧型ジャパンタクシーを利用して感じたコト
そのイイ感じのタクシーの名は「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」。トヨタ自動車の「シエンタ」をベースに開発された、車いすごとの乗車も可能なタクシーです。2017年10月に発売され、すでに1万台以上を販売。日本のタクシー総台数が19万台とのことなのでまだ19分の1ほどですが、2020東京オリンピックに向け、従来の「クラウンコンフォート」タクシー(生産終了)から、ジャパンタクシーへのリプレイスを進めるとのこと。
2018年に初めてこのジャパンタクシーを利用するまで、従来のタクシーでは後部座席に乗り移った後、車いすを膝の上に置いたり隣の座席に置いたりしていたオレは(トランクに車いすが入らない車種があるのと、30秒ほどで乗降可能なため)、格段に広い車内や助手席を畳んでできた足下のスペースに、折り畳んだ車いすを置けることに感動。
以来、気に入ってタクシー乗り場などでジャパンタクシーに当たるとラッキー!的な感じで利用していたんですが、利用者によっては不満に感じていた人たちも居たようで、1万2000人が改善要求を求める署名をトヨタに提出したとのこと。確かにネットを検索すると「車いすで利用しづらかった」や、「乗るのに15分以上かかった」などの不満もチラホラ。
そういえばジャパンタクシーの運転手さんが「コレ車いすのまま乗れるんですが、レイアウト変更なんかに少し時間がかかるんですよね~。」って言ってたっけな~。確かにネットではタクシードライバーさんからの不評もけっこう多い。
で、そんな不評点に対応するかたちで、トヨタさんがジャパンタクシーのリニューアルを敢行! そのリニューアルされた車両が3月より発売予定とのことで、ひと足先に発表会でその改善点をチェックしてきました!
今回のジャパンタクシーのリニューアルは、主に「車いす乗降用スロープの設置作業が複雑で、乗降に10~20分もかかってしまうことがあり、車いすユーザーやタクシードライバーからの不評に対応したもの」というコト。具体的には車いすの乗降時に使うスロープや、車いすの固定に使うベルトなどの見直しを図ったということです。
新旧ジャパンタクシーで積み込み作業を比較!
というワケで、まずはこれまでのジャパンタクシーで、車いすを積み込む作業を動画で見てみましょう。
手慣れたスタッフがデモとして行なってもこんな感じで6分弱。ちなみに慣れていないドライバーだと10~15分ほどかかることも。なかには手順が分からずにタクシーセンターに電話をして、手順を確認するケースもあったとのこと。確かにこれだけ手順が多くて時間もかかるんじゃあ、利用する車いすユーザーも対応するタクシードライバーも「もう利用したくない(やりたくない)」となるのも当然すね~。
以上を踏まえた上で、次は改良を施されたジャパンタクシーで車いすを積み込む作業をどうぞ。
なんと驚きの3分切り! 従来型に比べて圧倒的に作業効率がよくなっているのが見て取れます。「不慣れなドライバーでも4分台で完了できることを目指し、作業工程を見直した」とのこと。いや~、いいすね~。この作業工程と待ち時間なら、十分実用に耐え得るのではないでしょうか?
大きな改善ポイントは以下の4点。
【ジャパンタクシー3月以降販売車向け改善点】
1:スロープ1を3枚折から2枚折へ変更。収納袋も廃止。
2:スロープ2を折り畳み構造から、樹脂製の一体型へ変更。
3:収納袋に入っていた車いす固定用ベルトをフロアに常設。
4:作業手順を目立つ場所にラベル化して貼り付け。
また、既販車である約1万台の車両に対しても、以下の無料アップデートを行なっていくとのことです。
【ジャパンタクシー既販車向け改善点】
1:スロープ1の固定ベルトをつなぐカラビナを提供。
2:スロープ2の足を組み立て式からスライド式に変更。
3:車いす固定ベルトなどをリアフロアに設置した収納ポケットに収納。
4:作業手順を目立つ場所にラベル化して貼り付け。
新型ジャパンタクシーを体験!
せっかくの機会なので、発表会終了後に新型ジャパンタクシーでの乗降体験もさせてもらいました!
個人的には荷物を背負った状態でも、アシストなしで上れそうな感じ。スロープの耐荷重は200kgなので、電動車いすでも利用が可能そう。ただ、淡田さん曰く「これまで転倒防止の補助輪が付いたタイプの車いすで、スロープを上るときに補助輪がつかえたことがあります」とのこと。
淡田さん曰く、「フックをかけられる場所は車いすによって違うので、過去に乗車経験があるお客さまは、過去に取り付けて問題がなかった位置をドライバーに教えていただけると、さらに作業スピードが上がると思います」とのこと。
初めての車いすに乗った状態での乗車でしたが、頭が天井に当たることもなくまったく問題ナシ。ただ、個人的にいつも思うのは車いすに座って乗車するよりも、シートに乗り移っての乗車が断然乗り心地はよく、安全性も高いというコト。その思いを話すと、淡田さんも「過去にはそういう理由で最初は車いすのまま乗車されたのですが、途中からシートに移られたお客さまもいらっしゃいました」とのこと。
ですよね~。ユーザーの障碍にもよりますが、もしシートに乗り移れる車いすユーザーさんなら、車いすのまま乗るよりもシートに移動して、車いすをトランクなりに積んでもらう方がたぶん手っ取り早いし、乗り心地もよいのでオススメですよ~。今回の改善は素晴らしいと思いますが、車いすユーザーとひと口に言っても、人それぞれ障碍度合いが違うので、自分のスタイルに合った利用法を捜してみてください。
というワケでオレ(脊髄損傷Th12)の普段の乗車スタイルがコチラ。
車いすをドライバーさんにお願いしてトランクに入れてもらってもいいんですが、せっかちなオレは乗車スピード重視。この方法だと乗車時間は30秒ほど。数分の移動では、もっぱらこのスタイル。
この乗車体験中に、淡田さんと色々と話をさせていただいて感じたのが、「われわれ車いすユーザーも積極的にタクシーを利用して、使う側としての経験値を増やさなければいけないのでは?」ということ。
そう思ったのは、車いす乗降作業のインストラクターも務める淡田さんの「車いすのお客さまをよく乗せるドライバーでも、その機会は月に1回ほどなんですよね」とのお言葉。確かに月1じゃあ作業手順を忘れないようにするのがせいいっぱいで、乗降作業のスキルは上がらないですよね~。でもわれわれ車いすユーザーが積極的に使うことで、ドライバーさんのスキルが上がり、われわれ自身の利用者としてのスキルも上がってゆく! 最高じゃないすか!
今回、トヨタさんが車いすユーザーやタクシードライバーの改善要求に応えるかたちで、ジャパンタクシーのアップデートを行なってくれました。そして淡田さんのような人がドライバーさんたちに使い方を広めてくれている!
となれば、次はわれわれ車いすユーザーがその努力に応える番なのでは!? たぶんそうすることで相互理解がよりいっそう深まり、障がい者や高齢者がより活動しやすい、バリアフリーなんて言葉すら使われなくなる、“真のバリアフリー社会”になっていくのではないでしょうか? そうなればいいな~。