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アカザーの車いす乗降装置を改良した新型「ジャパンタクシー」をチェックしてみた

トヨタが利用者の声に応えてリニューアル

2019年2月4日 開催

 どうもアカザーっす! 今年で車いす歴19年になるオレです。車いすユーザーを19年もやってると、ほぼすべての交通機関も利用したりしているワケですが、2017年末あたりからタクシーが車いすユーザーにとっても、けっこうイイ感じに変わってきているのをご存知でしょうか?

旧型ジャパンタクシーを利用して感じたコト

アカザーっす!(イラスト:水口幸広)
筆者愛用のOXエンジニアリング製の手動式車いす
2017年10月に発売された「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」。3月から車いす乗降装置をリニューアルする

 そのイイ感じのタクシーの名は「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」。トヨタ自動車の「シエンタ」をベースに開発された、車いすごとの乗車も可能なタクシーです。2017年10月に発売され、すでに1万台以上を販売。日本のタクシー総台数が19万台とのことなのでまだ19分の1ほどですが、2020東京オリンピックに向け、従来の「クラウンコンフォート」タクシー(生産終了)から、ジャパンタクシーへのリプレイスを進めるとのこと。

 2018年に初めてこのジャパンタクシーを利用するまで、従来のタクシーでは後部座席に乗り移った後、車いすを膝の上に置いたり隣の座席に置いたりしていたオレは(トランクに車いすが入らない車種があるのと、30秒ほどで乗降可能なため)、格段に広い車内や助手席を畳んでできた足下のスペースに、折り畳んだ車いすを置けることに感動。

筆者がジャパンタクシーを利用するときのスタイル。自力でシートへの乗り移りが可能なため、乗降装置は使っていない

 以来、気に入ってタクシー乗り場などでジャパンタクシーに当たるとラッキー!的な感じで利用していたんですが、利用者によっては不満に感じていた人たちも居たようで、1万2000人が改善要求を求める署名をトヨタに提出したとのこと。確かにネットを検索すると「車いすで利用しづらかった」や、「乗るのに15分以上かかった」などの不満もチラホラ。

 そういえばジャパンタクシーの運転手さんが「コレ車いすのまま乗れるんですが、レイアウト変更なんかに少し時間がかかるんですよね~。」って言ってたっけな~。確かにネットではタクシードライバーさんからの不評もけっこう多い。

利用客やタクシードライバーから寄せられた意見。スロープ設置や車いすの固定作業に問題がある感じ

 で、そんな不評点に対応するかたちで、トヨタさんがジャパンタクシーのリニューアルを敢行! そのリニューアルされた車両が3月より発売予定とのことで、ひと足先に発表会でその改善点をチェックしてきました!

トヨタ自動車株式会社の粥川宏チーフエンジニアは、「スライドドアは広くて乗り降りがしやすく、天井が高くて快適だというありがたいご意見のほかに、乗り降りの作業にかかる時間が長いなどのご不満の声もあり、今回の改善はそういった声に応えての乗り降り作業の見直しに重点を置いたものです」とのこと

 今回のジャパンタクシーのリニューアルは、主に「車いす乗降用スロープの設置作業が複雑で、乗降に10~20分もかかってしまうことがあり、車いすユーザーやタクシードライバーからの不評に対応したもの」というコト。具体的には車いすの乗降時に使うスロープや、車いすの固定に使うベルトなどの見直しを図ったということです。

3月以降に発売されるジャパンタクシーでの改良点

新旧ジャパンタクシーで積み込み作業を比較!

 というワケで、まずはこれまでのジャパンタクシーで、車いすを積み込む作業を動画で見てみましょう。

JPN TAXIの車いす乗降改善対応。従来モデルの乗降用スロープの設置作業など

 手慣れたスタッフがデモとして行なってもこんな感じで6分弱。ちなみに慣れていないドライバーだと10~15分ほどかかることも。なかには手順が分からずにタクシーセンターに電話をして、手順を確認するケースもあったとのこと。確かにこれだけ手順が多くて時間もかかるんじゃあ、利用する車いすユーザーも対応するタクシードライバーも「もう利用したくない(やりたくない)」となるのも当然すね~。

特に「スロープ2」(写真右)と呼ばれる脚のついたスロープの脚の出し入れがかなり難しい

 以上を踏まえた上で、次は改良を施されたジャパンタクシーで車いすを積み込む作業をどうぞ。

JPN TAXIの車いす乗降改善対応。改良モデルのの乗降用スロープの設置作業など

 なんと驚きの3分切り! 従来型に比べて圧倒的に作業効率がよくなっているのが見て取れます。「不慣れなドライバーでも4分台で完了できることを目指し、作業工程を見直した」とのこと。いや~、いいすね~。この作業工程と待ち時間なら、十分実用に耐え得るのではないでしょうか?

 大きな改善ポイントは以下の4点。

【ジャパンタクシー3月以降販売車向け改善点】
1:スロープ1を3枚折から2枚折へ変更。収納袋も廃止。
2:スロープ2を折り畳み構造から、樹脂製の一体型へ変更。
3:収納袋に入っていた車いす固定用ベルトをフロアに常設。
4:作業手順を目立つ場所にラベル化して貼り付け。

 また、既販車である約1万台の車両に対しても、以下の無料アップデートを行なっていくとのことです。

【ジャパンタクシー既販車向け改善点】
1:スロープ1の固定ベルトをつなぐカラビナを提供。
2:スロープ2の足を組み立て式からスライド式に変更。
3:車いす固定ベルトなどをリアフロアに設置した収納ポケットに収納。
4:作業手順を目立つ場所にラベル化して貼り付け。

新型ジャパンタクシーを体験!

 せっかくの機会なので、発表会終了後に新型ジャパンタクシーでの乗降体験もさせてもらいました!

タクシードライバー役は、宮園自動車株式会社でジャパンタクシーの車いす乗降作業研修の講師も行なっている淡田兼史さん
シートを跳ね上げ、シート下にストラップ固定で収納されているスロープを外す。シートの裏には手順を説明するラベルが貼ってある。スロープの耐荷重は200kgで斜度は14度

 個人的には荷物を背負った状態でも、アシストなしで上れそうな感じ。スロープの耐荷重は200kgなので、電動車いすでも利用が可能そう。ただ、淡田さん曰く「これまで転倒防止の補助輪が付いたタイプの車いすで、スロープを上るときに補助輪がつかえたことがあります」とのこと。

このように転倒防止の補助輪が付いたタイプだと、スロープを上る際に邪魔になることも。画像のような折り畳み機構があるものは、折り畳むと問題ナシ
車内に乗り込んだら、左右2本のストラップで車いすを固定

 淡田さん曰く、「フックをかけられる場所は車いすによって違うので、過去に乗車経験があるお客さまは、過去に取り付けて問題がなかった位置をドライバーに教えていただけると、さらに作業スピードが上がると思います」とのこと。

最後にシートベルトを車いすの上から装着して、約2分半で乗車完了

 初めての車いすに乗った状態での乗車でしたが、頭が天井に当たることもなくまったく問題ナシ。ただ、個人的にいつも思うのは車いすに座って乗車するよりも、シートに乗り移っての乗車が断然乗り心地はよく、安全性も高いというコト。その思いを話すと、淡田さんも「過去にはそういう理由で最初は車いすのまま乗車されたのですが、途中からシートに移られたお客さまもいらっしゃいました」とのこと。

 ですよね~。ユーザーの障碍にもよりますが、もしシートに乗り移れる車いすユーザーさんなら、車いすのまま乗るよりもシートに移動して、車いすをトランクなりに積んでもらう方がたぶん手っ取り早いし、乗り心地もよいのでオススメですよ~。今回の改善は素晴らしいと思いますが、車いすユーザーとひと口に言っても、人それぞれ障碍度合いが違うので、自分のスタイルに合った利用法を捜してみてください。

 というワケでオレ(脊髄損傷Th12)の普段の乗車スタイルがコチラ。

立つことはできないので、車いすから腕の力だけでシートに移動。スライドドアのジャパンタクシーはクラウンコンフォートタクシーに比べて乗車口も広く、体を支える補助グリップが多いのでオレ的には格段に使いやすい!

 車いすをドライバーさんにお願いしてトランクに入れてもらってもいいんですが、せっかちなオレは乗車スピード重視。この方法だと乗車時間は30秒ほど。数分の移動では、もっぱらこのスタイル。

ジャパンタクシーは助手席を折り畳んでできたスペースに車いすを置けるので、車いすを抱えなくてもよいので、オレ的にはかなりナイス!
ジャパンタクシーのトランクは十分な広さがあるので、折り畳み式車いすなら余裕で入る感じ
ちなみに、セダンタイプのタクシー利用時は、ワンオフ製作の私の車いすはトランクに入らないので、こんな感じで膝の上に車いすを抱えたり運転席後部に置いたりして利用。ジャパンタクシーのほうがありがたいです
前席は後部座席に比べてシート高が5cmほど低いらしいので、後部シートへの乗り移りがキツイ人は試してみるといいかも。オレはどちらも乗れましたが、補助グリップが多い後部座席への乗り移りのほうが楽かも

 この乗車体験中に、淡田さんと色々と話をさせていただいて感じたのが、「われわれ車いすユーザーも積極的にタクシーを利用して、使う側としての経験値を増やさなければいけないのでは?」ということ。

 そう思ったのは、車いす乗降作業のインストラクターも務める淡田さんの「車いすのお客さまをよく乗せるドライバーでも、その機会は月に1回ほどなんですよね」とのお言葉。確かに月1じゃあ作業手順を忘れないようにするのがせいいっぱいで、乗降作業のスキルは上がらないですよね~。でもわれわれ車いすユーザーが積極的に使うことで、ドライバーさんのスキルが上がり、われわれ自身の利用者としてのスキルも上がってゆく! 最高じゃないすか!

 今回、トヨタさんが車いすユーザーやタクシードライバーの改善要求に応えるかたちで、ジャパンタクシーのアップデートを行なってくれました。そして淡田さんのような人がドライバーさんたちに使い方を広めてくれている!

 となれば、次はわれわれ車いすユーザーがその努力に応える番なのでは!? たぶんそうすることで相互理解がよりいっそう深まり、障がい者や高齢者がより活動しやすい、バリアフリーなんて言葉すら使われなくなる、“真のバリアフリー社会”になっていくのではないでしょうか? そうなればいいな~。