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ホンダ、国内3工場への集約で年産キャパシティ81万台に

四輪生産体制の今後の取り組みについて八郷社長が説明

2017年10月4日 開催

本田技研工業株式会社 代表取締役社長 八郷隆弘氏

 本田技研工業は10月4日、東京都内で記者会見を開催し、同社の四輪生産体制の取り組みについて説明した。それによれば、日本国内では現在の年産106万台の製造キャパシティを持つ体制を見直し、埼玉製作所の2つの工場のうち狭山工場を2021年までに寄居工場に集約し、鈴鹿製作所、子会社である八千代工業 四日市製作所の3つの工場体制へと移行し、年産81万台へと製造キャパシティを減らす計画。また、現在は八千代工業が運営している四日市製作所に関しては、完全子会社化を行なう。

 寄居工場に集約される埼玉製作所は、グローバルにおける生産技術の構築・標準化の拠点としても機能し、世界各国に展開する生産技術やプロセスの企画を、世界各国の生産拠点から参加するエンジニアなども参加して行なっていく。これによりグローバルに生産技術を水平展開することが可能になり、ホンダが2030年までに3分の2を電動化するという目標を実現するための手段とする。

国内は4工場を3工場に集約、日本の工場を電動化生産のショーケースに

 本田技研工業 代表取締役社長 八郷隆弘氏は「いま自動車事業は大転換期を迎えている。今後電動化などに向けて生産現場も大きく変わっていかなければならない。日本での生産技術を海外に展開する体制をとることで、それに対応していきたい。そのために日本の生産現場を強化していく」と述べ、今回の4輪生産体制の進化についての目的を語った。

 その上で国内の生産拠点の進化について説明し「現在国内に4つある工場(筆者注:埼玉製作所 寄居工場、埼玉製作所 狭山工場、鈴鹿製作所、八千代工業 四日市製作所)を3つに集約する。さらに、新しい生産技術を埼玉製作所で構築していき、標準化しそれを海外に展開していく。それによってより効率の高いグローバルな生産体制を構築していく」と述べ、国内工場を3つに集約し、日本の工場をEV(電気自動車)などの新しい技術を利用した自動車を生産する工場ショーケースとし、それを海外の工場に横展開していくという体制を目指すと説明した。

八郷氏のプレゼンスライド
本田技研工業株式会社 専務取締役 山根庸史氏

 続いて登壇した本田技研工業 専務取締役 山根庸史氏が、具体的な計画に関して説明した。日本の4工場を3工場に集約する計画に関しては「埼玉製作所は狭山と寄居を寄居工場に集約する。狭山の従業員は寄居を中心に移動し、雇用は維持する。鈴鹿製作所はこれまでと変わらずスモールと軽を生産し、八千代工業の四日市製作所も軽を中心にすることは変わらないが、完成車生産事業に関してはホンダが子会社化することで両社で基本合意書を締結した」と述べ、狭山工場を寄居工場に集約すること、八千代工業の四日市製作所をホンダ本体が子会社化する計画であることを明らかにした。

 山根氏によれば、寄居工場への集約は2021年度の完了を目処に段階的に行なっていくとのことで、それまでに現在の4工場体制から3工場体制へと変更が進む。なお、八郷氏は質疑応答のなかで、現在ホンダの国内4輪生産キャパシティは年産で約106万台だが、狭山工場を寄居工場に集約することで、約81万台になる見通しだという(狭山工場の25万台分がなくなるため)。昨年の実績では国内での販売が約70万台、輸出が約11万台ということなので、それに見合う生産キャパシティへの最適化が行なわれるということになる。なお、生産体制の工夫で、最大90万台までは調整できるとのことだった。

 また、寄居工場にグローバルな生産技術の進化を担う機能を持たせることについて、山根氏は「電動化に向けては、そうした生産技術の標準化が重要になる。各生産拠点からエンジニアなどが日本へ集い、そうしたプロセスの検証などを共同で企画する。それを海外へと水平展開する」と述べ、今後日本工場を電動化された自動車の生産におけるショーケースとしていく戦略であるという。なお、すでにそれらの取り組みは開始されており、今後段階的に実現していくと山根氏は説明した。

山根氏のプレゼンスライド

国内の生産能力は106万台から81万台へ、グローバルには稼働率が上昇へ

 両氏のプレゼンテーションの後は、記者からの質問に対して質疑応答の時間が設けられた。以下はその内容だ。

質疑応答に答える本田技研工業株式会社 代表取締役社長 八郷隆弘氏(右)と本田技研工業株式会社 専務取締役 山根庸史氏(左)

――グローバルな地産地消体制と国内生産体制のバランスの取り方について、また、寄居工場をマザー工場とする意味について

八郷氏:弊社ではグローバルな生産体制をとっており、地産地消という考え方でやっている。経済情勢などは常に変わっているのでフレキシブルにやっていく必要があるが、8割を地産地消、1~2割をグローバルに相互補完できればという考え方でやっている。グローバルには六極体制ということで拠点を持ってやっているが、歴史の違い、人材のレベルの違いもある。これから電動化を目指していくに当たって、日本がしっかりそこをリードしていかなければならないと考え、今回決断した。

――タイでもラインを休止にしたり、ブラジルでも稼働していないラインがある。そうした余剰になっている部分をどうするのか?

八郷氏:グローバルには554万台の製造キャパシティがあり、506万台の販売ということでギャップがある。日本で集約を行なうと527万台となり、506万台の販売に対して稼働率が96%になる。おっしゃる通り、ブラジルやアジアにある工場が十分に稼働していないとのことなので、これからそれらの市場を重点的に強化していくことで、グローバルでの生産バランスをとっていきたい。

――狭山の工場の跡地の用途はどうなるのか? また、集約のコストは?

八郷氏:狭山工場の活用に関してはこれから地元の方々とお話をさせていただき、2021年に向けて議論させてもらう。そうして決めていきたい。現時点では跡地をこう使うとかは決まっていない。事業計画も含めながら検討していきたい。費用に関しては、狭山工場で生産しているモデルの移管のコストやそれに伴う投資があるが、現時点でここでお話ができるような精度がある額は出ていない。

――世界各地の拠点からアソシエイトを集めるという計画だと聞いたが、どの拠点から何人ぐらいとか計画はあるのか?

山根氏:これから色々な自動車のアイテムが進化していく。例えば電動化、自動運転などで、それらの技術でメインのエンジニアなどを呼ぶことになる。従来は日本でプロセスを作って、作った結果を海外の工場に持って行くという形になっていたが、今後は電動化の波が短期間で来る。それを乗り切るために原点の段階から理解してもらうために、企画の段階から入ってもらう。その内容によってケースバイケースだけど、1年近くいてもらって原点から理解してもらう。どこの拠点からということについてはその変化が起きている拠点からだ。

――狭山は生産工場としては閉鎖という理解でいいのか?

八郷氏:狭山に関しては完成車ラインというのは2021年までに寄居に移管する予定。跡地に関しては地元とお話をする。

――国内工場の稼働率に関してはどうなるのか?

八郷氏:生産能力に関しては、現在は(年産)106万台になっている。狭山を寄居に集約する時点の2021年には81万台の生産能力になる。そのうち70万台を国内に、10万台を輸出にあてる形になるので、稼働率はほぼ100%になる。ただし90万台までの生産能力を増やすことができるようにはする計画だ。

――国内で発売するEVは寄居工場で作るという意味か?

八郷氏:EVの生産はこれから検討していく。既存のハイブリッド、ガソリン車を作るなかでいろいろ検討しながらやっていく方がいい。実証を寄居工場でやっていき、モジュラー化の戦略を含めて検討していきたい。

――イギリスで生産していたものを日本に持ってきたりもしたが、統合によりそれらをイギリスに戻すのか?

八郷氏:日本国内で81万台を生産し、70万台が国内、10万台が輸出となる。この数は今後も大きくは変わらないと考えている。仮に国内の需要が増えれば、10万台ぐらいは増やすことが可能な体制にしてあるので、対応できる。今回の集約で国内販売分と輸出の比率が変わるかと言われればそうではない。

――国内生産の集約が行なわれると、狭山で生産されていた25万台の振り分けはどうするのか?

八郷氏:狭山工場では25万台の生産能力があるが、集約が完了するとその25万台分がマイナスとなり、国内での生産台数が81万台となる。狭山で生産していた機種を他の工場に移管しても、十分に台数的にはまかなうことができる。鈴鹿や寄居に新しいラインを引くということは考えていない。寄居はグローバルにも展開できる車両、鈴鹿は軽やスモールという位置づけは変わらない。

――電動化について新しい方針を発表したということだと思うが、他社は業界のパートナーで合弁会社を作るというところもあるが、ホンダは独自でやっていくのか?

八郷氏:弊社は2016年に、2030年までに電動化された車両で3分の2を目指すという方針を明らかにしている。現在研究開発を行なっているが、独自にやっているだけでなく、例えば日立オートモーティブとの提携はすでに明らかにしているし、燃料電池に関してはGMとやっている。ウインウインの関係になれるのであれば、パートナーと協業していきたい。

――寄居工場での電動化に向けた取り組み、そのグローバル展開についてもう少し教えてほしい。

山根氏:効率を上げることを目指していきたい。世界各地からエンジニアなどに集まってもらい、モジュラーを作っていく。電動化に関しては新しい製品群となるので、プロセスを作りそれを熟成させていく。投資をドカンとやっていくのではなく、徐々に精査しながらやっていくということ。そうした研究の場を寄居に持つというのが今回の取り組み。

――国内生産の再編は寄居工場を作る時からのテーマだったと思うが、なぜこのタイミングなのか?

八郷氏:2030年のビジョンを我々も作っており、そのなかでの電動化やグローバルでのキャパシティの状況などを常に検討している。電動化などの新しい技術に合わせて生産体制を進化させるには、日本のモノ作りを進化させないといけない。そのために集約しようと決断した。

――海外メーカーも急速にEVに取り組んでいるが、そのなかでホンダにも焦りがあったのか?

八郷氏:2016年の2月に、2030年までにグローバルに生産している車両の3分の2を電動化したいと明らかにした。それに向けて今は一歩一歩やっている段階で、ほかのメーカーと比べてどうとかいうことよりも、まずは自分たちで立てた目標をクリアしようと思ってやっている。もちろん遅れないようにしようとは思ってはいるが、まずは自分たちの目標をしっかりクリアしていく。

――工場の雇用について、狭山で何人で、寄居にどれくらい行くのか?

山根氏:現在で狭山では4600名。寄居の機能強化で、寄居を中心に配置転換を行なっていく。それ以外はこれから精査する。従業員の能力を見極めながら決めていきたい。

――狭山以外の従業員の数について変更はあるのか?

山根氏:八千代工業や鈴鹿に関しては変化はない。今後は81万台の能力をフルに使っていき、場合によっては二交代制で生産するということは考えられる。その意味では従業員数は増える方向だと思う。

――ホンダの国内生産、伊東前社長は100万台を維持したいと言っていたが、それはなぜ維持できなかったのか?

八郷氏:100万台という国内の生産能力を生かし切ろうと考えてきたが、国内の販売が我々が想定したよりも伸びなかった。だからといってそれを輸出にまわすというのも難しい。国内は70万台、輸出が10万台というのが我々が想定しているキャパシティだ。

――六極体制の進化になるが、八郷氏としてはどういう狙いがあるのか

八郷氏:経済状況として非常に不透明ななかで、重要なことはどうやって効率よく運営していくか、だ。また来たるべき電動化時代に向けてどう変わっていくのか、効率よくやっていかないといけない。そこをしっかりやらないと、グローバルな効率は上がらないので、そのなかでも日本のモノ作りをしっかりやっていこうというのがこの取り組みだ。