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「軽トラックにはMT」という概念が新開発CVTで変わる? ダイハツの新型「ハイゼット」シリーズ、「アトレー」に搭載されたFR用CVTについて聞いた

2021年12月20日 発売

今回のモデルチェンジの中で大きなトピックになっているのが新開発された縦置きCVT

 12月20日に発売されたダイハツ工業の「ハイゼット」シリーズと「アトレー」において大きなトピックとなったのが、新開発された縦置きCVT。これはハイゼットカーゴ、アトレーシリーズだけでなく、今回はマイナーチェンジとなったハイゼットトラックにも採用された。

 この縦置きCVTはダイハツが以前から使用している3軸CVTと基本的に同じ構造だ。ただ、使われ方がハードな商用車用とするためにこだわったところ、信頼性確保のために追加した面もある。その1つがトランスミッションへの入力に関わる部分である。

新開発された縦置きCVT

 クランクからの駆動はインプットシャフトの回転を一次減速してからCVTのベルトに伝わり、さらに二次減速してドライブシャフトを回すという流れになる。このうち一次減速のギヤの部分にはフォワードクラッチがあり、ここが繋がることで動力が伝わる。このクラッチの圧着力は入力されるトルクに対してプラスアルファ程度のものとしていた。そしてプーリー部でもベルトをクランプするトルク容量があるが、この設定は一次減速のギヤのクラッチより少し高めにセットする。

一次減速のギヤに付くフォワードクラッチの圧着力設定に秘訣があった
ベルトをクランプするトルクはフォワードクラッチより少し高めている

 これはどういう意味かというと、未整地を走ることが多い軽トラックでは駆動輪の片方が浮いてしまうこともある。そして姿勢が戻ると再び接地するのだが、このときにタイヤ側からCVTへ逆の入力が発生し、この影響でベルトがプーリーで滑ってしまうとCVTの機構にダメージが生じることがある。そこで一次減速のギヤのクラッチ圧着力をプーリークランプ部より少し低くすることで、逆入力があったときはこの部分のクラッチディスクが滑ることで入力を吸収するという作りにしている。

 いわばヒューズのようなものだが、クラッチはもともと滑らせて使えるものなので、ここが機能する状況になってもクラッチに問題はないという。

 また、構造自体もコンパクトにする。サイズ的には従来のATと同レベルとのことで、そのサイズに収めた結果、室内側の空間を犠牲にすることなく搭載できた。下面への飛び出しも増えていないので最低地上高にも影響がない。

バックギヤはベルトを介さない構造。軽商用車は細い道の上り坂を、荷物を積んだまま延々とバックで上ることも多いが、そうした乗り方であってもMT同様のミッション耐久性を確保する。働くクルマ作りがうまいダイハツらしい構造

 軽トラックにCVTというといろいろ言われるが、そもそもギヤを介すダイハツの3軸CVTはダイレクト感もあり構造的にも強い。そこに前記した工夫を盛りこんでいるので信頼性は高いはず。

 ほかにもトランスミッション内に4WD切り替え機構を組み込み、2WD、4WDオート、4WDロックを自動で切り替える電子制御を搭載するなど高性能なCVTとなっている。「軽トラックはMT」と思われる傾向もあるが、新型CVTを積むハイゼットトラックからそれが変わっていくかもしれない。