高橋敏也の新型「プリウス」買ってみた長期レビュー 第6回:燃費に緊急事態発生! その原因と対処を探る |
もうね、何がなんだか。とにかく燃費がわるい。どれぐらいわるいかというと、私が本連載で目標として掲げている「燃料1Lあたり20km以上を走る」、すなわち20km/Lなんて夢のまた夢になってしまった。なんと驚いたことに、1Lあたり約16kmになってしまったのである! これははっきり言って、非常事態宣言レベルの話だ。子犬がじゅうたんの上に、柔らかめのウンチをして、その上を無邪気に走り回っているぐらい大変なことである。
給油日 | 走行距離 | 給油量 | 給油金額 | 燃費 |
2009年6月16日 | - | 38.66L | 4601円 | - |
2009年6月26日 | 355.5km | 20.41L | 2510円 | 17.4km/L |
2009年6月26日 | 223.2km | 10.16L | 1250円 | 22.0km/L |
2009年7月19日 | 663.7km | 39.59L | 4553円 | 16.8km/L |
2009年8月15日 | 658.3km | 36.17L | 4485円 | 18.2km/L |
2009年9月9日 | 692.4km | 38.71L | 4955円 | 17.9km/L |
2009年10月5日 | 713.6km | 38.16L | 4656円 | 18.7km/L |
2009年10月17日 | 369.7km | 23.13L | 2776円 | 16.0km/L |
2009年11月8日 | 630.9km | 37.79L | 4610円 | 16.7km/L |
2009年11月26日 | 625.7km | 38.64L | 4637円 | 16.2km/L |
今回はそんな訳で、初っ端から燃費データだ。といってもこれは前回と同じ表なのだが……2009年11月8日、そして11月26日のデータに注目。もう大変である(10月17日のデータの燃費が悪いのには別の理由がある)。
いや、原因の一つは最初から分かっている。我が家に新型プリウスが納車されたのが昨年6月、すでに夏と秋、2つの季節を通り越し、今は冬である。特に今年の冬は、景気が悪いせいか一段と寒さが身に染みる。そしてその寒さのせいで乗用車のヒーターが大活躍するのである。そう、ヒーターを効かせているせいで、普段より燃費が悪くなっているのだ。
経験上言えることだが新型プリウスの場合、クーラーを効かせるよりも、ヒーターを効かせたほうが燃費に影響が出る。実際、納車されてからの燃費データを見ても、その傾向が読み取れる。夏場、クーラーをガンガン使っていた時よりも、冬場にヒーターを効かせた時のほうが燃費はわるくなっているのだ。また、ヒーターを入れている際に、ドライブモードをエコモードに切り替えると、風量がグッと抑えられるのである。エコモードはトータルに燃費をよくする制御を行うモードだが、その中にはエアコンのコントロールも含まれているのである。
が、しかし。それだけが燃費悪化の原因ではないことも、またしかり。要するに私の運転が大ざっぱになって来ているのだと思う。納車直後は燃費を常に気にして、自然と「省燃費な走り」になっていたのだろう。それが慣れと共に、失われてきているのだと思う。というか、確信した。いかん、このままではいかん。新型プリウスの名誉、そして自分のプライドを守るために、燃費を再びよくしなくてはならない! でも、いったいどうすれば……。
■JAFのエコトレーニングに参加してみました
気がつけば埼玉、快晴の元、東武こしがや自動車教習所である。にこやかな表情で出迎えてくれたJAF(日本自動車連盟)の方に対して、こちらは意外と緊張していた。そう、私は昨年12月に開催された「JAF実技講習会(エコトレーニング)」に参加したのである。目的は言うまでもなく「燃費の向上」、エコトレーニングを通して少しでも燃費をよくしようというのである。
そもそもこのエコトレーニング、実車を使用しつつ環境に優しい「エコドライブ」を、「エコトレーニング」から学び取ろうというものだ。環境に優しいエコドライブは、省燃費に貢献し、すなちわそれは財布にも優しいことを意味する。JAFが各地の環境・自動車関連団体と共催するこの講習会、私が参加したのはJAF埼玉支部、八都県市環境問題対策委員会大気保全専門部会が中心となって開催された「エコトレーニング埼玉会場」である。
乗用車を運転でき、エコドライブに関心のある人なら誰でも参加できるのだが、実車を使用するということで講習ごとの参加人数には制限がある。スケジュールはJAFのWebページ「エコ&セーフティ エコトレーニング」から参照してほしいが、月に1、2回開催されているようである。私の参加した会だと、JAF会員は1000円、非会員は2000円の受講料が必要となっていた。もちろん不肖・高橋、こう見えてもJAFの会員、当然ポニョ嫁も家族会員なのだ。そんな訳でエントリーを行い、当日会場へと到着したのである。
早速エコトレーニングである。その主な内容は、大きく4つに別れている。JAFからの挨拶と説明の後、すぐに行われるのが実車講習。まずは普段と同じ感覚で、コース内を燃費計付きの車両で走る。ここで大切なのは“普段と同じ”ということだ。これでまず、普段はどれぐらいの燃費で走っているのかを把握するのである。
次に教室での講習がある。エコドライブは具体的にどういったものか、どういった点に注意すれば理想的なエコドライブが実現するのか? ここで感心したのは、さすがJAFの開催する講習だけあって、理想論だけで通す訳ではないということだ。
基本的にJAFの考えるエコドライブは「必要な時に効率よく運転する」というものである。「エコを考えるなら、車をすべて廃止してしまえばよい」などという極端な意見を、たまに耳にすることがある。しかし、すでに車は社会の一部であり、生活して行く上で“必要なツール”なのである。だからこそ必要なその時に、効率よく運転して環境に配慮しましょうということなのである。
教室内で一通り、エコドライブに関して学んだら、再びコースを実際に走る。今度はもちろんエコを意識した走り、すなわちエコドライブを実践する訳だ。当然、燃費は細かく計測しているので、普段どおりの走りと、エコドライブの燃費を比較できるのである。
エコドライブが終わったら、最後の仕上げとして燃費データの入った「結果診断書」を受け取り、JAFのインストラクターから個別にアドバイスしてもらう。私の場合は、ごく普通にエコトレーニングの成果が出たようだ。通常の運転では8.7km/Lだった燃費が、エコトレーニング後は10.2km/Lまで向上した。特に「減速・停止」時の改善率は、なんと90.9%という内容である。
といっても実はこの「減速・停止」時の改善は、コースの途中で20秒間停車する際、アイドリングストップをするか、しないかという違いでもある。わずか1.2kmのコースを走るだけでこの違いが出るのだから、常にエコドライブを心がけていれば、長い目で見て、どれほどの違いが出るか? 想像しただけでうれしくなってくる。
ちなみに1.2kmの走行で、私の通常運転だと温室効果ガスであるCO2を317.4g排出した。それがエコトレーニング後、エコドライブだと同じ距離数を走っても271.4gに減少したのである。やはり長い目で見た時、そしてより多くの人々がエコドライブを心がけた際の効果は、決して小さくないだろう。
そんなことを考えつつ、エコトレーニングは無事終了。カレンダーなどの記念品をもらって解散、私は新型プリウスに乗って家路についたのである。もちろん帰宅する際の運転は、エコドライブである。さて、ここでエコトレーニングの内容、その一部をまとめておこう。
■具体的にはどんなことに気をつければいいのか?
●エコで発進
アクセルを景気よく踏むと、当然のごとく出力を得るため燃料が多く噴射される。これを防ぐには「ふんわり」とアクセルを心がける。徐々に踏み込むのがいいということだ。ハイブリッド車でも同じで、アクセルをグッと踏み込むとすぐにエンジンがかかってしまう。ふんわり踏み込んでスムーズに加速すれば、バッテリーや走行モードの設定にもよるが、モーター(電気)だけで発進し、しばらくはエンジンを必要としない。その分、燃費はよくなるということだ。
新型プリウスの場合は走行モードをエコモードにしておくと、アクセルを踏んだ時の反応がマイルドになる。また、ハイブリッドインジケーターを表示しておき、パワーエリアにバー表示が入らない範囲でスムーズに発進するのがいいだろう。
ただしくれぐれも「のろのろ発進」ではないことに留意してほしい。渋滞を誘発したり、後続車がイライラして運転が荒くなったりするような発進だと、総合的に見てエコにはならないからだ。この辺りはいわゆる“流れに乗る”のが重要ということだろう。ちなみにJAFの調べによると、市街地を走行した場合、燃料の約4割は発進時に消費されているのだそうだ。
●エコで走行
新型プリウスにはクルーズコントロールが設定されている。高級車ではないのに、なぜこの機能が設定されているのか? そう、適切なスピードによる定速走行は、新型プリウスの燃費を向上させるからである。それと同じ事がエコドライブでも言えるのだ。加速、減速の回数を減らし、特に急な加減速は避けて一定のスピードを保つことが重要である。
加減速を減らして、一定のスピードで走行するのに重要なのは、周囲の状況をよく把握することだ。車間距離を十分に確保し、先方を走る車も含めて周囲をよく観察する。例えば先のほうに道路工事などがある場合、前方の車は減速するだろう。その減速度にあわせて、なめらかな減速、なめからな加速、あるいは一定スピードを保つようにするのである。
車間距離を十分に確保したり、周囲の状況がよく見えていたりするということは、安全運転や事故回避にも直結する。エコドライブは環境とお財布に優しいだけでなく、安全運転にも繋がるということなのである。
●エコで減速
エコトレーニングでは「停止を予測して早めのアクセルOFF」を推奨している。もちろんそうなのだが、ハイブリッド車の場合、減速への配慮はさらに重要なのだ。そう、新型プリウスのようなハイブリッド車は、減速時のエネルギーを回生しているからである。減速=バッテリーの充電タイムという訳だ。
ちなみにエンジン車の場合、走行状態にもよるが一定のエンジン回転数以上の場合アクセルをOFFにすると、フェールカット機能が働くと言う。燃料供給がカットされる訳で、それが早めに働けば当然、燃料消費を抑えることができる。従って周囲の状況、ブレーキの効き具合を把握しておき、アクセルを早めにOFF、そして的確なブレーキ操作を行うことが重要になる訳だ。
一方、新型プリウスの場合は、回生ブレーキがポイントとなる。ブレーキの踏み具合に応じて、ある程度までは制動する力で発電モーターを回転させるのである。モーターを発電のために回転させるには、一定の力が必要であり、それが制動力になるという仕組みだ。もちろんブレーキをグッと踏めば、回生ブレーキだけでなく通常の油圧ブレーキも働く。
さて、ここでエンジン車と同様、新型プリウスの場合も「周囲の状況を把握する」ことが大切になってくる。要するに周囲の状況にあわせて、安全かつ確実にブレーキを操作し、回生ブレーキがなるべく効率よく発電するようにしてやればいいのだ。いやいや「やればいいのだ」と言っても、難しいことは私が一番よく知っている。ハイブリッドインジケーターを観察して、バーがチャージエリアでなるべく長く伸び、なおかつ伸びすぎないようにする。そんなことを試している段階である。
ハイブリッド車の場合、回生ブレーキは“エネルギー効率の高さ”を実現するために重要である。まずは「回生ブレーキなんだ」ということを、常に意識するところから始めたい。運動エネルギーを電気エネルギーとして回収させることこそ、燃費をよくする切り札なのである。
なお、ハイブリッド車、エンジン車にかかわらず、減速しすぎて再加速などという、燃費をわるくする事態だけはなるべく避けたい。もちろん、交通状況によっては仕方のない部分はあるが。
●エコで停車
エンジン車の場合、アイドリングストップが、燃費向上に貢献するということはすでに広く知られているだろう。では、新型プリウスの場合はどうかというと、基本的にアイドリングストップは自動で行われると考えていい。従ってこの点は、あまり意識する必要はないだろう。
だが、個人的な経験で言うと、例えば一定時間以上停車するようなら、システムをOFFにする方がいい。また、普段は通常走行モードを使っている人でも、停車時にはエコモードに切り替えた方がエネルギーを無駄にせずに済むようだ。停車時にエコモードに切り替えるのは、ヒーターのコントロールをシステムでセーブするためである(ヒーター、クーラーを活用する季節限定だが)。
このほかにもハイブリッド車とエンジン車で共通するポイントがいくつかある。例えば「不要な荷物は積まない」ことで車重を軽くしたり、「ルーフキャリアは必要な時だけ装着する」ことで空気抵抗を低減したり、「渋滞を誘発するような駐車をしない」ようにするなどなど。当たり前と言えば当たり前のことなのだが、日頃の運転ではついつい忘れがちになっていることでもある。
さらに日頃の点検で、燃費を向上させられることもある。そんなことを考えつつ、いい機会だったので、新型プリウスを定期点検に持っていくことにした。
■定期点検で分かった驚愕の事実!
いや、驚愕するほどのことはないんですけどね。我が家の新型プリウスも、納車後ほぼ半年となり、走行距離も約6000kmとなったので、点検に出したのである。そんな訳で予約を入れてから、いそいそと東京トヨタ井草店へと向かった。
定期点検では消耗品の状態や、各部が正常に機能しているかなどを、細かくチェックしてくれる。しかし、今回の点検ではエコトレーニングを踏まえて、特に気になっている点があった。一つは燃費に直結するもので、もう一つはもしかしたら燃費に影響するかも知れないものである。
まず気になったのは、タイヤの空気圧がどれぐらい減っているかである。新型プリウスの場合、指定空気圧はグレードによって異なるが、自分のGツーリングセレクションの場合、指定空気圧は前輪230kPa、後輪220kPaである。納車時には適性だった空気圧が、半年の間、何もしなかった場合にどれぐらい低下するのか。要するに空気が抜けて、減るのかである。これがなんと、4輪とも200kPaまで落ちていたのだ。
ちょっとビックリするような数値だと思った。メカニックの人に質問したところ、タイヤの空気圧は給油1~2回ごと、あるいは月1回は点検したほうがいいとのこと。もちろん減っていたら、小まめに調整する。というのは空気圧の低下は、それだけで燃費に響くからだ。例えば大きなタイヤの場合、ショルダー(タイヤの側面)が広がって接地面積が大きくなり、路面との抵抗が“必要以上”に高くなる。これであっという間に、燃費がわるくなるのである。
そして次に気になったのは、新車から約6000km走って、どれぐらいオイルが汚れたかである。私は点検時、約半年ごとに必ずオイルを交換するようにしている。人によっては「最近のエンジン、オイルは性能がいいから、1年ぐらい交換しなくても……」と言うのだが、「オイルはきれいなほどいい」は当たり前のことだと思うのだが。
ちなみにディーラーのスタッフによると、エンジンオイルは都内のような都市部を走る車の場合、5000kmごと、あるいは半年、どちらか早いタイミングで交換したほうがいいとのことだ。私の場合は月1000km弱の走行なので、半年ごとの点検時にオイルを交換するのがちょうどいいのである。
まあ、まめにオイル交換をするのだから、それなりに得をする方法も見つけてある。東京トヨタの場合「オイルボトルキープ」というシステムがあるのだ。オイルを20Lまとめて買うことで、割引きも含めてさまざまな特典が受けられるのである。20Lあればプリウスクラスなら、約5回のオイル交換が可能だし、特典には「オイルフィルター1回無料交換」が含まれている。オイルの価格も20Lで通常2万460円のところが、1万3900円になるのだ。
営業の太田さんとトヨタの新型ハイブリッド車「SAI」に関してあれこれ話をしているうちに、洗車も含めて点検が無事に完了する。すると太田さんが「SAIに乗ってみませんか?」と誘うではないか。太田さん、いくらなんでも半年前に新型プリウスへ乗り換えたのだから、まだSAIは早いよ……。などと冗談を返しつつも、とりあえずSAIを試乗してみたのは、ここだけの秘密である。
(高橋敏也)
2010年 1月 22日