奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2011」【後編】


 前編ではフリー走行1回目、2回目が行われた金曜日の模様をお届けしたが、後編では予選が行われた土曜、決勝が行われた日曜の模様をお届けする。

土曜日
 土曜日は11時からフリー走行3回目、14時から予選が行われる。開始時刻が金曜日より1時間遅く、平日の渋滞もないので1時間半遅い8時過ぎに4人揃って名古屋を出発した。国道23号に降りてからの渋滞は少ないはずだが、高速道路は土日で観戦する人が多いため鈴鹿IC(インターチェンジ)、四日市付近と断続的に渋滞が発生、みえ川越ICの手前まで渋滞は延びていた。

 この日は一つ手前の湾岸桑名ICで高速を降り、カーナビが国道23号もみえ川越ICまで渋滞と表示していたので、トンネルを2つくぐる裏道を通りインターチェンジの先で国道23号に合流した。その後も思った以上に国道23号は混んでいたので、前日同様四日市市内まで裏道を使い、9時半にサーキット近くのマックスバリューに到着、一斉に買い出しを行った。

 初観戦の女性も2日目になると、猫を3枚くらいかぶっていたのを2枚ほど脱ぎ捨て缶ビールを購入。運転&仕事の筆者以外は、ビール、つまみ、食事と大量購入してサーキットへ向かった。民間駐車場に車を止め、筆者はメインゲートまで自転車で移動。この日は園内を通過、GPスクエアを通ってピットビルへ向かった。朝10時頃だが、すでに入場制限をするお店もあるなど、多くのF1ファンが今年も鈴鹿に集まっていた。筆者以外の3人は午前中はスプーン、午後の予選はJ席で観戦予定だ。

土曜日はメインゲートから入場したすでに入場制限をしているお店が何店かあった遊園地を抜けサーキットへ
GPスクエアには多くのF1ファンが集まっていたステージには松田次生選手

 メディアセンターに着くと、サーキットの広報担当の方から「カメラマンエリアのお客様からクレームが入った」とのこと。詳しい状況は不明だが、報道のビブスを付けた人がカメラマンエリアに入ったため、撮影する場所がなかった、というような内容らしい。おそらく、ヘアピン常設席下のカメラマンエリアのことだと思われる。撮影開始時にはいくつか隙間があったが、45分ほど撮影しているうちに入れる隙間がなくなったのだろう。

 場所取りはせず、セッション開始後に空いている場所で撮影をし、ほかの観客に迷惑を掛けないようにしたが、結果として迷惑を掛けてしまった人がいたとのこと。ご迷惑をおかけしたことを、この場を借りて深くお詫びします。

 2日目からは迷惑の掛からないよう観客席エリアでの撮影は中止し、報道エリアでの撮影を行うことにした。前日のセッションでヘアピン、スプーン、2コーナー、S字、逆バンクという観客席と報道エリアが近い場所での撮影は終わったので、土曜のセッションは観客席からは撮れない場所での撮影記をお届けしよう。

 フリー走行3回目はシケインから撮影を開始した。シケインはヘアピンと同様にマシン速度が低く比較的簡単に撮れるポイントだ。ヘアピンとの違いは撮影位置が低いことだ。ほぼマシンと同じ高さで撮ることができる。今回はシケイン2個目を左右にポジションを変えながら撮影を行った。時々テレビ撮影用のクレーンが降りてきて視界を遮った。

真正面から撮影同じ位置で立ち上がりを少し流し撮り
時々テレビ用のクレーンが降りてくる10mほど最終コーナー側に移動して撮影

 シケインの報道エリアは背中側がダンロップからデグナーへ向かうカーブにあるので、坂を駆け上がってくるマシンを撮ることもできる。そちらに移動しようかと思ったところでロータス・ルノーのマシンがスプーン立ち上がりでクラッシュし赤旗中断となった。

 赤旗やセーフティーカーは撮影ポイント移動のチャンスだ。10歩で移動できるデグナー側よりも、少し離れた場所まで赤旗中に移動したほうが得と考え、最終コーナーに移ることにした。

手前の若い方が座って撮影を開始。向こう側のカメラマンも低い姿勢で追従

 最終コーナーをイン側から撮るとQ2席のスタンドがバックに入る。AFポイントを一番下に変更し、フレーム上部に観客が入るようにして流し撮りだ。この日も晴天なのでNDフィルターを装着しての撮影だ。この原稿を書き始めて最終コーナーで撮った画像をフォトギャラリーに入れ忘れたことに気付いた。ということでリサイズした元画像とレタッチ、フルHDにリサイズした画像をここで掲載しよう。

 撮影中に隣に来た若い外国人カメラマンが突然座り込んだ。いきなり休憩か?と思ったら、その姿勢で撮影を開始した。低い位置から撮るとマシンとQ2席の距離が近くなる。座ったカメラマンの向こう側で元々立って撮影していたカメラマンも低い姿勢で撮影を開始したので筆者も真似してみた。

 がしかし、座り込んで流し撮りという経験がないので上手くレンズを振ることができない。すぐに諦め立ち上がって撮影を継続した。


リサイズした元画像。撮る位置によってスタンドの写り具合が異なる
フォトギャラリーに掲載誌忘れたのでここで掲載(1920×1080ピクセルで掲載)

 フリー走行3回目は1時間のセッションだ。残り15分ほどとなったので、ダンロップ、逆バンク方向へ移動した。次の撮影は逆バンクからダンロップを駆け上がるマシンを後ろから撮影することにした。

 後ろからの撮影は正面の撮影よりかなり難易度が高い。理由は近付いてくるマシンはファンダーにマシンを捉え狙った位置まで来たときにシャッターを押すので、人間もカメラAFも準備時間がたっぷりある。これに対し遠ざかって行くマシンを撮る場合は、フレームに入った直後にシャッターチャンスが来るケースが多いため人間もカメラも準備時間がほとんどない。加えて、筆者の実験では近付いてくる電車と離れていく電車でAFを比べると、近付いてくる電車のほうがピントが合う確率が高かった。

 金曜日のS字の撮影で報道エリアより観客席のほうが撮りやすくマシンが美しい場所だと書いた。報道エリアと観客席エリアの撮影を比べると、一長一短とはいかないが、五長一短くらいに思っている。長の部分はコースに近い、撮影ポイントが多い、金網がないなど多々ある。短の部分はコースに近すぎて撮りにくいケース、サーキットによってセッション中に移動しにくい場所がある、そして空気のゆらぎなどがある。

 コースサイドで撮り始めて気付いたのは、低い位置からの撮影で天気がよいと空気のゆらぎの影響を受けるケースが多いことだ。ダンロップの撮影でも撮影ポジションに立った瞬間にそのことが気になった。

 撮影開始前に撮った画像をみてもらおう。300mmで撮った元画像をリサイズしたものと白線分を拡大した画像だ。拡大した画像を見ると縁石より遠い部分は空気の揺らぎで白線が変形していることが分かる。縁石も遠くに行くほど揺らぎが始まっていることが分かる。要するに縁石の切れ目がまでがギリギリの撮影ポイントということだ。

 特に夏場はこういった揺らぎの影響を受ける場所は多い。鈴鹿サーキットだとスプーンの進入、富士スピードウェイだとコカ・コーラコーナーの進入。ツインリンクもてぎだと130RからS字への進入が晴れるとゆらぎで撮りにくくなる。少し高い位置となる観客席のほうが影響が少なく撮りやすい。

 セッションは残り10分。セッション終了間際は走行するマシンが増えるので逆バンクから近付くマシンを左目でチラっと確認し、左下から右上にレンズを振り上げるようにマシンのお尻を追いかけた。1台を撮り終わったら、一旦手前でシャッターボタンを半押ししAFの位置を修正する。比較したわけではないが、遠くにフォーカスが合った状態からスタートするより、撮り始める手前にフォーカスがあり、そこから遠ざかって行くように一定方向にフォーカスを動かしたほうが、フォーカスに往復運動をさせるよりレンズも楽に稼働するような気がするからだ。

 ダンロップはDRSをオンにする瞬間が見られた。コーナーを抜けた辺りでパカっと開くのは普通だが、マシンによっては開けたまま通過していった。そこそこ高速コーナーだと思うがF1マシン&ドライバー恐るべし、といった感じだ。

リサイズだけした画像白線分を拡大すると揺らぎがハッキリ見える揺らぎを考慮するとこの辺りが限界となる
DRSがONになる瞬間

 セッションは終了したがメインストレートに戻ったマシンがスタート練習を行っている。そのまま1周してピットに戻るマシンを逆バンク方向に100mほど移動してフリー走行3回目の撮影を終了した。カメラマンをピットへ運んでくれるメディアバスがなかなか来ないのでショートカット、最終コーナー、ピットロードに沿って歩いピットに戻った。ピットレーンの入り口には速度を測る機械が設置されていた。

逆バンクから向かってくるマシンを最後に撮影。報道エリアからはこんな感じに見える逆光となるが、それも味の1つだピットレーン入り口に設置された計測器

 午後はデグナーまでメディアバスで移動して撮影を行った。国内レースではセッションの少し前にバスが出るが、F1では45分も前にバスが出る。INDY JAPANでも45分前だったので、これが国際ルールなのだろう。バスの乗り場がピットレーンの出口付近と遠いため、およそ1時間前にメディアセンターを出なければならない。

 外国人カメラマンは慣れているのか、弁当を持参してバスに乗り込み、立体交差の下で昼食を食べていた。近くにいたカメラマンのレンズに「がんばろう、日本」のステッカーが貼ってあったので、セッション前にカメラを構えてもらい撮影した。

 予選はQ1、Q2、Q3と短いセッションが3回ある。近い場所であれば移動しながら撮影が可能だ。可夢偉選手の順位も気になるのでFMラジオを点けてみたが、立体交差のトンネル下は電波状況がよくない。

 そこで自宅にいる息子に電話。テレビにつなげてあるパソコンの電源を入れてもらった。自宅ではCS放送を録画している。CSチューナーの余った音声出力端子をパソコンに接続。このパソコンのSkypeの設定で筆者のiPhoneのSkype IDからコールしたら、必ず受けてくれるようにしてある。これでCS放送の音声が自宅のパソコンを経由してiPhoneに届く仕組みだ。今年のSUPER GTセパンから導入し、SUGOなどFM放送がないサーキットで重宝している。音声品質は回線状況によってクリアだったり途切れ途切れだったりするがないよりはましだ。

 Q1はトンネル下でデグナーから立ち上がってくるマシンを撮影。国内レースでもトンネル内の音は凄いが、F1は比べものにならない爆音で駆け抜けていく。ヘアピンの立ち上がりでは決勝スタート時に鼓膜が振動でビビったことがあるが、トンネル内では1台で同じ状態となる。さすがに長時間は無理と思い、Skypeを聞くイヤホンを両耳にして撮影に臨んだ。

 ここもヘアピンの撮影と同様、AFは最も性能の高い中央1点を使用、ヘルメットにフォーカスポイントを合わせることに集中しての撮影だ。上位陣は早々にQ2進出を決めるので、後半は中段以下のチームのアタックとなる。このタイミングでトンネルを抜けデグナー2つ目を通過するマシンを撮影してQ1は終了となった。

外国人カメラマンのレンズのステッカーを撮らせてもらったデグナーから立ち上がってくるマシンをトンネル下で撮影
DRSが稼働する瞬間はネタとしてはよいが、絵的には開いていない方がよいトンネルからデグナー2つ目を見ると陽炎が見える

 ガードレールの後ろの狭い通路を通ってデグナー1つ目と2つ目の中間まで移動。Q2は短いストレート部分の流し撮りだ。セッション終盤は可夢偉選手のQ3進出が気になり撮影でころではない。決まった瞬間は「ヨッシャー」とガッツポーズとなった。結果としてはこの瞬間が今年の日本グランプリの頂点だったかもしれない。

Q2はデグナー1つ目と2つ目の間のストレートを流し撮りデグナー1つ目の縁石にも陽炎が見える

 Q3はデグナー1つ目に移動。進入を正面から撮影と2つ目に向かうマシンの流し撮りの2本立てだ。筆者が空気の揺らぎに直面したのはこの場所だった。いつのレースかは憶えていないが、進入してくるマシンを正面から撮ったが、ほぼ全滅だったことがある。

 セッション前にコースサイドにあるUBSの看板(見えない表側に100m、50mと記載されていると思われる)を撮って状態をモニターで確認。100m看板は完全に歪んでいる。50m看板も怪しい感じだ。コーナーへ切り込む瞬間だけがシャッターチャンスとなりそうだ。

 セッション前半は進入してくるマシンを縦位置で撮影。後半は流し撮りだ。前日のCS放送F1グランプリニュースでもデグナーの進入が凄いと聞いていた。アウトラップが済み、いよいよアタックラップ。頭の中ではレンズを速く振らないと、と分かっていたが想像を絶する速さで追従できない。頭が切れた写真ばかりで完全に玉砕となった。前日から随所でF1は速いと感じていたが、3日間で一番速さを感じたのがデグナーだった。

セッション前に揺らぎを確認拡大すると看板、白線が揺らいでいることが分かる切り込む直前まで引きつけて撮影
デグナー2つ目に向かうマシンを斜め後方から撮影。雨の日は絶好の撮影ポジションとなるアタックラップはマシンについて行けず玉砕した

 メディアバスに乗ってピットへ。パルクフェルメに予選を終えたマシンが並んでいた。メディアセンターのすぐそば、パドック側に赤絨毯が敷かれたインタビューエリアがある。個人的にはドライバーの顔写真にはそれほど興味はないが、撮ってみようと思い記者会見が終わる頃に撮影しにいった。

 1人のドライバーに複数のテレビカメラ。インタビュアー、スタッフなど10人以上が取り囲んで肉眼で顔を見ることもできない。粘って隙間から撮ってみたが難易度は極めて高かった。インタビューが終わった後ならと思い待っていたが、終わると取材記者にサインをもらうファンも加わりさらに凄い状況。結果は「顔写真は無理」ということなった。

予選を終えたマシンインタビューエリアはテレビだけ入れる。ドライバーの顔を撮るのは難しい
粘って隙間を見つけやっと撮れた写真

 パドックでの撮影に時間を取られたので、J席から移動した3人はすでに民間駐車場。筆者はGPスクエア、遊園地を抜け正面ゲートから自転車で移動。たっぷり待たせて16時半頃民間駐車場を出発した。


帰り際のGPスクエア。売店は大混雑だった

 この日も出遅れたため国道23号は鈴鹿市内から渋滞。すぐに裏道に入り四日市市内は土曜日ということですんなり通過。18時前に名古屋市内に入りこの日は4人で飲み会となった。J席の感想を聞くと、昨年はヘアピン席用に用意されたモニターが見えたが、今年はヘアピンに仮設席ができたためモニターの角度が変わり見えなくなったとのこと。来年は東コースにしようとの結論となった。

日曜日
 日曜日に行われる決勝は15時から。名古屋を昼に出ても間に合う時間だが、ホテルのチェックアウトに合わせ10時出発とした。湾岸長島ICの出口が遊園地とアウトレットの客で渋滞したが、その後は国道23号も順調に進み11時過ぎにサーキット近くのマックスバリューへ。

 初観戦の女性も3日目になると猫をかぶっていたのを完全に脱ぎ捨て缶ビール複数本購入。オッサンの持つクーラーバッグは満杯になっていた。筆者は自転車で関係者駐車場へ移動。12時には2週間後に行われるWTCC用の写真を撮るためストレートエンドのイン側、国内レースでは激感エリアとして使用される場所に到着、ポルシェカップの撮影を行った。

 せっかくチケットを購入したのでJ席のスタンドにも行ってみたいと思っていた。決勝スタートまでは2時間あるが、ドライバーズパレードが13時半から行われるので、ドライバーの顔写真を撮る最後のチャンスだ。パレード前に数人を撮影、走り出したらグランドスタンドに向かって手を振るだろうと思い回り込むが、ピット側にも多くの観客がいるので当てが外れた。サーキットを1周して戻ってきたところでもチャレンジしたが結果は微妙。フォトギャラリーを飾るほどの絵は撮れなかった。

ドライバーズパレード開始前に数人を撮影
え、そっち向き!グランドスタンドはこっちなんですけど…こっちを向くかと思ったら、スマホでした
パレード終了後も撮影は難しかった
可夢偉選手が片山右京氏のインタビューに応えていたので撮影

 そのままピットウォークが行われているピットロードを最終コーナー側から1コーナー側へブラブラ歩きながら撮影。ルノー(ロータス)は今年もステアリングをファンに間近で見せていた。見ても分からないボタンやダイヤルが多数。小倉茂徳さんに聞いたら懇切丁寧に教えてくれそうだ。

 1コーナー側が昨年のポイント獲得が多かったチーム。1コーナー側と最終コーナー側を選ぶ権利はチャンピオンチームにある。鈴鹿は例年1コーナー側が選ばれている。レッドブルのピットにニキ・ラウダ氏を発見。インタビューエリアと同様、多くに人に囲われて、隙間からやっと撮影ができた。決勝スタートまで1時間。J席まで行くと戻って来られないので諦め15時の決勝スタートに備えた。

昨年のポイントの少ないほうから各チームを撮影
ルノー(ロータス)は今年もステアリングを観客に見せていた一時は物議を醸したスタートシステムも、今は当たり前
1コーナー側にはフェラーリ、レッドブルなどトップチームが並ぶラウダ氏のまわりには人だかりができていた

 SUPER GTなど国内レースのスタート進行は1時間くらい前から始まる。グリッドに並んだマシンに近付けるのはスタート40分くらい前。グリッドウォークの写真を撮ってからコースサイドに移動することが可能だ。F1のスタート進行は30分前。グリッドに入るとコースサイドに移動するのは難しそうだ。元々動いているマシンを撮るのが好きなのでグリッドは諦めコースサイドに移動した。

 スタートは2コーナーから真っ直ぐS字に向かってくるマシンが正面から撮れる場所に移動した。過去に何度も撮影している場所だが、いつもと雰囲気が違う。国内レースでは肩の高さくらいのスポンジバリアが設置してありカメラを構えるとフレームに入るギリギリの高さとなる。F1開催時はスポンジバリアが撤去されるため、胸の高さよりやや低い位置にガードレールがある。視界は良好で撮りやすくはなるが、マシンが絡んだりしたら生命の危機を感じる高さだ。すぐ近くのC席を見ると上半分の可夢偉応援席は真っ白。昨年の活躍に加え、自己ベスト7番グリッドからのスタートとあって期待は高まる。

 フォーメーションラップが終わり決勝がスタート。ベッテルを先頭に集団が2コーナーから近付いてくる。2コーナーのアウト側で砂埃が舞い上がるがコースアウトしたマシンはいない。そしているはずの位置に可夢偉がいない。

C席上段は可夢偉応援席スタート直後。この後2コーナーでは砂埃が舞い上がるスタートしばらくは埃が凄かった

 しばらく直進してきてS字に切り込むマシンを撮影し2コーナーのイン側へ移動。2コーナーを立ち上がるマシンを撮影し、標準ズームにレンズを代えB席が正面に見える位置に移動した。SUPER GTでは何度も撮っているが、大観衆で埋まったこのスタンドをバックに走るF1マシンを長年撮ってみたいと思っていた。小さな夢がかなった瞬間だ。ここでセーフティーカーが導入された。移動のチャンスだ。

2コーナーのイン側から撮影長年、満員のB席をバックに撮りたかった

 次の撮影ポイントはS字1つ目の右ターン。スタートを撮影したS字進入のところでレース再開。チラッと集団が通り抜けるのを見て小走りに移動。望遠ズームで撮影を開始した。流し撮りはマシンが接近すると撮りにくい。例えば1秒差に3台がテール・トゥ・ノーズとなると撮影できるのは1台だけだ。3秒差で走っていれば3台とも同じ周に撮影が可能となる。レース再開直後は流し撮りには不向きだが、他の場所へ移動するのは時間を要するので、こればかりは致し方ない。

 前にいた可夢偉選手をチームメイトが抜いてきた。「オイオイ、空気読めよ」とつぶやきながら撮影は続行。しばらく撮って逆バンクのイン側へ移動。国内レースではスタンド下段まで観客で埋まることがないので、F1では見たことのない背景となる。さらにダンロップ側に移動して撮りたかったがレースは残り10周あまり。最後は逆バンク進入を正面から撮りたかったのでこれ以上進むことは諦めた。

S字イン側は距離が適当にあり撮りやすい逆バンクも観客をバックに撮影。F1でしか撮れない絵だ少しダンロップ側に移動して撮影。国内レースだと観客はまばらとなる位置

 逆バンクのイン側からアウト側に移動するためにはS字まで戻る必要がある。残り周回数を気にしながら息を切らせてS字のコース下のトンネルを抜け逆バンクアウト側へ。最前列まで観客が入っているスタンドは迫力さえ感じさせる光景だ。そしてその光景が嬉しい。

 筆者が雑誌で見て記憶に残るレース写真の1つは、F1マシンの背景が排気熱で大きく揺らぐ写真だった。記憶が定かではないが、ターボエンジン全盛時代の写真だったと思われる。逆バンクに向けてアクセルを踏むマシンの排気熱で背景の看板が揺らぐ。記憶の中の写真はもっと揺らいでいたと思うがイメージには近い写真だ。残りわずかな時間を逆バンク正面で撮影しレースは終了した。

 レースは終了し、バトン選手が手を挙げて目の前に現れるのを待った。撮り逃したのかと思ったが、ピットロードエンドでマシンを止めたのを知ったのは、帰宅してテレビを見てからだった。最後に可夢偉選手が手を挙げて通過。結果は残念だったがまた来年に期待しよう。

逆バンクへ向かってくるマシン。排気熱でマシン後方が揺らぐ絵が撮りたかった最後は手を振る可夢偉選手。来年に期待

 レース後はJ席から自転車で移動した友人が駐車場に一番乗り。パドックから関係者駐車場を経由して自転車で移動した筆者と徒歩でJ席から移動した2人は僅差で筆者が先についた。やはりコースから自転車の移動は圧倒的に速かった。

 神戸から初参加の女性は、当初名古屋へ戻る途中の近鉄四日市で落とすつもりだった。予約した電車の時刻は近鉄四日市(17:59 近鉄)→鶴橋(19:58 JR)→元町(20:50着)

 2台の自転車を積み込み駐車場を出たのが17時20分。40分あれば近鉄四日市まで行ける気もするが、安全を考え白子駅へ向かった。道は少し混んでいたので20分で白子駅に到着。予約した電車が白子駅に着く18時10分には30分のゆとりがあった。

 白子駅周辺は交通規制されていたので、踏切を越え左回りに駅を1周。国道23号に戻って名古屋へ。この日も鈴鹿市内で渋滞。裏道を抜けてからは順調に流れ1時間で名古屋市内に入り19時過ぎに帰宅となった。徒歩組とパドックから移動する筆者がボトルネックとなった今年の日本グランプリだった。

 先に民間駐車場についた友人によると「オジサンが1年間自転車預かったるよ」と言っていたそうだ。もし来年も神戸から女性が参加するなら、筆者が購入して先に届けておけば全員で自転車移動が可能となる。筆者が決勝日に観客席にいれば、迅速な移動も可能となるだろう。

 記事で掲載したレース写真は元画像をそのままリサイズしている。トリミングを前提としているのでマシンが小さめに写っているものが多い。ほとんどの写真はフォトギャラリーに1920×1080のサイズで掲載しているのでそちらを見ていただきたい。

 レース後に掲示板などを見ると、今年も鈴鹿サーキットのおもてなしの姿勢を賛美する声が多い。長年来ている人は、以前よりスムーズに帰宅できたという声も多い。色々な改善により毎年鈴鹿サーキットは進化している。是非、多くの方に訪れて欲しいと思うのは筆者だけではないだろう。

 毎年、この記事では改善希望を書いているが、今年はかなり完成形に近付いたような気がする。強いて言えばヘアピン常設席のカメラマンエリアの人気が高く、キャパシティーの限界に来ている感じだ。常設席下の金網に座った姿勢で撮れる横長のカメラホールを設置し、後ろに立って撮影する人と2段にするとかより多くの人が撮れるようにできたらと思っている。土手部分の傾斜もきついので丸太の段を付けるなどの対策がされるとより撮影しやすくなるだろう。是非、来年以降も素晴らしいF1日本グランプリを期待したい。


(奥川浩彦)
2011年 10月 17日