エヴァンゲリオンレーシング、今季最終レースで表彰台を逃す
JAF GP 富士スプリントカップ


 「JAF Grand Prix SUPER GT & Formula NIPPON FUJI SPRINT CUP 2011」(以下、富士スプリントカップ)が11月11日~13日に富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。レース結果などはすでに別記事で紹介しているので、本記事ではCar Watchの読者に人気の高い、エヴァンゲリオンレーシングの各セッションの詳細をお届けする。今シーズンのエヴァンゲリオンレーシングリポートは、これが最終記事となる。

 SUPER GTは通常はGT300クラス、GT500クラスが混走し、ドライバー交代を行うレース形式だが、富士スプリントカップはGT300、GT500が別々に走行。22周のレース中にドライバー交代は行わず、各ドライバーは土曜、日曜に行われる第1レース、第2レースを1人で走りきる形式となっている。

 予定されたセッションは金曜日に1時間の練習走行が1回、その後第1レースの予選、第2レースの予選。土曜日は第1レースの決勝、日曜日に第2レースの決勝となっている。

11月11日(金)練習走行
 金曜日の天気は雨。予報では土日は晴れなので、この日行われる練習走行と予選だけがウェットコンディションで行われる予定だ。

練習走行で雨の中走行する初号機

 練習走行は1時間。まず加藤選手がコースインしたが10分ほどで他車が最終コーナーでクラッシュしたため赤旗となった。15分ほど中断しセッションは再開されたが、延長はないため残り時間は30分程度。2周目に2分04秒679のベストタイムを出し次の周にピットイン、高橋選手にステアリングを譲った。

 セッションの残り時間は20分ほど。雨足が強くなる中、交代した高橋選手は10周を周回。2分10秒前後でラップを重ね、最後にベストラップとなる2分07秒952を出しセッションを終了した。加藤選手のベストラップは15位と出遅れたが、各チームとも路面コンディションによる影響は大きく、トップタイムを出した11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458も2人のドライバーのタイム差が8秒となるなど、順位を気にする必要はなさそうだ。


豪雨の予選を走る高橋選手

11月11日(金)第1レース予選
 エヴァンゲリオンレーシングは第1レースを高橋選手、第2レースを加藤選手が担当する。第1レースの予選は練習走行と同様雨の中で行われた。第1レースを担当する高橋選手がコースイン。タイヤの温まりがわるく3周目に2分02秒103、6周目にやっと2分を切り1分59秒647。計測終了の最終ラップに1分58秒478のベストラップを記録するが18台中14位で予選を終了した。

 GT300クラスの第1レース予選の直後にGT500クラスの第1レース予選が行われ、わずかなインターバルでGT300クラスの第2レース予選が行われる予定だったが、GT500クラスの予選中から雨が強くなり、GT300クラスの第2レース予選はキャンセルとなった。結局、翌日の早朝7時50分から5分短縮し15分間で行われることになった。


快晴となったが、路面はウェットのままだった

11月12日(土)第2レース予選
 土曜日の朝は前日の豪雨から打って変わって快晴となった。富士山もその雄姿を見せ朝日が眩しく降り注いだが、深夜まで降った雨で早朝のサーキットはウェット路面のままだった。

 タイヤ選択はスリックタイヤか浅溝のレインタイヤか各チームで選択が分かれた。予選時間は15分なので、途中でタイヤ交換に入ると、タイヤ交換、ウォームアップ、タイムアタックまでの時間が確保しにくい。

 加藤選手は浅溝のレインタイヤを選択。もしスリックタイヤに交換するなら、ピットアウトした周にそのままピットインする作戦とした。もしストレートを通過して2周目に突入してからピットに入ると、タイヤを温めタイムアタックまで時間的に厳しいという判断だ。

 コースインした加藤選手はすぐに「このタイヤでOK」と無線を入れ、そのままタイムアタックを開始。スリックタイヤでコースインした田中哲也選手(11号車 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458)や高木真一選手(43号車 ARTA Garaiya)などはコースインした周にピットイン、レインタイヤに交換してコースに戻ることとなった。

 加藤選手は計測1周目に1分58秒台、2周目に55秒台、3周目に54秒台を出し1番手タイムで快走を続けた。マシンが走ることで徐々に路面コンディションがよくなり各車のタイムも上がり3番手に後退。計測6周目に1分53秒609を出し2番手に戻すがアタック終了後に他車に抜かれ4位で予選を終了した。

 予選1位はスリックからレインにタイヤ交換した高木真一選手。スリックのままアタックを続けた番場琢選手(4号車 初音ミクグッドスマイルBMW)などは12位に沈みタイヤ選択が明暗を分けた予選となった。直線スピードで劣るエヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電としては、ここ富士では上出来の予選となった。

ピットウォーク・キッズウォーク
 富士スプリントカップでは土曜、日曜にピットウォーク、日曜日にはフォーミュラ・ニッポン、SUPER GTマシンが全てグリッドに並ぶオールグリッドウォークが行われた。今回のエヴァンゲリオンレーシングは綾波レイ役の水谷望愛さん、アスカ役の千葉悠凪さん、マリ役の水乃麻奈さん、カヲル役の采女華さんの4人のレースクイーンが参加した。エヴァンゲリオンレーシングのピットはいつも通り多くのファンが集まっていた。

レースクイーンは4人参加ピットウォークでは多くのファンが集まったオールグリッドウォークでは近付けないほどファンが殺到
ピットウォークでサインに応じる高橋選手ピットウォークでサインに応じる加藤選手

11月12日(土)第1レース決勝
 GT300クラス第1レースが行われた昼頃には路面もほぼ乾き、スリックタイヤで決勝は行われた。前日の練習走行、予選は雨の中で行われたので、初めてスリックタイヤで走行することとなる。高橋選手は決勝直前の8分間のウォームアップ走行に加え、グリッドへの出走時間にピットロードを2度通過してスリックタイヤの感触をつかみグリッドに整列した。

 エヴァンゲリオンレーシングは加藤選手が規定いっぱいまで走行し、後半のスティントを高橋選手が担当するため、9月にここ富士スピードウェイで行われた決勝レースでは加藤選手が34周、高橋選手は17周を走行している。22周で行われる決勝レースはスプリントレースではあるが、高橋選手は通常のレースよりも多く周回することとなる。

 富士スピードウェイは直線が長く、ローリングスタートでも1コーナーまでに抜かれることの多いサーキットだ。慣れないスタンディングスタートで出遅れた高橋選手は次々と後続に抜かれ17位で1コーナーを通過。スタート直後に止まった峰尾恭輔選手(26号車 Verity TAISAN Porsche)を除くと事実上の最下位まで落ちてしまった。

第1レースのスタート。初号機は17位まで後退した。(Photo:Burner Images)事実上の最後尾でコカ・コーラコーナーへ

 1周目はヘアピン進入で山下潤一郎選手(41号車 NetMove BOMEX TAISAN Ferrari)を抜き16位。ヘアピンで星野一樹選手(66号車 triple a Vantage GT2)がスピンし15位、ダンロップコーナーで嵯峨宏紀選手(31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラ)がスローダウン、1周目を予選グリッドと同じ14位に戻して通過した。

41号車を抜き、2台のアクシデントで14位へ

87号車を抜き12位へ

 3周目には1コーナー出口で城内政樹選手(22号車 R'Qs Vemac 350R)を抜き13位。最終コーナーで余郷敦選手(87号車 リール ランボルギーニ RG-3)を抜くがストレートで抜き返される。そのまま1コーナーまで粘りブレーキングで再び抜き返し12位へポジションアップした。

 ここから余郷敦選手とのバトルが続く。コーナーで差を付けるがストレートに戻ると直線スピードに勝るランボルギーニが迫る展開だ。迎えた10周目の1コーナーでブレーキングに失敗しオーバーラン。すぐにコースに戻るが13位に後退。11周目にはスタート直後にスピンした星野選手が猛進し14位に後退してしまった。

87号車とのバトルは続く間に、後方から22号車と66号車が迫ってきた
66号車に抜かれ14位へ後退87号車、66号車に先行され、22号車が迫ってきた

 レースが後半に入るとタイヤ選択を間違ったチームがピットへ向かった。3位を走っていた佐々木孝太選手(62号車 R&D SPORT LEGACY B4)が13周目にピットイン。これで13位となるが序盤で抜いた城内選手が高橋選手に迫りテール・トゥ・ノーズの争いに。

22号車、城内選手にダンロップでは競り勝つがストレートで抜かれてしまった

 14周目に1コーナーで先行されるが立ち上がりで抜き返し100R、ヘアピンは13位をキープ。ダンロップコーナーでは一瞬先行されるが抜き返す激しい攻防となった。しかし17周目のストレートで城内選手に抜かれ14位に後退。国本雄資選手(74号車 COROLLA Axio apr GT)がピットインしたため13位にポジションを戻したが、初号機もタイヤがきつくなりこれ以上は順位を上げることができず13位でチェッカーとなった。

11月13日(日)第2レース決勝
 日曜も天気は晴れ。加藤選手もこの週末スリックタイヤで走行していないが、百戦錬磨の加藤選手にとっては大した問題では無い。4番グリッドに着くとすぐ前の2番グリッドにいるはずの吉本大樹選手(66号車 triple a Vantage GT2)のマシンがいない。マシントラブルで出走できなくなったため、目の前は遠くに1コーナーを臨むだけとなった。スタートを決めれば表彰台の期待が膨らむこととなった。

 そんな期待はレッドシグナルが消えると同時に消えてしまった。なんと加藤選手はスタートでエンジンストール。再始動してスタートを切るが後続に抜かれ17台中16位まで落ちてしまった。追突されずに済んだのが不幸中の幸いかもしれない。

第2レースのスタートシーン(Photo:Burner Images)エンジンストールで16位まで後退。ほぼ最後尾から追い上げとなった

 オープニングラップのダンロップで山路慎一選手(41号車 NetMove BOMEX TAISAN Ferrari)と山野哲也選手(62号車 R&D SPORT LEGACY B4)がスピンし14位までポジションアップとなった。2周目には松田秀士選手(26号車 Verity TAISAN Porsche)と和田久選手(22号車 R'Qs Vemac 350R)が接触し12位、3周目には岩崎祐貴選手(31号車 ハセプロMA イワサキ aprカローラ)と井入宏之選手(88号車 JLOC ランボルギーニ RG-3)が接触、コースアウトし10位までポジションを回復した。

22号車と26号車が接触し加藤選手は12位へ浮上

31号車と88号車が接触し10位へ

 6周目には新田守男選手(74号車 COROLLA Axio apr GT)と折目遼選手(14号車 SG CHANGI IS350)を抜き8位。7周目にオープニングラップでスピンし後方から追い上げてきた山野選手には抜かれたが、9周目の100Rで織戸学選手(87号車 リール ランボルギーニ RG-3)を抜き8位の座を取り戻した。

74号車に迫る加藤選手74号車を抜くが62号車が猛進してきた87号車を抜き8位へ

 12周目には7位の青木孝行選手(86号車 JLOC ランボルギーニ RG-3)に1秒差に迫り、14周目の100Rでアウトから大外刈りを決め7位に浮上、7秒前を走る山内英輝選手(27号車 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ)を追った。

87号車以下を引き離し86号車を追走
1コーナーで86号車迫り100Rからヘアピンで抜き、後半セクションで差を付けストレートを逃げ切った
27号車との差を徐々に縮める加藤選手

 加藤選手の1分45秒台に対し山内選手は1分47秒台。その差は徐々に縮まるが山内選手も46秒台にペースアップ。残り2周でその差は1.8秒。さらに差を縮めテール・トゥ・ノーズの争いで最終ラップに突入。100Rからヘアピン進入でオーバーテイクし6位に浮上したが、ヘアピン立ち上がりの加速で抜き返される。

 ダンロップコーナーのインに飛び込みサイド・バイ・サイドに持ち込んだ加藤選手だが立ち上がりで後れを取り13コーナー、プリウス、最終コーナーも抜くまでにはいたらずそのまま0.5秒差の7位でチェッカーを受けた。

背後まで迫るが抜くことができず7位でチェッカーとなった

 スタート直後の16位から9台抜きを見せた加藤選手だが、スタートでのエンジンストールの代償は大きく、今シーズンを象徴するような悔しさが残るレースとなった。

エヴァンゲリオンレーシング フォトギャラリー
 以下に、エヴァンゲリオンレーシング関連の写真をフォトギャラリー形式で掲載する。画像をクリックすると、フルHD解像度(1920×1080ピクセル)などで開くので、その迫力の写真を楽しんでほしい。また、拡大写真については、Tv(シャッター速度)、Av(絞り数値)などのEXIF情報を一部残してある。撮影時の参考にしていただければ幸いだ。

(奥川浩彦/Photo:奥川浩彦/報道専用レースフォトデータベース Burner Images)
2011年 12月 8日