トヨタ、新型ハイブリッド「アクア」発表会
「10年先を見据えた、未来のスタンダード」

トヨタ自動車 チーフエンジニアの小木曽聡氏と新型ハイブリッド「アクア」

2011年12月26日開催



 トヨタ自動車は12月26日、コンパクトハイブリッドカー「アクア」の発表会を都内で開催した。

 アクアに関しては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20111226_501813.html)に詳しいが、新設計の直列4気筒DOHC 1.5リッターエンジン「1NZ-FXE」に「リダクション機構付きTHS II」を組み合わせるハイブリッドモデル。グレードは上から「G」「S」「L」の3モデル構成。いずれもパワートレーンは共通で、駆動方式は2WD(FF)。グレード間のエクステリアでの差別化はほぼなく、Lグレードが14インチのスチールホイール、S/Lグレードが15インチのスチールホイールとなる。そのため、グレードによる差別化は装備とインテリアで図られることになる。

 また、アクアではスマートエントリー&スタートシステム、盗難防止システムなどをまとめた「スマートエントリーパッケージ」、LEDヘッドランプやフロントフォグランプなどをセットにした「LEDヘッドランプパッケージ」、16インチアルミホイールや大型リアスポイラーなどをセットにした「ツーリングパッケージ」、紫外線を約99%カットするスーパーUVカットガラス(フロントドア)やナノイーシステムをセットにした「ビューティーパッケージ」、バックカメラ/6スピーカー/ステアリングスイッチをセットにした「ナビレディパッケージ」(カーナビ本体は別途必要)、TFTマルチインフォメーションディスプレイに燃費情報などを表示し、ゲーム感覚でエコ運転を楽しめる「アドバンストディスプレイパッケージ」、アクア専用デザインのCD+AM/FM&AUX端子付きオーディオや6スピーカーをセットにした「オーディオパッケージ」と、7つのパッケージオプションが用意される。

 ボディーサイズは3,995×1,695×1,445mm(全長×全幅×全高)で、同社のコンパクトカー「ヴィッツ」と比べ110mm長く、55mm低い。また全長、全幅は「ラクティス」と同様だが、全高は140mmも低い。

 注目の燃費は10・15モードでLグレードが40km/Lを達成、G/Sグレードは37.0km/Lとなる。また、JC08モードは全グレード35.4km/Lとしているが、G/Sに関してはオプションの装着によって重量が1,090kgを超えた場合、33.0km/Lとなる。

 いずれにしても同社のハイブリッドモデル「プリウス」を超える低燃費性能を備えており、これは約70%の部品を新設計した1NZ-FXEエンジン、小型・軽量化を実現したハイブリッドシステムのほか、Cd値0.28という空力性能、高張力鋼板を採用した軽量ボディー(Lグレードで1,050kg)などによって実現している。

スーパーレッドVカラーのアクア G。ボディーサイズは全グレード共通で3,995×1,695×1,445mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2,550mm
イエローのアクア S。インテリアカラーはフレッシュグリーンでシート表皮はS用のファブリック。エクステリアではエアロパーツやカーボン調のドアミラーカバー、TRDの16インチアルミホイールを装着する
アクア Gのインテリア。インテリアカラーはアースブラウン、シート表皮はスエード調ファブリックだが、オプションの革調シートカバー(昇温抑制タイプ)を装着する
アクア Sのインテリア。カラーはクールブルー
駆動用バッテリー、燃料タンクは後席下に備わる。ちなみにアクアに備わるハイブリッドシステムはプリウスに比べ42kgの減量化に成功しており、そのうちエンジンで16.5kg(長さ-51mm)、トランスアクスルで8.0kg(同-21mm)、HVバッテリーで11.0kg(同-148mm)軽量化できたと言うバッテリーの直流電流とモーター発電用の交流電流を最適に制御する「昇圧コンバーター付パワーコントロールユニット」。インバーター、コンバーターともに小型・軽量化を実現したと言う
直列4気筒DOHC 1.5リッターエンジン「1NZ-FXE」とトランスアクスル。エンジンは最高出力54kW(74PS)/4,800rpm、最大トルク111Nm(11.3kgm)/3,600-4,400rpmを発生リアシート下に備わるHVバッテリーは120セルで構成。定格電圧は144V、容量6.5Ahとなっている

トヨタ自動車 チーフエンジニア 小木曽聡氏

 発表会では、トヨタ自動車 チーフエンジニアの小木曽聡氏がアクアの概要を説明した。小木曽氏はアクアの特徴について「世界一の低燃費と爽快な走り、スタイリッシュなボディーと技ありの室内空間、何よりもお求めやすい価格、より多くのお客様にハイブリッドカーを楽しんでいただくため量産ハイブリッド開発17年の知恵を結集し、妥協を許さずこだわりぬいて作り上げた渾身のクルマ」と説明するとともに、「私にとってアクアはハイブリッドカーにおける新しい領域への挑戦」と述べる。

 この新しい領域とは、“ハイブリッドカーをどれだけ身近なものにできるか”を指し、「未来のスタンダードになる、次の10年を見据えたコンパクトカーとして開発した」と小木曽氏は説明する。

 アクアの具体的な商品紹介では、はじめに燃費性能について触れ、「JC08モードで35.4km/L、10・15モード燃費で40km/L(Lグレード)と、世界一の低燃費を実現した。この低燃費を実現したのは、小型・軽量・高効率化した最新の1.5リッターエンジンとハイブリッドシステム」とし、プリウスのハイブリッドシステムより42kg軽量化したこと、低重心レイアウトでフットワークに優れることで「燃費と走りの両立を図った」(小木曽氏)。また、エンジンとモーターの融合により「スムーズな発進加速とレスポンスのよい中間加速で爽快な加速性能を提供する」とし、燃費のみにこだわらず、実用領域での運動性能の高さも兼ね備えていることをアピールした。なお、0-100km/h加速は10.7秒としている。

 デザインについては、“先進機能を楽しく大胆にデザインする”というコンセプトを掲げる「エコファン」をテーマに、「エクステリアはコンパクトでハリのある凝縮感とキビキビとした走りを感じさせ、インテリアはアイコニックでユニークなデザインに、アクセントカラーを効かせた、毎日をイキイキと彩るデザインを実現した。まさに先進性を楽しさで包んだようなデザインになっている」と述べたほか、全10色のボディーカラー、3つのグレードに用意される内装に加え、7つのパッケージオプションを設定したことについては「購入時に選ぶ楽しさを提供したかったため」と述べた。

 小木曽氏は最後に、「コンパクトなハイブリッドだからといって、妥協することはゼロを目指したい。アクアには日本のモノづくりのこだわりと情熱を結実した。世界一の低燃費とお求めやすい価格、乗って楽しく使いやすい、さらには地球環境にも優しい。それこそが未来のスタンダード『アクア』です」「車名にも想いを込めた。透明感のあるクリーンなイメージと、誰もが必要・大切にするイメージを連想させるのが、このアクアの名前の狙い。従来のハイブリッドカーのイメージにとらわれることなく、ぜひより多くのお客様に楽しんでいただけることを願っている」と述べ、プレゼンテーションを終えた。

燃費はJC08モードで35.4km/Lを達成ハイブリッドシステムはプリウスに比べ42kgの減量化に成功した低重心レイアウトにより、フットワークもよい
アクアは「燃費」と「走り」の両立を図ったと言う0-100km/h加速は10.7秒エンジンとモーターの融合により加速性能にも優れる

 また、アクアの生産を担う関東自動車工業 岩手工場からの中継も行われた。同工場の第1ラインではすでにアクアの生産を開始しているが、12月26日には第2ラインでの生産も開始したと言う。その岩手工場との中継に、関東自動車工業 取締役社長 服部哲夫氏も登場し、「皆様もご承知のとおり、3月11日に東日本が大きな災害に見舞われた。そういう中で小木曽チーフエンジニアを中心に、たくさんの仲間たちがこの画期的なコンパクトハイブリッドのクルマの開発、そして立ち上げに向けて一丸となってみんなで取り組んできた。この岩手工場から多くのお客様に新型アクアをお届けすることを大変幸せに思っているし、誇りに思っている」「私たちは、1台1台をしっかりと作りながらこの新型車を育てていきたいと思っているし、同時に我々も成長をしていきたい」と述べた。

アクアの生産拠点は東日本大震災で被害を受けた関東自動車工業 岩手工場
アクアは東北で生産される関東自動車工業 取締役社長 服部哲夫氏によるスピーチも行われた

 なお、当日はアクアの発売にあわせ、水をテーマにした自然環境を守るアクションプログラム「AQUA SOCIAL FES!!」を、全都道府県50個所で行うことが発表された。

 同プログラムは、外部有識者として慶應義塾大学教授/NPO法人 鶴見川流域ネットワーキング 代表理事 岸由二氏、Think the Earth 理事/プロデューサー 上田壮一氏を迎え、アクアの車名にちなんで「水」をテーマにした地元の自然環境を保護・保全する地域社会貢献活動。各地で行われる作業のサポート役としてアクアが使われる。

 例えば、東京/神奈川では鴨居から綱島までの約12kmをウォーキングしながら、河川のクリーンアップを行う。また、沖縄では「沖縄の美らSUNビーチ」に漂着するゴミや、不法投棄をひろうビーチクリーン活動や、ミニライブが行われる。現在、各地で行われる活動の参加者を募集しているので、詳細についてはAQUA SOCIAL FES!!のWebサイト(http://aquafes.jp/top/)を参照いただきたい。

AQUA SOCIAL FES!!の参加者も登壇慶應義塾大学教授/NPO法人 鶴見川流域ネットワーキング 代表理事 岸由二氏Think the Earth 理事/プロデューサー 上田壮一氏

(編集部:小林 隆)
2011年 12月 27日