グッドスマイルレーシング、2台の初音ミク号でSUPER GT300に参戦 谷口選手、番場選手は、それぞれAドライバーに |
グッドスマイルレーシングは、2月12日に幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開催された「ワンダーフェスティバル 2012[冬]」において、グッドスマイルカンパニーの「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 15」ブース内ステージで2012年の参戦体制発表会を行った。
グッドスマイルレーシングは2008年から初音ミクをマシンに描いてSUPER GTのGT300クラスに参戦。「ファンと共に走るレーシングチーム」を掲げて個人スポンサー制度を導入するなど、いわゆる痛車チームの先鋭となった。昨シーズンは谷口信輝選手をエースドライバーとしてチームに迎え、さらに元F1ドライバーの片山右京氏をスポーティングディレクターとして招聘した。
こうして「勝つこと」を目指した2011年シーズンは実を結び、悲願の初優勝そしてシリーズ優勝まで成し遂げたことはSUPER GTシリーズの記録にも記憶にも残った出来事である。またレーシングチームの運営におけるビジネスモデルとして、個人スポンサー制度が確立されたことにも大きな注目が集まっている。
2012年の目標SUPER GT300クラスでは初めてとなる「連覇」。昨年の大橋逸夫監督(役職名は当時)のインタビュー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120123_505759.html)にもあるとおり、連覇を目指した2012年のチーム体制が明らかになった。
■SUPER GT300シリーズ初の連覇に2台体制で臨む
最大のトピックは初音ミク号が2台になること。グッドスマイルレーシングは2台体制のチームとなって、2012年シーズンを戦う。エントラント名は「GSR & Studie with TeamUKYO」。エントラント代表は鈴木康昭氏(株式会社スタディ 代表取締役)で、メンテナンスガレージであるRSファインも含めて2011年の体制を維持する。昨年チーム監督を務めた大橋逸夫氏は総監督に就任。片山右京氏はスポーティングディレクターに留任する。スーパーバイザーは安藝貴範氏(グッドスマイルレーシング代表)、そして昨年に引き続いてF1ドライバーの小林可夢偉選手がスペシャルサポーターを務める。
参戦車輌は「BMW MORTORSPORT Z4 GT3 MY11」。2011年のチャンピオンを獲得したZ4の最新モデルにあたる。ゼッケンは現状で(仮)とされているが、GT300のチャンピオンゼッケンとして「0号車」、そして昨年の号車番号である「4号車」になる見通し。なお、0号車はまっさらの新車輌。4号車は昨シーズン戦った車輌をアップグレードしてMY11仕様にしたものが使われるとのこと。
ブース内には0号車、4号車ともに車輌が展示されていたが、0号車はそのまま今シーズンを戦うことになる実車で、4号車は今シーズンのカラーリングを施したデモ車輌だった。本物の4号車は現在ドイツにおいてMY11仕様へとアップグレードを行っている最中とのことである。新車とアップグレード車という違いはあるが、スペック上はまったく同一のMY11仕様になるとのこと。タイヤは2011年と同様に横浜ゴムを使用する。車輌名は0号車が「GSR 初音ミク BMW」、4号車が「GSR ProjectMirai BMW」。
●0号車 GSR 初音ミク BMW
0号車「GSR 初音ミク BMW」。ブース展示車輌がそのまま実戦投入される「BMW MORTORSPORT Z4 GT3 MY11」。すでに2012年シーズンに向けたペインティングも終了しており、「Racingミク 2012ver.」がボンネット、サイドに描かれている |
●4号車 GSR ProjectMirai BMW
4号車「GSR ProjectMirai BMW」。こちらは昨年仕様のZ4に参戦車輌のデザインをペインティングしたもの。横幅やタイヤサイズ、内装などが0号車とは異なっている。実際の参戦車輌は現在アップグレード作業中とのこと。このデザインを適用して参戦する |
2台体制になったことで、チームのドライバーは4人に増える。チャンピオンドライバーとなった谷口信輝選手と番場琢選手はいずれもチームに残留して、それぞれ0号車、4号車のAドライバーになる。0号車の谷口選手のパートナーには、昨シーズンはGT500に参戦していた片岡龍也選手、4号車の番場琢選手のパートナーには、2010年シーズンに番場選手とともに「初音ミク X GSRポルシェ」で戦った佐々木雅弘選手が復帰する。
前述したとおり、チームの総監督は大橋逸夫氏、スポーティングディレクターは片山右京氏だが、両氏はそれぞれ0号車、4号車の監督を兼任する。つまり0号車は大橋逸夫監督のもと谷口選手、片岡選手がドライブ、4号車は片山右京監督のもと番場選手、佐々木選手がドライブするという。チームとしての「連覇」という目標に加えて、チーム内の戦いも楽しめるというファンにはたまらない内容の2012年シーズンになる。
0号車「GSR 初音ミク BMW」を担当する谷口信輝選手(右)と片岡龍也選手(左) | 4号車「GSR ProjectMirai BMW」を担当する番場琢選手(左)と佐々木雅弘(右)選手 |
2012年体制発表のステージには、まず鈴木代表、大橋総監督、片山スポーティングディレクター、安藝スーパーバイザー、そして0号車ドライバーである谷口選手、片山選手の6人が登壇。それぞれに昨シーズンの優勝報告と応援への感謝、そして今シーズンの抱負を述べた。
GT500への転出も囁かれるなど、その去就が注目を集めていた谷口選手は、「なんと、このチームに今年も乗ることになりました」と挨拶。続けて「昨シーズン末、残留依頼を受けたので『片岡選手を引っ張ってきてくれたら乗る』と言ったんですよ。そうしたら大橋監督がちゃんと引っ張って来てくれたので、今年もチャンピオンを目指して頑張りたいと思います」と連覇への決意をみせた。チャンピオンドライバーのラブコールを受ける形でチームに加わった片岡選手はGT500からGT300への転入になるが「昨年の12月に悩みに悩み抜きましたが、このチームで走ればチャンピオンを獲れる、と決意を固めました。(初音ミク号のファンの方々には)初めまして!という形になりますが、がんばりますので応援してください」とコメントした。
ポイントになるのは2台体制の部分である。体制発表会では、0号車のスペック、今年度キャラクターデザインの紹介、チームのレースクイーンとなる「レーシングミクサポーターズ2012」の紹介のあとに、あらためて2台目の紹介が行われた。前述のとおり4号車は展示車の内装などから一見デモカーにも見えることから、結果的に思わせぶりとなった展示も含めて2台目はサプライズ的な演出となった。
安藝スーパーバイザーは「玉突き人事(笑)に見えますね。(2台体制について)無茶なのは分かっています。とはいえ、なにせ元々(のスタート)が無茶です。チャンピオンを獲ったことで、これからさらにどうやって盛り上げようか? 皆さんに楽しんでいただこうか?と考えました。チーム内の戦いも面白いと思います。一方で連覇を目指すのに有利な体制とも言えます。2台あることで共有できる情報も多い。あらためて2台体制を検討してみたところ、どうにかいけそうだ……と踏み切りました」と説明した。
2012年、「GSR & Studie with TeamUKYO」は2台体制 | スーパーバイザーは安藝貴範氏(グッドスマイルレーシング代表) | 2012年に続いてチームのスポーティングディレクターをつとめ、4号車監督を兼任する片山右京氏 |
あらためてステージには4号車のドライバーである番場選手と佐々木選手が招き入れられた。登壇はBドライバーの佐々木選手が先。続いて、同時に生中継されていたニコニコ動画の中継画面では、0号車のドライバー紹介で谷口選手のパートナーとして片岡選手が登場してから『番ちゃん、サヨナラ』という視聴者のコメントが次々と流れていたことで、「もしかしたら大がかりなドッキリかと思ってハラハラしていました(笑)」と言いながら最後に番場選手が登壇。「4号車のAドライバーとして、今年も皆様に感動を伝えたいと思います」と挨拶した。佐々木選手も「1年ぶりにこのチームに復活できたのはすごく嬉しいです。チャンピオンドライバー(の番場選手)のパートナーとしてチャンピオンチームに参加して、一生懸命がんばっていきます。また応援をお願いします」とファンへのメッセージを送った。
チームキャラクター「Racingミク 2012ver.」はイラストレーターのGAN氏によるもの。2012年シーズンのイメージキャラクターとなって0号車にペイントされる。コスチュームのデザインは、ホビーファンにはFigmaの原型制作などでもお馴染みの浅井真紀氏。同氏のデザインをもとにGAN氏がキャラクターとして描き起こしたという。スーパーバイザーの安藝氏によれば「あとあとFigmaにしたり、立体化がしやすい。今シーズンの体制を維持するためにも重要(笑)」とのこと。昨年同様、テーマミュージックは公募される。
一方、4号車のペイントは、3月8日にセガから発売されるニンテンドー3DS用ソフト「初音ミク and Future Stars Project mirai」とコラボレーション。セガの協力によるProject miraiとして長いプロモーションを続けていくという。ゲームにも登場する初音ミクをはじめとするねんどろいどキャラクターは子供にも人気が高いという。そのデザインを「これまで一番可愛いレーシングカー(安藝氏)」として紹介している。
鈴木代表によれば「エヴォリューションモデルとなるBMW Z4 MY11は見比べてもらえると分かりますが、昨年のZ4と比べて幅が7cmも広くなって2012mmぐらいある。タイヤも大きくなったほか、シフトもパドル操作に変わった。かなり戦闘力が上がったマシンになる」とのこと。大橋総監督も「2台あることはチーム戦略としても重要。昨年は細かなトラブルへの対処、データ収集にそれなりの時間が取られた。2台あることで、クルマのデータをより早く集めることができる。(こうした場だから)冗談みたいにお互いに0号車、4号車と言っているが、チームとしての力は大切」としている。
エントラント代表の鈴木康昭氏(株式会社スタディ 代表取締役) | 2012年シーズンはチーム総監督兼任0号車監督を務める大橋逸夫氏 | 2012年の「GSR & Studie with TeamUKYO」の概要 |
谷口選手もチームとして2台体制であることの意味を口にしている。「チームとして連覇するためには、他のチームに大きなポイントを取られないようにすることも大事。(仮に自分の0号車にトラブルがあっても)その時に4号車が頑張っていてくれれば、シーズンをとおしては大きなダメージにはならない。1番のライバルでもあるが1番頑張ってほしいクルマ」と4号車を評価した。
さらに谷口選手は「昨年チャンピオンを獲れたことは本当に嬉しいが、決してそれに満足しているわけではありません。2012年もチャンピオンを獲るための最強のパーツ(片山選手)も手に入れました。まだまだチーム力も強化できる。連覇目指して頑張ります」と決意を述べた。応えて片岡選手は「実はチームメイト(谷口選手)からの期待が1番大きいことを自覚しています。走ることやチーム力自体にはまったく不安はありません。(GSR & Studie with TeamUKYOは)沢山の人から応援していただいているチームだと思っているので、皆さんの期待に応えたいと思います」とコメントした。
0号車「GSR 初音ミク BMW」のAドライバー谷口信輝選手 | 0号車「GSR 初音ミク BMW」のBドライバー片岡龍也選手 |
4号車の番場選手は「一昨年(2010年シーズン)にAドライバーを務めた時には自分のことで精一杯でまわりもよく見えていませんでした。昨年(2011年シーズン)谷口選手からいろいろ教わって、自分なりに成長してきたつもりです。(最初のライバル車輌となる)0号車にはガチンコで挑みたいです」と決意を表明。また佐々木選手は「1年ぶりのSUPER GT参戦ですが、チャンピオンドライバーのパートナーです。一緒に勝てるように頑張ります」とコメントしている。
4号車「GSR ProjectMirai BMW」のAドライバー番場琢選手 | 4号車「GSR ProjectMirai BMW」のBドライバー佐々木雅弘選手 |
最後に鈴木代表が「(応援してくれるファンの皆さんに)昨年以上の結果、そして感動をお届けしないといけません。ようやく(こうした体制の)発表ができたことで、チーム力は確信につながっています。もちろん、皆さんの応援無くしては連覇も実現できません。よろしくお願いします」と来場者やニコニコ動画の中継画面を見つめるファンに2012年の一層の応援を呼びかけた。
なお、今回実車輌が展示された0号車「GSR 初音ミク BMW」は、2月18日土曜日に東京・お台場のメガウェブで開催される「2012年 TeamUKYOの体制発表会」でデモ走行が行われる予定となっている。
■個人スポンサーの募集も同日より開始。日本国外からも募集
2011年シーズンでは1万6056名の個人スポンサーを獲得した同チームだが、もちろん2012年も個人スポンサー制度は継続され、体制発表会が行われた2月12日より募集が始まった。受付期間は2012年秋(締切日未定)までとなっている。
基本となる「漢コース」(おとこコース)は全4コース。漢コースはスポンサー料が3000円で、特典として漢ステッカーがもらえる。上位の漢前コース(おとこまえコース)はスポンサー料が10万円。車輌に80×35mmのスポンサーステッカーが掲載されるほか、希望するサーキットの観戦チケット(1戦のみ1組2枚)がプレゼントされる。最上位の超漢コース(ちょうおとこコース)はスポンサー料が30万円。掲載ステッカーサイズは148×58mmとなるほか、上記の観戦チケットに加えてチームピット内での観戦が行える。
募集要項には明記されていないが、発表会のステージ上では安藝スーパーバイザー曰く「ピット内観戦だけでなく、ピットウォークでステッカーを一緒に配ったり、一緒にお弁当食べたり、掃除や後片付けを手伝ったりなど、まさにチームスタッフとしてお手伝いができる(笑)」とのこと。ほか、新たに漢札コースが用意され、こちらはチームのロゴ入り名刺(100枚)が特典となっている。
また、応援グッズ付きスポンサーコースもある。こちらはサーキット観戦者必携とも言えるグッズのセットで、チームのキャップ、ジャージ、Tシャツ、個人スポンサーカード、チケットホルダー(2万8000円相当)が特典グッズとしてセットになった内容で、1口2万5000円のコースだ。昨シーズンもサーキットではこれらのグッズを身に着けたファンを多数見ることができた人気の応援コースでもある。
昨シーズンは4号車のみということで1種類だったが、今シーズンは2台体制となったことで、キャップやジャージそしてTシャツに付くゼッケンが、0と4の2種類になっているというのも特徴だ。発表会のステージ上ではスポーティングディレクター兼任の4号車監督でもある片山氏が「4号車のグッズにしかサインしませんよ(笑)」と冗談を飛ばすなど、はやくもスポンサー、そしてファン獲得に向けた盛り上がりを見せている。
個人スポンサーの総数は昨年同様にルーフに掲載される | 個人スポンサーの「お名前」はこうしてチームテントにも掲載される。写真は2011年の富士スプリントカップでの模様 |
漢コース、応援グッズ付きスポンサーコースともに応募順に3月下旬から特典の発送が始まる見通し。3月31日に岡山国際サーキットで行われる今シーズン初戦に間に合う日程が示唆されているので、グッズを身に着けて応援したいファンは早めに申し込み手続きをすませておきたいところだ。いずれのコースもスポンサー名は公式応援サイトに掲載されるほか、サーキットではチームテントなどにも掲出される。
そのほか、初音ミクの稼働フィギュア「Figma(フィグマ)」、デフォルメフィギュア「ねんどろいど」が付属するコースも後日案内される予定。また2012年は日本国外のファンからの個人スポンサー募集も開始される。これにあわせて公式サイトは英語対応されるほか、Twitterによるレースの英語実況も予定されているという。
なお車輌のルーフトップに掲示される個人スポンサー総数は「チームスポンサー数」となるので、0号車と4号車には同じ数字がペイントされる見込み(安藝氏)。昨年1万6056名の個人スポンサーを獲得したことと2台体制となることで、2万人を超えるスポンサー獲得を目指したいとしている。
個人スポンサー制度の概要。こちらは「漢コース」(おとこコース)の全4コース | 応援グッズ付きのコースは、ゼッケン番号の違いで2種類になった | ワンフェスの来場者にとってはこちらも楽しみな、ねんどろいど付きコース、Figima付きのコースは後日案内予定 |
個人スポンサー制度の詳細はチーム公式の応援サイトを確認していただきたい。なお「ワンダーフェスティバル 2012[冬]」のグッドスマイルカンパニー「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 15」ブース内には、多数の関連製品が出展、参考出展された。
(矢作 晃)
2012年 2月 14日