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グッドスマイルレーシング、2013年も初音ミク号でSUPER GT300に参戦

6年目はBMW Z4の1台体制に。プロジェクトテーマは「王座奪還」

「ワンダーフェスティバル 2013[冬]」で参戦発表会を開催
2013年2月10日発表

 グッドスマイルレーシングは2月10日、幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で開催された「ワンダーフェスティバル 2013[冬]」において、2013年のSUPER GT300への参戦発表会を行った。

幕張メッセで開催された「ワンダーフェスティバル 2013[冬]」

 ワンダーフェスティバルは、毎年2月と8月に海洋堂が主催して開催される造形物の祭典。グッドスマイルレーシングの関連会社グッドスマイルカンパニーが、同イベントでは最大規模の出展者として「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!!」を行っていることもあって、そのステージイベントの1つとして参戦発表会を行うのが恒例となっている。

 グッドスマイルレーシングのチームコンセプトは「ファンと共に走るレーシングチーム」で、車体に初音ミクを描いてレーシング活動を行っている。ニコニコ動画なども積極的に活用して、モータースポーツファンだけでなく初音ミクファン、フィギュアファンをも取り込んで個人スポンサー制度を導入するなど、いわゆる痛車チームの代表格であることも参戦発表会がワンダーフェスティバルで行われていることの理由の1つ。

 参戦当初こそ話題先行と見られていたものの、2011年シーズンには4年にわたる奮闘が実を結び、悲願の初優勝そしてシーズン優勝まで成し遂げた。連覇を目指して臨んだ2012年シーズンは2台体制という大きなチャレンジもあったが、シーズンを通して0号車が1度の優勝とシーズン総合4位、4号車がシーズン総合15位という結果に終わった。そして参戦6年目を迎える2013年のテーマが、再びシーズン優勝を狙う「王座奪還」ということになる。

2012年シーズンの戦績。シーズン総合のポイントランキングでは4位と15位だった
高々と掲げられた2013年のテーマは「王座奪還」

シーズン初戦から最新仕様の「BMW Motorsport Z4 GT3 MY13」を投入

 必勝体制として再び頂点を目指す参戦車輌は「BMW Motorsport Z4 GT3」。シーズン開幕より最新バージョンのMY13仕様を投入するという。エントラント名は「GSR & Studie with TeamUKYO」。エントラント代表は鈴木康昭氏(スタディ 代表取締役)で、メンテナンスガレージであるRSファインも含めて2011年、2012年の体制が維持される。

 使用するタイヤはやはり2011年、2012年と同様にヨコハマタイヤ(横浜ゴム)。また2012年に引き続いてドイツBMW Motorsportの正式サポートを受けるほか、BMW Japanもサポートを発表して開幕戦からチームを昨年以上にバックアップしていくとのこと。BMW Japanによるサポートの詳細はまだ明らかになっていないが、レース開催にあわせてイベントを企画したりすることなども含めて検討されているという。

 参戦車輌が再び1台に戻ったことで、昨年総監督と0号車監督を務めた大橋逸夫氏はチーム監督に、スポーティングディレクター兼4号車監督だった片山右京氏はスポーティングディレクターにそれぞれ専念するなど、体制としてはシーズン優勝を遂げた2011年の体制と非常に近いものになる。スーパーバイザーはグッドスマイルレーシング代表の安藝貴範氏で、こちらも留任となる。

参戦発表会直前、グッドスマイルカンパニーのブース内でベールに覆われて展示された「GSR 初音ミク BMW」
「BMW Motorsport Z4 GT3」。展示されていたのは2012年の4号車(当時)に2013年のカラーリングを施したモデル。参戦車輌とのエクステリアの違いはリアウイングとミラーの形状
フロント側。ボンネットに描かれているのは「レーシングミク 2013 ver.」

 ドライバーは、昨年0号車でコンビを組んだ谷口信輝選手と片岡龍也選手が続投する。加えて第5戦にあたる鈴鹿サーキット1000Kmレースでは、BMW Motorsportのワークスドライバーであるヨルグ・ミューラー選手が3rdドライバーとしてスポット参戦する。エントラント代表の鈴木康昭氏によれば、これはグッドスマイルレーシング側からではなくBMW Motorsport側からの「ワークスドライバーを乗せたい」という要請を受けてとのこと。世界中でモータースポーツ活動をしているBMWを使用するチームのなかでも、ドイツ本国のBMW Motorsportからも注目され、かつ期待を寄せられていることの証とも言える。

 参戦発表会が行われた「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 17」のイベントステージ横には、参戦車輌となる「BMW Motorsport Z4 GT3」が展示された。発表会前はベールに覆われていたが、発表会半ばでカラーリングの紹介とともに披露された。ゼッケンは2011年にシーズン優勝を遂げた時と同じ4番。車輌名は「GSR 初音ミク BMW」となる。

リア側。展示車輌は2012年の四号車であるMY11仕様なのでウィング形状は異なるものの、ピンクのStudie AGロゴはかなり目立つものになると思われる
左リア側から。初音ミクを世に送り出したCrypton Future Mediaのロゴがウイング側面に描かれている
左右のドア部分に描かれている「レーシングミク 2013 ver.」

 展示されていたのは2012年シーズンを戦った4号車(当時)に、2013年仕様のカラーリングを施した車輌。2012年の0号車(当時)は、現在オーバーホール状態に近いということで、こちらがMY13仕様にアップデートされて、2013年の4号車となるという。今回展示されているMY11仕様の4号車(当時)と、参戦車輌のエクステリアの違いはリアウイング形状となるがリアウイング自体はMY12仕様とほとんど変わらない模様。完全に違うのはサイドミラー部分となる。

 鈴木康昭代表によるとMY13仕様アップデートは、どのような性能調整があってもできる限り車体のポテンシャルをキープすることを目指すという方向性とのこと。また従来はエンジンとトランスミッションがフロント側で連結した構造だが、トランスアクスル化してトランスミッションをリア側に移動。単にエンジンパワーを上げても性能調整を受けてしまえばそれまでなので、トランスミッション側の強化が図られると言う。

 スーパーバイザーを務める安藝貴範氏は、「昨年、2台体制で臨んだ(主力の)0号車が総合4位という結果に終わりました。2010年だったら、それでも飛び上がって喜んだと思います。でも僕らは2011年に勝ってしまった。やはり、昨年は狙って(シーズン優勝を)獲れなかったのが悔しい。その悔しさが今年の体制に表れています。ですから、テーマは『王座奪還』です。自分ではそんなに負けず嫌いじゃなかったつもりなんですが、2012年はホンマに悔しかったんですよ(笑)」とステージ上でコメント。加えて、「言うまでもなく、僕ら(グッドスマイルレーシングの活動)は個人スポンサー制度で成り立っている。つまり、スポンサーの皆さんに(優勝という)結果であったり、何をお伝えできるかで応えていくしかりません。(SUPER GT開幕戦となる)岡山で優勝します。準備は万端です、1戦目から期待していてください」と宣言した。

 エントラント代表となる鈴木康昭氏は、会場に訪れたファンとニコニコ動画での中継を見ているユーザーに向けて「いつも応援をありがとうございます。昨年奪われてしまったチャンピオンシップを、この体制、このメンバーで必ず奪い返します。引き続き応援をよろしくお願いします」と呼びかけた。同氏によると、2012年に成績がいまひとつ振るわなかった理由の1つに、MY12仕様へのアップデートが遅れたという要素があるという。最終仕様の決定が遅れて、第4戦まで投入ができなかった。シーズン中にマシンセッティングを行うことにも苦しんだという。2013年はBMW Motorsportにも強力にリクエストを出して、開幕戦からMY13仕様を投入することが決まった。3月には走行を開始して、シーズン開幕前に相当のテストとセットアップが行えることは大きなアドバンテージになると見ている。

 2013年はチーム監督になる大橋逸夫氏は「このプロジェクトで監督をやらせてもらって今年で4年目になります。2012年はちょっと残念な結果になってしまいましたが、今年はまた気を引き締め直して頑張っていきます。毎年そうなんですが、車輌が新しくなって適切なセッティングを出していくということがあります。今回はちゃんとアップデートした車輌で開幕前にテストをやって結果を出します。もちろん(Super GT300クラスには)強敵も多い。速く始動できることは何よりのアドバンテージです」と、BMW Mortorsportのサポートにも期待を寄せる。

スーパーバイザーは安藝貴範氏(グッドスマイルレーシング代表)
エントラント代表の鈴木康昭氏(株式会社スタディ 代表取締役)
グッドスマイルレーシングに参加して4年目。2013年も監督として指揮を執る大橋逸夫氏

 スポーティングディレクターの片山右京氏は「このとんでもない集団のなかでスポーツディレクターをやらせてもらえるようになって、僕自身の世界もひろがっています。2013年のドライバー2人は、SUPER GTの実績だけでなく世界的に通用するドライバーです。レース中にピットとやりとりする無線を聞いているだけで、彼らのレースに対する意識の高さが伝わって来ます。なんにも心配はしていません。そして、チームのみんなが背伸びしながら頑張っている。個人スポンサーの皆さんと思いは1つです。今年は一緒にチャンピオンシップを取り戻しましょう」と挨拶した。

 2012年に続いてAドライバーになる谷口信輝選手は「皆さん、薄々感づいていたかも知れませんが、このチームで3年目をむかえます。正式発表までは控えている部分もありましたが、これで気持ちがスッキリしました。全力を尽くしてチャンピオンを獲りにいきます」と宣言した。2012年を振り返っては「シーズンのなかでは、想像と違ういわゆるイケてないレースもありました。たらればの話になりますが、それでもチャンスがまったくないこともなかった。(そのチャンスを活かせなかったのは)流れがわるかったり、あるいは性能調整というルールだったりします。(昨年、片岡選手を引っ張ってきたら乗ると言って)コンビを組んで2年目ですが、片岡選手とはSUPER GTだけではなくスーパー耐久でも一緒に走っています。走りに対する哲学も似ていて、話ははやい。勝負の世界でレースは水物だから、気を引き締めて落ち度無くやっていきたいと思います。もう皆さんは僕の気質をご存じだと思いますが『負けることが大嫌い』。全力でいくのでアレをアレしてください(後述)」と笑いを取りつつ強い決意を述べた。

 相棒である片岡龍也選手は「今年も皆さんに会えました。2年目です。だいぶ、この画面に流れる文字にも慣れてきました(注:参戦発表会はニコニコ動画で生中継されていて、ステージに立っているスタッフや選手側にはモニタ画面を通じて、ユーザーからのコメントが見えている)。ですから、いよいよ(私も)本領発揮じゃないかと思います(笑)。チームの体制や車輌などパッケージとしては揃いました。昨年のようなアンラッキーはなくして、もちろん反省も踏まえていきます。チーム体制には申し分ありません。レースの組立てなど谷口選手のレースに対する意識の高さは知っていましたが、昨年優勝した富士ではその底力まで知ることができました」とコメント。「ああ、画面にシートセッティングって文字が流れていますね。(身長差がある2人のコンビでは)シートレールの動く量が多いので、レールにグリスをたっぷり塗って挑みます」と、慣れたリアクションも披露した。

2011年から引き続いてスポーティングディレクターとして参加する片山右京氏
グッドスマイルレーシングのAドライバーとなって3年目を迎える谷口信輝選手
チームに加入して2年目、ニコニコ動画の弾幕にも慣れたという片岡龍也選手

 また前述のとおり、第5戦にあたる鈴鹿サーキット1000Kmレースでは、BMW Motorsportのワークスドライバーであるヨルグ・ミューラー選手が3rdドライバーとしてスポット参戦することが決まった。ビデオメッセージでヨルグ・ミューラー選手が画面に登場すると、会場とニコニコ動画の視聴者は一斉に湧いた。

ビデオで登場したBMW Motorsportワークスドライバー、ヨルグ・ミューラー選手。このチームのサポートとしてクレイジーなカラーリングのBMW Z4で第5戦鈴鹿に参戦できることを大変嬉しく思います」とコメント

 ミューラー選手は「みなさん、はじめまして。BMWワークスドライバーのヨルグ・ミューラーです」と挨拶。続けて「このチームのサポートとしてクレイジーなカラーリング(実際の英語は、Crazy Looking)のBMW Z4で第5戦鈴鹿に参戦できることを大変嬉しく思います。以前に日本に行ったことがあるのですが、再び日本に行けることを、そして日本で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。できるなら、あと何レースか一緒にしたいくらいですね(笑) ファンの皆さん、鈴鹿でお会いしましょう」とメッセージを寄せた。

 参戦発表会では、すでに正式発表されている2013年のSUPER GTカレンダーも紹介。気になるのはエキジビションマッチとして、例年の富士とセパンの間に韓国インターナショナルサーキットでのレースが加わっている。SUPER GT国際化の一貫だが、スケジュールもタイトになるので、各チームの対応も気になる。グッドスマイルレーシングとしては、参加を検討してはいるが決定ではないというコメントがあった。

 安藝スーパーバイザーによると、2013年のチームキャラクター「レーシングミク 2013 ver.」は、絵師とコスチュームデザインを分業したとのこと。コスチュームデザインは、SEGA&プラチナゲームスのBAYONETA(ベヨネッタ)のキャラクターデザインなどを手がけた島崎麻里氏。作画をイラストレーターのsaitom氏が行っている。ちょっとした工夫があって「シーズン中に変形するかも知れない」とのこと。ヒントとしては腰のヒラヒラ部分らしい。例年、そのレーシングミクのデザインをモチーフにした衣装で登場するチームレースクイーン「レーシングミクサポーターズ 2013」の3名も紹介された。2012年の鴻上聖奈さんが続投、石黒エレナさんと荒井つかささんの2名が新たに加わる。新コスチュームのお披露目は第1戦の岡山国際サーキットを予定している。

2013年のSUPER GTカレンダー。エキジビションレースとして、5月18日~19日に韓国インターナショナルサーキットでのSUPER GT開催が予定されている
「レーシングミク 2013 ver.」。コスチュームデザインは島崎麻里氏。作画はイラストレーターのsaitom氏。(C)saitom / Crypton Future Media,Inc. Costume design by 島崎麻里
「レーシングミクサポーターズ 2013」の3名。右から鴻上聖奈さん、荒井つかささん、石黒エレナさん

個人スポンサーの募集も同日より開始

 2012年シーズンでは1万4225名の個人スポンサーを獲得した同チームだが、もちろん2013年も個人スポンサー制度は継続され、体制発表会が行われた2月10日より募集が始まった。受付期間は2013年秋(締切日未定)までとなっている。谷口信輝選手がステージ上でコメントしたアレをアレしてとは、言うまでもなく、どしどし個人スポンサーとして参加してほしいという意味である。

 基本となる「漢コース」(おとこコース)は全4コース。漢コースはスポンサー料が3000円で、特典としてメンバーズカード、専用チケットホルダー、漢ステッカーがもらえる。そして、「漢札コース」(おとこふだコース)は100枚のオリジナル名刺が加わる5000円のコース。

 上位の漢前コース(おとこまえコース)はスポンサー料が10万円。車輌に80×35mmのスポンサーステッカーが掲載されるほか、希望するサーキットの観戦チケット(1戦のみ1組2枚)がプレゼントされる。最上位の超漢コース(ちょうおとこコース)はスポンサー料が30万円。掲載ステッカーサイズは148×58mmと大型化されるほか、上記の観戦チケットに加えて「チームスタッフ1日体験」ができる。内容は「レース当日にチームテントで観戦」「チームスタッフとしてスイングバナーを持ってスターティンググリッドに立つ」など。

 参戦発表会のステージ上では安藝スーパーバイザー曰く「実は、超漢コースは意外と好評なんです。まさにチームスタッフとして一緒に雑用ができる(笑)。ピットは狭いので、レースごとにだいたい2組まで」とのこと。現在、開幕戦の岡山をはじめ、第2戦富士、第5戦鈴鹿、第6戦富士、第7戦オートポリス、第8戦ツインリンクもてぎが募集対象となっている。

ルーフトップに掲示される予定の個人スポンサー総数。1戦ごとに数字が増えていくだろう
参戦発表会のあった2月10日から募集が始まった4つの個人スポンサーコース
フィギュアの付属する「ねんどろいどコース」と「Figmaコース」は後日案内予定

 応募順に3月から特典の発送が始まる見通し。2月末日まで申し込みを済ませた場合、4月6日~7日に開催されるシーズン開幕戦に間に合うように特典が発送されるとのこと。いずれのコースもスポンサー名は公式応援サイトに掲載されるほか、サーキットではチームテントなどにも掲出される。加えて今年は大橋監督による「個人スポンサー限定情報twitter 2013」なども実施される。

 そのほか、初音ミクデフォルメフィギュア「ねんどろいど」が付属するねんどろいどコースは開幕戦から募集開始予定。稼働フィギュア「Figma(フィグマ)」が付属するFigmaコースは夏頃に募集を開始すると発表された。いずれも詳細は後日公式サイトで案内される。

 個人スポンサー制度の詳細はチーム公式の応援サイト(http://supergt.goodsmileracing.com/)を確認していただきたい。なお「ワンダーフェスティバル 2013[冬]」のグッドスマイルカンパニー「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 17」ブース内には、関連製品が出展、参考出展された。

グッドスマイルカンパニーのブース「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 17」
ブース内に展示された昨年のレーシングミクである「レーシングミク 2012 ver.」のフィギュア
発表前、まだベールのかかっている2013年仕様「GSR 初音ミク BMW」の1/43スケールモデル。会場展示されたが、監修中のため写真はNG。夏のレポートで紹介する

(矢作 晃)