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谷口信輝選手が東京バーチャルサーキットでトレーニング

「今年はチームが一枚岩となってチャンピオンを獲りに行く」と谷口選手

東京バーチャルサーキットでトレーニング中の谷口信輝選手
2013年2月18日

 SUPER GT、スーパー耐久などで活躍するプロドライバーの谷口信輝選手は2月18日、東京 赤坂にあるレーシングジム「東京バーチャルサーキット」で、レーシング・シミュレーターを使ったドライビングテクニックのトレーニングの模様を公開した。

 東京バーチャルサーキットは、世界にまだ5台しかないと言うレーシングシミュレーターを使ってドライビングテクニックを磨くトレーニングジム。レーシングシミュレーターのボディーは実際のF1マシンと同型のものが使われ、マシンに乗り込むと目の前の7mの大型スクリーンに任意で選んだサーキットが登場する。

 サーキットは、国内では鈴鹿、富士をはじめ筑波やもてぎ、オートポリス、SUGOなど、国外ではニュルブルクリンク24時間で実際に使われるコース、スパ・フランコルシャン、フェラーリのテストコースであるフィオラノなど全80種類のコースを走行することが可能だ。

 また、走行中のデータ(速度、エンジン回転数、スロットル開度、ブレーキ踏力、ステアリングアングル、タイヤ温度など)をモニタリングし、走行後そのデータを元にインストラクターを務める砂子塾長からドラテクに関するレクチャーを受けることが可能になっている。さらに車両はタイヤ空気圧やスプリングレート、車高、キャンバー、トー、キャスターなど詳細なセッティングを行うことができる。

 こうしたことから、現役プロドライバーをはじめ、トヨタ自動車や日産自動車のレーシングドライバー育成プログラム「TDP(トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム)」「NDDP(ニッサン・ドライバー・デベロップメント・プログラム)」などでも東京バーチャルサーキットのレーシング・シミュレーターを使ったプログラムを採用していると言う。東京バーチャルサーキットについては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/20121018_565727.html)でも紹介しているので、詳細を知りたい方はこちらを参照されたい。

 谷口選手は、昨年に続きSUPER GTのGT300クラスに「BMW Motorsport Z4 GT3」(グッドスマイルレーシング)で参戦することが、2月10日に幕張メッセで行われた「ワンダーフェスティバル 2013[冬]」で発表されたわけだが、昨年2台体制で臨んだのに対し、今年は1台体制に変更した。そのことについて、谷口選手は「(1台体制になるのでチームが)一枚岩となってチャンピオンを取りにいくぞという年になる」と述べており、チームが掲げる「王座奪還」に向け早くも集中している様子だった。

 そんな谷口選手と砂子塾長に、レーシング・シミュレーターなどについてお話を伺うことができたので、下記に紹介する。

レーシング・シミュレーターでトレーニング中の谷口選手。走行後、砂子塾長と走行データについて熱心に話し合いをしていた
こちらは本物のポルシェをベースにしたレーシング・シミュレーター。まだ開発中とのことで、詳細は同社公式サイトで発表される

──レーシング・シミュレーターに乗ってみた感想をお聞かせください。
谷口選手:まず設置されている車両がフォーミュラカーということで「おおっ!」って感じになりますよね。部屋全面に大型モニターが設置してあって、ゲームセンターのような遊びではないというのが見ただけで伝わってくる。で、実際に動かしてみたら、最初は動かし方とかが分からなくて探り探りなんだけど、慣れていくにつれ『実車に近いな』って感じになる。

──レーシング・シミュレーターだと4輪の接地感とかが分かりにくそうですが?

谷口選手:マシンのセッティングに関しては砂子さんが煮詰めてやっているわけですが、ただ単に乗りやすく、速く走れるセッティングだけでなく、“ドライビングを学ぶため”にしていいセッティング、わるいセッティングもできるそうですよ。

砂子塾長:確かに実車に近いかどうかということも重要なファクターだけど、彼(谷口選手)のようなプロドライバーが来店する傍ら、一般の方やサンデーレーサーの人も多くいらっしゃる。その中にはまだまだドライビングの基本が分かっていない人もいて、例えばクリッピングまでフロント荷重で進入する人が結構いて、それだと巻き込んでしまう。あくまで進入までがフロント荷重で、あとはアクセルオンでリア荷重にしないとダメだよ、といったことを教えるためのセッティングにしてあったりするんです。

──ここでトレーニングして、それがリアルな世界で活かせるものなのでしょうか?

砂子塾長:それは時代遅れの発言だね(笑)。実際に来店されるお客さんで、鈴鹿サーキットをレーシング・シミュレーターのフォーミュラマシンでトレーニングしている人がいて、その人は散々トレーニングした後に実際に筑波や袖ヶ浦に行ってタイムアップしている。アマチュアの人たちは伸びしろがたくさんあって、何に注意して走らなければならないのかということを、ここで学んでいる。(レーシング・シミュレーターというのは)思考回路トレーニングで、ちゃんとタイムを出すための思考回路ができれば、それはどこのサーキットでも活かすことができるんです。

──プロの方から見て、伸びしろを伸ばせるアイテムとしてどう見られていますか?

谷口選手:モータースポーツというのは、上手くなるためにどうするかというと、走る量もそうだし、例えば富士スピードウェイをうまく走るには、ちゃんと走るクルマやタイヤ、走行料金といったお金や時間がかかってしまう。そういう点で(レーシング・シミュレーターは)いつ来ても同じコンディションで走れるし、(財布やクルマといった)痛むものがない。(レーシング・シミュレーターと実際のクルマは)瓜二つではないけれど、限りなく近いから練習になる。砂子塾長がレクチャーしてくれるわけだし、プロドライバーがどういう走り方をしたかもデータに残っているから、比べてみたりすると面白いんじゃないかな。

──自分の運転を見つめ直す意味でもタメになると。

谷口選手:プロでない人だと、自分の走りをあまり他人に見られることがないですよね。ロガーを重ねることもないし、ビデオで見直してもステアリングの癖は分かるけど、ペダル関係は見えない。ただサーキットを闇雲に走るよりも、東京Virtualサーキットで走った方が勉強になると思う。

──最後に今年のSUPER GTへの意気込みを聞かせて下さい。今年のチーム目標は『王座奪還』ですよね。

谷口選手:去年はチャンピオンを獲得するために片岡(龍也選手)を連れてきて磐石の体制だったはずなのに、性能調整も苦しかったんですが、それよりもお恥ずかしい失態(セパンと鈴鹿でのガス欠)があったのが痛かった。そのあたりがちゃんとできていれば、チャンピオンを獲れるくらいのポイントは稼げたはずだから。そういった意味で、今年はそういうことがないように気を引き締め直すのと、1台集中になったのでチームが一枚岩となってチャンピオンを獲りに行くという年にしたい。

谷口選手による富士スピードウェイでのテスト走行の様子。スピンする一幕もあったほか、動画の最後にペダルトラブルというアクシデントに見舞われてしまった

(編集部:小林 隆)