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グッドスマイルレーシング、おぐち氏デザインのレーシングミク Z4をお披露目

「今年の初音ミク Z4は変形してロボットになります」と安藝貴範氏

「艦これ」イラストレーターのおぐち氏がデザインした「レーシングミク 2014 ver.」で2014年のSUPER GTに挑む
2014年2月9日発表

「ワンダーフェスティバル 2014[冬]」で参戦決起集会を開催

 グッドスマイルレーシングは2月9日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された「ワンダーフェスティバル 2014[冬]」で2014年のSUPER GTに向けた参戦決起集会を実施した。2014年シーズンの参戦体制は2013年末にすでに発表されていることから、この日は参戦マシン、レーシングミク、そしてレースクイーンのお披露目に加えて、マクロスシリーズなどでおなじみの河森正治氏による謎の「車体機構デザイン」がいかなるものかの発表に注目が集まった。

 決起集会の舞台となるワンダーフェスティバルは、毎年冬と夏に海洋堂が主催して開催される造形物の祭典。グッドスマイルレーシングの関連会社であるグッドスマイルカンパニーが、同イベント最大規模の出展者として「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!!」を行っていることから、そのステージイベントの1つとして参戦決起集会が開催された。

 グッドスマイルレーシングのチームコンセプトは「ファンと共に走るレーシングチーム」で、2008年から車体に初音ミクを描いてモータースポーツ活動を行っている。ニコニコ動画なども積極的に活用して、モータースポーツファンだけでなく初音ミクファン、フィギュアファンも取り込み、独自の「個人スポンサー制度」を導入するなど、いわゆる“痛車チーム”の先駆けでもあり、代表格と言える。

 2013年度のSUPER GT GT300クラスにおける戦績はシーズン3位。Round.6の富士スピードウェイとRound.7のオートポリスで2度の優勝を飾ったがシーズン優勝には手が届かなかった。参戦7年目を迎える2014年も、2011年以来となるシーズン優勝を目指してBMW Z4でSUPER GT GT300クラスに参戦する。

レーシングミク 2014 ver.は「艦これ」のイラストレーターを抜擢

 冒頭で述べたとおり、参戦体制自体は2013年末に発表されている(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20131224_628787.html)。2013年まではエントラントとして二人三脚でやってきたStudie(スタディ)が別チームを起ち上げることを受け、新エントラント「GSR&TeamUKYO」として新たなスタートを切る。

エントラント代表となる安藝貴範グッドスマイルレーシング代表取締役。「このチームはみなさんのお力で支えられています。情報発信も昨年にも増してお届けするので、一緒に熱く戦っていただきたい。チャンピオンを目指して頑張りますので、変わらぬ応援をお願いします」とコメント

 これにより、これまでスーパーバイザーを務めていた安藝貴範グッドスマイルレーシング代表取締役がエントラント代表に、スポーティングディレクターを務めていた片山右京氏がチーム監督に、チーム監督を務めていた大橋逸夫氏がゼネラルマネージャにと、それぞれの役割を変えて2014年のシーズンに臨む。ドライバーは谷口信輝選手と片岡龍也選手のコンビが2012年シーズンから3年目の続投となる。ここまでが2013年末時点で明らかにされていた部分だ。

 参戦決起集会当日は、会場に訪れた個人スポンサーをはじめとするファンの前に全員が揃って登壇する予定だったが、折しも前日の2月8日は関東地方を45年ぶりという大雪が襲った。会場の幕張メッセに向かう高速道路は一部区間が閉鎖され、公共交通機関にも乱れて生じ、結果として電車で会場入りすることになった谷口信輝選手が大遅刻。片岡選手いわく「いつもはギリギリの絶妙なタイミングで来るんですが、今回はそれが仇になった」ということで、決起集会のステージには間に合わなかった。

 スーパーバイザーという立場からエントラント代表に変わった安藝貴範氏は、あらためて「新体制で戦っていくことになりました。みなさんの応援が必要なチームです。今年もまた1年よろしくお願いします」と挨拶した。また、ゼネラルマネージャを務める大橋逸夫氏とチーム監督の片山右京氏は、昨シーズンを振り返って「結果的には3位ですが、途中経過には誰もが納得いっていないと思う。逃がしてしまったチャンスなどもあり、思い返してみればもうちょっと頑張れたのではないか、できることも多かったのではないか」「うまくいかなかったという流れがあるのは(ある程度)仕方がない。(チームとして)実力はあったと思う。言いかたはわるいかもしれないが、元気があってやる気があると、(レギュレーションや性能調整などの対象として)目を付けられる(笑)。しかし、それを跳ね返してこその実力であり、もっと頑張ろうと思い続けた1年だった」とそれぞれに振り返った。

ゼネラルマネージャに就任する大橋逸夫氏。「今年はゼネラルマネージャ。去年成し得なかったチャンピオン奪回のため、みんなでやっていきます。ファンのみなさんの応援がなによりの力になります」と挨拶した
チーム監督となる片山右京氏。「(昨年までのスポーティングディレクターという立場から)チーム監督という大役を担うことになりました。より深い関わり方のなかで、世界をみていこうと思います」とコメント
片岡龍也選手は「体制などが変わりましたが、サーキットを走る上での心の体制は整っています。3年目になるので欲しいのはタイトルだけ。取りこぼしもなく、運もよく、最終戦まであきらめずにチャンピオンという目標だけをみて戦っていきます」と決意を述べた

 ドライバー目線として片岡龍也選手は「完璧とは言うのは難しいが、ドライバーとしてやれること、チームとしてやれることはやった(1年だった)と思う。ただみなさんご存じのとおり、ちょっとだけ運がなくて、その運のなかった部分が取りこぼしに繋がった。もし横に“背の高い人(遅刻した谷口信輝選手)”がいたら『エンジンが遅い、遅い』と言っていたと思う。そうした(性能調整や)レギュレーションなどで苦しい面もあり、悔しさが残るシーズンだった」とコメントした。

 2014年に参戦するマシンは昨年末に発表されたとおり「BMW Motorsport Z4 GT3 MY14」。大橋ゼネラルマネージャによると、「実際の参戦車両はまだ通関していない。バラバラの状態で日本に来て、それから組み立てることになる。車両自体は2013年モデルとさほど変わりがなく、電子制御デバイスが増えるなどの違いにとどまる。2014年のFIA GT3車両のなかでも基準車という位置付けで、絶対的にどこかが優れているわけではなく、トータルバランスがよい車両と考えている」とのこと。片山監督も「1戦ごとの戦略は極端に言えばタイヤを含めて(マシンとコース、セッティングが)合うか合わないか。基本的にはコーナーリングマシンになるので、直線はややきついかもしれないが、その分はいろんな作戦をみんなで考えていく」と展望した。

レーシングミク 2014 ver.のデザインは、「深海棲艦 空母ヲ級」デザインのおぐち氏が担当

 この日アンベールされた車両は、昨シーズンを戦ったMY13車両に2014年向けのペイントを施したものとなる。毎年デザインが変わるレーシングミクも「2014 ver.」として一新。新進気鋭の若手アーティスト「おぐち氏」をデザインに起用した。同氏は人気のブラウザゲーム「艦隊これくしょん」で、敵方の「深海棲艦 空母ヲ級」をデザインしている。安藝氏によると「これまでのアニメ調とはひと味違う、アート寄りのデザイン」だという。起用にあたっては「おぐちさんの絵に興味があって、声をかけてみたところ快く引き受けてくれた」とのこと。コスチュームデザインにはチームのアートディレクターを務めるコヤマシゲト氏も参加して、レーシングミク 2014 ver.が完成した。

ベールに覆われているBMW Motorsport Z4 GT3
参戦決起集会まではベールに覆われていたレーシングミク 2014 ver.のパネル
BMW Motorsport Z4 GT3のボンネットに描かれたレーシングミク 2014 ver.
2014年仕様にカラーリングされたZ4。実際の参戦車両ではなく、2013年モデルに新しいカラーリングを施している
左リア。タイヤは2014年も引き続いてヨコハマタイヤ(横浜ゴム)を使用する
リアウイングの様子。昨年までのStudieに代わって、GOODSIMLEの文字が入った

「今年のミクZ4は変形してロボットになります」!?

 さて、安藝氏が「謎のパーツも付いている」と表現するレーシングミク 2014 ver.だが、ここでゲストとしてマクロスシリーズなどでおなじみの河森正治氏がステージに登場した。2013年末の体制発表では“車体機構デザイン”を務めることになっていた。

「“車体機構デザイン”というクレジットが発表されると聞いてちょっとドキドキしていた」という河森氏だが、安藝氏によると、別企画として同時に動いているテレビアニメ「ノブナガ・ザ・フール」などの打ち合わせで河森氏が来社したときに、ミクレーシングプロジェクトへの参加を打診したという。「(河森氏の参加で)ああしようこうしよう、というアイディアは出てきたが、これをバレずに進めるにはどうしたいいか考えた。ほかになんと言っていいか分からず、結果として出てきたのが“車体機構デザイン”」なのだという。

 そして明かされたのが、「ご想像のとおり、今年のミクZ4は変形してロボットになります」という言葉だ。

マクロスシリーズの原作やメカデザインでお馴染みの河森正治氏。“車体機構デザイン”もやはり変形を意味していた
変形までは昨年の発表時点で想定されていたものの、まさかの人型だったとは……
発表会終了後も丹念に車両を見てまわり、さまざまなカットを撮影する河森正治氏

 第一報を伝えた弊誌記事に対するツイートなどでも、河森正治の名前から「変形」を予想する声は確かに多かった。しかし「機構」という言葉に惑わされたのか、あるいは“さすがにそこまでは”ということで、まさか人型になるというのは想像の斜め上をいっていたと言うべきだろう。

 河森氏によると「(初期の)トランスフォーマーに携わっていた際、何台かクルマを変形させていた。あの当時は変形するとエンジンがなくなったり、ドライバーズシートがどこかにいったりと、いろいろな問題があった。クルマの基本機能や構造を活かしたまま、人型にできないか?」と考えて到達したのが、今回の「モータロイド(仮)」だという。加えて「本当は実際のクルマも変形させたかったが、FIA GT3のレギュレーションではエクステリアを変形させてはいけない(FIA GT3に限らず、たいていのモータースポーツではダメです)ということなので(笑)」と、さらに想像を超える意欲も見せた。

 安藝氏が「BMW Z4がミク型になる覚悟が必要」というデザインだが、河森氏によるとインテリアの構造やデザインはまだ100%に到達せず、現在は内側の変形構造を考えている最中だという。実際、前述したように実現が可能な変形を考えていて「例えば、頭のなかにはコクピットがある。軽量化のために後部座席の部分はほぼ空っぽなので、足の部分は後部に、頭は助手席にとすべて配置を考えている」のだという。ちなみに「髪の毛のパーツは取って投げる」そうで、それも明らかに反則である。

 そしてこれはイラストだけの話にとどまらない。グッドスマイルカンパニーはホビーメーカーだ。「勇気をもって、おもちゃにする」と安藝氏はコメントした。河森氏の要望は、デフォルメモデルはプロポーション重視でいいかも知れないが、リアルモデルでは「完全変形を目指す」とのこと。安藝氏も「グッドスマイルカンパニーから、どこかの業者に押しつけるので一緒に頑張りましょう」とやや逃げを打ちつつも応じた。実のところ、車両本体のカラーリングにはこうした河森氏の変形案も取り入れていて、いわゆるカラーの境目などが分割ラインとして見えてくるらしい。昨シーズンまでより緑の面積が多いのは髪の毛のパーツになるからだとか。

 河森氏は「みなさん本当に頑張って下さい。応援する立場で結果を楽しみにしています。最後の追い込みで変形機構を作っていますので、グッスマさんにはメカに加えてねんどろいども作って欲しいと思っています。いずれは変形するマシンができて、そういうレースができたらいいなと思い、楽しみながら参加させていただいています」と応援のメッセージを伝えた。

2014年も個人スポンサーを募集

 また、チームには2012年以来のスペシャルサポーターとしてF1ドライバーに復帰した小林可夢偉選手が加わる。会場ではビデオメッセージが流され「小林可夢偉です。ケータハムF1を通じて、2014年のF1復帰が決まりました。グッドスマイルカンパニーの安藝さんをはじめ、みなさんにお世話になってここまでこれてほっとしています。2014年はGSRスペシャルサポーターを務めさせていただきます。しっかりと全力で応援させていただきます。そして個人スポンサーのほうもよろしくお願いいたします。2014年はGSR、そして小林可夢偉、しっかり頑張りますのでみなさん応援よろしくお願いします」とコメントしている。

 チームのレースクイーンである「レーシングミクサポーターズ」は、2013年の3人から1人増えて4人体制になった。荒井つかささんと鴻上聖奈さんが2013年から続投し、山村ケレールさんと水谷望愛さんが新たに加わる。水谷望愛さんは、2012年シーズンまで「エヴァンゲリオンレーシング」で綾波レイ役を務めていたレースクイーンで、2012年のレースクイーン大賞も受賞している。レーシングミクサポーターズを代表して荒井さんが「みなさんこんにちはー。今年は個性的な4人でチームを盛り上げていけたらいいなと思っています。精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします」と、会場のファンとニコニコ動画の視聴者に挨拶した。新コスチュームのお披露目は、第1戦の岡山国際サーキットを予定している。

2012年以来のスペシャルサポーターとしてF1ドライバーの小林可夢偉選手が加わる。ビデオメッセージが届けられた
電動バイクを使ったレーシングプロジェクトに2014年も引き続き協力。2013年のマン島TTレースに続いて、パイクスピーク・ヒルクライムに電動バイクで挑戦する。レーシングスーツ姿のミクもデザインされるという
2014年のレーシングミクサポーターズは4人体制。左から順に、荒井つかささんと鴻上聖奈さんが2013年からの続投、山村ケレールさんと水谷望愛さんが新たに加わる

 2013年は1万2857人のスポンサーを得た個人スポンサー制度。「みなさんの応援が必要なチームです」と安藝氏がコメントするとおり2014年も継続する。2014年はいち早く元旦から募集を開始しており、受付期間は2014年秋まで(締切日未定)となっている。

 お馴染みのフレーズは片岡選手から。「谷口選手が間に合わないようなので、彼が言うべき台詞を代弁します“みなさん、アレをアレです”」。

残念ながらステージに間に合わなかった谷口信輝選手に代わって、片岡龍也選手が恒例のフレーズを披露「みなさん、アレをアレです(個人スポンサーになってね)」
2014年は元旦から募集がはじまった漢コース。詳細は公式応援サイトを参照していただきたい
フィギュアが付属する「ねんどろいどコース」と「Figmaコース」は後日案内予定

 個人スポンサーのベースは全4コース。基本となる「漢コース(おとこコース)」はスポンサー料が3000円で、特典として個人スポンサーカード、専用チケットホルダー、オリジナル漢ステッカーがもらえる。そして「漢札コース(おとこふだコース)」は100枚のオリジナル名刺が加わる5000円のコース。

 上位コースの「漢前コース(おとこまえコース)」はスポンサー料が10万円。車両に80×35mmのスポンサーステッカーが掲載されるほか、希望するサーキットのパドックパス(1戦のみ1組2枚)がプレゼントされる。最上位の「超漢コース(ちょうおとこコース)」はスポンサー料が30万円。掲載ステッカーサイズが148×58mmと大型化されるほか、上記パドックパスに加えて「チームスタッフ1日体験」ができる。いずれのコースもスポンサー名は公式応援サイトに掲載されるほか、サーキットではチームテントなどにも掲出される。

 そのほか、初音ミクデフォルメフィギュア「ねんどろいど」が付属するねんどろいどコースは4月から募集開始予定。稼働フィギュア「Figma(フィグマ)」が付属するFigmaコースは夏ごろに募集を開始すると発表された。いずれも詳細は後日公式サイトで案内される。

 個人スポンサー制度の詳細は、チーム公式の応援サイト(http://supergt.goodsmileracing.com/)を確認していただきたい。なお「ワンダーフェスティバル 2013[冬]」のグッドスマイルカンパニー「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 19」ブース内には、関連製品が多数出展、参考出展された。

グッドスマイルカンパニーのブース内に展示された2013年の参戦車両「BMW Motorsport Z4 GT3 MY13」の1/32スケールモデル。デザインは最終戦となるもてぎ版で、個人スポンサー数の12679がルーフに刻まれている
もちろん2014年仕様のスケールモデルも登場する。会場で展示されているが、監修中のため撮影はNG。夏のリポートで紹介する
2014年夏に発売予定の「レーシングミク セパン Ver.」。夏のリポートで彩色モデルと詳細をお届けできると思う
2013年のマン島TTレースを戦った電動バイク「TT零13」とレーシングミクのFigma。このFigmaは「EV MIRAI Ver.」となっている

(矢作 晃)