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ワンフェス2014[夏]のステージイベントに「GSR with TeamUKYO」が登場
2014年前半のSUPER GTを安藝貴範氏と片山右京氏が振り返る
(2014/9/3 15:44)
幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)で7月27日、「ワンダーフェスティバル 2014[夏]」(通称:ワンフェス)が開催された。ワンフェスは模型やフィギュア、ガレージキットなどをはじめとする造形物の祭典で、企業や個人ディーラーによる作品の展示や即売が行われる夏と冬の大型イベント。主催はワンダーフェスティバル実行委員会と海洋堂。
前回開催の2014[冬]では、開催前日に降った大雪の影響から交通機関に大きな乱れが生じ、来場者はもちろんのこと、個人ディーラーが幕張メッセに到着することも困難な状態になった。それでも最終的には例年比で1割強の減少にとどまる4万2924人が来場している。2014[夏]は一転して酷暑となったが、夏開催では初めて5万人を超える5万787人の来場を記録した。来場者数はいずれも主催者発表。
SUPER GTのGT300クラスに「GSR with TeamUKYO」を参戦させるグッドスマイルレーシングと、2014年度からSUPER GTのシリーズスポンサーとなったグッドスマイルカンパニーは、ワンフェスにおける主要出展企業となっており、会場内で恒例の「WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 20」(以下、ワンホビ)を開催した。20の数字が示すとおり、ワンホビは通算20回目の開催。ワンフェス2008年[夏]において、当時の会場だった東京ビッグサイトでエスカレーター事故が起きた影響から2009年冬期のワンフェス開催が見合わせとなった際にも、秋葉原で「ワンホビ」を単独開催してホビーファンを支えてきた。以来、5年半が経過している。
これまでもワンホビ内ではグッドスマイルレーシング関連の展示を継続して行ってきたが、ワンフェス2014[夏]においてはブース内にパーテーションが用意されて、あたかもグッドスマイルレーシングのブースが単独で存在するように配置されていた。ここには、SUPER GT 2014年シリーズに参戦する「GSR 初音ミク BMW」と、ランボルギーニ カウンタック LP400 ウォルターウルフ仕様が展示された。代表を務める安藝氏がステージイベント中に触れたコメントによると、当初はBMW Z4のレプリカを展示する予定だったが、なぜか今シーズン参戦中の実車が置かれることになったという。
また、これら2台の車両の周りには、例年よりもはるかに多い関連製品が展示された。毎年紹介しているレーシングミク関連のフィギュアをはじめとして、ミニチュアカー、ラジコンカー、グッドスマイルレーシングから販売される超軽量ミニベロ(小径自転車)の「HMR」シリーズ、さらにオリジナルグッズなど、ファンにはたまらない展示ばかりだ。
ワンフェス[夏]では初となるステージイベントも実施
2012年、2013年は、いずれもワンフェス[夏]とSUPER GTの決勝日が重なっていたことから、シーズン第4戦にあたるSUGO戦のパブリックビューイングがブース内で実施されていた。ところが2014年は、レースの開催がワンフェスと1週間ずれたスケジュールとなったことで、ステージイベント「GOODSMILE RACING&Team UKYO 2014シーズンを振り返る」が行われた。このステージイベントは、前述したワンホビ全体のステージイベントの1つとなっており、会場だけでなくニコニコ生放送でのライブ配信も行われている。
ステージには、グッドスマイルレーシング代表でエントラント代表でもある安藝貴範氏、今シーズンからチーム監督を務めている片山右京氏が登壇してトークを展開。レーシングミクサポーターズ2014の荒井つかささん、鴻上聖奈さん、山村ケレールさん(水谷望愛さんは欠席)の3人も登壇してステージを華やかに演出した。SUPER GTの開催はなかったものの、チームドライバーの2人が参戦しているスーパー耐久のスケジュールがあったので、谷口信輝選手と片岡龍也選手の両ドライバーは会場には訪れていない。
ステージは鷲崎健氏の進行で緩やかにスタートした。冒頭では、前述したグッドスマイルレーシングの展示部分を簡単に紹介。そしてイベント当日から受注を開始した超軽量ミニベロ(小径自転車)「HMR」シリーズをピックアップした。本誌でも紹介(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140620_654472.html)しているが、フレームデザインにSUPER GT 2014に参戦中の「グッドスマイル初音ミクZ4」をモチーフにしているのが最大の特徴。全モデルが会場に用意され、上位モデルから順に58万円、19万8000円、13万8000円(いずれも税抜き)。
自転車にも詳しい片山右京氏によれば、マグネシウムフレームに加えて厳選されたパーツを使っているのが特徴とのこと。比較的カジュアルな自転車ではあるが、見るべき人にはパーツのよさが分かるという。片山氏が「僕には使っているパーツそれぞれの値段も想像が付くけど、おそらくそれほど利益が出てないですよ(笑)」と指摘するのは、フラグシップモデルの「HMR-Extreme」だ。
いっぽう、それぞれのパーツのグレードを下げてミドルレンジに持ってきたのが「HMR-9」。こちらも片山氏いわく「値段は半分以下になりますが、パーツのグレードは専門家じゃないと分かりませんから」とのこと。そして、ローエンドのモデルはハンドルがフラットバーで、街乗りにはこれで十分だと紹介した。いずれも完全受注生産だが、ミニベロの同価格帯の製品としてはすでに驚異的に売れているという。
続いては、本題であるレース活動の話題。SUPER GT GT300クラスの今シーズン前半を振り返った。
第1戦 岡山国際サーキット
初戦でいきなりの優勝を果たす。今シーズンから体制を入れ替え、片山右京氏がチーム監督に就任しての初采配で初優勝となった。シーズン前からクルマの調子がよいとは言われていて、テスト走行ではGT300クラスのトップタイムを連発したという。予選では0.1秒足りずに2位スタートとなったが、自然吸気エンジンのBMW Z4は予選がやや不利ということで、決勝レースではスタート直後に前に出るか、ピット作業などのタイミングを生かして前に出るかを検討したという。
決勝ではレース中に路面のコンディションが変わった。片山氏が「ちょい濡れ」というややウェットな路面にあったタイヤをチョイスしたチームに中盤で抜かれてしまったものの、再びコンディションが変わっていく。タイヤ交換では左側2本だけのタイヤを交換して、ピット作業の時間を短くする作戦に出た。岡山国際サーキットは右まわりのコースのため、負荷が大きい左側だけを交換している。
キーポイントになったのは今年の課題でもある7号車だ。7号車は2013年まで同一チームとして戦っていた「Studie」が、同じBMW Z4を使って新たなチームとして参戦している。最大の仲間でもあり、最大のライバルだ。ドライバーも独BMWからワークスドライバーのヨルグ・ミューラー選手が参戦しており、7号車がセミワークス、GSRはプライベーターという位置づけになる。安藝氏いわく「負けるわけにはいかない(笑)」という存在だ。
そして予想どおり「ヨルグ・ミューラー選手ががすごい勢いで追いかけてきた(笑)」。ラストでは追いつかれ、隙を見せれば前に出られるという展開になったという。ここで谷口選手が選択したのはタイヤの温存。抜かれない程度までペースを落とし、最後の1、2周の勝負に向けて体勢を整えた。いっぽう、追いかけるヨルグ・ミューラー選手はプレッシャーをかける立場であるだけに、タイヤへの負担は避けられない。この結果、最終盤で競り合ったものの、谷口選手が後続を抑え込むクレバーな走りを見せ、みごとに第1戦の優勝を飾った。
第2戦 富士スピードウェイ
第2戦は片山右京氏によるエベレスト登頂挑戦と時期が重なったため、監督代行を安藝貴範氏が務めた。結果を先に言ってしまうと、第1戦に引き続いての優勝。片山氏は「俺は2012年シーズンの4号車(当時)監督時代も含めて、ようやく(2014年)初戦の岡山で監督初優勝を果たしたのに、安藝さんは初監督レースであっさり勝ってしまった」と苦笑する。
富士スピードウェイは、今年のBMW Z4はほかのクルマと比べて苦手なサーキットとも言える。予選で9位になったうえ、決勝当日の朝にはトラブルも出た。しかし、決勝はミスなく走り続け、次々に順位を上げて優勝。こういうレースが本当に嬉しいと安藝氏は振り返る。いっぽうの片山氏は諸事情から登頂を断念することになり、カトマンズの空港から何度も電話をして、現在2位、現在1位と途切れ途切れながら状況を把握していたという。ちなみに、開幕直後の2連勝はGT300クラスでは初めてとなる快挙。
第3戦 オートポリス、第4戦 SUGO
このあたりから2連勝した影響が出始める。車体に載せられるウェイトハンデが大きくなってきたのだ。クラス優勝した場合はシリーズのポイントが20ポイント加わるが、同時にウェイトハンデを獲得ポイント×2kg分の重量として加算される。第1戦、第2戦で連続優勝して40ポイントを得たものの、第3戦スタート時には80kgに加え、シーズン当初から性能調整としてFIA GT3マシンに課されている20kgを合計した100kgのウェイトハンデが初音ミク号に載せられてスタートを切ることになった。
レースでもGT500車両とほかのGT300車両との接触事故から、結果的に片岡選手がもらい事故でホイールが割るなどの不運が続く。慎重に運転してピットまでは戻ったものの、交換作業後の再スタート、さらにセーフティーカーが入るなどのレース展開により、第3戦は決勝16位でノーポイントに終わった。
続く第4戦は、土曜の予選日が濃霧のために予選を行えず、決勝当日の日曜日の朝に予選、そして午後に決勝という慌ただしい展開になった。めまぐるしく変わる天候のなか、タイヤチョイスをはじめとして決断すべきポイントが多かったという。いずれもチームとしては前向きな決断をしたものの、裏目に次ぐ裏目。結果としてダメな方、ダメな方を選んでしまったと片山氏は振り返った。この日は無線トラブルも発生し、ドライバーとピットのコミュニケーションにも行き違いが起きたという。結果は決勝15位で、2戦連続のノーポイント。優勝を争うどころか、着実にポイントを重ねることもできない状態となっている。
とはいえ、片山氏は「よいこと半分、わるいところ半分。わるいところはすべて出尽くした。これからは連勝を重ねたいと思います」と前向きにコメント。第5戦以降での巻き返しを力強く語った。上がり下がりは大きいものの、ポイントランキングとしては前半戦をトップで折り返したことになる。ちなみに、第6戦にあたる鈴鹿サーキットは、初音ミク号が参戦する50回目のレースにあたるという。
また、ワンフェス2014[冬]で発表された河森正治氏による“変形するZ4”は継続して開発中であることも明らかにされた。骨組みレベルでは完全変形できるようになり「年内になんとかお届けしたい」(安藝氏)とのこと。これまでにさまざまな変形おもちゃを作ってきた業界のスペシャリストが全力をあげているという。同時に、なんらかのプロモーションビデオが公開あるいは添付されるようで、3Dアニメを「サンジゲン」が手がけているという。
ステージの最後には、恒例の個人スポンサー募集の案内が行われた。ワンフェス[冬]ではドライバーの谷口選手が「みなさん、アレをアレしてください!」(ポチッと個人スポンサーに申し込んでください)と言うのが恒例になっているが、前述のとおり、今回はドライバーの両選手が参加していないため、代役としてミクサポーターズの3人から「アレをアレして応援してください」とメッセージがあった。
“アレ”の中心となるのは、募集中のFigmaコースとなる。7000円のコースは10月27日の23時59分まで募集を受け付けるが、そのほかにさまざまなグッズが付属する1万円、3万円、5万円の各コースは9月10日が締め切り。フィギュアのレーシングミク 2014Ver.は、山村ケレールさんがポーズのモデルを担当しているということで「レーシングミクのコスプレをするレイヤーさんは、ポーズのコツを私に聞いて下さい」とコメントした。
最後に安藝氏が「みなさんの応援が必要なチームです。今後も応援をお願いします」と挨拶して、来場者をはじめ、ニコニコ生放送で見ているファンにもメッセージを送った。
取材以降、SUPER GTは第5戦 富士スピードウェイ、第6戦 鈴鹿サーキットが行われ、「GSR with TeamUKYO」の初音ミク号は、それぞれ決勝4位と決勝5位に入賞。着実にポイントを積み上げて、2位と2ポイント差ながらGT300クラスのポイントトップの座を死守している。第7戦は海外サーキットが舞台。タイのブリーラム・ユナイテッド・インターナショナルサーキットで、10月4日に予選、5日に決勝が行われる予定だ。