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【特別企画】奥川浩彦の「EOS 5D Mark III」でモータースポーツ撮影に挑む(前編)
フルサイズ画質のチェックと、電車撮影でAFを確認


 キヤノンからフルサイズデジタル一眼レフカメラ「EOS 5D Mark III」が3月に発売された。2008年11月発売の「EOS 5D Mark II」の後継機で、有効画素数は約2110万画素から約2230万画素へと増加しながら、最高連写速度は従来機の約3.9コマ秒から約6コマ秒にアップ、レリーズタイムラグは75ms以下から約59msに短縮されAPS-Cサイズのデジタル一眼レフ「EOS 7D」と同等になった。AF(オートフォーカス)は、従来機の測距点9点(+アシスト6点、中央のみクロスセンサー)から「61点高密度レティクルAF」に変更され、先日出荷の始まった有効画素数は約1810万画素のプロ用フルサイズ一眼レフ「EOS-1D X」とほぼ同様のシステムとなっている。

 ざっくり言うとEOS 5D Mark IIIは、遅いEOS-1D Xという感じで、連写性能などは見劣りするが、半額で買えるEOS-1D Xといった印象だ。Car Watchの編集長から「EOS-1D Xと同等のAF性能になったEOS 5D Mark IIIがモータースポーツ撮影に使えるか試して下さい」と依頼が来た。実売で30万円台のデジタル一眼レフが借りられる機会はなかなかないので承諾、ついでに「動きものということで、夜の空港と電車もヨロシク」という無茶ブリも一応トライしてみることにした。と言うことで、通常のレビューはデジカメWatchなどを見ていただくとして、モータースポーツ撮影という視点でEOS 5D Mark IIIを評価してみたい。

 ほかに借用した機材は、本体関係ではバッテリーグリップ「BG-E11」、レンズは筆者のサンニッパは旧製品なので現行品の「EF300mm F2.8L IS II USM」、広角系ズームも「EOS 20D」以来EF-SレンズとなっているからEOS 5D Mark IIIのキットレンズでもある「EF24-105mm F4L IS USM」と総額100万円を超える豪華な顔ぶれとなった。

 筆者は1981年に初めてサーキットへ観戦に行って以来、病み付きになり、翌年レース写真が撮りたくて一眼レフカメラを購入。以来30年ほどサーキットに通っている。人生何が起こるか分からないもので、お金を払って撮っていたのだが、Car Watchが創刊し、仕事が舞い込んでお金を貰って撮る側に変わった。今でもレースが好きだし、走っているマシンを撮るのが大好きだ。逆に言うとレースクイーンやピットに止まっているマシンにはあまり興味はない。

 使用しているデジタル一眼レフは、2004年のEOS 20DからEOS 40D、EOS 7Dと極めて普通に変遷。EOS 7D+40Dの組合せでレースの撮影をしているが、EOS 7Dの満足度は高いので、そろそろ後継機を発売してほしいと思っている。逆に言うとEOS 40DはAF、連写、解像度に不満があり、そろそろ引退させたいと感じている。

 EOS 7Dの後継機を待つか、安くなったEOS 7Dをもう1台買うかと考えていたが、AF性能と、連写性能が向上したため、価格的には厳しいが思い切ってEOS 5D Mark IIIという選択肢もありそうだ。

 まず外観を見てみよう。基本的なところは他のEOSシリーズと同じなのでキヤノンユーザーはすぐに使用できるだろう。EOS 7Dユーザーとして少し気になったのは、絞り込みボタンが正面から向かってマウントの左側になったこと、背面では再生時に画像を拡大するボタンが右上のAFフレームボタンではなく液晶横に拡大/縮小ボタンが設置されたこと、上面のモードダイヤルがセンターの解除ボタンを押しながら回す方式になったことくらいだった。

正面。レンズマウントの向かって左側に絞り込みボタン 背面。液晶左側は上からピクチャースタイルの設定などを行うボタン、撮った画像のお気に入りを付けるRATEボタン、拡大/縮小ボタン、再生ボタン、消去ボタン。電子ダイヤルの上は撮影機能のクイック設定ができるQボタン 上面。モードダイヤルはセンターの解除ボタンを押しながら回す方式
バッテリーグリップを装着 バッテリーグリップは縦位置での撮影がしやすくなる。本体で使用するLP-E6バッテリーを2個内蔵できる。1個でも乾電池でも動作する

 AFまわりを、EOS-1D X、EOS 5D Mark III、EOS 7Dのスペックと比較してみよう。

  EOS 5D Mark III EOS-1D X EOS 7D
センサーサイズ フルサイズ(36×24mm) フルサイズ(36×24mm) APS-C(22.3×14.9mm)
画素数 2230万画素 1810万画素 1800万画素
解像度 5760×3840 5184×3456 5184×3456
連写性能 6コマ/秒 12コマ/秒 8コマ/秒
通常感度 ISO100-25600 ISO100-51200 ISO100-6400
拡張時感度 ISO50-102400 ISO50-204800 ISO100-12800
AF測距点 61点 61点 19点
測距輝度範囲 EV -2〜18 EV -2〜18 EV -0.5〜18

 EOS 5D Mark IIIはモータースポーツの撮影用としては、連写性能が6コマ/秒とややもの足りないが、解像度は最も高くなっている。そのほかはEOS-1D Xと同等で期待できそうな感じだ。

 レースを撮りたくて写真の世界に入った筆者が、デジタル一眼レフに求めるものはAF性能だ。次に連写性能や解像度が来て、色だとかダイナミックレンジだとかはよいに越したことはないが優先順位は低い。

 気になるAF性能を確認しておこう。AFシステムは「61点高密度レティクルAF」を搭載している。クロス測距点は最大41点。そのうち中央5点はデュアルクロス。中央のF2.8対応センサーの合焦速度を向上させている。新たに搭載したF4対応センサーは従来のEOS-1D系のF2.8対応センサーと同等の精度になっている。全ラインセンサーで千鳥配列を採用し、被写体捕捉性能と合焦精度を向上させている。AIサーボAFもEOS-1D Xと同じアルゴリズムで予測精度を向上させている。

 分かったような分からないような仕様だが期待大だ。ちなみにEOS 7DはAFポイントは19点ですべてクロスセンサーを採用。中央には、斜め十字にF2.8光束対応、縦横十字にF5.6光束対応のデュアルクロスセンサーを搭載している。

 キヤノンから公開されているそれぞれのAFポイントの配置は図のとおり。重ね合わせると、上下左右はEOS 7Dの方が少し広めとなっている。

EOS 5D Mark IIIのAFポイント EOS 7DのAFポイント 赤がEOS 5D Mark III。重ね合わせると少しEOS 7Dの方が広い

 次にAFの設定を見てみよう。EOS 5D Mark IIIのAF設定画面はEOS 7DのAF設定の画面と比べるとかなり分かりやすく親切になった印象だ。Case1 汎用性の高い基本的な設定、Case2 障害物が入るときや、被写体がAFフレームから外れやすいとき……などと撮影シーンを想定した選択肢が用意されている。それぞれ細かな設定はカスタマイズも可能だ。

EOS 7DのAF設定画面。カスタムファンクションの中にひっそりとあり、詳しい説明もない EOS 5D Mark IIIではCaseごとに解説があり、分かりやすくなった

 例えばCase2の説明を見ると「狙っていた被写体がAFフレームから一瞬外れても、被写体にピントを合わせようとする設定です。被写体の手前に障害物が一瞬入り込むときや、被写体の動きが激しく、AFフレームから外れやすいシーンに効果的です。被写体がAFフレームから外れる時間が長いときは、被写体追従性を-2に設定すると、より効果的なことがあります。撮影シーンの例:テニス、水泳のバタフライ、フリースタイルスキー」。

 Case4の説明には「被写体の動く速さが瞬間的に大きく変化しても、その速度変化に追従してピントを合わせようとする設定です。被写体が急に動き出したり、急加速、急減速、急停止するシーンに効果的です。なお、速度変化の少ない被写体では、ピントが不安定になることがあります。速度変化にAFが追従できないときは、速度変化に対する追従性を+2に設定すると、より効果的なことがあります。撮影シーンの例:サッカー、モータースポーツ、バスケットボール」と書かれている。

Case2はテニスやバタフライ、フリースタイルスキーに最適 Case3のマークは自転車のロードレース。ほかにスキーの滑降などに最適 Case4のマークはサッカー。モータースポーツ、バスケットにも最適
Case5はフィギュアスケートに最適 Case6は新体操に最適

 実際には最適値を見つけるのは難しいと思うが、気になる方はあれこれ試してみるとよいだろう。例えば流し撮りの途中に金網や電柱が一瞬入るときはCase2がよさそうだ。しかし、同じサーキット内でも撮影場所によって条件は異なるので、撮影場所を変える度に設定を変えるのは少々面倒な気もする。

AF設定の他の画面 AFフレームの選択数が変えられる AFのモードの選択肢も限定することが可能

 今回、EOS 5D Mark IIIを試したのはマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われたSUPER GT第3戦だ。加えて出国2日前に貸出機が届いたので、その日の午後から近所の踏切で電車(名鉄)を撮影。夕方から中部国際空港に移動し夜の航空機の撮影。その足で名古屋、栄のオアシス21で高感度ノイズをチェックするための撮影。翌日は朝から名古屋港の名港トリトン、新幹線、名鉄などを撮影してみた。

 名古屋からマレーシアへは直行便がない。昨年はシンガポール経由、一昨年は香港経由だったので、今年は上海経由を選択。ストップオーバー(途中下車)をして上海で1泊。残念ながら上海では天候に恵まれなかったが、上海でもEOS 5D Mark IIIで撮影を行っている。

高感度ノイズ
 いろいろなシーンを撮ったので順序は前後するがそれぞれの画像を見ていこう。まずは静的な評価ということで高感度ノイズを確認してみたい。

 レース撮影ではISO12800とか25600といった高感度を使用することはない。ル・マン24時間レースとか、国内なら鈴鹿8耐、Pokka1000kmといった夜間走行がある場合は高感度撮影をする可能性はあるが、日中に行われるレースではISO800程度で充分だろう。しかし、レースしか撮らないという訳ではないので標準設定のISO100からISO25600までを掲載するのでご確認いただきたい。

 一般的にセンサーサイズが大きくなると1つ1つの素子が大きくなり、撮影時に取り込む光量が増え高感度ノイズが減る。コンパクトデジカメではISO800、ISO1600と感度を上げると、かなりノイジーが画像となるが、デジタル一眼レフカメラではそこそこの画質で撮ることができる。

 一般論としてはセンサーが大きければ大きいほどノイズが少ないのだが、実際にはそれほど単純ではない。画像処理エンジンの性能やら味つけにも差があり、ノイズは少ないけれど塗り絵みたいな絵になり被写体の細かな部分がつぶれてしまうデジカメもあるし、ノイズはそこそこあっても意外に解像感のある絵となるデジカメもある。細かくみると暗部のノイズは多いけれど、明るい部分は綺麗に撮れたりと、被写体によって得意不得意といった感じも見受けられる。

 筆者は定点観測的に名古屋、栄のオアシス21を被写体にISO感度の比較を行ってきた。今回は比較用にEOS 7Dも撮影を行っている。撮影条件は同じEF24-105mmF4L IS USMを使用し、EOS 7Dは広角端の24mm、EOS 5D Mark IIIはほぼ同じ画角となるように40mmくらい。絞りはF4固定。フォーカスはライブビューを使用しMF(マニュアルフォーカス)。手ブレ補正はOFF。ピクチャースタイルは忠実、長秒時露光のノイズリダクション、高感度撮影時のノイズリダクション、高輝度側・階調優先などは全てOFF。EOS 5D Mark IIIは標準設定のISO100からISO25600、EOS 7DはISO100からISO6400まで撮影した。

 どこまでが許容範囲かというのは個人個人で差があるので、実際の画像を見て判断していただきたい。EOS 5D Mark IIIの高感度ノイズは予想どおり少なく、ISO3200までは常用でも使えそうな感じだ。ISO6400でノイズが目立ち始めるが筆者の感覚では充分許容範囲。ISO12800になるとさすがにノイズは増え、ISO25600ではそれなりにノイジーな画質になるが、解像感のある絵作りで、塗りつぶしたような絵にはならない。

 比較用に撮影したEOS 7Dと比べると1段半くらいの差がある。EOS 7DのISO1600のノイズはEOS 5D Mark IIIのISO3200とISO6400の中間くらい、EOS 7DのISO6400はEOS 5D Mark IIIのISO12800とISO25600の中間くらいといったところで、さすがフルサイズと感じられた。

EOS 5D Mark III
(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます)

ISO100 ISO200 ISO400
ISO800 ISO1600 ISO3200
ISO6400 ISO12800 ISO25600


EOS 7D
(クリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

ISO100 ISO200 ISO400
ISO800 ISO1600
ISO3200 ISO6400

小絞りボケ、回折現象
 次も静的な評価で小絞りボケ、光の回折現象の確認をしてみたい。小絞りボケ、回折現象とは画素ピッチが小さくなると、撮影時に絞り込むことで画像がボケるという現象だ。細いスリットを波(光、音、水など)が通過すると直進せずに回り込む現象によるもので、高画素化が進んだ現在のデジカメでは避けることができない。詳しい原理を知りたい方は「小絞りボケ」「光の回折」などで検索していただきたい。

 実際のデジカメに関して言えば、同じ解像度(画素数)であればCCD、CMOSなどの撮像素子が小さいほど小絞りボケの影響は大きい。撮像素子のサイズが同じなら解像度が高い(画素数が多い)ほど小絞りボケの影響は大きくなる。

 センサーサイズの小さいコンパクトデジカメは絞り込むとボケやすく、EOS 7DなどAPS-Cサイズになると改善され、EOS 5Dなどフルサイズのセンサーになるとさらに改善され、結果として絞り込んでもボケなくなるということだ。

 EOS 7DはAPS-Cサイズの撮像素子を搭載し1800万画素、画素ピッチは4.2μm。EOS 5D MarkIIIはフルサイズの撮像素子を搭載し2230万画素、画素ピッチは6.25μmとなっている。画素ピッチで約1.5倍の差があり、絞り込んだときにボケにくくなっていることが期待できる。

 実際に撮影した画像を見ていただこう。同じレンズを使用しているが、EOS7DとEOS 5D Mark IIIの1.6倍の画角差はだいたい同じになるようにして撮影。元々の解像度が違うので、同じ画素数で切り出した絵の写っている範囲は異なっている。絞りをレンズの開放値のF4からF5.6、F8、F11、F16、F22まで変化させ、他の条件は同じにしてある。

被写体は名港トリトン。伊勢湾岸道の一部だ 7Dは60mm、5D Mark IIIは105mmにズームして撮影した

 サムネイルの画像は同じ場所を288×192ピクセルで無劣化に切り取ったもの。各画像をクリックすると元画像が開くようになっている。細かなところまで確認したい方は拡大した画像を見ていただきたい。

EOS 5D Mark III
(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます)

絞りF4 絞りF5.6
絞りF8 絞りF11
絞りF16 絞りF22

 左上の手すりと右下の橋脚の鋲を見てみよう。EOS 5D Mark IIIのほうはF4はボケているがF5.6にするとシャープになりF16まではシャープ、F22で少しボケる感じだ。元々の解像度の差もありF22でも鋲であることが分かる。予想どおり絞り込みにも強く、ここでもさすがフルサイズといった印象だ。

EOS 7D
(クリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

絞りF4 絞りF5.6
絞りF8 絞りF11
絞りF16 絞りF22

 EOS 7Dは絞りF4ではボケているがF5.6に絞るとグッとシャープになりF8が最もシャープ。F16からボケが目立ち初めF22はかなりボケている。F4でボケるのはレンズ性能によるもので小絞りボケとは関係ない。いわゆる1段絞るとシャープになるというやつだ。F22になると鋲であることは確認できず、グレーの模様に見えてしまう。

 実際の撮影では、被写界深度を深くしたい場合に差が出る。例えば新製品を撮影してポスターを作ろうといったケースでは、製品の前から後ろまで絞り込んでシャープに撮りたいと思ってもEOS 7DではF16まで絞ると全体的にボケてしまうが、EOS 5D Mark IIIなら大丈夫といった感じだ。風景写真などでも被写界深度を意識して撮影する場合は自由度が高くなる。

シャッター速度が1/15秒、NDフィルターを使用して絞りF13で撮影。フォトギャラリーに掲載した画像(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます)

 レースの撮影では絞り込みたいと思うことはないのだが、シャッター速度を遅くしたい=勝手に絞り込まれる、ことは多い。例えばこの写真はシャッター速度が1/15秒、減光用のNDフィルター(ND4)を使用して絞りF13となっている。NDフィルターを使用しなければF26で撮影することとなる。

 NDフィルターは小絞りボケを避ける意味合いと、絞りが上限に達しシャッター速度が遅くできなくなることを避けるために使用している。しかし、その効果はと聞かれると「気分かな」というのが本音だ。スローシャッターで撮影する場合、微細なボケよりも被写体ブレの方が、写真に与える影響がはるかに大きい。

 先ほどの写真の元画像と同じ場所で撮影したボツ画像を恥ずかしながら掲載しよう。筆者の撮影技術では被写体を写し止めることが重要で、小絞りボケを云々いうレベルには達していない。加えて、Car Watchで使用する最大サイズはフルHDサイズの1920×1080ピクセルなので、元画像が少しボケていてもリサイズすれば差が分からなくなる。

フォトギャラリー掲載画像の元画像。シャッター速度1/15秒ではそれなりにブレている(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます) 同じ場所で撮影したがボツにした画像。1/15秒では8割はボツなので小絞りボケを気にするレベルではない(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます)

 なので、実際には絞り値が上限に達しない限りNDフィルターを使用しなくても、それほど影響はないと思われるが、最初からボケていることを前提にF22、F32で撮影するのは気分がよくない。もしかしたら、撮った写真をポスターで使用したいと依頼が来るかもしれない(考えたことはないけど)。ということで「気分」と割り切りつつ、現状はすべてのレンズのNDフィルターを用意し適宜使用している。当然、EOS 5D Mark IIIを使用すればNDフィルターの使用頻度は減り、楽に撮影できるだろう。

 もう1枚フォトギャラリーに掲載した画像と元画像をお見せしよう。元画像はマシン全体がフレームに入っているが、撮影意図としては最初からリアタイヤから後ろはトリミングするつもりで撮影している。元画像の全体を見るとシャッター速度が1/160秒なのでスピード感が足りないはずだ。トリミングしたときにスピード感が出るという計算だがいかがだろう。

フォトギャラリーに掲載した画像。シャッター速度1/160秒、絞りF16 元画像。EOS 5D Mark IIIなのでNDフィルターなしで撮影できた(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます)

 この写真はEOS 5D Mark IIIを使用し、NDフィルターは装着せず絞りはF16。もしEOS 7Dだと元画像レベルでは小絞りボケで少しシャープさがなくなるかもしれない。おそらくNDフィルターを装着しF8にして撮影したと思うが、限られたセッション時間の中ではフィルターを付けたり外したりするのは面倒くさい。

 念のため書いておくが解像度が低ければ小絞りボケの心配がないから絞り込めると考えるのはチョット違う。例えば筆者が初めて買ったデジタル一眼レフEOS 20Dの画素数は820万画素。EOS 7Dと同じセンサーサイズで画素数が少ないので、小絞りボケだけ見れば絞り込んでも影響は出にくいが、元々の解像度がEOS 7Dより低いので絞り込む前から解像しないことになる。試したわけではないが、名港トリトンを先ほどと同じ撮影をすればF8でもF22でも橋脚の鋲は見えないだろう。

電車の撮影でAF性能を評価
 マレーシアへ出発する前に撮った電車の画像でAFを評価してみたい。筆者は動く被写体に対するAFの性能は、撮る人の腕も影響すると考えている。被写体がカメラに向かって真っ直ぐ近付いてくる場合はカメラの性能で決まる可能性が高いのだが、レーシングカーでも電車でも、ほとんどの場合レンズを振って被写体を追っかけているはずだ。特にピントが合いにくい至近距離になれば、カメラマンに対し真っ直ぐ近付くことはなく、斜めに横切るように通過していくケースが多い。

 当然狙った1点に完璧にAFポイントを追従させることは難しい。カメラ側から見ればファインダーの中で被写体が上下左右に動く状態でピントを合わせていることになる。その被写体のブレの大きさはカメラマンの腕の差だ。

 今回の電車の撮影は、撮影者(=筆者)の追従能力を排除するため三脚に固定して撮影を行った。AFポイントをセンターに固定。電車の正面がセンターのAFセンサーに重なったところからシャッターを切り始め、AFポイントから電車の正面が外れるところまでを連写した。

 具体的にはAFセンサーは電車正面の向かって左上から右下へ抜けて行くので、同じターゲットにフォーカスできない。通常の撮影者が被写体を追いかけていく撮影より条件的には厳しくなると思われる。ほかの設定はシャッター速度は被写体ブレを避けるため1/1250秒で固定、絞りはピンボケがハッキリ出やすくなるF2.8で固定した。AFポイントはセンターを使用し筆者が普段使用している領域拡大(上下左右のAFポイントで補助)に設定した。レンズはEF300mm F2.8L IS II USM。EOS 5D Mark IIIとEOS 7Dでは画角が異なるのでEOS 7DはEF200mm F2.8Lでも撮影を行っている。

 名鉄はさまざまな車両が走っている。車両によってピントの合いやすい、合いにくいという差があるので、今回は比較的似ている赤い車両を評価対象とした。また、撮影ポイントの前後の駅で停車するため明らかに車速の遅い普通列車も対象外とした。車速に関しては、車両ごとに差があるようで、同じカメラ本体でも連写枚数にバラツキがあった。

この2車両はピントが合いにくい気がする

 動的なAF性能の評価は難しい。今回は連写した画像をピントが合っていれば○、やや甘い場合は△、ピンボケの場合は×とした。かなり主観的。同じ画像でも人によってはピンボケと判断したり、OKと判断したり基準は違うと思われる。さらに言えば、筆者自身がもう1度見直すと評価が異なる画像もあると思われる。掲載した画像はすべて元画像を見ることができるので、自分で判断したい方は1枚1枚チェックしていただきたい。

EOS 5D Mark III+EF300mm F2.8L IS II USM
(クリックすると5760×3840ピクセルの画像が開きます)

EOS 7D+EF300mm F2.8L IS II USM
(クリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

EOS 7D+EF200mmF2.8L
(クリックすると5184×3456ピクセルの画像が開きます)

 このようにアバウトな評価方法だが、AF性能の差はハッキリ現れた。EOS 5D Mark III+EF300mm F2.8L IS II USMは15枚連写して9枚が○、3枚が△、3枚が×となった。画像を掲載していない車両では18枚中13枚が○という結果もありかなり優秀と言えよう。

 次は同じレンズでボディーをEOS 7Dに交換しEOS 7D+EF300mm F2.8L IS II USMの組み合わせで同じように撮影を行った。焦点距離が1.6倍、480mm相当となりファインダーで見る景色が全然違う。撮影中のファインダーを見ても、明らかにフォーカスが合ってないことが分かるほどだった。結果は18枚中1枚が○、12枚が△、5枚が×となった。こちらも掲載していない車両では20枚中6枚が○、5枚が△という結果もあり最もAF性能が低い結果となった。

 最後はEOS 7D+EF200mmF2.8Lの組み合わせ。焦点距離は320mm相当となり撮影条件としてはEOS 5D Mark IIIとかなり近い条件となる。結果は23枚中7枚が○、8枚が△、8枚が×となった。EOS 5D Mark IIIよりは劣るがEOS 7D+EF300mm F2.8L IS II USMの組み合わせよりはかなりよい結果だ。

EOS 5D Mark III:○○○○△○×○○○○△△××
EOS 7D+EF300mm:△○△×△△×××△△△△△△△△×
EOS 7D+EF200mm:○○○△○△×○△××△○△××△○××△×△

 この結果をどう評価するも考え方によって別れてくる。例えば○は1枚、△は0.5枚と数えてAF合焦率という計算をすると以下のようになる。

EOS 5D Mark III:9+1.5=10.5 10.5/15=70%
EOS 7D+EF300mm:1+6=7 7/18=39%
EOS 7D+EF200mm:7+4=11 11/23=48%

 Web掲載のため小さなサイズで使用するから○△はすべてOKという基準なら

EOS 5D Mark III:9+3=12 12/15=80%
EOS 7D+EF300mm:1+12=13 13/18=72%
EOS 7D+EF200mm:7+8=15 15/23=65%

 率じゃなく使える画像の枚数が重要という考え方もある。筆者はこれに近い考え方で、一定水準以上の画像が多い方が仕事として撮る場合は価値が高いと思っている。○△をOKとすれば連写性能の高いEOS 7Dの方が高いスコアとなる。

EOS 5D Mark III:9+3=12
EOS 7D+EF300mm:1+12=13
EOS 7D+EF200mm:7+8=15

 あくまでAF性能の差を評価するための撮影と割り切り、条件の厳しい至近距離まで撮っているが、連写後半の画像は実用的とは言えない。評価の基準は個人個人で異なると思うが、筆者としてはEOS 5D Mark IIIのAF性能はかなり高いという感触となった。

 さて、次回後編はマレーシア、セパン・インターナショナル・サーキットにEOS 5D Mark IIIを持ち込みSUPER GTの撮影だ。玉砕した夜の航空機撮影、上海のスナップ、レースクイーンの元画像なども掲載予定なのでしばらくお待ちいただきたい。

(奥川浩彦)
2012年 7月 2日