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ホンダ、「シビックWTCC」の参戦記者会見を鈴鹿サーキットで開催

地元レースで優勝を目指すWTCC(世界ツーリングカー選手権)日本ラウンドが開幕

鈴鹿サーキットで開催された「Honda Civic WTCC参戦記者会見」
2013年9月20日開催

 FIA WTCC(FIA 世界ツーリングカー選手権)は、FIAの冠がかぶせられた世界規模の自動車レースの1つ(ほかにはF1、WRC、WECなどがある)で、連続している12カ月間で2500台以上生産された市販車をベースにするというレギュレーションを採用している。普段街中を走っているツーリングカーによる選手権となっており、一般の自動車ユーザーにも親しみやすいレースとなっているのが特徴になる。そのWTCCの日本ラウンドが、9月21日~22日の2日間に渡って三重県鈴鹿市にある鈴鹿サーキットで開催される。

 このWTCCにワークス体制で参加しているのが、日本の自動車メーカーである本田技研工業だ。ホンダは2台のワークスチーム(Honda Team JAS)のほか、プライベートチームのZengo Motorsportの1台を加えた3台体制でシーズンに臨んでおり、米国カリフォルニア州ソノマで行われた前戦では、1991年マクラーレン・ホンダ以来となるマニファクチャラーズタイトルを獲得している。

 日本ラウンドでは、ワークスチームに日本のトップドライバーの1人である伊沢拓也選手を加えた4台体制で、ホンダが所有するサーキットであり母国開催でもある鈴鹿サーキットで必勝を期す。

 開幕前日となる9月20日には、30分のテストセッションが行われたほか、夕方にはホンダの主催する記者会見が行われ、地元レースに臨む意気込みを各ドライバーなどが語ってくれた。

本田技術研究所 Civic WTCC開発プロジェクトリーダー 堀内大資氏
ティアゴ・モンテイロ選手
ガブリエーレ・タルクィーニ選手
伊沢拓也選手
ノルベルト・ミケリス選手

予選で前のグリッドを獲得すれば、優勝は十分可能だとホンダドライバー

 今回ホンダから参戦するのは、Honda Team JASからレギュラードライバーのガブリエーレ・タルクィーニ選手、ティアゴ・モンテイロ選手の2人と、スポット参戦をする日本の伊沢拓也選手、さらにプライベートチームのZengo Motorsportからノルベルト・ミケルズ選手という4台体制となる。車両は、ホンダが欧州地域で販売している5ドアのシビックをベースに開発されたシビックWTCCで、本田技術研究所で開発した1.6リッター直列4気筒直噴ターボエンジンが搭載された車となる。シビックの5ドアは日本では販売されていないが、日本で販売されているフィットに近い大きさの車と考えればいいだろう。

 今シーズンは、ホンダチームはタルクィーニ選手が2勝をあげており、2位のロシアのラーダに大差を付けてマニファクチャラーズチャンピオンシップを獲得。ある意味ホンダにとっては凱旋レースということになる。ただし、ドライバーズチャンピオンシップでは、1位を走るイバン・ミューラー選手(プライベートチームのシボレー クルーズ)が独走する状態で、ホンダにとっては地元である鈴鹿サーキットでチャンピオン決定を阻止するためにも、日曜日に2回行われるレースで勝ちを狙いたいところだ。そうした中で行われた記者会見では、各ドライバーが鈴鹿戦に向けた意気込みなどを語ってくれた。

司会者:鈴鹿でのレースに向けた意気込みを各ドライバーからお願いします。
ティアゴ・モンテイロ選手:今シーズンは新しい取り組みで、非常に楽しい。ちょうど1年前のこのレースでデビューすることができて、それから1年様々なことを勉強しながら戦ってきた。どのレースの週末でも新しい発見があり、マシンのセットアップなど煮詰めて来ることができ、ガブリエーレが2回勝つことができるなどそれなりの結果も残しており、我々のパフォーマンスには満足している。ただ、ライバルと比較すると、まだ差がある部分があるのも事実で、今後も進化し続けていく必要があると思っている。

ガブリエーレ・タルクィーニ選手:楽しいシーズンを過ごせている。これまで2回の優勝を果たしており、そのうち1つはホンダ勢で表彰台を独占することができた。ただ、そのおかげでハンデウェイトが増えてしまって、その後の戦いはやや苦しくなったけど、パフォーマンスのバランスそのものはわるくないと思っている。ただ、いくつかアクシデントで順位を失ったりしているのがちょっと残念だった。いい感じで進化してきているのに、来年はエンジンも車体も完全に新しいモノになってしまうのがちょっと残念だ。

ノルベルト・ミケルズ選手:どのドライバーにとってもそうだと思うけど、ホンダファミリーになるのが夢だったので、それが叶って嬉しい。当初の予想に比べると全体的にはわるくない成績だと思うけど、私個人としては残念ながらまだ勝てていないので、今シーズンの残りのレースで勝っていきたいと思っているし、この勢いを2014年につなげていきたいね。

伊沢拓也選手:僕はFF車での経験はあまりなくて、S耐と十勝24時間で乗った程度。そのイメージで最初は捉えていたのだが、昨年の最初のテストで実際に乗ってみるとそうした車とはまったく違っていた。ただ、先日ツインリンクもてぎで行ったテストでは、だいぶ乗りやすい車に進化していて自分としては手応えを感じていた。ただ、今日のテスト(筆者注:伊沢選手は28台中17位で、トップより0.882秒差)で乗ってみたら、テストの時とは違う車の問題点などがまた見えてきた。そうしたことを明日修正して、他のドライバーと戦っていきたいと考えている。

堀内大資氏(ホンダ シビックWTCC開発プロジェクトリーダー):去年の鈴鹿では、まずは走るということを目標にしているような段階で、走りながら改善点を探しているような状態だった。それが1年経って、ドライバー達が言ってくれたように、ようやく安心してレースを戦える状況になった。WTCCでは、ホロモゲーションをとった車両やエンジンはシーズン途中で変えることができず、どちらかと言えばソフト面での改良を加えてきて、ようやく他のコンペティターと互角に戦えるレベルになってきた。

 来年には車体もエンジンも大きくレギュレーションが変わる予定。エンジンは空気流入制限器(エアリストリクター)の径が33から36に緩和され、それにより70PS程度のパワーアップが実現される。エンジン設計の観点からは、それに耐えうる設計にしておく必要がある。今年1年戦ってきていろいろ経験した反省点があるので、そこを来年のエンジンには反映していきたい。今年はノッキングとの戦いという中でギリギリのところでエンジンを壊さないようにとやってきたので、来年に向けては燃焼の改善を重点的にやっていきたい。車体の方も大きな変更が入るが、最終的なレギュレーションの決定が遅れたので、現在イタリアのTeam JASの方で正に昼夜を徹してデザインしている。レギュレーションが変更されたことにより、かなりアグレッシブなデザインの格好いい車になると思うので、期待してください。

司会:鈴鹿のレースに向けた意気込みを一言ずつお願いします。

モンテイロ選手:ホンダのホームレースなので、ホンダファミリーのためにも頑張っていい結果を残したい。表彰台を、勝利を目指して頑張って、来ていただくファンのためにもいいショーを見せたい。

タルクィーニ選手:ホンダのホームレースだし、正直プレッシャーもあるけど、表彰台獲得をターゲットに頑張っていきたい。日本のスタッフも、イタリアから来ているスタッフも、去年のティアゴのデータを元に頑張ってセットアップしている。このサーキットは追い抜きが非常に難しいので、予選で上位にくることが重要。予選で前の方にいられれば、優勝することも不可能ではない。

伊沢選手:本田技研工業、本田技術研究所の期待をひしひしと感じている。今日の結果(テストセッションで17位)のままでは終われないので、できるだけのことをやって、サーキットにきてくれる日本のファンの皆さんに面白いレースを見せたい。

ミケルズ選手:私個人としてはホームレースのハンガリーでよい結果(筆者注:2位表彰台)を獲得できてハッピーだったけど、それと同じようにホンダのホームレースになるので、表彰台を目指して頑張っていきたい。今日の結果(筆者注:テストセッションで19位)を見る限りは、改善する部分は多いので、今晩よく結果を分析して明日はもう少し改善してきたい。個人的にはまだサーキットのリズムみたいなモノがつかめていないんだ。

堀内氏:伊沢選手が加わったことにより、4台と大所帯、大軍団になった。その大軍団4台そろって上位を争っていきたい。

報道関係者からの質問:タルキーニ選手、モンテイロ選手にお伺いしますが、あまり優勝を目指すといった言葉が聞けなかったように思えますが、この鈴鹿での優勝は難しいのでしょうか?

タルクィーニ選手:優勝できるよ、予選で上位にくれば勝てると思う。シボレー勢との差は僅差だし、車には勝つポテンシャルがある。2回レースがあるから、どちらかでは勝ちたいと思っている。

モンテイロ選手:私は勝てると言ったと思うけど(笑)。どのレースでも優勝に近いところで戦えているので、レース1か、レース2かは分からないけど優勝したいと思う。

堀内氏:我々はいつでも優勝を目指して戦っています。

報道関係者からの質問:2014年には車体もエンジンも、レギュレーションが大きく変わります。そうした中で、2014年の強力なライバルになると目されているシトロエンはすでに2014年に向けたテストを開始していますが、ホンダにとってはどのように考えていられますか?

堀内氏:確かにシトロエンは、長い間GREのエンジン開発、さらにはWRC参戦を通じてツーリングカーの開発に長けており、強力なライバルだと考えている。だが、我々にも1年間やってきた積み重ねがある。先ほど70PS上がると言ったが、それは自然な上がり分で、今年のエンジンを見直す事によってもっとパワーをあげていきたいと考えている。我々も充分ポテンシャルのあるレーシングカーが作れると思うので、期待していて欲しい。

報道関係者からの質問:1年前に鈴鹿でシビックWTCCをデビューさせた時と、今年すでにテストセッションで走らせてみての違いを教えて欲しい

モンテイロ選手:今年の車と去年の車はまったくと言っていいほど違う。車も新しいトラックに行くたびに進化しており、コントロールが楽になったことが大きい。それがライバル達と比較していいレベルになっているといいなと思っている。

堀内氏:車もそうだが、チームとしても進化できている。昨年の鈴鹿ではデビュー戦ということもあり、車もそうだったが、チームのオペレーションも手探りだった。だが、今年はすでに次に何をやったらいいかということが分かっているという意味で、余裕がある状態になっている。とはいえ、まだまだ改善していく部分はあるので、もっとチームとして発展させていきたい。

報道関係者からの質問:今年初めてWTCCを走る伊沢選手にレギュラーの3人からアドバイスをお願いします。

モンテイロ選手:正直あまり言いたくないよね(笑)。冗談はともかく、彼には経験もあるし、速さもあるので心配する必要はないと思うよ。何か困ったことがあったら聞いて欲しいな、何でも答えるよ(笑)。

タルクィーニ選手:ティアゴが言ったように、彼は速くて経験もあるので、何も心配する必要はないと思う。ただ、車は彼が日本で走らせている車とはだいぶ違うと思う。特にセッティングが特殊で、フロントタイヤのトラクションをコントロールすることが複雑で難しいと思う。2日間でそれを知るのは難しいことだとは思うけど、チーム内でそうした情報を共有してうまくやりたいと思う。

ミケルズ選手:2人の経験豊富なドライバーの後に、新しいことを言うのは難しいのであまり言いたくないな(笑)。でも伊沢選手は素晴らしいドライバーだからリラックスして走れば大丈夫だと思う。ただWTCCは非常にハイレベルな選手権で、小さいことが大きな差になる。そこを注意していけば、レースを楽しめると思うよ。

伊沢選手:いいアドバイスを頂いたので、そのアドバイスを3人に後で後悔してもらえるように頑張りたいです(笑)。

(笠原一輝)