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9月12日~13日開催の「WTCC 日本ラウンド」のレース展望を参加選手が語る

「WTCCで一番オーバーテイクができるサーキットで、エキサイティングなレースになる」とトム・コロネル選手

2015年9月12日~13日レース開催

浄土宗大本山 増上寺大殿に集まったWTCC参戦ドライバー。左からホセ・マリア・ロペス選手、トム・コロネル選手、ガブリエーレ・タルクィーニ選手、ティアゴ・モンテイロ選手、ニコラス・ラピエール選手が、9月12日~13日のWTCC 日本ラウンドについての展望を語ってくれた
当日の天候はかなりわるく、東京タワーの上の方は雲に覆われている状態

「WTCC(世界ツーリングカー選手権)JVCKENWOOD 日本ラウンド」が、9月12日~13日の2日間に渡り、ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)のロードコースで開催される。WTCCは、量産車のツーリングカーをベースに戦われる唯一の世界選手権。日本の本田技研工業、フランスのシトロエン、ロシアのラーダという自動車3メーカーがワークス参戦しており、普段街中を走っている量産車がぶつかり合いながら激しい競争を展開するレースとして、通なモータースポーツファンの間で人気のレースとなっている。

 そのWTCCの日本ラウンドに先だち、9月10日に各メーカーのドライバーが東京港区芝にある浄土宗大本山 増上寺に集合し、プロモーションを兼ねたお参りと記念撮影を行うとともに、合同インタビューを実施。レースへの意気込みを語ってくれた。

 その中で、日本に5年間在住し、F3とフォーミュラ・ニッポン(現在のスーパーフォーミュラの前身)でチャンピオンになったほど日本と関わりの深いトム・コロネル選手(ロアル・モータースポーツ/4号車 シボレー RML クルーズ TC1)は「ツインリンクもてぎは1コーナー、ダウンヒル終わりの90度コーナーなど抜きどころが沢山ある。今年WTCCが開催されているレースの中で一番追い越しが多いレースになるのではないだろうか。決して退屈させることはない」と述べ、ツインリンクもてぎのコースがもっともオーバーテイクの多いレースになるとの見通しを明らかにした。

“激アツ”のレースが展開されているWTCC

2014年のWTCC 日本ラウンドで走行したホンダ シビック WTCC

 WTCCの最大の特徴は、街中を走っている量産車をベースにレーシングカーが作られていることだ。例えばホンダなら「シビック Type-R(欧州版)」、シトロエンなら「Cエリーゼ」、ラーダであれば「ベスタ」という車両がベースになっており、そこに各社がレーシングエンジンとして開発した1600ccの直噴ターボエンジンを搭載。まさに羊の皮を被った狼となっているのだ。さらに、2014年に導入された新規定(TC1規定)では新しいエアロキットが導入され、よりレーシングカーらしい外観へと変更されている。

 今シーズンはそうしたTC1規定の2年目にあたる。今シーズンの展開をいえば、基本的には昨年と同じくシトロエンワークスが走らせる「シトロエン Cエリーゼ WTCC」の4台が非常に強く、今回の日本ラウンドの前に行われたポルトガルラウンドまでの16レース(WTCCは1ラウンド2レース制)のうち、シトロエン勢だけで14勝を挙げており、依然として戦力的には圧倒的という形になっている。2014年のチャンピオンであるホセ・マリア・ロペス選手、2008年、2010年、2011年、2013年のWTCCチャンピオンであるイヴァン・ミューラー選手、そして言わずと知れたWRC(世界ラリー選手権)9連覇(2004年~2012年)で通算78勝を記録したフランスの英雄・セバスチャン・ローブ選手、さらには中国人初のWTCCウィナーになったマ・キンファ選手という4人のドライバーがそれぞれ勝利を分け合っており、今年もロペス選手が選手権をリードし、以下ミューラー選手、ローブ選手、キンファ選手が続く展開になっている。

2014年のWTCC 日本ラウンドで走行したシトロエン Cエリーゼ WTCC

 これに対抗するホンダ陣営は、ワークスチームとなるカストロールHondaワールドツーリングカー・チームのガブリエーレ・タルクィーニ選手とティアゴ・モンテイロ選手、サテライトチームとなるゼングーモータースポーツのノルベルト・ミケリス選手、さらにはHondaレーシングチーム・スウェーデンのリカルド・リデル選手の4台で参戦しており、これまでにモンテイロ選手と、ミケルズ選手がレース2でそれぞれ1勝を挙げている。ホンダが走らせるのは、欧州で販売されているシビック Type-R(5ドア)がベースの「ホンダ シビック WTCC」で、後半に向けてシトロエンとの差を縮めつつある。

 ラーダはロシアの自動車メーカーで、2008年からWTCCに参戦を続けている。ドライバーは2013年のWTCCチャンピオンであるロブ・ハフ選手に加えて、今回からニコラ・ラピエール選手が加わることになった。ラピエール選手は、2014年までWEC(世界耐久選手権)でトヨタ自動車の一員として走っており、2014年の途中から家族の事情ということでトヨタチームを離脱。今回新たにWTCCのラーダチームに加入し、2台目の「ラーダ ベスタ WTCC」を走らせることになる。

 また、プライベーターチームに提供されているTC1車両は、以前はシボレーのワークスチームを運営していたRMLが作成した「シボレー RML クルーズ TC1」。ワークス車両でないとはいえ戦闘力は高く、レース2では何度か2位になり、2大ワークス勢に何かがあれば勝ってもおかしくない存在だ。主要なチームは、イタリアの名門ロアル・モータースポーツで、トム・チルトン選手と日本にも非常に馴染みが深いトム・コロネル選手が走らせている。

 今年のWTCC日本ラウンドは、開催地を2014年までの鈴鹿サーキット(全長5821m)からツインリンクもてぎ(全長4801m)に変更している。レースのフォーマットとしては、午後に13周のレースが2つということになっており、特にレース2では予選10位までがリバースグリッドになる展開になるため、よりエキサイティングなレースが期待できそうだ。

2人のホンダドライバーはホームレースでの優勝を誓う

増上寺の大殿を前にしてドライバー5名による記念撮影。左からニコラ・ラピエール選手、トム・コロネル選手、ガブリエーレ・タルクィーニ選手、ティアゴ・モンテイロ選手、ホセ・マリア・ロペス選手

 そうしたWTCCの開催を記念して、9月10日に参戦ドライバーのティアゴ・モンテイロ選手、トム・コロネル選手、ガブリエーレ・タルクィーニ選手、ホセ・マリア・ロペス選手、ニコラ・ラピエール選手が、増上寺でお参りとともに記念撮影を行った。

 当日は台風18号の影響による雨で、撮影時にも強い雨が降っている状態だったが、ドライバー達は傘なしでの撮影に応じるなど、プロとしての仕事をきっちりこなしていた。また、ポイントリーダーのロペス選手は、勝利を祈願してか、増上寺にお祈りを捧げていた姿が印象的だった。

ドライバー達も自分のブログやTwitterなどに投稿するため写真などを撮影していた。トム・コロネル選手はビデオ自撮り
大殿でモンテイロ選手がスマホによる自撮り。後にモンテイロ選手のTwitter(https://twitter.com/Tiagosworld18/status/641897281730543616)に投稿されていた

 撮影後には各選手を囲んでのインタビューが行われた。以下、各選手のコメント。

ホセ・マリア・ロペス選手
2014年にチャンピオンを決めることができた日本にまた来ることができて嬉しい。非常にいいところだし。もちろん今年は残り4ラウンドもあり、昨年とは違う状況になっていて、まだまだかなりハードな選手権争いをしていかなければならない。日本は、いつでも皆さんが親切だし、ここに来ることはとても嬉しいことだ。

ガブリエーレ・タルクィーニ選手
2014年のレース2で勝てたことは、私にとって非常に重要な意味があった。もちろんレース2はレース1よりは重要ではないという意見があることは分かっているけれど、それでもハッピーだよ。このレースは私にとって非常に重要な週末だ。なぜなら今年はイタリアのレースがないので、このレースが私にとってのホームレースだからだ。なんとしてもこのレースに全力を注ぎ、トップで予選を通過して、レース1で勝ちたいね。

トム・コロネル選手
全日本F3選手権でチャンピオンを獲り、フォーミュラ・ニッポンでもチャンピオンを獲得できた。そしてSUPER GTではもてぎで勝った経験もあるし、F3のレースでも勝った経験がある。ホンダは非常に強力なブランドであり、私ももてぎのコレクションホールを訪問することをとても楽しみにしている。日本と私は、モータースポーツへの情熱という点で共通点が多いと考えているんだ。

ニコラス・ラピエール選手
今ここにいれることはとてもハッピーだ。今回ラーダからチャンスをもらってポールリカールで1回テストしたのだが、テストはうまくいった。それで「残りの4ラウンド、プレッシャーなくレースできるしどうか」とオファーをもらったので、それを受けることにしたんだ。WTCCは競争も激しいので、これから色々なことに慣れていかなければいけないと思っている。そのスタートを日本で切れるというのは、私にとっても大変嬉しいことだし特別なことだ。言うまでもなくWECではトヨタチームで走っていたので、日本のファンが特別なのはよく分かっているしね。

ティアゴ・モンテイロ選手
難しいシーズンだと言う人もいるみたいだけど、僕はそうは思わない。前の2ラウンドでアクシデントが発生するまでは、チャンピオンシップで3位に近づいた状態だった。その後うまくポイントが取れず後退してしまったのは残念だったけれど、シーズン全体としては満足しているし、徐々に前との差が縮まってきていると考えている。この前のラウンド(筆者注:ポルトガルラウンドのこと、モンテイロ選手はポルトガル人)はリアルなホームレースだったけど、ここは2つ目のホームレースで、そこにホンダドライバーとして来られるのは嬉しいことだ。ツインリンクもてぎはこれまでのサーキットとはかなり違うし、他のドライバーともかなりいいレースが展開できるんじゃないかな。この夏に行ったテストではかなりいいデータが取れているし、ぜひともいい結果を出したい。

撮影終了後、ロペス選手は何かを祈願。やっぱり2年連続チャンピオンですかね?
かなり強い雨のなかでの撮影だったが、選手達は傘もささずに東京タワーと増上寺の大殿をバックに記念撮影。プロのドライバーはさすがだと感じずにはいられないシーン

レースの見どころは1コーナー、ダウンヒル終わりの90度コーナー

 今回のレースについて、コロネル選手は「1コーナーと、ダウンヒルストレート終わりの90度コーナー、この2つがパッシングポイントだと思う。このサーキットのレイアウトは、WTCCのサーキットの中でもっともオーバーテイクが可能なサーキットだと思う。決して退屈なレースになるなんてことはないと思う。特にレース2は面白いことになるだろう」と語ってくれた。また、上位10台が逆にスタートするレース2(レース2では10位まで予選のリバースグリッドになる)では、かなりエキサイティングなレースが展開されるのではないかと述べている。

 なお、WTCC日本ラウンドのチケットは現在もツインリンクもてぎのWebサイト(http://www.twinring.jp/wtcc_m/ticket/index.html)やコンビニエンスストアのチケットシステムなどで販売されている。自由券で大人5000円、高校生以上の学生は2500円(要学生証)、中学生以下は無料となっている。このほかに指定席券、駐車券などが別途必要になる場合があるので、詳しくはツインリンクもてぎのWebサイトで確認していただきたい。

 また、Car WatchではWTCCに関するフォトコンテストを今年も開催する。概要は別記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150825_717603.html)で紹介したとおりで、入賞者には豪華賞品も用意されているので、WTCCレースに観戦に出かける際にはスマートフォンやデジタルカメラを忘れずにお持ちいただきたい。

(笠原一輝)