フォルクスワーゲン「up!」は「ビートル、ゴルフのDNAを受け継いでいる」
デザイン責任者ワルター・ダシルバがup!をプレゼン

ダシルバ氏(右)と庄司社長

2012年9月18日開催



 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは9月18日、同日発表した新型スモールカー「up!」(アップ!)の発表会を都内で開催。8月に同社社長に就任した庄司茂氏が初めて公式の場に登場したほか、ドイツ本社からフォルクスワーゲン グループのデザイン責任者であるワルター・ダシルバ氏が来日し、up!のコンセプトなどを説明した。

 up!のスペックやグレード構成などは関連記事を参照されたい。

ダシルバ氏

説明を必要としないクルマ
 登場するなり壇上の机でup!のドローイングを描くというパフォーマンスを見せたダシルバ氏は、up!のコンセプトを「非常にシンプルなクルマ。説明を必要としないクルマ」と説明した。

 「シンプル」を中心に据えた理由は「今、インターネットがモビリティの一部に取って代わっている。ネットでは自由にシンプルに、サーフィンできる。モビリティということ自体の意味が変わってきている」からと言う。

 そんなクルマを作るためのアプローチは「カーデザインと言うよりもプロダクトデザイン的」で、目指したところは「合理的でシンプル。スモールカーといっても、大きなクルマを小さくしたものではいけない。up!は小さな車であり、まさにそのために特別なクルマ。すでに見たことのあるフォルムのミニチュア化ではなく、オリジナルな存在感を持つことが必要」。

ダシルバ氏は登場するなりup!のドローイングを披露した
move up!2ドアhigh up!4ドア

 またダシルバ氏は、フォルクスワーゲンの屋台骨であり、「モビリティの民主化に貢献したクルマ」「特定のステータスに結びつかない、時代を超越したタイムレスなクルマ」「合理性と個性が非常にうまく融合している、よいデザインの例」と言う初代「ビートル」と「ゴルフ」を引き合いに出し、up!はこの2台のDNAを受け継いでいると述べ、具体的にはビートルからフレンドリーで親しみやすいフロントマスク、ゴルフから頑丈なCピラーを継承しているとした。

 「このクルマには大きな未来があると思う。このフォルム、パッケージングに非常に大きな可能性があり、いつかはアイコンになり、時代とともに記憶されるクルマになる可能性も秘めている。ステータスシンボルや流行にとらわれないクルマになるはずだ」と、up!がビートル、ゴルフのような自動車史上のマイルストーンになるクルマを目指してデザインされたことをアピールした。

庄司社長

ちょうどいいプロダクト
 庄司社長はup!を「これからの時代にマッチしたスモールカー」「新興国に向けても生産を拡大していく可能性を秘めた、フォルクスワーゲンのグローバル戦略車」と紹介。世界市場ではスモールカーはこれからもっとも成長するセグメントと予想されており、日本でも「最大の市場に成長している。私たちはup!をこの国産競合車がひしめき合うスモールカーマーケットに投入し、真っ向勝負を挑むことになる」とした。

 また、up!を「クラスレスなクルマ」「初代ビートルやゴルフのように、世界中の方々に長きにわたって愛されるクルマになるであろうと予感している」と、ダシルバ氏と同じ意見を述べた。

 ターゲットユーザーは「感性の鋭い若い男女から、働き盛りのDINKSや子育てを終えてダウンサイジングしたいシニアまで」。「up!はクルマに機能性やエコだけでなく、自分のライフスタイルの表現や運転の楽しさを求める層に、ちょうどいいプロダクトとして、また安心で頼れる相棒として、とてもアピールするのではないか」と期待を述べた。

up!は全車3気筒DOHC1リッターエンジン+5速シングルクラッチATを搭載する
high up!はダッシュボードが外板色とコーディネートされる
4ドアのリアウインドーは外側に開く

 

97万円から乗れる専用購入プランも用意
 フォルクスワーゲン グループ ジャパンの正本嘉宏マーケティング本部長は、up!の価格について「国産スモールカーに正面から対向できる、競争力のある価格に設定した」と述べた。

 up!には上から「high up!4ドア」「move up!4ドア」「move up!2ドア」のグレードが設定され、価格はそれぞれ183万円、168万円、149万円となっている。同社はこのうちmove up!4ドアが販売の70%を、high up!4ドアが25%を占めると予想し、どちらも100万円台後半に設定。フィット、ヴィッツ、あるいは軽自動車といった国産車の上級グレードや、フィット ハイブリッド、アクアのようなハイブリッド車とも競合する価格帯とした。

消費者マインドの変化にともない、クルマもCセグメント以下へのダウンサイジングが進む全車、低速自動ブレーキ「シティエマージェンシーブレーキ」を装備する
全長はポロより短いが、ホイールベースは同等エンジンの単体重量は69kgと軽量コンパクトトランスミッションも30kgと軽量
3つのグレードを用意する。high up!はアルミホイールやフォグランプ、リアパークディスタンスコントロールなどを装備し、オプションでパノラマスライディングルーフが用意される
カラーバリエーション

 また、up!には購入プラン「GET up!」(ゲット アップ!)が用意された。GET up!には「GET up! Smile」「GET up! Easy」「GET up! Anshin」の3つのプランが用意されている。

 Smile(スマイル)は「頭金97万円でup!に乗れる」をキャッチフレーズとする残価設定型ローン。move up!なら、頭金97万円を払えば月々の支払いなしで3年間up!に乗れる。3年後には据置元金52万円と据置手数料6万2244円を支払う必要があるが、車両を返却すれば車両買取保証により据置元金を精算できる。

 Easy(イージー)も残価設定型ローンだが、こちらは3800円からの毎月の返済を伴うタイプとなる。こちらも車両買取保証付きだ。

 Anshin(アンシン)は残価設定型ローンに、3年間または5年間の無償メンテナンスプログラムを加えたプラン。

 これらにより、初めて輸入車を購入する人や、輸入車のメンテナンス費用を不安に思う層を取り込む。

up!と競合車の価格帯
カーナビのほか、アパレルなどのグッズも用意される

(編集部:田中真一郎)
2012年 9月 19日