GMジャパン、エントリースポーツセダン「ATS」を国内導入
デトロイト生まれ、ニュルブルクリンク育ちでハイテク満載

ATSと石井社長(左)

2013年3月から順次発売
439万円~499万円



 ゼネラルモーターズ・ジャパンはキャディラック「ATS」を、2013年3月から順次発売する。「ラグジュアリー」と「プレミアム」の2グレードが用意され、ラグジュアリーが439万円で2013年3月に、プレミアムが499万円で2013年5月に発売される。左ステアリング仕様のみとなる。

 同社は11月15日、都内で発表会を開催した。

ニュルブルクリンクで開発、欧州車に挑戦
 キャディラックブランドのエントリーモデルとなるスポーツ・サルーン。同ブランドでは初めてのDセグメント車で、BMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツ Cクラスなどをライバルとする。

 ライバル同様にFRレイアウトを採用し、パワートレーンは直列4気筒DOHC 2リッター直噴ツインスクロールターボ+6速ATのみ。無段階可変バルブタイミング機構やフリクションの低減、ZFステアリングシステムによる電動パワーステアリングなどによる燃費の低減も図られている。

 車両重量は1580kgに抑えられており、エンジンフードやフロントサブフレームとストラットマウント、サスペンションアーム、バンパービームにアルミを採用したほか、車内の3つのマイクで検知したノイズを、逆位相の音を流すことで消すボーズのアクティブ・ノイズ・キャンセレーションを採用して、吸音材や遮音材を削減している。

 日本のモード燃費は公表されていないが、欧州測定条件では市街地で約8.6km/L、郊外で約15.9km/L、総合で約12.2km/Lとしている。

ドアハンドルにはイルミネーションが組み込まれているフロントブレーキはブレンボ製。展示車の装着タイヤはポテンザRE050A燃料はハイオク
こちらはキャディラック・カフェに展示された車両

 エンジン位置を後退させ、バッテリーをトランクルームに置くなどにより、前後重量配分50:50を実現。フロントブレーキはブレンボ製を採用した。

 発表会で同社の石井澄人社長はATSを「パフォーマンスとテクノロジーに焦点を当てたモデル。デトロイトで生まれ、ニュルブルクリンクで育てたスポーツセダン」と紹介。独ニュルブルクリンクを走行してチューニングしたことを明らかにした。

後席は4:6の分割可倒式でセンターアームレスト部分がトランクスルーになる
バッテリーはラゲッジルームに。ランフラットタイヤを履くため、スペアタイヤやパンク修理キットは搭載されない

スタイリングとインテリアはキャディラックらしく
 一方、スタイリングとインテリアはキャディラックらしさを重視。同ブランドが標榜する「アート&サイエンス」に則り、縦型の灯火、V字型のモチーフなどを持つ。

 インテリアも「CTS」「SRX」などと共通の意匠でまとめられており、木、革、アルミ、カーボンに見える部分は、可能な限り本物の素材を使用したとしている。

 インストゥルメント・パネル中央には8インチのマルチタッチディスプレイを置き、「CUE」(キャディラック・ユーザー・エクスペリエンス)と呼ぶインターフェイスによりオーディオ、エアコン、ハンズフリーフォンなどを操作する。マルチタッチディスプレイは、スクリーンにタッチすると振動でフィードバックする仕組みを備える。また、ハードウエアスイッチはすべて静電容量式のタッチスイッチとなっている。

 CUEにはiPodなどの携帯メディアプレーヤーやUSBメモリ、SDカードなどを接続して音楽を再生することができる。8インチディスプレイの裏にはUSBコネクタのある物入れがあり、携帯メディアプレーヤーや携帯電話を収納しておける。

 米国仕様ではCUEでカーナビやテレマティクスサービスも利用できるが、日本仕様ではこれらはなく、カーナビは外付けとなる。

CUEの8インチタッチパネルディスプレイ。ディスプレイの裏にはUSBコネクタ付きの物入れがある
オプションとして検討されている純正カーナビ。ダッシュボード上に折りたたみ式のディスプレイが装着される

先進安全装備を満載
 ATSには多くの先進安全装備が搭載されているのも特徴。ラグジュアリー、プレミアムともに次の装備が搭載されている。

  • フォワード・コリジョン・アラート(前方衝突事前警告)
  • レーン・ディパーチャー・ウォーニング(車線逸脱警告)
  • フロント&リアパーキングアシスト
  • ダイナミック・ガイドライン付きリアビューカメラ
  • ブレーキアシスト
  • アダプティブ・フォワード・ライティングシステム(AFL)

 またプレミアムにのみ、次の装備が搭載される。

  • サイド・ブラインドゾーン・アラート
  • リア・クロス・トラフィック・アラート(後退時安全確認警告)
  • アダプティブ・クルーズ・コントロール(全車速追従)
  • オートマチック・ブレーキ
  • オートマチック・コリジョン・プレパレーション(衝突事前対応ブレーキ)
  • 電動パーキングブレーキ
  • フルカラー・ヘッドアップディスプレイ

 これらの作動には2台のカメラ、8つの超音波センサー、6つのレーダーが使用される。ドライバーへの警告にはメーターパネルやフロントウインドーへの表示のほか、ドライバーズ・シートを振動させる「セーフティ・アラート・ドライバーシート」が用いられる。セーフティ・アラート・ドライバーシートは、レーン・ディパーチャー・ウォーニングやサイド・ブラインドゾーン・アラートで左に危険を感知したときはシートの左側だけ、右に危険を感知したときは右側だけを振動させることもできる。

 またプレミアムのオートマチック・ブレーキは、リア・クロス・トラフィック・アラートと連動して後退時にも動作する。

先進安全装備のセンサープレミアムにはHUDが装備される
先進安全装備の一部。オートマチック・ブレーキは後退時にも動作する

激戦区に挑戦
 ATSは米国ではすでに8月に発売されているが、石井社長によれば7割が他ブランドからの代替えであり、「ドイツのライバルたちを凌ぐ走りを目標に開発した成果が出ている」とアピール、「GMジャパンとしては競争の厳しいエントリーラグジュアリーセグメントの中で新たな決意でチャレンジャーとして臨む」と決意を表明した。

 なお同社は16日に、東京 六本木のけやき坂下に「キャディラック・カフェ」をオープンする。これはエンターテインメント・レストラン「ColoR.」内に設けられるカフェ。キャディラック車が展示されたスペースで飲食を楽しむことができ、キャディラック・ブランドのインフォメーション・ハブとして機能する。

キャディラック・カフェ

 

キャディラック ATS
全長×全幅×全高[mm]4680×1805×1415
ホイールベース[mm]2775
重量[kg]1580
エンジン直列4気筒DOHC
2リッター直噴
ツインスクロールターボ
最高出力[kW(PS)/rpm]203(276)/5500
最大トルク[Nm/rpm]353(35.9)/1700-5500
トランスミッション6速AT
駆動方式2WD(FR)
前/後サスペンションダブルピボット・マクファーソン・ストラット/5リンク
前/後ブレーキベンチレーテッドディスク
乗車定員[名]5
ステアリング位置

(編集部:田中真一郎)
2012年 11月 15日