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首都高、建て替え・修繕に必要な費用は7900億円~9100億円

構造物の大規模更新のあり方に関する提言書を受け取る

「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」委員長の涌井史郎氏(右)から提言書を受け取る首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏(左)
2013年1月15日発表

 首都高速道路は1月15日、「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」(以下、大規模更新調査研究委員会)からの提言書を受け取った。この提言書によると、大規模更新(実質的な建て替え)・大規模修繕に必要な費用は7900億円~9100億円と見積もられている。

 首都高は1962年(昭和37年)の京橋~芝浦間(約4.5km)に始まり、現在は総延長301.3kmになる首都圏の大動脈。1月14日の雪で首都高は多くの個所で通行止めとなり、都内を中心に一般道の大渋滞が起きたことからも、首都圏交通の要であることは間違いない。

 その首都高も開通から50年が経ち、各所で経年劣化が起きている。普段のメンテナンスによりすぐに危険となる個所はないが、今後を見据えた場合なんらかの改修が必要なのは明らかで、その検討を大規模更新調査研究委員会に依頼していた。

 大規模更新調査研究委員会は、2012年3月6日に第1回を開催。以来検討を重ね、首都高の改修に関する提言書がまとまったことになる。

 提言書によると大規模更新の実施区間は約16kmで、1号羽田線 東品川桟橋、4号新宿線 新宿カーブ、3号渋谷線 池尻~三軒茶屋、都心環状線 銀座~新富町などが対象とされている。また、大規模修繕の実施区間は約28kmで、1号羽田線 浜崎橋~昭和島、3号渋谷線 谷町JCT(ジャンクション)~用賀、4号新宿線 千駄ヶ谷付近・西新宿JCT~高井戸などが含まれる。

 大規模更新の概算費用は約5500億円~6850億円、大規模修繕の概算費用は950億円~1050億円、当面の対応に必要な概算費用は約1350億円と見積もられている。

 提言書を渡した涌井委員長と、受け取った菅原社長は共同で記者会見を開催。菅原社長は「首都高は40年以上の構造物が3割、30年以上は5割、1日あたり約100万台、大型車の交通量は一般街路と比べて5倍となっている。日々の点検はやっているが、長期的には大規模補修が必要だと考えている。そのこともあり、大規模更新に関する必要な考え方をとりまとめていただいた」と挨拶。大規模更新・大規模修繕の費用は7900億円~9100億円となっているが、この費用は現在の償還計画に含まれておらず(つまり道路料金に反映されていない)、実際に作業をする際には別途費用の調達が必要なる。この費用に関しては「今後は国、国土交通省、東京都と連携をして検討していきたい」(菅原社長)と述べた。

 また、この提言書の費用について涌井委員長は、「経済的な問題や財政的な問題は我々の検討の範囲外」としながら、「数字は緻密に積み上げられたものである」と語った。東京ではオリンピック招致の話が出ているが、この提言書は技術的な見地からまとめられたものであり、オリンピック開催へ向けた要素は含まれていないものであるとした。

 この提言書については課題として「1号羽田線の東品川桟橋、鮫洲埋立部等は、実施に向けて早急に検討に着手すべき」と付記されている。しかしながら、現時点で費用面の問題があり、今後は大規模更新・大規模修繕の費用をどう負担していくのかが問題になっていくだろう。

(編集部:谷川 潔)