首都高、「疲労損傷度がもっとも高いのは3号渋谷線」 第2回首都高大規模更新の検討委員会を開催 |
首都高速道路の橋本圭一郎会長兼社長 |
首都高速道路は5月8日、「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」の第2回を開催し、委員会終了後に記者会見を実施した。
首都高は、今年の12月で開通から50年を迎える。総延長301.3kmのうち、経過年数が40年以上の橋脚やトンネルなどの構造物が約3割(約90km)、30年以上でも約5割(約140km)と、多くの路線で高齢化が進んでいる。そのため、同委員会では構造物の大規模更新(構造物の建て直し)または維持修繕・補修・補強を行うかどうか、行う際にはどの路線からどのような補修作業をするかどうかを検討している。
委員会は東京都市大学 環境情報学部の涌井史郎教授が委員長を務め、都市基盤計画関係、橋梁コンクリートトンネル等の構造物関係、経済関係等の委員で構成される。
発表会に出席した橋本圭一郎会長兼社長は、「今回の委員会では、大規模更新を行うかどうかの個所の絞り込みの考え方、また更新を行うか否かを判断する基準となる、LLC(ライフサイクルコスト)の考え方等について議論していただいた」と述べるとともに、涌井委員長は「なぜ首都高はこのような損傷が起きているのか、その原因をしっかり究明すること」が委員会の役目だとし、「大規模改修なり更新を行う場合は、どの場所をどのように優先するのか、その絞り込みについての考え方を議論した」と、今回の議論内容を説明。
検討委員会で委員長を務める東京都市大学 環境情報学部の涌井史郎教授 |
具体的な議論内容については、大規模更新路線の1次抽出が行われ、都心環状線(14.8km)、1号羽田線(13.8km)、3号渋谷線(11.9km)、4号新宿線(13.5km)、6号向島線(10.5km)、7号小松川線(10.4km)の合計74.9km(首都高全路線の約25%)が選ばれた。この対象路線を叩き台とし、今後大規模更新を行うかどうかを検討すると言う。
抽出の基準では、累積軸数(10t換算)と呼ばれる過酷な使用状況を表すデータと、昭和48年より前に設計されたかどうかが指標となった。
累積軸数とは、供用からの累積交通量を10t車換算するため、供用経過年数、大型車交通量、総交通量を包含した指標。ここでは10t車を1台として扱い、普通車の重量は1/5の2tで計算される。重量が1/5になると、構造物への疲労損傷度は10t車に比べ1/5の3乗ほどになると言う。
この累積軸数を全路線で見てみると、もっとも過酷に使われている路線の1位は6500万軸数の3号渋谷線となり、これに都心環状線(5800万軸数)、中央環状線(東、5100万軸数)が続いた。
路線名 | 平成21年度までの累積軸数 | |
1 | 3号渋谷線 | 6500万軸数 |
2 | 都心環状線 | 5800万軸数 |
3 | 中央環状線(東) | 5100万軸数 |
4 | 6号三郷線 | 5000万軸数 |
5 | 6号向島線 | 4900万軸数 |
6 | 湾岸線(東京) | 4400万軸数 |
7 | 4号新宿線 | 3800万軸数 |
8 | 9号深川線 | 3400万軸数 |
9 | 1号羽田線 | 3400万軸数 |
10 | 川口線 | 3200万軸数 |
11 | 7号小松川線 | 3000万軸数 |
この累積軸数が多い順に、大規模更新を行うかどうかが決まらなかったのは、昭和48年より前に設計されたかどうかという指標があるためだ。
これは昭和48年に、建造物の大規模な設計基準変更が行われたためで、具体的には昭和48年以前は活荷重8tで計算していたところ、昭和48年以降は2割増しの9.6tで設計をしなければならなくなった。また、昭和48年以前は鋼桁のたわみを許容していたが、見直しによりたわみ制限の強化が図られた。昭和48年より前に作られた建造物は、昭和48年以降の建造物に比べ損傷度合いは2倍に及ぶと言う。
またコスト面についても議論が行われ、点検、維持管理費用、更新費用のほか、工事に伴う通行止めの影響などを考慮した上で、維持修繕・補修・補強と、大規模更新の両面からコストの算出を行うとしている。
今回発表された内容はあくまで叩き台であり、これをベースに今後も議論が重ねられる。8月に中間報告、12月に提言内容をまとめる予定になっている。
(編集部:小林 隆)
2012年 5月 9日