首都高、「大規模更新は国全体の問題」
橋本会長退任後も大規模更新委員会は継続

橋本会長(左)と涌井委員長

2012年6月26日開催



 首都高速道路は6月26日、「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」の第3回を開催した。また、27日付けを持って任期満了で退任する同社の橋本圭一郎 会長兼社長が、2年の任期を振り返った。

結論を急がず、議論の熟度を高める
 同委員会は、老朽化が進む首都高速道路の大規模修繕を検討する有識者会議。東京都市大学環境情報学部 教授の涌井史郎委員長以下、7人の委員で構成され、1カ月ごとに開催される。8月の中間報告を経て、12月に答申をまとめる予定。

 これまでの委員会では、首都高速の現状を認識し、大規模更新の考え方、大規模更新をすべきかどうかの基準などを議論。今回は、更新区間の抽出の仕方と、今後のスケジュールを議論した。

 涌井委員長は「首都高は働かされ続けている。その結果、一部には人間の体で言えばさまざまな障害が発生し始めている。今まではさまざまなオルタナティブ医療、マッサージや鍼灸、軽い治療で対応してきたが、これでは追いついていかない。首都圏の大動脈である首都高が、(償還を終えて)無料になるまでの時期の間にしっかり働くだけでなく、その後も健全な状態を維持するにはどうしたらいいのか」を議論する場と委員会を説明。

 更新すべき区間やそのスケジュールを決めるには、3環状の整備状況や都市計画との関わり、利用者の利便や投資効率などを考える必要があるうえ「首都高は保有機構から財産を借り受け、運用して償還していくもの。保有機構が持つべき部分と首都高が果たすべき部分と、制度上の整理をしていく必要がある」とした。

 その結果、今回の委員会では「8月の中間報告を急がず、ケーススタディを重ね、いろいろなシミュレーションをして、社会的な評価に耐えるような議論に仕上げた方がいい、議論の熟度を高めたい」という結論になり、中間報告が1~2カ月遅れる可能性があるとした。ただし、答申の時期は変更しないとしている。

橋本会長

民営化推進のほか震災からの復旧など多数の事業
 退任する橋本会長は今回でこの委員会からも離れるが、委員会は機関決定されたものなので、今後も涌井委員長を中心に継続される。

 橋本会長は2年間の任期を振り返り、記憶に鮮明な5つの出来事を挙げた。

 1つめは東日本大震災からの早期復旧で、「社員、関係会社、業者さんのおかげで約2週間で復旧できたのは感激だったし、首都高グループの力をみなさんにご認識いただけたのではないか」とした。

 2つめは2011年12月31日の距離別料金制への移行。「夜9時過ぎに本社に入り、最終チェックをした。最初のクルマが通り抜けた時にはホッとした」。

 3つめはバンコクとジャカルタの駐在員事務所開設。これは同社の持つ技術やノウハウをもとに、海外でコンサルティングなどの事業を展開する試み。道路公団時代にはできなかったことだが、すでにコンサルティング事業を獲得しており、どちらの国でも「首都高の技術で自分たちの道路状況を改善してもらいたいと言われた。首都高の技術に対する熱い思いを実感した。タイミングよくオフィスを開設できたと思う」と述べた。

 4つめは大規模更新委員会の立ち上げ。「我が国全体が、道路だけでなく、水道やハコモノといった高度成長期に作られたものをどうするかという問題に直面している。その先陣を切って、皆さんにこの問題を一緒に考えていただく機会を作れた」とした。

 最後は6号川崎線 殿町IC~大師JCTの開通。任期中には中央環状品川線、横浜環状北線、同北西線など、ネットワーク上重要な事業が相次いだが、川崎線は「自分の誕生日に開通した。滅多にないこと」で印象に残っているとした。

 また、有利子債務の返済、コーポレート・ガバナンスの改善、民間ノウハウの導入による新ビジネスの開発、プロパー社員の意識改革など、民営化も着実に進んだとした。

(編集部:田中真一郎)
2012年 6月 27日