アウディ ジャパンは、3月19日に東京都現代美術館で「The new Audi R8 Press Launch Event」を開催。新型トランスミッションの採用などでさらに進化した「R8」2013年モデルを発表した。
シングルフレームグリルからバンパーまでフロントマスクはデザインを一新 フルLEDのリヤコンビネーションランプは内部構造を変更。さらにリヤウインカーは内側から外に向かって光が伸びるように発光する「ダイナミックターンシグナル」を採用。量産市販車では世界初になるとのこと スモーク噴射の演出の向こう側から2013年モデルのR8が登場した 「R8は2007年に導入してから、安定した販売台数をキープしているクルマです」と語るアウディ ジャパンの大喜多社長 2013年モデルのR8について、アウディ ジャパンの大喜多寛社長は「アウディらしく正常な進化を遂げたモデル」と紹介。「新しいR8の魅力はたくさんありますが、トピックスを3点に絞ると、まずは0-100km/h加速が3.6秒であること、アウディのテクノロジーが凝縮されたLEDヘッドライト、これまでのRトロニックから、よりモータースポーツのフィーリングを味わえるSトロニックに進化したことがあげられます」と解説した。
新しいR8の販売開始は4月10日に設定され、車両価格は1729万円~2339万円。これまでR8は全国8個所の「R8ディーラー」のみで取り扱われてきたが、今年中に20店舗まで拡大し、年間100台を販売目標としている。
R8はレーシングモデル直系の技術を多用したアウディ市販車の最上位モデルとして位置づけられている 価格が最も高いスパイダーは5.2リッターのV型10気筒エンジンと7速デュアル・クラッチ・トランスミッション「Sトロニック」の組み合わせ。クーペでは4.2リッターのV型8気筒エンジンや6速MTの選択肢も用意される。ステアリングは左右両方を全車に設定 従来搭載していたシングルクラッチ式のRトロニックに替えて採用されたデュアルクラッチ式のSトロニック。高効率化によって0-100km/h加速を0.3秒短縮した3.6秒としたほか、7速化されたトップギヤはクルージング用に設定され、燃料消費量を削減。このため、314km/hという最高速度は6速ギヤで記録されるという R8のデザインアイデンティティでもあるシングルフレームグリルとフルLEDヘッドライトの組み合わせ。従来は外側にロービーム、内側にハイビームを配置していたが、今モデルから最上段がロービーム、ポジショニングランプ&ウインカーを挟んで下段がハイビームというレイアウトに変更された R8 クーペ 5.2 FSI クワトロのキャビンとドアトリム シフトノブのロゴマークを変更したほか、ステアリングのシフトパドルを大型化 エンジンにはとくに大きな変更はなく、スペック上での最高出力&最高トルクは不変。Sトロニックの採用で燃費は向上し、5.2リッターV10のクーペモデルの燃費は100km走行あたり13.1L ミッドシップのR8はフロントノーズに収納スペースを設置。容量は100Lを確保する ブレーキシステムは大きく変更されたポイント。ブレーキディスクの外周を波形デザインにすることで、強度はそのままに1つあたり500g、4個所合計で2kgの軽量化を実現。さらに放熱性も向上している V10エンジン車にはオプションとして、シリコンカーバイドをベースにカーボンファイバーを埋め込んだセラミックブレーキを設定。日常シーンでの使い勝手は純正ブレーキに譲るものの、サーキット走行では過酷な状況下でも安定した制動力を発揮する R8 Spyder 5.2 FSI クワトロのインパネ。全車で左右どちらのステアリングも選択可能 本革シート車はシートヒーターを標準装備。シートベルトにマイクを内蔵しており、ハンズフリーシステムを使ってドライブ中に携帯電話での通話が可能になる スパイダーモデルのエンジンカバーを開けた様子。前方はソフトトップの収納コンパートメントになっている 今シーズンは3種類のレースに3チームのR8 LMSが出走
このほか、当日はアウディの日本における今シーズンのレース活動についてもプレゼンテーションが行われた。
アウディ ジャパンの大喜多社長は、アウディ設立当時から続く「レースは技術の実験室」というモータースポーツに対するフィロソフィを紹介。アウディが持つクワトロ(4WD)技術やガソリン直噴システムのFSIといった代表的なテクノロジーが、まずレースの場で試してから市販車にフィードバックし、さらにレースシーンで性能を証明するという歴史を繰り返してきたと語り、アウディがレースに参加することの重要性を説明した。
「レースと技術開発と量販車によるトライアングルを、これからも一生懸命続けていきたい」と語る大喜多社長 R8はモータースポーツと直接的にリンクしているクルマで、レース専用のR8 LMSでも市販されているR8と55%が同じパーツで構成されていると説明 サーキットを舞台にした耐久レースから荒野を駆け抜けるラリーまで、さまざまなフィールドで行われるレースにアウディが参加してきたことをアピール FIA GT3仕様のR8 LMSは昨年度に世界で211のレースに参戦し、優勝40回、2位39回、3位34回を獲得。半数以上のレースでトップ3を確保するという輝かしい戦績を収めた 日本におけるアウディのレース活動は、プライベートチームにレース車両を提供する「カスタマーレーシング」が中心となり、この詳細は、アウディ スポーツ日本正規代理店を務めるノバ・エンジニアリングの森脇基恭取締役から解説が行われた。
2013年はSUPER GT、スーパー耐久、GT Asiaという日本を中心に開催される3種類のレースにFIA GT3仕様のR8 LMSが投入されることになった。「レースは技術の実験室」という言葉どおり、R8 LMSは昨年度のレースで得た経験をマシンに反映。エキゾースト関連の改良や空力特性の大幅変更などを行い、R8 LMS ウルトラからR8 LMS ウルトラ 2013に進化している。
「今年は去年のマシンに比べて2段階ぐらい性能がアップしていると思います」とR8 LMS ウルトラ 2013を評価するノバ・エンジニアリングの森脇基恭取締役 2013年シーズンは、SUPER GTシリーズのGT300クラスに「Hitotsuyama Racing」と「apr」の2チーム、スーパー耐久シリーズに「Team NOVA」、GT Asiaシリーズに「Hitotsuyama Racing」と「Team NOVA」が参戦。「apr」では表示されている岩崎祐貴選手に加え、ロータスF1チームでテストドライバーを務めていたファイルーズ・ファウジー選手を起用する R8 LMS ultraの2012年スペックから2013年スペックへの変更内容一覧 会場には昨シーズンもR8 LMSでSUPER GTに参戦している「Hitotsuyama Racing」の一ツ山幹雄代表、「apr」の金曽裕人監督の2人も来場。数日前の3月16日、17日に岡山国際サーキットで行われたシーズン初となるSUPER GT公式テストに参加した感想について、すでにニューマシンのR8 LMS ウルトラ 2013を投入した「Hitotsuyama Racing」の一ツ山代表は、「昨年はレギュレーションによる制限が厳しく、走っても走っても勝てない状況でしたが、先日のテストではGT300クラスの総合2番手のタイムを記録し、今年は次元が違うマシンに仕上がっていると感じています」と手応えを見せた。
「新しい車両は同じサーキットで1秒から2秒速い。今年はなんとかいいところを見せて、アウディは速いぞとみなさんに知ってもらえればと思います」と意気込みを口にする一ツ山代表 「apr」の金曽監督は、「昨年、R8 LMSで7000kmほどレースを走りましたが、本当にノントラブルで、アウディの哲学やクルマに対する文化というものを感じました。ただ、マシンの調子がいいので2013年モデルのアップデートは要らないかと思っていたのですが、先日のテストでHitotsuyama Racingさんにさんざん負けまして、ぜひアップデートしたいと考えています」とコメントした スーパー耐久シリーズに参戦予定のTeam NOVA 8号車 軽量化のためにフロントウインドーをポリカーボネート製に変更 リヤウイングは形状変更され、後方に配置されるようになった エキゾーストエンドパイプは下側両サイドから中央の高めな位置に変更された フロア下の整流効果を高める改良型リヤディフューザー リヤウイングは細かく角度調節できるよう設計されている 足まわりでは、前後ブレーキのマスターシリンダーサイズを最適化して制動時のバランスを変更。ホイールはマグネシウムからアルミに変更して軽量化 R8 LMS ultra 2013のエンジンフード 世界のスーパーカーがしのぎを削るスーパー耐久のGT3クラスに参戦する R8 LMS ultra 2013の透視図。いかにもレース車両というルックスだが、これで市販車両と55%が同じパーツで構成されているというのは驚きだ