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クロネコヤマトの新拠点、ヤマトHD「羽田クロノゲート」見学記

羽田クロノゲートの外観
2013年9月30日開催

 ヤマトホールディングスは9月30日、稼動開始を目前に控えた同社の総合物流ターミナル「羽田クロノゲート」(以下、羽田CG)のプレス向け見学会を開催した。

 羽田CGは同社が国内最大級の物流ターミナルとして建設したもので、単なる物流ターミナルではなくさまざまな付加価値機能を持っているのが特徴だ。同社が進める物流改革「バリューネットワーキング構想」を実現するための重要な位置付けが与えられ、羽田空港に近い立地を活かして国内外の物流を扱いながら、顧客にさまざまな付加価値を提供する。

 名前の由来は、ギリシャ神話に出てくる時間の神「クロノス」と、国内・アジアの「ゲートウェイ」になるという意味を掛け合わせた造語。「新しい時間と空間を提供する“物流の玄関”であるとともに、物流の新時代の幕開け」を表現しているという。

 詳細は既報のとおりだが、前回は見ることができなかった「付加価値エリア」などについても見学できたのでリポートしていく。

総合受付入り口
稼動開始前ということで造園作業などが行われていた
ずらりと並ぶ羽田CGの荷物搬入口
受付スペースには、同社がトヨタ自動車の協力を得て開発した「ウォークスルー」車両の1号車が展示されている。ドライバーの作業効率を重視して運転席と荷室をスライドドアで繋げ、ドライバーが車外に出なくても荷室まで移動できる

 1階~2階は「宅急便・航空便荷搬エリア」。ここではクロスベルトソータや前詰め搬送機、ロボットアームといった最新の仕分け設備を採用している。これらの投入によって従来型の施設では1時間あたり約2万4000個だった仕分け数を、1時間あたり4万8000個まで増やすことを実現したそうだ。また、1階にはクール宅急便を取り扱う「クールエリア」も設置されている。

1階の宅急便・航空便荷搬エリア
これが前詰め搬送機。オレンジ色のケージは荷物を仕分けエリアに運ぶための「ロールボックスパレット」と呼ばれるもの。従来はこれを人の手で押して動かしていたが、前詰め搬送機で自動的に移動できるようにした
ロボットアームによる仕分け作業。アームはレーザーセンサーによって箱の形状などを読み込み、吸盤状のアームを使って荷物を吸い上げてベルトまで移動させる
もちろん、人の手による仕分けも行われている
クロスベルトソータなどが設置されている中2階
クロスベルトソータ手前のスキャナ。ここで荷物の前方と左右、上面の4カ所を一気にスキャンして荷札を読み込む
クロスベルトソータ。ベルトには荷物ごとに「セル」と呼ばれる区切りがあり、そこにソータで荷物を置いていく。セルの底面は横にスライドさせることで荷物を移動できる仕組みとなっており、荷物に与える衝撃が少なく痛めにくい
シューター。ベルトの底面をスライドさせて荷物を左右に振り分ける
上下の階層を直結させるスパイラルコンベア。エレベータなどを使わず直接荷物を移動できる
クール宅急便の品物を扱う「クールエリア」。室内は冷蔵庫の内部のように冷却されている
クール宅急便用のコンテナ
空になったロールボックスパレットやクール宅急便用のコンテナを移動させるためのベルトも設置されている
ボックスダンパー。ボックスパレットを入れるとベルトに向けてボックスを傾けることで荷物をコンベアに移動させるもの

 3階より上の階は「付加価値エリア」となっており、7階には医療機器の貸し出しや洗浄・メンテナンスなどを行う「羽田メディカルセンター」がある。整形インプラントやカテーテル、ペースメーカー、人工弁などの手術用医療機器を取り扱い、病院からこれらの機器が返却されると、洗浄・メンテナンスを実施して再出荷する「ローナー支援サービス」を行うエリアだ。24時間365日稼動する設備で、洗浄と物流を1カ所で行うため、スピード化が図れる。

医療機器の洗浄・レンタルなどを行う「ローナー支援サービス」エリア。まだ機材は搬入されていない
医療機器などの機材倉庫

 6階はオンデマンド印刷などを扱うエリア。フルカラーオンデマンド印刷機が設置されていて、1台で1時間あたり6600ページを印刷可能。販促品などを受注して印刷し、そのまま出荷できるのが強み。仕分けから封入、配達までをまとめて行う「メーリングソリューション」も取り扱う。

オンデマンド印刷エリア
フルカラーオンデマンド印刷機「iGen4」
6階には多数の監視モニタが並ぶ集中管理室もある

 そのほか、羽田CGでは地域貢献として、一般の人も利用できるベーカリーや保育所、スポーツ施設なども用意されている。また、来年1月には一般向けの「羽田CG見学コース」も開設される予定となっている。

敷地内のマップ。一般の人が自由に利用できる施設がある
屋上駐車場から敷地を見渡したところ。丸い建物がベーカリーや保育所などの施設になっている
羽田CGの入り口。来年1月から開始予定の見学コース受付としても利用される
入り口からすぐの位置にあるロビー
吹き抜け構造になっているロビーの天井には木材が多用されている。照明は自然採光
館内には医務室を準備
食堂
食堂には売店としてセブン-イレブンが併設されていた
屋上からは羽田空港が一望できる

(清宮信志)