ニュース
氷結路面で1日楽しめる「2014 iceGUARD5 & PROSPEC Winter Driving Park」に参加してみた
氷結した女神湖を愛車で激走&スタッドレスタイヤをお勉強
(2014/2/13 18:35)
1月25日、プロスペックが主催するスノードライブレッスン「2014 iceGUARD5 & PROSPEC Winter Driving Park」が2014年も開催された。このドライブレッスンは、冬季に全面凍結する女神湖(長野県北佐久郡立科町)を借り切り、1日凍結路面を楽しめるもので、スタッドレスタイヤ「アイスガード」シリーズを発売するヨコハマタイヤ(横浜ゴム)のスポンサードによって参加費が抑えられている。
毎年プロスペックのWebで参加者を募りつつ開催してきたこのイベントだが、非常に好評なため、昨年のイベントはそれまでの参加者に事前案内を送った段階でほぼ参加枠がうまってしまうことに。そのため、今年はリピートの参加者を半分、新規の参加者を半分という形で募集したが、今年もすぐに参加枠がうまってしまったそうだ。それだけ、参加者の満足度の高いイベントということだろう。
プロスペック代表 日下部保雄氏は、レッスンの冒頭でリピート参加者を必ずしも優先できないことにお詫びを述べるとともに、新規の参加者に「氷結路面を楽しんでください」と挨拶。例年もまして豪華な講師陣を紹介した。豪華な講師陣が実質的にマンツーマンで指導してくれることも、このレッスンの魅力と言える。
2014年の講師は、片岡良宏氏(WRC参戦、1996年 FIAアジア-パシフィックラリーのシリーズチャンピオンなど)、三好秀昌氏(FIAアフリカラリー選手権チャンピオンなど)、小西重幸氏(WRC参戦など)、松井猛敏氏(スーパー耐久シリーズ参戦など)、岸剛之氏(全日本GT選手権やスーパー耐久シリーズ参戦など)、斉藤邦夫氏(全日本ジムカーナ選手権シリーズチャンピオン8度獲得など)、山西康司氏(フォーミュラ・ニッポン、SUPER GT参戦など)、森岡史雄氏(ドイツ ポロワンメイクレース参戦)と豪華な布陣。これに日下部氏(WRC参戦、全日本ラリーチャンピオン獲得など)が加わる。
レッスンプログラムは、氷結路面を走行できる時間(フリー走行50分間×3本)と、スタッドレスタイヤの勉強を行う座学の時間に分かれているが、座学は50分間なので、半日以上は愛車で氷結路面を走ることができる。氷結路面走行は、ブレーキングやスラロームを行う「ブレーキング&スラロームエリア」、定常円旋回を行う「アクセルワークエリア」、総合走行が可能な「ハンドリングエリア」の3つのエリアを用意。2014年は、ハンドリングエリアの距離がおおよそ2倍に増えていた。
2014年の座学は氷上超特化スタッドレスタイヤ「アイスガード エボリューション iG01」を題材に
氷結湖面でのスノードライブレッスンだけでも豪華な内容だが、記者がこのイベントで一番よいなと思っているのが座学の時間。横浜ゴムでスタッドレスタイヤを開発するタイヤ第一設計部 設計第2グループ リーダーの橋本佳昌氏と、超一流のラリーストでもある日下部氏が、最新のスタッドレスタイヤ事情について講義を行ってくれる。
橋本氏がスタッドレスタイヤの動向と技術について語り、日下部氏がドライビングの観点から採用技術を解説。異なる観点から激しく技術競争が行われているスタッドレスタイヤを学習できるようになっていた。
2014年の題材に取り上げられていたのは、2013年-2014年シーズン向けに北海道限定で発売された氷上超特化スタッドレスタイヤ「アイスガード エボリューション iG01」。これらに用いられた技術を平易に解説していた。
スタッドレスタイヤについてよく話題に上るのが、「タイヤサイズを小さくすることで接地面圧を高くするとよい」とか、「空気圧を下げるとよくグリップする」というもの。これについての回答もなされており、前者については「タイヤサイズを小さくすることで接地面圧を高くすると確かに雪中剪断力が上がって有利になる面もあるが、現代のスタッドレスの場合ゴムが進化しているため引っかく力などが減少し、トータルでは不利になる」とのこと。とくに、氷結路面では、その差が著しくなるようだ。
また、後者についてはグラフを示し「確かに空気圧を下げると氷上制動は上がるが、偏摩耗も増えるので適正空気圧で使ってほしい」という。空気圧を下げていくとタイヤのショルダーが摩耗しやすくなり、上げていくとセンターが摩耗しやすくなる。タイヤは設計空気圧で使うのがよいということだ。
モータージャーナリスト橋本洋平氏がスノードライブレッスンを体験
今回はそんなスノードライブレッスンをCar Watch本誌のインプレッション記事でおなじみの橋本洋平氏に体験していただいた。以下に、橋本氏のレッスン体験をお届けする。
スノードライブというよりは、アイスドライブといったほうがシックリくる女神湖のレッスン。湖面を走り出せば「こんなにグリップが低いのか!?」と誰もが思うほどタイヤはなかなかグリップしない。発進加速はアクセルをそっと扱わなければ空転するばかり。ハンドリングコースでは、わずか20km/hほどでクルマがスリップをはじめる始末。ブレーキだってすぐにABSが介入するのだ。
ただ、こんな低次元でクルマの動きが破綻するからこそ、安心してコントロールを学ぶことができる。すなわち、心に余裕があるからすべての操作を冷静に行えるわけだ。誰でもカウンターステアOK。ちょっとコツを掴めばラリースト気分だって味わえるだろう。
今回はアウトランダーPHEVを拝借し一日走ってみたが、クルマの特性を学ぶにも最適。自ら乗るクルマはどんな制御が行われ、どう動くのかを理解するにもこのレッスンは適している。万が一コースアウトしたとしても、雪に突っ込むだけ。クルマを傷つける心配がないところも嬉しい。
さらに有り難いのは、豪華講師陣が外から走りを観察し、走り方を伝授してくれるところだ。今回は日下部保雄氏と三好秀昌氏にアドバイスや同乗走行を行ってもらったが、その発する言葉が実に的確。日下部氏は「ソーイング(細かくステアリングを切ることを繰り返す)をあえて行い氷にタイヤが一番食い付くところを常に感じることが大切」とアドバイスをくれた。三好氏は「氷の脇にある雪面を利用して減速や曲げると走りやすい」という実戦さながらの走りを伝授してくれたのだ。ソノ道のプロはさすがである。
アドバイスをもらってからは、それを自分のものにしようと、とことん走り込みに徹することに。ちょっと疲れたかな、なんて思えるくらいの走り込みが行える充実の時間が与えられるところも、このレッスンの嬉しいところだ。(橋本洋平)
スノードライブレッスンに積極的に参加することで運転がうまくなる
橋本氏も書いているとおり、スノードライブレッスンの楽しさは、極低速でクルマの限界動作が分かるようになることと、その対処が学べること。さらにこの「iceGUARD5 & PROSPEC Winter Driving Park」であれば、トップレベルのラリーストやレーシングドライバーから運転テクニックを学べる。
その上、横浜ゴムのスタッドレスタイヤの開発メンバーまで参加しているため、スタッドレスタイヤに関する深い質問の答えが得られる。記者も、各種のイベントを取材のために訪れているが、一般参加者ともの作りの開発者が自由に会話ができるようなイベントは数少なく、そういった意味でも雪道に興味があるなら、また運転テクニック向上に興味があるなら、ぜひ参加していただきたいイベントの1つだ。
但し、氷結した女神湖で行われるイベントのため、女神湖の氷の耐荷重の観点から参加台数に限りがあり、自分の愛車にスタッドレスタイヤが装着されていることが必要になる(氷の上を走るのはもちろん、そもそもスタッドレスタイヤ装着車でないと女神湖にたどり着けない)。冬の安全を考えると日本の広い地域でスタッドレスタイヤは装備必需品といってよく、2014年4月以降の消費税増税を考えると、サイズ在庫があるようならば購入検討をお勧めする。スタッドレスタイヤを装着すればチェーン装着では得られない高い安全性を得られ、楽しいスノードライビングの世界が広がっているはずだ。